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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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第15話『休日』

 
前書き
さて今回は学校から離れて自宅編です。もちろん、晴登君の。
皆さんも暇なら、家でのんびり過ごしましょう。ちなみに自分は最近、めちゃ忙しいです。 

 
4月がもう終わりを迎えようとしていた。
この一月中に、友達がたくさんできたのは嬉しい。
けど反面、魔術だったり、不登校で色々問題を持つ美少年だったりと、色々変なことがよく起こった。

だからこうして、自宅の部屋のベッドでただ天井を仰ぐのは気楽で良い。


「魔術か…」


掌を上へと伸ばし、それを見る俺。
部長みたいに、この手から魔術を使えるのだろうか。

俺はあの日のことを思い出す。







「えっ部長、ホントに俺らにもそれできるんですか?」

「まぁ確かにお前の風じゃ難しいかもな、あの威力は。暁のは攻撃用だからいけると思うけど」


俺のはあまり攻撃向けではないということか。
どうせならズバーッとやったり、ドガァンってしたかったけどな…。


「そう落ち込むな三浦。こんな攻撃はできないかもしれないが、風には風のやり方ってもんがあるだろ?」

「それって何ですか?」

「さぁ?」

「えぇ…」


つまり、自分で考えるしかないということか。火とか雷ならイメージはつくけど、風って何ができるんだ? 相手を吹き飛ばしたり、後は飛んだりとか? ・・・考えてみると、結構実用性が高そうだ。でもちょっと地味かな…。


「とにかく魔術を会得しさえすれば、後は自分で模索するといい。そのために、魔力の源作りを急がなきゃな」

「「はい!」」


俺と暁君は揃って返事をする。体育祭までってことは…大体1ヶ月か。頑張ろう!







トントン


不意と鳴ったノックの音に、俺の回想は途絶える。


「何だ智乃?」

「お兄ちゃん、ご飯だよ!」

「わかった」


時計を見ると、既に12時を示していた。窓から空を見ると、太陽が真上で燦々と照っている。
朝からずっと魔術のことを考えていたが、ここまで時間が経つのは早いものなのか。







1階に降りてくると、智乃が食卓に昼飯を並べている最中だった。見たところインスタントのスパゲッティのようである。

それよりも休日であれば、普段母さんが昼飯を作るのだが、なぜ今日は智乃なのだろうか?


