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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~そして笑顔で~


戦いから二日後。
蒔風はいまだにこの世界に残っていた。


「はぁ~~~~~~あ・・・・・・・」

リンディ家で大きなため息をつく蒔風。
それもそうだ。
先日の戦いは管理局の戦艦がモニターしていた。
つまり多くの局員が翼人の存在を目の当たりにしたのだ。


「これめんどーなことになるーーーー」

リビングでぐったりとしている蒔風にエイミィがジュースをついで置いてくれた。

「何やってんだか・・・いいじゃない、これで超有名人じゃん!」

「問題は俺が翼人ってことなのーーーー、ってか、もう慣れたんだな」

「まあねー。大体同じくらいっしょ?歳。だからかなー」

今この部屋にいるのはエイミィと蒔風だけだ。

なのはとフェイトは学校。
クロノとリンディとユーノは事件の報告と後始末。
アルフは八神家の皆と共にはやての家にいる。
なんでもザフィーラに小さな子犬形態の変身の方法を教えるんだとか。


「ほら!しっかりして!!クロノ君がなんとかするって言ってくれたんだからさ!」

「できんのかなーーー?俺も行った方がいいんじゃないのかなーーーー?」

「もし君の顔知ってる人とすれ違ったらばれるでしょ?」

「そうなんだよなー・・・・・だからクロノに任せるしかないんだよなーーーーー」


そういってグダグダとしながら一日を過ごす蒔風。
大きくなってしまったので学校には行けないし、「奴」も倒したのでやることがないのだ。
ではなぜ次の世界に行かないのか。

