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第三章

「だからね」
「あなたが背負って」
「放っておけないから」
 何処の誰かわからないがだ。
「そうしよう」
「じゃあ」
「すぐに玲を探そう」
「お家は全部戸閉まりしてるから」
「お家の中はないね」
「けれどお庭探すわ」
 麻美子は戸閉まりはしているので玲は家の中にいないと確信していた、だが庭は玄関からそのまま行けるのでまずはそこを探すことにしたのだ。
「そしてね」
「近所や公園も探して」
「ええ、玲ちゃんをね」
「何とか探そう」
「近くにいる筈なら」
「絶対に見付かる筈だから」
 太は現実からこう考えていた、何故玲が消えて誰かわからない娘が玲の制服を着てそこにいるのかわからなかったがだ。
 それで夫婦で手分けをして娘を探しはじめた、家の庭の隅から隅までそして家の近所に公園にと玲が行きそうな場所をだ。
 全部探していない、しかもGPSをチェックするとだ。麻美子は家の近所だけでなく離れたところ、玲を連れて行っていない場所まで若しかしたら彼女が迷い込んでいるかも知れないと思い見回しながら携帯で夫に言った。
「玲ちゃんの居場所はね」
「何処なんだ?」
「パパと一緒よ」
「というと」
「その娘がなのよ」
「確かに名札が一緒でランドセルもそうで」
「ランドセルの中身は?」
「確かめたけれど全部玲のものだったよ」
 教科書やノート、文房具に書いてある名前はだ。国語のテストも入っていたが九十点で丸が目立っていた。
「何もかもがね」
「そうなの」
「どういうことなんだ」
「けれどその娘は」
「ああ、玲じゃない」
 太は確信して携帯で麻美子に答えた、謎の少女を背負いつつ必死に玲がいそうな場所を駆け回りながら。
「間違いなく」
「じゃあどういうこと?」
「わからない、しかしな」
「ええ、このままね」
「探そう」
「もう夕方だけれど」
「夜になってもだよ」
 それでもというのだ。
「玲を探そう」
「そうね、あの娘がいなくなったら」
「大変だ」
 二人で親として言う、そして。
 二人は真夜中まで探し回った、だが結局玲は見付からず。
 二人はもう疲れきり空腹もあってだ、仕方なく今は家に帰ることにした。
 そしてだ、家のリビングで疲れ切った顔で謎の少女と共にいて休んだ。麻美子は呆然としつつ肩で息をして全身汗だくになっている夫に言った。
「五分位玄関でお話をして」
「たった五分で」
「手を離していたら」
「その間にだね」
「玲ちゃんがいなくなってたの」
 ちらりとだ、謎の少女を見つつ言った。今は少女は麻美子の横に立っている。相変わらず何も語らず表情もない。
「それでこの娘がいたの」
「絶対に玲じゃない」
「どうなってるのかしら」
「GPSは玲でだ」
「携帯で玲ちゃんに連絡しても」
「ランドセルの中の携帯が鳴って」
 その玲の携帯っである。
「どうなってるの?」
「もう何が何だか」
「そうよね」
「わからない」
「何が何だか」
 二人でだ、ソファーに座らずリビングの床の上にへたり込んだまま話していく。 
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