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硯の精

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第一章

                  硯の精 
 八神姫大きな丸い目にホームベース型の顔を持っている、唇は小さめでいつも笑っている感じだ。茶色にした髪の毛を左右でツインテールにしていて頭には大きなリボンがある。着ている服はいつもリボンやフリルが目立つゴスロリ系だ。鞄にはいつも熊のぬいぐるみをアクセサリーに付けているがこれは子供の頃からだ。背は一五五程で幼いスタイルをしている。
 十九歳で神戸の大学に通いながら大阪市都島区、自宅の近くのカラオケショップである八条カラオケ都島店でアルバイトをしている、だが。
 その彼女にだ、同じバイト仲間で奇しくも中学から同じ学年で今も同じ大学に通っている呉島奈々が休憩している彼女にこんなことを言った。
「ねえ、姫」
「何、呉島さん」
 他人行儀に返した姫だった、何処か怯えた感じで。
「何かあるの?」
「いや、私達中学から一緒にいるしね」
 それでと言うのだ、奈々は長い髪を伸ばしていて切れ長の目をしている。顔は卵型で鼻の形はいい。髪の毛の間から見える耳は大きい。背は一六七位で脚が長い。所謂モデル体型だ。
「何度も言ってるけれどさん付けはね」
「駄目?」
「友達って言っていいでしょ」
 そうした間柄だというのだ。
「少なくとも私はそう思ってるわよ」
「私も」
 姫はおどおどとして奈々に答えた。
「そう思ってるけれど」
「その割に他人行儀ね」
「だって」
「人が怖い?」
「呉島さんは怖くないけれど」
 それでもというのだ。
「何か」
「相変わらず引っ込み思案ね」
「だって私」
 ここでこう言った姫だった。
「顔も容姿も悪くて」
「友達少なくて?」
「昔から、それに」
 さらに言う姫だった。
「センスも個性も才能も実力も」
「全部ないっていうのね」
「皆そう言ってるし」
「その皆って誰よ」
 そこから聞く奈々だった。
「そもそも」
「高校の時の元木さんとか清原さんとか」
「あの連中どうしようもない悪だったでしょ」
 奈々はその二人の名前を聞いてすぐに返した。
「二人共今はヤクザの情婦よ」
「そうなの」
「そんな連中の言うことなんか気にしない」
「中学の時の亀田先輩とか」
「その先輩今はチンピラやってて少年院よ」
 つまり言っているのはどうしようもない連中ばかりというのだ。
「そんな連中の言うこと真に受けないの」
「けれど」
「ご両親はそんなこと言わないでしょ、店長さんも」
「けれど」
「そもそもあんた顔もスタイルもロリ系でそんなに悪くないから」
 その方面ではレベルは高い方だというのだ。
「ファッションもゴスロリ好きならいいじゃない」
「そうなの」
「それに友達なら少なくとも私がいるし」
 それにというのだ。
「センスとか個性とか才能とか実力とかね」
「ないから」
「書道やってたんでしょ、小学校一年から」
 奈々がまだ姫を知らない頃からだ。
「それで高校までずっと書道部だったじゃない」
「それはそうだけれど」
「段持ちでしょ」
「一応は」
「五段だったわよね」
「あんなの誰でも取れるから」
「取れないわよ、あんた字奇麗よ」
 書道五段だけあってというのだ。 
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