答えは簡単。
ゲートが開かないのだ。

まるでまだ蒔風にはやることがあると言っているのように。




「まったく・・・何をやってるんだ?」

と、そこにクロノが帰ってくる。

「クロちゃーーーん。どーだったーーーー?」

「どうって・・・・何とかなったよ」

「まじでか!?」

ガバッと蒔風が起き上がり、クロノに向く。

「ああ。記録映像をなんとか問題ないぐらいに修正してね。でもさすがに翼人の事は消せなかった。だから」

スッ、と書類のようなものを蒔風に手渡すクロノ。
そこにはこう書いてあった。


・・・・・・・のような仔細である。
なお、この「闇の書事件」の協力者に。

現地の魔導師「高町なのは」
嘱託魔導師「フェイト・テスタロッサ」
闇の書改め、夜天の書の保持者「八神はやて」
及びその従者「ヴォルケンリッター」

そして異世界の者「銀白の翼人」の名を記したい。
翼人の素性及び名前、外見はここに記さず。
彼の者は異次元へと去っていった。

※[翼人]に関しては別紙のレポート(著/ユーノ・スクライア)を参照されたし。




「おぉ・・・・・」

「翼人は現れたけど、それが君である、ということは消しておいたよ」

「あぁりがとぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」

蒔風がクロノの腕をブンブン振って感謝する。
そして最後にスピンさせて、ソファに座らせた。

「あれ?艦長とユーノ君は?」

「め、目が回る・・・・う?ああ、艦長はまだあっちにいるよ。さすがに翼人の事を問いただされてね」

「大丈夫なのかなぁ」

「艦長なら大丈夫な気がする・・・・」

「母さん・・・・・・だからね・・・・・」

「納得できるのが嫌だな」



「ただいまーーーーー・・・・・・」

「お?帰ってきたな。なのはも一緒・・・・か・・・・」

玄関が開き、なのはとフェイトの声がして、蒔風がそれを出迎え、そして声が小さくなっていく。
なぜならそこにはなのは、フェイトと一緒にアリサとすずかもいたからだ。

「連れてきちゃったんかい」

「あ、あはは」

「どうしてもしっかり話しが聞きたいって・・・・」

「ま、まあ中に入れうん、そうだな」

四人をそう言って中に招き入れる。


「さて、説明してもらうわよ。あの夜のこと、あの不思議な力の事も!!」

アリサが催促し、クロノとエイミィが立ちあってすべての事情を説明した。


魔法との出会い、ジュエルシード、フェイトとの戦い、次元世界の事、はやての事・・・・・・・・


それを聞いて、二人は唖然とした。
しかし、クロノの説明やあの夜目の当たりにしたことから、足りないピースが埋まっていき、二人は納得した。

「にしても・・・・とんでもない話があったもんね・・・・・」

「うん・・・・びっくりしちゃった」

「あれ?でも蒔風が来たのもそれくらいじゃなかった?」

「呼んだーーー?」

そこに蒔風がリビングにやってくる。
手にはお菓子を広げた大きなお皿があり、反対の手には人数分のジュースがお盆に乗っていた。


「・・・・・・・・誰?このお兄さん」

「舜君の・・・・お兄さんかな?名前に反応したし、顔そっくりだし」

「あ、あはは・・・・」

「えっとね、アリサ、すずか、驚かないでほしいんだけど・・・・」

「その人が蒔風舜君だよ?」


「「え?」」



「どーも、確かにオレは蒔風舜!!真の姿だよん。ヨロ~~~」




「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!?????」」




二人の叫びが響く。
クロノが防音結界を張り、エイミィが制御、なのはとフェイトはそそくさと耳を塞ぎ、蒔風は耳に手をポンポンポンと当てながら「あーーーーー」と言って遊んでいた。



「ちょ、ちょっと待ってよ!!なんでそんなことになってんのよ!?」

「それは話すと少し長くなるんだけどな~~~~」

「っていうか証拠を見せなさい!!証拠を!!!」

「問題ない。オレとみんなの間なら、きっと分かり合えるっさ!!!!」

「く、くああああああ!!!!このノリまさしくあいつだわ~~~~~~!!!!」

「あ、アリサちゃん落ち着いて・・・・」

「すずか!!あんたなんでそんなに冷静なのよ!!!」

「え?あ、アリサちゃんがそんなに驚くから、驚きそびれちゃったよ・・・・」

「グッジョブだよ!!アリサ!!!」

「フェイトも何言ってんのよ!?」

「まあまあ・・・・」

「なのはもなんでそんなに冷静なの?あれだったのがこうなってんのよ!?こんなに大きなお兄さんだったの!?うわぁ・・・・なんか今さらになって恥ずかしい・・・・あれ?一人で騒いでる状態じゃない?あたし」

