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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~英雄達の大粛清~後篇(2章終了)

~オルキスタワー~



「――――さてと。今回の件、両政府にはどのような責任を取ってもらおうか?」

「”大陸最強”と名高いメンフィルの皇家たる我等マーシルン家の命を脅かした挙句国際犯罪組織まで運用した件……これは”不戦条約”の意に反しているどころか宣戦布告も同然の行いですよ?」

(…………今後の事を考えたら気の毒としか思いようがないほど、徹底的に嵌められたわね、あの二人………まあ、因果応報、そして自業自得よね……………)

ロイド達が去った後リフィア皇女とレン皇女はそれぞれ不敵な笑みを浮かべてオズボーン宰相やロックスミス大統領を見つめ、エリゼは静かな表情でオズボーン宰相やロックスミス大統領を見つめ

「「…………………」」

見つめられた2人は唇を噛みしめて黙り込み

「「…………………」」

レクター書記官とキリカ補佐官は厳しい表情でリフィア皇女とレン皇女を見つめていた。

「―――リフィア殿下、よろしいでしょうか?」

するとその時オリヴァルト皇子がリフィア皇女に話しかけた。

「む、なんだ?」

「今回の件……誠に勝手な言い分かと思われますが、我々エレボニア皇族はこのような件は一切把握しておりませんでした。そしてあくまで私の予想ですが今回の件は”百日戦役”のように宰相を含めた”一部の暴走”かと思われます。……ですので、どうかここは私の顔に免じて寛大なご処置をお願いします。」

「!!クッ………!」

(チッ、よく言うぜ………今までの流れも最初からわかっていた上打ち合わせもしていたんだろうが………)

「オ、オリヴァルト殿下が……!リフィア殿下に頭を……!」

リフィア皇女に向かって頭を深く下げたオリヴァルト皇子の行動を見たオズボーン宰相は目を見開いた後唇を噛みしめ、レクター書記官は舌打ちをした後厳しい表情でオリヴァルト皇子を見つめ、オリヴァルト皇子の行動にエレボニアから派遣されているマスコミは驚いた後カメラで写真を撮っていた。

「フム………確かにオリヴァルト皇子はリベールの”異変”時、余やクローディア姫、そしてリベールやメンフィルの英傑達と共に”身喰らう蛇”に立ち向かった仲間であると同時にリウイ陛下とイリーナ様の結婚式の際、演奏役として歴代に見ない素晴らしい演奏をして、二人の結婚を祝福してくれた者。信用したい所だが、さすがに何も無しと言う訳にもいかぬしな。―――フム、そうじゃ。此度の件で手を貸してくれたクロスベル警察並びに警備隊には命を救われたも同然じゃ。お主たちに何か礼をしたい所だが……ヴァイスハイト局長、ギュランドロス司令。何かあるか?」

オリヴァルト皇子の行動を見て頷いたリフィア皇女はヴァイス達に視線を向けた。

「……でしたら出来る事ならエレボニア、カルバードのクロスベルに対するさまざまな制限を解除し、さらにクロスベルへの干渉をできるだけ弱めるようにして頂けますかな?」

「……今までクロスベルは二大国によってさまざまな”しがらみ”や”不幸な事故”があったからな。それを無くすいい機会だぜ。」

「!?」

「!!」

ヴァイスとギュランドロスの話を聞いたマクダエル議長は驚きの表情で絶句し、ディーター市長は目を見開き

「……なるほど。なら、それをエレボニアが実行すれば今回の件、お主の顔に免じて忘れる事にしよう。―――もちろん、今回の件を企んだ宰相以下一部の暴走した者達の処罰もする事も条件の中に入っているぞ。」

「―――寛大なご処置をありがとうございます、リフィア殿下。祖国に帰りましたら、直ちに皇帝陛下並びに帝国政府に今回の件を報告し、殿下が出された条件を呑んでいただくよう、説得させてもらいます。……という事だ、宰相。エレボニアに帰ったら覚悟しておくことだな?(……彼女達が作ってくれたエレボニアから”怪物”を退治するこの絶好な機会……絶対に逃す訳にはいかない……!ここからはボクの腕次第という訳だ………!)」

(………とてつもない策略家だな、彼女は……いくらメンフィルの力を借りているとはいえ、まさかあの”鉄血宰相”すらも陥れてしまうとは………下手をすれば歴代最高の策略家ではないのか?)

