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深海棲艦の発生と艦娘の出自記録

作者:null*
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"女王の娘たち"計画・記録


ぶんしょはようせいのしはいか

目的

水鬼に対抗しうる人材の出生・教育・派遣。
人類に対して敵対的な脅威をもたらす存在である水鬼の排除と平和維持。



概要

"女王の娘たち"計画(以後、本計画)は水鬼と同等あるいはそれ以上の潜在的戦闘力を有した生命体を作り出し、それらを教育・派遣する事により人類の脅威となっている水鬼の無力化と後の平和維持を実現するものである。
日増しに影響を大きくしている水鬼をこのまま放置しておく事は将来的に人類の生命・経済・文化に対して致命的な損害を負う事になり、最終的には地球上において支配者転換が起こる可能性も危惧されている。
よって本計画はまだ時間的猶予があるうちに将来に備えて行われるべきだとして当局最高議会および当局加盟国による秘匿首長会議にて承認され実行に移される。



方法

本計画の主軸となるのは乙姫による"自身の遺伝子を中心として生命創造を行う活性化状態"(以後、創造活性)である。
創造活性で生み出される人型生命体(以後、総称は人工体。各個体の識別は"K-【識別番号】"で行う)を保育・教育および戦闘訓練・派遣する事によって水鬼の脅威を排除する。
主な戦闘行為は海上で行われると想定されており、それらに必要な装備開発の中心は"妖精"たちによって行われる。
本計画においては妖精の定めた協定がありそれらを遵守する事によって彼らの助力が得られようせいです
協定は承認されましたが妖精たちの意図を探るため秘密裏に調査が進んでいます。ようせいでした
当初、妖精が開発した装備を人間が使用するという計画案がありましたが  ようせいはいます により不可能という結論に至りました。
妖精との間で作成された協定書の複写を本記録に記す。"記録─妖精との装備開発協定19370211"を参照すること。





記録─妖精との装備開発協定19370211


装備開発協定書

当局は妖精との間における人工体の装備開発においてより強固な協力関係を築くために下記の20項目の条件にて協定を締結する。


第1条

第2条
女王のために
第3条

第4条

第5条

第6条

第7条

第8条

第9条

第10条
人間のために
第11条

第12条
うまれてくる彼女たちの為に
第13条
平和のために
第14条

第15条

第16条
がんばる
第17条

第18条

第19条

第20条


ようせいですよろしくおねがいします



以下、複写では署名項目は略する






創造活性について

本計画の中心となる。
乙姫によれば"使ってはいけない力の一つ"であるとされている。

内容

創造活性は乙姫がより集中できる環境下での活性化が条件となる。
現在は外部観察が可能な無響室にて行われ問題無く実行出来ている。

初めに通常の活性化状態となり乙姫は室内の中心部に移動。
その後、提供されている消毒された医療用メスで両手首に傷をつけ出血させる。
その場に腕を少し広げて仰向けになる。以後、約5分間は動かない、出血は続いている。
5分後、流出した血液が動き集合する。集合する場所は乙姫の近くであり今までの観察では特に決まったパターンはない。
集合した血液は粘体のような振舞いを見せ動きを止め楕円形を形成する。(以後、この血液の集合物を胚と呼称)
1つの胚は約2分ほどで完成する。一度の創造活性で作成できる胚の数は乙姫本人の意思により操作が可能。
しかし、胚の数に比例して乙姫本人の生命活動が低下する。過度な胚の創造は乙姫本人の死に直結する。
胚を完成させた後に乙姫は体を起こす。この時、手首からの出血量は創造活性当初と比べて極端に少なくなっている。
乙姫は血液を自身の唇に塗り、胚に接吻する。この行動により胚の変化が始まる。
主に乙姫の生命危機により胚の完成から接吻するまでの期間が空いてしまっていても胚の変化が遅れるのみであり、成長には何ら問題はない。



医療体制

胚の創造による乙姫の生命活動低下への対策として医療職員が配備される。
これらは当局の秘匿条約と医療条約に同意した10年以上の経験を持つ医療従事者で構成する。
彼らには乙姫に関する情報と最新鋭の医療器具、それらの器具の使用に関する再教育が施される。
この医療チームは20名弱で結成され24時間体制で対応する。
医療チーム全員の名簿は文書■■■ー■■■■(検閲および削除)を参照。




乙姫による創造活性の事前実験記録



第1回
出血性ショックの疑いの為、中止


第2回
乙姫が実験中に突如、呼吸困難に陥る。
肺水腫と診断。利尿剤で治療。


第3回
実験中に意識不明および心停止。
心肺蘇生法と除細動にて意識と呼吸を取り戻す。
2週間の経過観察で以上は無し。
胚は2つ完成される。


第4回
重篤な問題無し。
乙姫の軽度の過労により実験は終了。
胚は3つ完成される。


第5回
過労により実験は終了。
乙姫は1週間の安静。
胚は1つ完成される。


本実験記録は文書■■■■(検閲および削除)に移されます。





胚の変化と成長

乙姫の接吻から約7日から11日後に胚の硬質化が始まる。
赤色の胚は徐々に半透明な水晶のようになり赤色の部分(恐らく分離された何らかの液体)は胚の中央部に凝縮される。
これらの変化は約1日で行われる。