「アホだなぁ・・・・」

「アホ言うな!!!」




それから十分してアリサが落ち着き、説明を受けた上で蒔風に訊いた。

「それで?あんたまたいなくなるの?」

「そそ。さすがに次はないだろーしねーーー。これでこの世界とは最後かな?」

「ふーーーん」

「なのはちゃんとフェイトちゃんは驚かなかったの?」

「驚いたけどなんか納得というか・・・・」

「無邪気の中に大人な感じがあったというか・・・・」

「それって「子どものままの大人」じゃないの?」

「「それだ!!」」

「あなた達そろってひどくないですか!?」



そうしてギャイノギャイノと騒ぎまくってから、アリサとすずかは帰っていった。
そして夜、リンディとユーノも帰宅し、それからなのはの家に向かった。

理由は、魔法の事などを高町家の皆に伝えるためだ。
なのはは自分の想いを言葉にし、管理局で働きたいと決心した。

フェイトも、管理局で働くことを決めたようだ。
さらにリンディ家への養子になることも、決定した。

この話は当初からフェイトに持ちかけられていたらしく、今までフェイトは悩んでいたが、新しい自分を始めるきっかけとして決心したのだそうだ。



その日の晩御飯は八神家で皆でとった。



「皆いらっしゃい!!!こないだはありがとーな!!さ、じゃんじゃん食べてってな!!」

「このたびは我々がご迷惑をかけてしまったうえに主の罪を軽減してくださって、誠にありがとうございました」

「さ!!パーティーの始まりや!!!」

はやての家の庭に出て、満天の星空の下でバーベキューを楽しむ一向。


「うまい!!!!すごいな、こんなにもうまいのか!!!」

「バカヤロー舜!!トーゼンだろ!!!はやての料理はギカウマなんだからな!!!」

「うまいうまい!!あ、ピーマン嫌い」

「てめえあたしの皿にピーマン乗せんなよ!!!」

「おっきくなれないぞ、ヴィータ!!!」

「うっせぇ!!!あたしは大人だ!!!お前より長生きなんだぞ!!!」




「おいしいねーー」

「うん、はやての料理ってこんなにおいしいんだね!」

「料理は任しといてな!!これでもあの子たちのご飯はうちが作ってたんやからな!!」

「もうそんなに動いても大丈夫なんだ」

「うん!!足もこのままいけば動くようになるって、先生が!!」

「よかったね、はやて」

「おおきにや」

「あれ?そういえばシグナムさんとかヴィータちゃんは料理しないの?」

「あの二人もそれなりにできるにはできるんやけど、それだと拗ねるのが一人いてなぁ」

「「ああ・・・・・・」」

そういってなのはとフェイトがシャマルの方を向き、当の本人がその視線に気付く。

「え?何の話ですか?」

「な、なんでもないんよーーー」

はやてが明らかに視線を逸らすので、シャマルは大体の事を悟ってしまった。

「い、いつか絶対お料理上手になってやるんだからーーーーー!!!!!」

「「シャ、シャマルさーーーーーーーん!?」」

「シャマルゥーーーーーー!!!でもシャマルの準備手伝いは助かってるんやでーーーーーーーーー!!!!!」

はやてがシャマルを追いかけていく。
車椅子でどうしてあのスピードが出るんだろう・・・・・

「テスタロッサ、楽しんでくれているか?」

「あ、シグナム」

「今度一回手合わせ願いたいのだが・・・・」

「え?・・・いいですよ。受けて立ちます!!」

「いい返事だ。それでこそ「たっ、大変だーーー!!!」どうした!!!」

蒔風の叫びにシグナムが瞬時に騎士甲冑に身を包んでそちらに向かった。

「ヴィータが・・・・ヴィータが!!」

「何があった!?」

「アイス好きだからって話になって、俺の持ってたかき氷喰わせたらこうなって・・・・」

そこにはかき氷を幸せいっぱいの表情で口に運び、頬張ったまま固まってしまっているヴィータがいた。
ラベルには「極寒!絶対零度かき氷」と書いてある。


「ヴィータ!?おい、なんでそんな幸せそうな顔して凍ってるんだ!?」

「シ、シグナム!!ちょうどいい!!お前のレバ剣で温めてやれ!!」

「レヴァンティンは暖房器具じゃない!!」

「そんなこと言ってられないだろ!?(パシッ)」

「あぁッ!レヴぁンティーーーーン!!!」

ジュアアアアアアアア・・・・・・

「・・・・・・ハッ!!これうめーーーー!!でもなんか変だな」

「ヴィータそれは」

「あーん(パクッ、カキン!)」

「またかよ!!(レヴァンティンを返せええええええ!!!!)」

後ろの方からシグナムの悲痛な叫びが聞こえるが、シャマルに抑えられてしまっている。
帰ってきたんだなシャマル。

