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油断はさせない

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第六章

「絶対にそうなるわ」
「何かね」
「あんた相当なことしたのね」
「そうじゃないとよ」
「ジル君もあそこまではね」
「あんたに夢中にならないわよね」
「これまで以上に」
 友人達も言うのだった。
「一体何をやったのよ」
「まさかキス?」
「そしてそこから先も?」
「ひょっとして」
「キスとかはまだよ」
 マリーは友人達に悪戯っぽく笑って答えた。
「これからはわからないけれど」
「けれどなの」
「それでも彼を捕まえたの」
「それも完全に」
「そう、まあジルに声をかけて来る娘がこれからいてもね」
 それでもというのだ。
「彼の心は私のものよ」
「虜ってことね、あんたに」
「そうなってるのね」
「そうよ、これからもね」
 まさにというのだ。
「私にね」
「ううん、何かね」
「あんた色々したみたいね」
「彼の心を掴む為に」
「そうしたのね」
「そうよ、いつも油断させずに仕掛ける」
 これこそがというのだ。
「大事ってことよ」
「恋愛には」
「そうなのね」
「そういうことよ、油断させない」
 まさにというのだ。
「それが大事ってことよ、私もわかったわ」
「そうなのね」
「それじゃあね」
「私達もそうしてみようかしら」
「これから」
「そうしたらいいわ、恋愛の秘訣はね」
 それはというと。
「相手を退屈させない、油断させない」
「そういうことね」
「それが相手に気移りさせないコツってことね」
「魅力は引き出して何でも常に使うことよ」
 最後にこう言ったマリーだった、そしてそれからも常にジルに仕掛けてだった。彼の心を完全に掴み続けるのだった。浮気一つさせないまま。


油断はさせない   完


                         2015・11・17 
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