リフィア皇女の話を聞いて会釈したオリヴァルト皇子は心の中で決意をしながら、目を細めてオズボーン宰相を睨み、ミュラー少佐は静かな表情で黙り込み

「…………………承知しました。」

(おいおいおい……!こんな大番狂わせ、ありかよ……!?)

睨まれたオズボーン宰相は怒りの表情をしていたが気を取り直して静かな表情で会釈をし、レクター書記官は信じられない表情をしていた。

「―――当然、カルバード政府もリフィア殿下が仰った交換条件に加え、さらにアルタイル市もしくはリベールのヴォルフ砦に隣接するカルバード領をメンフィル帝国に差し出して頂ければ、今回の件は忘れる事にします。」

「なあっ!?一体何故!!」

「………!」

「ええっ!?」

「……レン姫。さすがに領地を差し出すのはいささか、強引すぎると思うのですが。」

そしてロックスミス大統領を見つめて言ったレン皇女の話を聞いたロックスミス大統領は驚いた後怒りの表情で叫び、キリカ補佐官は厳しい表情をし、クローディア姫は驚き、アルバート大公は真剣な表情でレン皇女を見つめて言った。

「―――カルバード政府は私達やメンフィル帝国が信用するオリヴァルト皇子がいらっしゃるエレボニア政府と違って、我々メンフィルや他国が信用できる人物が政府内におりませんので。ですので、今回の件のような事を起こさない為にも”不戦条約”を掲げたリベールと同盟を組むメンフィルがカルバードを”監視”する為にもカルバードとは”関係のない”他国の領に接近している領をメンフィルに差し出すのは当然の事かと思いますが。」

「む…………………」

「………………………」

上品な微笑みを浮かべながら言ったレン皇女の説明を聞いたアルバート大公は唸り、クローディア姫は不安そうな表情をしていた。

「―――お待ちください。その信用のおける人物とは私では当てはまらないのでしょうか?」

するとその時キリカ補佐官は静かな表情で申し出たが

「……確かにかつて遊撃士協会の受付を勤めていた貴女はリフィア殿下やクローディア姫と顔見知りではありますけど………”その程度”でしょう?まさか顔見知りだからという理由で皇族に……それも皇位継承者達に信用してもらえると思っていたのですか?」

「……………(……唯一2人に信頼されている可能性があるのはジンだけど……………どの道中立の立場である遊撃士協会のジンでは無理ね………カルバード政府内にリベールの”異変”をエステル達と共に解決した者がいないのが痛すぎたわね…………………)いえ……この場には相応しくない発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。」

不敵な笑みを浮かべて見つめられて尋ねたレン皇女の疑問を聞いた後厳しい表情をした後気を取り直して軽く頭を下げた。

「―――という訳ですから、カルバードに帰ったらちゃんと我々が出した交換条件を守れるように動いてくださいね?でなければ、メンフィル帝国は”西ゼムリア大陸の平和の為に”カルバードと剣を交える事になるのですから。」

「クッ……!……………わかりました……………」

(あ、ありえん……!まさかこんなやり方でクロスベル問題が解決に向かっているとは………!)

(……まさかこんなあまりにも強引すぎる方法でクロスベル問題を解決しようとするなんて……………でも………これで本当によかったのかしら……?)