「・・・・ハッ!!なんだこれ!!うまいけど凍っちまうぞ!?」

「二回目にして気付いたか」

「でも食いたい」

「これで食えばちょうどいいんじゃね?(レヴァンティンを差し出す)」

「お?(サクッ、パクッ)ちょうどいいなこれ!!(よくわかってないヴィータ)」

「レヴァンティンーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

その後も器用にレヴァンティンでアイスを食べていくヴィータに、シグナムは崩れ落ちた。


「ああ・・・・私の剣がぁ・・・・・・OTL」





蒔風が散々はしゃいだ後に一休みと、コーラを大きなペットボトルと小さなコップを持って屋根の上でのんびりと飲んでいる。
と、そこに声がかけられた。

「楽しんでますか?」

「ん?リィンフォースか」

その隣にリィンフォースがやってきて、隣に座った。

「はい。貴方にも感謝しなければなりません」

「俺は「奴」をぶちのめしただけ出し、俺の気に食わないことがあったから手を出しただけだ。100%お前らのためじゃねーよ。俺自身のためだ」

「それでも救われました。「闇の書」は「夜天の書」へと戻り、主はやての力で呪いの機能も断たれました」

「それははやての力でしょうに」

「しかし、意識の眠っていた主を少しでも目覚めさせたのはあなた達の言葉でした。それがなければ、主はここに帰ってくることはできなかったでしょう」

「だったらなおさら俺じゃなくてなのは達に言ってね。オレはちょいと手を出しただけだよ」

「翼人は各世界に必要以上に干渉しないのでは?」

「ま、そうなんだけどな。あれ?そういえば翼人知ってる?」

「ええ・・・・・・・わが身の、「夜天の書」の製造に一番貢献した人物が、翼人でしたから」

「古代ベルカの翼人か・・・・色は?」

「彼は「赤色の翼人」でした」

「どおりで俺をすんなり取り込めたわけだな」

「彼には他にも「青色」や「黄色」と言った友人もいたようですが」

「あのとき色彩が増えたってのはそういうことか」

「ええ・・・・あの時代は翼人の色は単色だけだったと記憶しています」

「他には知らない?」

「はい。直接知っているのは「赤色の翼人」だけでしたね。彼ももう過去の人物ですが」

そういってリィンにもコーラを差し出す蒔風。
それを少しだけ飲み、一緒に空を見上げる。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「あーーーーー!!そんなとこにいたん?こっち来てーな!!みんなで写真撮ろーーー!!」


はやてが二人を見つけ、庭から上を向いて声をかけてきた。
それに応じて二人が降りようと立ち上がったところで、リィンフォースが蒔風に囁きかけた。

(今夜・・・・・・・街の見える丘の上で、お話したいことがあります)

「・・・・・・・・」

(待ってます)


そういってはやての元へと降りていくリィンフォース。
その背中を見ながら、蒔風が一瞬目を閉じ、その後に続いた。








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深夜
街も人も、そしてもちろんなのはやフェイト、はやてたちも眠りについている時間。

そんな時間に、二人の人影が、街を見渡せる丘の上にやってきていた。


「来たぜ?ふっふ~~ん。こんな時間にこんなとこに呼び出して~~~まさか恋の告白か?まいったねこりゃ!!」

蒔風が笑いながら丘を登ってきた。
呼びだしたリィンフォースは先に来ていたので、その蒔風を待ち構える形になる。

「蒔風舜・・・・・」

「照れるなあ。俺こんなシチュエーション初めてだから・・・・」

「わかって・・・・いるのでしょう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・やはり・・・・だめなのか?」

蒔風が陽気な表情をやめ、落ち込んだ声を出す。

「ええ・・・・・やはり、呪いはそう簡単には消えてはくれないようですね」


呪い
闇の書の闇

それはいまだにしっかりとリィンフォースの中に存在し続けている。
あの時に倒した暴走プログラムは、本体ではない。

ようはあれはわき出した腫瘍だ。
いくら腫瘍を切りだして破壊しても、それを作り出す大本がなくならなければ、また「あれ」は出てきてしまう。
今この瞬間にも、新たな防衛プログラムが彼女の中で構築されているのだそうだ。

そしてそれは再びはやてを蝕むだろう。
そしてプログラムは常に成長を繰り返す。
蒐集を繰り返し、無限に強くなっていくプログラムは、何度かは大丈夫でもいずれ誰にも止められなくなる。

