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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第50話:自慢事のオンパレード

(グランバニア城・外務大臣執務室)
ウルフSIDE

新たなる王族のアミーが誕生してから1週間……
何度となく会わせてもらってるが、確かに可愛い。
遺伝子が遺伝子だけに、美女になる事は決定事項。

だから俺も、ティミーさんからの『ウルフ君、アミーの絵を描いてよぉ』ってお願いに快く応じ、抱いてるアルルを見上げてるアミー・揺りかごで眠るアミー・俺を見て可愛い笑顔をするアミー……と、何枚も手帳サイズのキャンバスに描いた。

何度見ても可愛いと思うし、何度描いても可愛いとも思う。
でも……しつけー!
あの馬鹿親がしつこすぎますよ!

毎日毎日、俺の描いた絵を見せて『可愛いだろ。僕の娘なんだよ! 凄く可愛いだろう!』と自慢してくるんだ。
知ってるよ! 毎日見てるよ! その絵は俺が描いたんだよ!!
俺は良いよ……言いたい事を言えるし、「しつこい!」と怒鳴れるから。

でも兵士達には地獄だよ、きっと。
朝一に会った兵士に娘自慢をする……同じ兵士に10分後に会っても、やはり同じ自慢をする。
いくらユルいグランバニアでも、相手は王子だし吉事なんだから無碍に返答出来ない。

みんな苦笑いで『可愛いッスね』と答えてる。
だってそれ以外に言い様が無いんだもん。
まさか俺みたいに『ホント可愛いッスね。あと10年したら俺の守備範囲です……ごちそうさまで~す!』と言うわけにもいかない。

因みにコレを言うと、その日の俺への自慢は止まる。
でも馬鹿なのか、翌日には忘れて自慢してくる。
今日も朝一にコレを言ってストップさせたので、滞りなく再来月の“ホザック王国への外遊”の打ち合わせが出来た。

だが俺以外への自慢は続く……
外務大臣執務室に資料を持ってきてくれたユニさんとかに、打ち合わせ中にも拘わらず自慢を始める馬鹿親ティミー。
優しい(俺以外に)ユニさんは、嬉しそうに馬鹿親の自慢を聞いてあげてる。

しかし、一方的に被害を甘受する連中ばかりじゃないのがグランバニアの凄いところ。
今日は相手が悪かったと思うよ。
だって……自慢相手がカタクール候なんだもん(笑)

「本当に可愛いよね赤ちゃんって。妹たちの時は気付かなかったよ」
殿下(で~んか)()だ~ったら可愛いってばさぁ。も~っと大勢(お~ぜ~)連中(れんちゅ~)に見せたいんでない?」

「うん。是非とも色んな人々に、この可愛さを伝えたいよ!」
「んじゃさぁ~、今夜(こ~んや)キャバ行こうや、キャバぁ!」
如何してそうなる? お前が行きたいだけだろ。

「良いですね。是非連れてって下さい!」
「よ~し出産祝いにオジサン奢っちゃうよぉ~」
出産祝いって、唯お前が行きたいだけだろ。お気に入りのキャバ嬢に貢ぎたいだけだろ!

「ん~じゃアーネちゃんに、今夜行くって伝えとくわ」
そう言って外務大臣執務室を出て行くカタクール候。
あ~あ……こんなタイミングでキャバ初体験になったよティミーさん(笑)

「本当に行くんッスかキャバ? っても、もう断れない流れですけどね」
「えっと……キャバって何? 色んな人にアミーの可愛さを伝えられると思ったら、行くって言っちゃったんだけど、キャバって何なの?」

「本気かアンタ? 今のは本気で言ったのか? ギャグとかじゃ無くて正真正銘の本気でキャバクラが何なのか解ってないのか?」
「キャバクラ? ……キャバの事かな?」
うわぁ~本気だった!

「キャバクラ……略してキャバは、綺麗に着飾った女の子と、楽しくトークしながら通常より高額な酒を飲む場所だよ」
「え、お酒飲まなきゃダメなの?」

「別に飲まなくても、通常より更に高額なフルーツ盛りとか食ってりゃ良いけどさ……」
「……何で通常より高額なの?」
「綺麗に着飾った若い女が居るからだよ」
「……綺麗に着飾った若い女の子だったら、町中にも沢山居るじゃん」

「町中に居る女は、金しか取り柄の無い醜男に愛想良くお酌をしたり、心底どうでも良い自慢話を楽しそうに聞いてはくれないんだよ」
「……つまり、お酒お飲みながら彼女見つける場所って事?」