「母さんは?」

「さっき父さんと出かけたよ。気づかなかったの?」

「え? まぁ…」


予想外の智乃の返答に少々戸惑う俺。てか父さんもいないのか、今。

俺の両親は非常に仲が良い。そのせいか、よく2人で買い物やら何やら行くことが多い。主に休日は。今日も例外ではない。


「お兄ちゃん、あと卵焼きでも作ろうか?」

「いや、別にいいよ」


智乃の問いに俺はNOで答える。
スパゲッティに卵焼きはミスマッチな気がするからな…。


「え、良いじゃん。食べてよ」

「何でねばるんだ。わかった、食べるよ」

「ちょっと待っててね」


別に智乃の卵焼きが不味い訳じゃないから、食べても何も問題無いのだが、ただミスマッチだと思う。







「できたよ~」

「お、綺麗だな」


目の前に出されたのは、綺麗に整えられた卵焼きだった。黄色く輝くその姿は、中々の貫禄を醸し出していた。


「フォークよし、お茶よし。いただきます!」

「いただきます」


智乃は俺の隣に座った。
そういや智乃の卵焼きって懐かしいな。最後に食べたのは結構前になるのかな…。


「どれどれ?」


俺は一口卵焼きを食べる。
その瞬間頭に何かがビビッと来た。


「どう?」


智乃が期待の表情でこちらを見てくる。俺は率直な感想を返した。


「メチャクチャ美味しいじゃん」


そう言った途端、急に体が重くなった。
体調が悪いからではない。ただ、智乃が俺に抱きついてきたのだった。


「…ってて。危ないだろ智乃」

「へへっ」


あまりの勢いに椅子から転げ落ち、少々痛い目に遭う俺。
だが智乃は、そんな俺の注意も笑顔で弾き飛ばした。


「早く飯食わせてくれよ」

「ごめんごめん」


ようやく智乃が俺から離れ、自分の席に戻った。

何か今日は、休日なのに疲れそうだ。







「あれ?」


俺は目の前の光景に目を疑った。
次第に、草木の独特な匂いが鼻をつく。


「草原?」


俺はいつの間にか、草原の真ん中に立っていた。
終わりなんか到底見えない。地平線の彼方まで続いている。
見上げると空は雲に覆われており、太陽は隠されて見えなかった。


「何でこんなとこに…。誰か、いないのか…?」


俺は問いかける。だが周りに人の姿は無く、返ってくるのはそよ風の感触のみ。花と草が一面に広がり、俺だけが異端な存在だった。


「マジかよ…」


どうしてこうなったのだろうか。
先程まで智乃と昼食を食べて、そして自分の部屋に戻ってから・・・どうしたっけ。

しかし、この風景だけは不思議と覚えている気がした。以前どこかで──


ガサッ


──!?
不意に後ろから足音がした。背筋に嫌な汗が流れる。
少なくともさっきまでは人どころか、植物以外の生き物自体いなかった。それなのに、誰かが俺の後ろに急に現れた。これほど怖いことがあるだろうか。


『やぁ』

「っ!?」


その存在は声を掛けてきた。若い男の人の声だ。まるで優しく語りかけるかのような、穏やかな口調である。
だが、俺は振り返ることができない。あまりの恐怖で、首が回ろうとしてくれないのだ。金縛りを受けているみたいに。


『ようやくか。待ちくたびれたよ』


待ちくたびれた? 俺は誰とも会う約束なんてしていないはずだ。一体何を待っている? そもそもこいつは誰なのだ。


『今日は曇りみたいだね』


曇り、確かにそうだ。空一帯は雲で席巻されている。
でも、それがどうした。天気なんて関係ない。俺が気になることはただ1つ・・・


「誰、ですか…?」

『……』


俺が声を振り絞って出した質問に、謎の人物は何も答えない。その瞬間、俺の中で恐怖心よりも好奇心が打ち克った。


「このっ…!」


その瞬間金縛りが解け、俺は勢いで身体ごと振り返る。そしてその存在を視界に捉えた・・・はずだった。刹那、目の前の景色がぐにゃりと歪む。徐々に意識が遠のいていくのを感じた。


『明日は、晴れるといいね』

「待て…!」


目が眩む中、歪んで原型を留めていないその影へと俺は手を伸ばす。しかし、その手が何かを掴むことはなかった。







「はぁ……」


俺はベッドの上でボンヤリしていた。

先程のは“夢”。それも入学式の日の朝に見たものと同じ景色の。そこまで思い出した。
ただ1つ、違っていた。あの人は一体・・・。

どうやら俺は昼食を食べた後、部屋で昼寝をしたようだった。その証拠に、窓の外は青空ではなく夕焼けが目立っている。


「もう夜なのか」


時が経つのは早いものだ。どうせまた・・・


「お兄ちゃん、晩ご飯の時間だよ!」


智乃がドアをこじ開け入ってきた。
予想通り。全く、完全に見たことのある光景だ。こういうのを『デジャブ』と言うのだろうか?
いや、どうでもいいや。


「今行くよ」


俺はそう返し、すぐさま夕食を食べに1階に向かった。







夕食を終えた俺と智乃は、ソファに座ってテレビを見ていた。今日は久しぶりに智乃と2人きりで過ごしたな。そのせいか彼女は一日中元気で、おかげでこっちは何もしてないのにクタクタだ。