それを看過する管理局ではない。
おそらくはやては夜天の書と共に隔離され、研究所か監獄に封印されることになるかもしれない。


「それだけは・・・・絶対に防がなければなりません」

「お前はどうなる」

「・・・・・騎士たちは主が私と切り離して新たに再構築したので、存在し続けます」

「お前は!どうなるんだ・・・・ッ!」

「こうなるしか・・・・方法はないのですよ」

「ッ・・・・・・・・・」

「貴方にもわかっていたでしょう?でも、貴方には言えなかった。私が消えねばならない、と」

その言葉に、蒔風が目を閉じて天を仰ぐ。
そして首を戻して言う。

「その「闇」を消そうとしても、お前の核は傷つく。いや、お前の核ごと消すしかない。それほどまでに一体化してしまっている」

「その通り。ですから、貴方にお願いしたいのです」

「お前を・・・・消してくれと?」

「私には自己破壊の術がありません。高町なのは、フェイト・テスタロッサに頼もうかとも思いましたが、あの子たちには重すぎる・・・・」

「騎士たちは・・・・そのこと知ってんのか?」

「はい。ですから今は、主や他の方々が気付かぬよう、見ていてくれているはずです」

「・・・・・・・それを・・・・よしとしたのか?」

「いいえ。彼らは反対しました。してくれました。ですが・・・・」

「これ以外の方法は・・・・ない、か・・・・・」

「翼人であるあなたならば、私を消すことができるでしょう。そして、貴方の翼なら、私の「願い」を残してくれる」

「・・・・・・・・はっ・・・・結局はこうかよ・・・・・こうなんのかよ!?このためにオレを残したのか!?畜生・・・・・っちくしょ・・・」




------------------------------------------------------------



「う・・・・うぅん・・・・・・」

「・・・・・シグナム、はやてちゃんは?」

「眠っておられる。ほかは?」

「なのはちゃんもフェイトちゃんも眠ってるわ」

「そうか」

はやて宅
あのパーティーの後、なのはとフェイトはここに泊まっていくことにした。

シグナムとシャマルは他の皆が起きないように見張りをしている。
それは永く共にいた、夜天の書の彼女のために。


「でも・・・・ホントに消えちまうのかよ・・・・そんなのあんまりじゃんかよぉ・・・・・」

ヴィータが涙ぐむ。
大きなぬいぐるみを抱きかかえ、それに顔をうずませる。

「ヴィータ・・・・」

「おそらく、こうなるしかないのだろう・・・・・・・悲しいしいことだが・・・・・」

「蒔風は知っているのだろうな。だが、なにも言わずに出ていったということは、彼にもおそらく・・・・・」

「舜君は確かに強いわ。恐ろしいほどに。でも、決して万能じゃない・・・・・なんだか彼が「世界最強」って言うたびに、無理してるように見えるの・・・・」

「どういうことだシャマル。あいつは確かに強いぞ」

「うーーーん・・・・そうなんだけど・・・・」

「そんなことよりも!本当にどうしようもないのかよ!」

「ヴィータ、皆が起きてしまう」

「でも・・・せっかく皆で幸せになれんのに、なんであいつだけ消えなきゃなんねえんだよぉ・・・」

「言うな。彼女は我らのためにその身を犠牲にしようとしている。変わることのできない自分の身が悔しくてたまらない・・・・それは皆同じだ」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


そのまま皆黙りこくってしまう。


「う・・・・・い、いやや・・・・リィン・・・フォース・・・・・・あれ?リィンフォース?」

その時、はやてがうなされてうっすらと目を覚ます。
そこにシグナムが慌てて行き、寝かしつける。

「大丈夫ですよ、主。もう誰も・・・・・貴女のそばを離れません・・・・・これ以上は、誰一人として」

「う・・・・・・うん・・・・・」

シグナムの言葉には決意が込められていた。
そしてはやては再びまどろみの中へ。

「・・・・・・ふう・・・・・」

「・・・・・・・やっぱり・・・・・感じん・・・・・・」

「ッ!あ、主?」

しかし、はやてが違和感に気付いた。
そしていったん気付けば、それは瞬時に確信に変わった。


「シグナム・・・・・リィンはどこ?」

「あ、主・・・・・」

「答えて!!リィンはどこや!!・・・・・まさか・・・・・」

「お答えできません」

「答えて!!主の命令や!!!」

「お答えできませんッ!!!!」

「烈火の将シグナム!!!答えて!!リィンは・・・・リィンフォースはどこに言ったんや!?」

「答えるわけには、いかないのです!!!!!」

「だったらええ!自分で探す!!!!」

「主はやて!!」
「はやて!!」
「はやてちゃん!!!」

「ううん・・・どうしたの?」

「なにかあった?」

なのはにフェイトまで目を覚ます。
そして家からはやてが飛び出した。

小さな夜天の主は、夜の街を車椅子で駆けて行く。
自分の家族を探して。



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蒔風が慟哭する。
届く位置にいつにもかかわらず、その命を救えない。
またしても蒔風は、この世界で敗北する。

地面に四つん這いになる蒔風にリィンフォースが肩に手を当てる。

「こう言ってはなんですが・・・・私はプログラムです。厳密にいえば人間ではありませんだから」

「だからって・・・・・・納得できるかよ・・・・・」

ガシッ!!!