「違う違う。生半可な小金持ちじゃ店を出た途端、赤の他人で歯牙にもかけてくれない。基本的に持ち金を吸い尽くすまでだけ愛想が良いんだよ」
「え……何が楽しいのソコ!?」

「普段モテない男が、金の力で疑似モテ男になる為に存在する店なんだよ。俺達みたいな女の群がってくる男には無縁の場所だ」
「別に僕には女の子が群がってこないが……?」

「そりゃそうだろ。以前は腹違いの妹しか眼中に無く……少し進化したと思ったら、貧乳異世界女にしか興味を持たないイカレ王子には、女が色目を使ってても気が付かない」
「う~ん……そうかなぁ? 僕はモテた事ないけどなぁ……」

「モテてねーわけねーだろ! 正真正銘の王子で伝説の勇者、しかもイケメンなんだぞ。リュカさん風に言えば“喰い放題”なのに、その権利を放棄し続けてたんだよ!」
「それだよソレ! 僕は父さんと違って“喰い放題”に興味ないんだ」

「知らねーよ。キャバ初体験すれば気が変わるんじゃねぇの?」
「うゎ、イヤだな。そんな事にはならないだろうし、なろうとは思わない……でもアルルに浮気と勘違いされるのは絶対にイヤだな」

コイツ本当にリュカさんの息子か?
あのオッサンは、浮気だと勘違いされる事も、浮気がバレる事も全然気にしてないぞ。
まぁ娘も産まれた事だし、ここらで一波乱起きた方が面白いんじゃねぇの?

「そうだ、アルルに報告して『行っちゃダメ』って事にしてもらおう」
昔のアルルならヒステリックに発狂してただろうけど、こちらに来てからは淑女になろうと努力してる。それでもアルルなら『そんな如何わしい場所行っちゃダメよ!』と言いそうだ。

「ざ~んねんでした~」
ティミーさんの作戦が決まると、何時もの口調で入室してくるカタクール候。
何が残念なんだ?

「何です……何が残念なんですか?」
「もうアルルちゃ~んには許可貰っちゃったもんねー」
「はぁ? 何、許可……? え、何?」
「だ~か~ら~、アルルちゃんに『旦那をキャバに連れてくよ』って言っちゃった」

「へぇ~、よくキャバ行きを許してくれたなぁ」
「そ~んなもんよ、世の奥方は。オメーさんも覚悟しとけよウルフ。子供が生まれたら旦那なんて邪魔なだけ。金稼ぐ以外に存在価値を見出しちゃもらえないのよ」
はぁ~、亭主元気で留守が良いってやつか。

「お前ン()と一緒にするなぁ! 僕ン()は何時まで経ってもラブラブなんだよ!」
「ん~じゃぁ、今日試してみようぜぇ。キャバ嬢の香水の移り香をプンプン臭わせて、泥酔帰宅してみぃよ。翌日の反応でアルルちゃんの殿下への想いが解るぅってばよ」

「あはははは、面白そ。頑張れティミーさん」
「他人事だと思って気楽に言いやがって……そうだ、君も一緒に来なさい!」
「イヤだよ。酒嫌いだし、このオッサンと飲みに行くなんてゴメンだね」
「おいお~い、酷いなウルフちゃ~ん。オジサン傷付いちゃうよぉ……」

「うるせー。言われ慣れてるだろ。嘘くさく“傷付く”なんて言うな」
「まぁ~ねぇ~。慣れっこだから~、店には3人って予約入れちゃったんだぁ」
何……3人? 予約??

「やる事が早いなぁ……アルルに許可取ってたのに、店にも予約を入れるなんて」
「店への予約は部下に行かせたぁ」
「公私混同すんなよ。ってか3人って何だよ!? 俺か? 俺も人数に入ってるのか?」

「あ~ったりまえじゃ~ん。男の前でキャバ行く話してたら、そこに居る男は全員参加が基本(きほ~ん)!」
「ふざけんな誰が行くか!」

「それが行く事決定なんだなぁ……リュカっちにぃ、先刻(さっき)『殿下とウルフをキャバデビューさせっから、ゴネたらガツンと言ったって』ってお願いしちゃったよ。ここで断ったらガツンよ、ガツン」
「あのオッサンOKしたのかよ」

「したしたぁ。『お、良いねぇ。父親&上司命令って事で、絶対に行かせちゃってよ』って許可ったもんね~」
「くそー、あの野郎!! お前の親父は如何なってんだコラ!」
「僕に聞くなよ……君の方が詳しいんだろ」

「つーか何でそんなに俺等を連れて行きたいんだよ!」
「だぁ~って……言っちゃったんだもーん。『オジサン、王子様と知り合いなんだよ~』って。しか~も『超イケメンエリートも知り合いに居るよ~』って。そしたらさぁアーネちゃんがぁ『うっそ~。もしぃ本当だったらぁ、今度連れてきてよ☆』ってさぁ……」

何奴も此奴も自慢したがりやがって……
何なんだこの国は?
普段プライベートの事で命令しないのに、何で今回に限り命令してくるんだリュカさんは?

