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Three Roses

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第二話 幼きよき日々その二

「それは忘れないわよね」
「ええ、そうするわ」
 確かな声でだ、まずはマリアがマリーに答えた。
「私は清らかなものをね」
「忘れないわね」
「叔父様、いえ陛下に頂いたものだから」
「そうよね」
「何時までも覚えておくわ」
「私もです」
 最後にセーラが言った。
「そうします」
「そうなのね、貴女も」
「はい、幸運ですね」
「その幸運をなのね」
「神に感謝して」
 そのうえでというのだ。
「お二人にももたらされることを祈っています」
「貴女はいいの」
「私はです」
 セーラは自分に問うたマリーに答えた。
「自分のことよりも」
「私とマリアのことを」
「はい、お二人に幸があらんことをです」
「願ってくれているのね」
「私に幸があれば」
 王の言う通りにだ。
「それがお二人にもたらされれば何よりです」
「貴女自身はいいのね」
「はい」
 そうだというのだ。
「私も幸運は欲しいですが」
「それでもなの」
「それは最低限であればいいです」
「どうしてそう思うのかしら」
「私は一介の侍女です」
「貴族の娘よ」
「ですかお二人にお仕えする立場です」
 そうだとだ、セーラはマリーだけでなくマリアにも話した。
「そうした立場ですから」
「最低限の幸運であればいいのね」
「そうです、ですがお二人は」
「私、それにマリアは」
「王位継承権があります」
「そのことが問題があるのね」
「玉座は至高の座です、しかし」
 それでもとだ、セーラはマリーに応えつつ二人に話した。
「それに近いならば思わぬ災いが来ることもある」
「確かそれは」
 マリアはセーラのその言葉を聞いて述べた。
「お父様のお言葉ね」
「はい、大公様はそう仰っていますね」
「ええ、確かに」
「玉座に近いならばです」
「災いが来る」
「思わぬところから」
「だからなのね」
 マリアはセーラの言葉から父の言葉を思い出してだ、そのうえで言ったのだった。
「私とマリーに」
「はい、幸運があらんことの」
「貴女にある幸運までも」
「そう願っています」
「有り難う」
 マリアはその言葉を聞いてだ、セーラに礼を述べた。 
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