蒔風がリィンフォースの襟を両手で掴み、顔を下に向けて叫んだ。


「祝福の風リィンフォース。お前は確かに皆の幸せにつながったさ。でも・・・でもよ・・・・・」

蒔風が一層強く握りしめ、吐き捨てるように言った。

「あんたの幸せは・・・・その風は誰が運んできてくれんだよ!!!これじゃ・・・・あまりにもひどいだろうが・・・・・なんかないのかよ・・・・お前だからわかる抜け穴とかが!!」

「残念ですが・・・・・」

「祝福の風の末路がこれじゃ・・・・一体何が救われるってんだよ・・・・・」

「大丈夫ですよ」

リィンフォースが蒔風に声をかける。
握った拳を解き、蒔風が顔を上げる。

そしてリィンフォースの顔を見た。
その顔には一切の後悔や未練はなかった。

むしろ、それは幸福なものだった。
そして蒔風は知った。

「お前の幸せは・・・・・」

「ええ・・・我が主が、しっかりとこの胸に与えてくれました。私はもう十分に幸せです。今までの悲痛な記憶がまるでなかったかのように、私の記憶と心は幸せに満ちています」


「これ以上何を望みましょう。主が生き、その周りには愛しの騎士たちとかけがえのない友、そして最高の理解者がいるのです」


「一体何を思い残すことがありましょう・・・・後はただ・・・・主が私のいない現実を・・・・どうか強く受け止めて、先の未来へと進んでくれることを願うばかりです」

「リィンフォース・・・・・・」

「そしてどうかあなたにも祝福を。貴方の先にも、祝福があらんことを」

リィンフォースが両手を組んで祈る。
その願いは確かに蒔風の翼に届いた。


「お願い・・・・・します」

「・・・・・・ッ・・・・・ああ・・・・・わかった・・・・・・」



魔法陣が展開される。
その中心に蒔風が立ち、手をかざす。
リィンフォースはしゃがみ、頭を下げた。
その姿はまるで、救いを求めて祈る信者と、それを赦す神父のようであった。


雪が降り始める。


「始めよう」

蒔風の背に翼が開翼され、リィンフォースの身体が輝く。
そこに、大きな声が響き渡った。


「リィンフォースーーーーーー!!!!!!」

「主・・・・はやて・・・・・」

「・・・・・・・・・」


蒔風の背後、リィンフォースには蒔風越しに正面になる。

そこにはやてがやってきた。
後からはヴォルケンリッターとなのは、フェイトもいる。

「な・・・なにやってん?さ、みんなで家に帰ってあったかいスープでも飲もう?な?」

はやてがおそるおそる切り出す。
たぶん、今この状況が何をしているのかが分かっているのだろう。
だが、それは信じたくなかった。

「な?舜君も、なにやってるんや?そんな翼はやして・・・もう、なんの冗談や?」

「冗談ではない」

蒔風が振り返らずに低い声で言った。
その言葉にはやての身体がびくりと震える。

「じょ、冗談やないって・・・どういうことや?」

「簡単なこと。リィンフォースの中ではいまだに暴走プログラムが構築されている。このままでは新たなプログラムが発動し、再びお前を飲み込む。だから・・・・・・・そうなる前に消す」

「け・・・・・消すって・・・・・そ、それはリィンが?」

「・・・・は「いいや、こいつはあくまで嫌だと言ったよ。お前といたいってな。だが、これ以上はやてを苦しめてもいいのかと言って説き伏せた」!?」

(舜!一体どういう・・・・)

(黙ってろ)