「母さん達はまだなの?」

「帰りが遅くなる、って電話ならあったよ」


子供2人を家に置いてどこまで行ってるんだよ。ホントに仲が良いな。良すぎるくらいだ。


「ねぇお兄ちゃん、一緒にお風呂入らない?」

「ぶっ!!」


智乃の唐突な発言に思わず噴き出してしまう。
こんなことを言われるのは、ここ1年はなかったのだが…。


「お母さん達がいないから、ね?」

「い、いやいいよ。そんな歳じゃないし」


可愛く訴えてくるも、俺にはそんな気もないので軽くあしらう。今さら妹と一緒にお風呂に入るなんて、恥ずかしいことこの上ない。


「お兄ちゃんのケチ」

「いやケチじゃないだろ」

「いいじゃんいいじゃん」

「いや、ダメだ」


中々引き下がらない智乃。
好かれているというのはとても嬉しいのだが、これでは…な。


「一緒には入らない。先に入るか後に入るか、どっちか選んでくれ」

「ぶぅ・・・じゃあ後で」

「了解」


智乃は不満顔だが、これでいいのだ。うん。







「やっぱり風呂は落ち着くな~」


湯船に浸かりながら、陽気にも鼻唄を歌う俺。日本人は入浴が好きというが、その気持ちはよくわかる。一日の疲れが一気に取れていく気分だ──


「お兄ちゃん!」

「うわぁお!?」


突然、タオルを身にまとった智乃が乱入してくる。これは予想していなかった。なるほど。先に俺を入れたのはそういうためか。
どうしたものか。追い出す・・・は、さすがに可哀想だろうか。かといってこのまま一緒に入るのも──


「では失礼」


考えている間に入りやがった。俺の膝の間に入り込み、背中を預けてくる。妹とはいえ、やっぱり恥ずかしい。早くここから脱出しないと。


「あー逆上せたかも。そろそろあが──」

「どこ行くのお兄ちゃん?」


手を…掴まれた。
なぜだ。なぜそこまでして俺と風呂に入りたがる? なぜそんな寂しそうな目で俺を見る?
もうダメだ。諦めろという神のお告げが聴こえた気がした。俺の敗けだ。


その後、普通に2人で入った。







時刻は午後9時。
こんな時間になっても帰ってこないウチの親。どうなっていやがる。帰りを待とうと、テレビを見て時間を潰しているというのに。


「ふわぁ。そろそろ寝るねお兄ちゃん」

「あぁ、おやすみ」


欠伸をしながらそう言う智乃。そして二階へ上がっていった。
さっきの風呂といい、また何か仕掛けてくると踏んでいたが、杞憂だったようだ。


「俺も寝るか」


テレビの前から立ち上がり、自分の部屋へと戻ることにした。もう母さん達は今日帰ってこないだろう。実際、そういうことは今までにもあった。だから言い切れる。

階段を上がり、ドアノブに手を掛ける俺。
油断は…しまくっていた。


「……」

「ぐぅ」


コイツ…やりおった。まさかの俺のベッドに…。

どうせまた選択肢はないんだろう。わかっている。
ったく、一緒に寝てやるか。兄妹だしな。


「もうちょい端っこで寝ろよな…」


智乃を奥の方へ軽く追いやりながらベッドに入る俺。…温かいな。当たり前か。

全く、最後まで手間をかけさせてくれる。これじゃ休めるものも休めない。

はぁ…もう寝よ。どうせ今日限りだし。ふわぁ…。





この後、智乃が抱きついてきたのは言うまでもない。

 
 

 
後書き
近々、現実(リアル)で体育祭がありした。お陰で投稿も遅れていたという訳です。
練習がマジでダルいです。自分、水泳部なんで『水泳』を競技として取り入れて頂きたいものです。ホント。

話を変えて、今回の話について。
目的は殆どありません。強いて言うならサービスです(ニッコリ
ただ、智乃との関わりも欲しいなと、自分的に思っただけです。

まだ忙しいので投稿が遅れるかもですが悪しからず。 
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