「はっ……そうだ。リュカさんを誘えよ! あのオッサンだったら、気軽にOKするだろ。俺等みたいに商売女が嫌いな好青年を無理矢理連れて行かないで、一定水準以上の女だったら何でも来いな男を連れて行けよ! あんだけのイケメン国王だったら、王子やエリートを連れて行くよりキャバ嬢のウケも良いだろ!」

「誘ったさぁ。でもさぁ、今晩は先約があるぅって言われちゃってぇ」
「先約ぅ? あぁ、あれか。例のアルバイト仲間との飲み会か……」
「え、父さんが飲み会に参加するの?」

「いや、飲み会ってもあの人は飲まないんだろうと思うよ。でも、何だか気に入ってるんだよ、バイト仲間を……って、そんな事如何でも良いんだよ!」
そう、如何でも良いんだよ。それよりも今夜のキャバ行きを回避しないと!

普段、俺の女性に対する不埒な言動に白い目を向けていたユニ嬢に、縋る様に視線を向ける。
『まったく……キャバクラなんて下品。男って嫌ねぇ~』ってな事を言ってもらおうと思ったのだけど、満面の笑みで手を振って声を出さずに“いってらっしゃい♥”と言うだけ。

使えねー女だ!

ウルフSIDE END



(グランバニア城)
アルルSIDE

夕食時……
アミーに母乳を与え終え、私も夕食を食べようとグランバニア王家の食堂へ赴く。
先程(と言っても2.3時間前)に突然カタクール候が現れて『旦那(だ~んな)をキャバに連れてくかんね。良いよねぇ~?』と言われた。

いきなり現れ、いきなり言われ、一方的に応えを求められた為、思わず『ど、どうぞ……』と言ってしまったのだが、キャバとは何だろうか?
娘が生まれてから(いや、生まれる少し前から)ティミーの帰宅が極端に早くなったので、この時間に帰ってこないって事は、そのキャバとは遠くにあるのだろうと推測される。

城の窓から見える空は、既に帳が降りており美しい満月が私とアミーを照らしてくれる。
「あ、アルル様。もうお夕食の準備は出来てるそうですよ」
胸に抱くアミーの温もりと月明かりで幸せを感じてると、食堂の方から歩いてきたユニさんに出会した。

「ごめんなさい……皆さんを待たせてしまったかしら?」
「いえ……リュカ様もティミー殿下も不在ですので、各々勝手に食事を始めております。お気になさらなくて大丈夫ですよ(笑)」
相変わらずの家庭模様に苦笑いが出る。

しかし……
ティミーが不在なのは聞いていた(詳細は解らない)けど、リュカさんも居ないなんて……何か企んでるのかしら?
不安ね……ティミーの不在と関係あるのかしら?

「ご安心下さいアルル様。リュカ様はティミー殿下の不在とは無関係です」
顔に出てたのか、聞き出す前にユニさんから報告を受けた。
でも安心は出来ない。何故ならユニさんの苦笑いが止まらないから。

「産後だというのにご愁傷様です。カタクール候に捕まり、キャバクラへ連れて行かれるなんて……でも殿下だったら大丈夫ですよ。キャバクラ如きで浮気なんてしないと私は信じております」
う、浮気!?

「あ、あのユニさん……キャバクラって何ですか?」
ティミーに限って浮気はないと私も信じてるが、詳細不明のキャバクラなる所に連れて行かれ、そこで浮気の危険が発生するとなると落ち着いても居られない。
カタクール候が苦手とは言え、夫を連れて行くって言われた時に深く問い質せばよかったわ。

「え、アルル様……キャバクラをご存じないのですか!?」
「知りませんよ、そんな怪しく不埒な存在は」
心底驚くユニさんに、ちょっときつめの口調で返答する。

「に、似た者夫婦……」

アルルSIDE END



 
 

 
後書き
ぼくもぉ……キャバクラがぁ……何なのかぁ……
全然解んな~い!!
ホントだよ。

と言う訳で、ティミーのモデルは作者のあちゃです。
信じて、信じてぇ!! 
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