「そ、そんなことダメや!!絶対にダメや!!!何しとるん!?そんなことゆるさへん!!!絶対にだめや!!!!」

「それは関係ない。もう決めたんだ」

「決めたって・・・・・さ、さてはお前、「奴」やな!?舜君に化けとるんや!!!このにせもん!!!リィンを離せ!!そこからどきぃ!!!!」

はやてが車椅子を必死にこぎ、蒔風に向かう。
しかし、それが蒔風に届くわけもない。

車椅子の目の前に青龍を投げ突き立て、それを止める。
車椅子が転倒し、はやての身体が倒れるが、雪に埋まる前に青龍が人型に現れて受け止めた。

「これが証明だ。十五天帝は俺でしか使えない。それに「奴」なら、リィンよりもこの場でお前やなのは、フェイトの首を刈ってるよ」

「そんな・・・・・・ゆるさへん・・・・・絶対にゆるさへん・・・・リィンはやっと解放されたんや!!!これ以上不幸にはさせへん!!!リィン・・・リィンーーーーー!!!!」


蒔風は気にとめないように再びリィンフォースに向き合う。
そこで入れ替わるようにリィンフォースがはやての元に向かった。

「リ、リィンフォース!さ、逃げよ?皆で家に「すみません主・・・」・・・・え?」

「わが身はいずれ、あなたの未来を壊してしまうのです。それは私にとっても不本意であります」

「いやや・・・そんなこと言わんといて・・・・」

「貴女には未来があります。これから先に、無限の可能性が。貴女には幸せになってもらいたい」

「リィンがいなきゃいやや!!そんな未来は・・・・・」

「大丈夫」

「あ・・・・・」

リィンフォースがはやてを抱きしめ、優しく言った。

「貴女に出会い、呪縛から解放していただき、そして新たな名前、新たな家族、そして最高の祝福をいただきました」

「う・・・・ぐ・・・・」

「祝福の風、リィンフォースは・・・・・胸を張ってこう言えます。私は今、世界で、歴史上で、最も幸福な融合機であると」

「リィン・・・・・ひっ・・・・うえ・・・・・」

「だから泣かないで・・・・・私は・・・・貴女にあえて・・・・・幸せになれましたよ」

「う・・・・うあ・・・・い、いかないで・・・・リィン・・・リィン・・・・・・」

「貴女の付けてくれた誇り高いこの優しい呼び名は、私の後続機に与えてあげてください。これからあなたと共に存在する、新たなる祝福の風に・・・・・」

「あ・・・リィン・・・・あかん・・・・行かないで・・・・もう離れないどいて・・・・」


リィンフォースは伝える言葉をすべて伝え、蒔風の目の前に戻ってきた。

「お願いします」

「では・・・・・

 銀白の翼人により、あなたの願いを聞きとどけた
 その想いは永久に
 幸せの中に消えて逝け」

そしてリィンフォースの身体が光り出す。

そこで、蒔風が彼女だけに聞こえる声で言った。


「あなたとの出会いに感謝を 貴女のこれからの旅に、祝福を

 そして別れには最高の笑顔を・・・・・ッ」


そして蒔風は思いっきり笑って見せた。
声は出せなかった。
出せば笑いではないモノが出てしまうから。







はやての泣き声がその場に響く。

「う・・・・うううう・・・・・・リィン・・・・リィンフォースーーーーーーーーーー!!!!!」

そうして、祝福の風、リィンフォースは消えた。
一筋の光と共に。

その光の元に十字架型のデバイスがゆっくりと落ちてきて、蒔風の手に収まる。
それこそがリィンフォースが残した結晶。
さらに一枚の銀白の羽根。

それが十字架に触れると、羽根はとけていってしまった。
十字架に一体化するかのように。

その十字架を蒔風は車椅子に座らされたはやてに渡す。
それをパシッ、と掴み両手で握り込むはやて。

そしてその場からなにも言わずに帰って行ってしまった。
その後を騎士たちが追う。

途中、蒔風を一回だけ振り返ったが、その表情は雪でよく見えなかった。



丘の上には蒔風、なのは、フェイトの三人が残される。

「舜君・・・・・・」

「なんだなのは」

「あれって・・・・・嘘でしょ?」

「「あれ」の定義によっては返答が変わるね」

「舜が・・・・無理やり説き伏せたってところ」

「・・・・・・・・何のことだ。あれは」

「嘘だよ、あれは」

なのはが断言する。
フェイトもそれに頷く。