そして凶悪な笑みを浮かべて見つめられたロックスミス大統領は悔しそうな表情でレン皇女を睨んだ後気を取り直して静かな表情で頷き、その様子を見ていたユリア准佐は信じられない表情をし、クローディア姫は複雑そうな表情をしていた。



「う、嘘……!?これって下手をしたらクロスベルどころか、カルバードやエレボニアの歴史も大きく動くんじゃないの!?」

その様子を見ていたグレイスは驚きの表情で呟き

「すぐに号外を手配しないと!」

「ああ!こんなスキャンダル、絶対に見逃せない!」

エレボニアやカルバードから派遣されているマスコミ達はそれぞれ驚きの表情で言った。

「おっと、そうだった。マスコミの方々。後で貴女方の名前や家族構成、所属している報道社、そして報道社の関係者全員並びにその家族構成を教えてもらってもよいか?」

するとその時リフィア皇女はグレイス達を見つめて

「え………な、何故でしょうか、リフィア殿下。」

見つめられたグレイスは他のマスコミ達と共に不思議そうな表情をした後尋ね

「なに……ありえんとは思うが二大国の政府が報道規制をする可能性や貴女達を秘密裏に消すか、家族や関係者達を人質にとって報道させないようにして今回の件を誤魔化す可能性も考えられるしな。この処置は今回の件の真実をそれぞれの国に知らせる立場である貴女達や報道各社の関係者達の身を守る為でもある。」

「―――無論、私もエレボニア皇族の一人としてそのような暴挙、許す訳にはいかぬ。当然、私も貴女達の身の安全は保証するつもりなので安心してくれ。―――クローディア姫、アルバート大公。そちらもお願いして構いませんか?」

「………はい。民を守るのは王族として当然の務めですので。」

「当然、レミフェリアもマスコミ達の身の安全は保証させていただく。」

尋ねられたオズボーン宰相やロックスミス大統領を睨んだ後グレイス達を見つめて言い、リフィア皇女に続くように言ったオリヴァルト皇子に言われたクローディア姫やアルバート大公もそれぞれ静かな表情で頷いた。

「!!た、確かに言われてみれば……!」

「さ、さすが”聖魔皇女”と名高いリフィア殿下……!私達の身まで案じてくれるなんて……!」

「それにオリヴァルト殿下達もさすがよね……!」

リフィア皇女の話を聞いたマスコミ達は顔を見合わせた後驚きの表情になったり、尊敬の眼差しでリフィア皇女やオリヴァルト皇子達を見つめ

「「………………………」」

オズボーン宰相とロックスミス大統領は苦々しい表情をし

(先手を打たれてしまったわね……………)

(……完全に”詰み”だな、こりゃ……ここであんな事を宣言されちまったら、いくら情報局でも動きようがないぞ………………)

キリカ補佐官は厳しい表情をし、レクター書記官は疲れた表情で溜息を吐いた。



「―――ありがとう、ヴァイスハイト局長、ギュランドロス司令。貴方達の働きのおかげで、私は改めて決意したよ。――――皆さん、襲撃によって邪魔された私の発言を再開させていただきたい。」

するとその時静かな笑みを浮かべたディーター市長がヴァイス達を見つめて言った後立ち上がった。

「……ディ、ディーター君………?」

「……?」

「ほう……?」

ディーター市長の言葉を聞いたマクダエル議長は戸惑い、ヴァイスは眉を顰め、ギュランドロスは興味深そうな表情でディーター市長を見つめ

「「…………………」」

「して、どのような提議を?」

ロックスミス大統領とオズボーン宰相は警戒した表情でディーター市長を見つめ、アルバート大公は尋ねた。

「いえ――――提議ではなく決意表明というべきでしょうか。迷いもあったのですが……この事件やヴァイスハイト局長達の働きで決意は固まりました。今、この場をお借りして一つの提唱をさせていただきます。」

「……!?」

「なに……!?」

そしてディーター市長の呟いた言葉を聞いたオズボーン宰相とロックスミス大統領は厳しい表情をした。

「我々はもはや、他国の思惑に振り回されるわけにはいきません。周辺地域の、いや大陸全土の恒久的な平和と発展のためにも―――私はここに、市民及び大陸諸国に対し、『クロスベルの国家独立』を提唱します!」

するとディーター市長は決意の表情で叫んだ!



