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人徳こそ

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第二章

「大丈夫か?」
「言われてみれば」
 優子もだ、浩輔の今の言葉に気付いた。それでだった。
 真剣な顔になってだ、こう言ったのだった。
「最近ね」
「そうした人店長さんの近くにいるか」
「変な、妙に怪しい感じの人が近所に引っ越してきたとか言って来て」
 そのうえでというのだ。
「店長さんに何か話してるわ」
「それまずいぜ」
 浩輔はその話を聞いてだ、優子に言った。
「その人が何者かわからないけれどな」
「若し悪い人だったら」
「騙されたりしたらな」
 それこそというのだ。
「店失うか大損するか」
「そういうことになるのね」
「なるぜ、ドラマとかにあるみたいなな」
「そうした話に」
「世の中悪い奴って本当にいるからな」
「ええ、詐欺師とかね」
「だからな」
 それで、というのだ。
「気をつけないと駄目だろ」
「そうよね、けれど店長さんってね」
「そうした人をか」
「というか誰でも信じる人だから」
「悪人でもか」
「簡単に騙されるかも」
「それやっぱりまずいぞ、だからな」
 浩輔は立ち上がらんばかりになってだ、優子に言った。
「早く何とかしないとな」
「駄目よね」
「ああ、心配になってきた」
 話を聞いているだけでもとだ、浩輔は言った。
 そしてだ、優子に自分から言った。
「ちょっとお店に行っていいか?」
「それで店長さんと会いたいのね」
「よかったら」
「その怪しい人についてもな」 
 彼のこともというのだ。
「見たいけれどな」
「結構お店に来てるけれど」
「よし、じゃあな」
「それならなのね」
「その人も見られたらな」 
 その時はというのだ。
「見たいな」
「じゃあお店に来てくれるのね」
「今日にでもな」
「ええ、今日私放課後シフトに入ってるから」
「よし、行くな」
 まさに即決の言葉だった。
「そんな話聞いたら放っておけないからな」
「見てくれるのね」
「ああ、悪い奴も許せないしな」
 実は浩輔は正義感が強い、部活は空手部だがそこでも弱いものいじめやそうしたことをいつも戒めている。
「いい人が騙されることもな」
「どっちもなのね」
「許せないからな」
 それでというのだ。
「行かせてもらうな」
「部活は今日は」
「休む、事情は先生に話すからな」
 そのうえでというのだ。
「行かせてもらうな」
「そう、それじゃあ」
「行くな」
 こうしてだった、浩輔は優子がアルバイトをしているそのクリーニング店に行くことにした。そのうえでだった。
 その日の放課後に実際にだ、彼は店に行った。勿論優子に案内されて。
 店は住宅街の中にあった、家を改造して造られていて丁寧に整った清潔なクリーニング屋に相応しい趣の店だった。看板もしっかりとしている。 
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