「・・・・根拠は?」

「舜君は・・・誰かの意志を踏みつぶすなんてことしないもん」

「するにしても、最大限救いがあるようにしてくれる。それをわたしは知ってる」

「・・・・・・・・・・」

「自分から消えるリィンさんに罪悪感を、そして残されたはやてちゃんが絶望に染まりきらないように・・・・・」

「違うな」

「え?」

「で、でも」

「違えよ。オレはそんなたいした人間じゃない」

「舜君・・・・」



[Gate Open---Mahou Syoujo lyrical Nanoha A's]


するとその場にゲートが開く。
蒔風の役目は終わったと言わんばかりに。

「・・・・・・」

無言で蒔風はゲートに向かう。

「舜君!!!」「待って!!!」

「・・・・・お前ら!さっきの変な話、はやてにするなよ?」

「でも!!」

「でもはなしだよ。なのは、お前はもちっと人を頼れ。なまじいろいろできるから頼りにくいかもしれないけどな」

「そんな話を聞きたいんじゃないよ!!!」

「じゃあな・・・・・」

バシュウ!!

「「舜(君)!!!!!」」

そうして、蒔風は淋しくこの世界を去った。
一つの命をその翼に背負って。


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翌朝
八神はやては涙と共に起床した。
その手に握る十字架が昨日の出来事が真実であることを物語る。

それから彼女は蒔風を恨んだ。
なぜリィンを消したのか。
蒔風の言うことが本当ならば、リィンはもっと生きたかったはずなのに。

それを怒鳴り散らしてやろうと意気込んで蒔風のいたリンディ家の隣の部屋に向かったはやて。
シャマル、シグナム、ヴィータを引き連れてだ。

しかし、その部屋には何もなかった。
それどころか引き払った後だと言う。

そしてどうしようかと冷静になったはやて。
いろいろ考えているうちに、別の可能性が出てくる。

もしこれが本当なら、蒔風の急な変貌も納得できる。
いや、思えばなぜ気付かなかったのか。
そしてわかったのだ。

八神はやては知った。
自分の考えをその場でシグナム達に話し、それが事実かどうかを問い詰めた。
騎士たちはなかなか口を開かなかったが、最後には話した。
その後なのはとフェイトにも問い、答えをもらった。

そして少女は決心した。
「謝ろう」
もしあの青年にもう一度会うことがあったら、絶対に謝るのだと。
なのは達も彼にはまだ言いたいことがたくさんあるのだと言った。

そして彼のためにも、その遺志を継ぎ。

必ず彼女の後を継ぐ子を誕生させよう。
絶対に落ちない魔導師になろう。
不幸な子を救ってあげよう。

魔法少女たちの未来には、まだまだ光が満ちていた。




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次の世界
挟間にて立ち直った蒔風が降り立った世界。

そこは




「"輝志"・・・・・か」


そこは奇跡の世界。
夢の世界にて成長し、悲劇の運命を変えた、少年少女のいる世界。


「リトルバスターズ・・・・か」








to be continued
 
 

 
後書き


【魔法少女リリカルなのは A's】

構成:”ライクル”35%
   ”フォルス”35%
   ”LOND”30%

最主要人物:高町なのは

-WORLD LINK- ~WEPON~:全員の体力・魔力回復&性能の一時的な超アップ

-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:皆の願いを力を翼に、身体にまとっての突撃攻撃


アリス
「今回はさみしい終わり方ですね」

しかし、私にはこれ以上の終わり方はないと思います。
おそらく、無理やり設定すればここで彼女は救えるのでしょう。

ですがそれは・・・・

アリス
「できなかった?」

はい
蒔風の力ではどう仕様もありませんでした




アリス
「次回、ミッションスタート!!」

ではまた次回










この青春(イマ)を駆け抜けろ

 
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