こうして波乱に満ちた『西ゼムリア通商会議』は終わった。なお、”赤い星座”と”黒月”は警察、警備隊による突然の奇襲、そして主力が既にヴァイス達やルファディエル達の手によって無力化されていた為、満足な装備を整える事や迎撃を出来る事はできず、それぞれダドリーやセルゲイ、ルファディエル、そしてルイーネ達の指揮による警察、警備隊の連合部隊によって瞬く間に制圧され、全員拘束された後拘置所に連れて行かれ、その後自治州法により全員自治州永久追放という形で二度とクロスベルに足を踏み入れる事ができない立場となった。そして赤い星座は国際犯罪組織として世界中から指名手配される身となって各国の軍から追われる立場となり、黒月はロックスミス大統領にリフィア皇女とレン皇女の暗殺未遂の罪をなすりつけられ、完全にカルバード政府と決別する事になり、カルバード国内に潜伏し、政府と対立する立場となった。そしてオズボーン宰相とロックスミス大統領は今回の暗殺未遂の事件を企てた主犯容疑者である事や、クロスベル政府に黙ってテロリスト達への逮捕や処刑委任状を発行した事を報道され、特にオズボーン宰相はオリヴァルト皇子の暗殺未遂疑惑やエレボニアの遊撃士協会襲撃事件にも関わっている容疑、”百日戦役”の勃発を狙った真犯人である事まで疑われ、両者とも市民からの支持は最低まで下がってしまい、ロックスミス大統領は次回の大統領選挙では落選する可能性が非常に高いと報じられるほど支持率が低くなり、さらに責任をとって辞職するべきだという声も多くなった。そして”百日戦役”やエレボニアの遊撃士協会襲撃事件、オリヴァルト皇子暗殺疑惑に加えリベールの”異変”の黒幕にいた容疑者として市民達や世間から疑われている事になってしまったオズボーン宰相も、オズボーン宰相に信頼を置いていたエレボニア皇帝も世間体を考えて庇う事はできず政治的に追い詰められる立場となり、さらにオズボーン宰相の失態により革命派も追い詰められる立場となって次々と離反者が現れ始め、オズボーン宰相の盟友である帝都の知事、レーグニッツ帝都知事はオズボーン宰相を庇いだてしたが市民達は耳を貸さず、逆にオズボーン宰相共々追い詰められる立場となり、さらに状況を見て好機と見たエレボニアのテロリストである”帝国解放戦線”が追撃に出始め、オズボーン宰相の失態によってオズボーン宰相共々追い詰められる立場となり、オズボーン宰相の抹殺を狙っているカイエン公や革命派と対峙している貴族派の謀略によって孤立無援状態になってしまった”鉄血の子供達(アイアンブリード)”と呼ばれる者達の暗殺を次々と成功させ、オズボーン宰相の味方を次々と減らし、その結果”鉄血の子供達(アイアンブリード)”と呼ばれる者はレクター書記官と鉄道憲兵隊に所属する女性大尉のみしか生き残れず、オズボーン宰相の勢力は風前の灯となった。そしてエレボニアの誇りを守ろうとしたオリヴァルト皇子は市民からの支持を一気に高め、政治的な立場としても有利な立場へとなると同時に自らの勢力を増やし、オズボーン宰相を政治的に抹殺する為に精力的に動き続けていた。そして二大国の思惑を事前に察知し、見事クロスベルを守りきったヴァイスハイト、ギュランドロス、ルファディエルは市民達から”クロスベルの真の守護者”であるアリオスをも越える”クロスベルの三大英雄”と称えられ始め、さらに彼らに協力を要請したメンフィル帝国も市民達から好意的な目線で見られる事となり、今回のメンフィルと協力したクロスベルの大反撃によってエレボニア、カルバードのクロスベルへの干渉は非常に弱くなり、さらに両国の出身である外国人が起こした犯罪の罰則が厳しくなった。なお、今回の件にてメンフィル帝国はカルバードよりヴォルフ砦に隣接する領地を譲り受ける事となり、さらに国力を増やした。後のゼムリアの歴史では今回の大波乱を『英雄達の大粛清』という呼び名で伝えられる事になる…………… 
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