そこからさらに約1週間の時間をかけて胚の中央に凝縮された物体は人間の胎芽の形をとる。
胎芽は成長を続け胎児となりへその緒を形成するが胎盤は存在しない。
へその緒は植物の根のように大小様々な形の管を胚の全体に伸ばしていく。
規模は胚全体が覆われるほどではなくへその緒の隙間から容易に胎児を観察できる。

胎盤が無い事から成長から誕生までのすべての栄養は胚の中にある半透明の液体によって賄われていると思われる。
硬質化しているのは恐らく表面のみであり表層から5cm以下はすべて液体で満たされていると推測される。
その後、胎児はさらに成長を続け胚の硬質化から約5ヵ月前後で胚の表面が崩れ落ちて人工体が誕生する。
誕生した人工体は人間の新生児との明確な差異ななく出生を除いて目視での判別はほぼ不可能である。
また、人工体はすべて女児であり男児の観察例は無い。これは創造活性を行う者と同じ性別になるという乙姫の証言と一致する。

誕生してから1日後に協定で決められた通りに妖精たちによる検査が行われる。
この検査は ようせいですけんえつさくじょずみ となっている。

後に当局の保育機関に入り育てられる。
胚からの誕生以降の成長において異常性は見られず、人間と変わらない。






妖精の装備開発について
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開発リスト
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ようせいです
みてはだめなのです








人工体について

彼女達は一様に誕生する前は自身は軍艦だったと主張する。
全ての人工体は特徴として自身が軍艦だった頃のあいまいな記憶と名称を全ての個体が有している。
また外傷に対する自然治癒力が高く軽い切り傷なら数時間で完治する。
さらに妖精たちが開発した特殊な液体(妖精たちは"修復材"と呼称)を使用すればより早く怪我を治癒する事ができる。
ただし修復材は人間や乙姫には効果を示さず、人工体のみ効果を発揮する。

人工体は乙姫に対してとても深い愛情を抱いている。
これは誕生後、数年間に渡って乙姫との接触をしていない人工体であっても対面すれば即座に友好的な態度を示す。
乙姫もまた誕生後に一切接触していない人工体であっても深い愛情とその個体に対する知識を有する。

経過観察は続行中だがどの人工体も今のところ活性化の兆候を見せていない。
また乙姫が使用していた未知の言語に対する理解も全くない。





■■■人工体リスト

名称は人工体自身が名乗ったものを記載している。



K-【010058】 ハバ・グレネーデス(■■■■■■に移動)
K-【000244】 写軒(■■■■■■■■■■に移動)
K-【145800】 オプトソン(■■■■■に移動)
K-【458926】 鴉風月(■■■■■■■■■に移動)
K-【158001】 天衝(■■■■■■■■■■■■■に移動)
K-【111558】 海人駆(■■■■■■に移動)
K-【946729】 長門(本部に在籍)
K-【943608】 陸奥(本部に在籍)


付記 1938年3月18日
上記およびこれ以降の人工体の名簿は1938年3月18日をもって文書■■■■(検閲および削除)に移されます。






聴取記録─1941年2月25日

宮崎研究員による聴取が行われました。

対象者:乙姫 人工体 長門

聴取時の長門の年齢は3歳3か月。


宮崎:白ちゃん、おはよう。記録をとってもいいかな?
乙姫:ええ、大丈夫ですよ。
宮崎:よし、じゃあ、おはよう。
長門:<沈黙>
乙姫:ほら、挨拶は?
長門:おはよう……ございます。
宮崎:うん、よく出来たね。
   君にいくつか聞きたい事があるんだけど良いかな?
長門:……うん。
宮崎:ありがとう。
   じゃあまず初めに名前を教えてくれるかな?
長門:長門……って言います。
宮崎:いい名前だ。
   名前は誰からつけられたのかな、お母さんかな?

<長門は乙姫の顔を見る>

乙姫:覚えてる事を話してみて。
長門:分かんない……最初から長門……。
宮崎:そうか。
   前にあった事は覚えてるかな?
   こうやってお母さんに会う前の事。

<長門は不安の兆候を示す>

長門:ピカって光って。
   煙がたくさん出て……怖く……て。

<長門は泣き始め、乙姫にしがみつく>

宮崎:すみません。
   マズい事を聞いちゃったみたいで。
乙姫:気にしないでください。
   この子すぐ泣いちゃうから
   よければ私が答えましょう。
宮崎:ああ、そうですね。
   不躾な質問ですみませんが長門や他の子達はどういう存在ですか?
   彼女達の正体は?
乙姫:正直、私もどう説明していいか……。
   なんというか彼女達の魂は彷徨っていたんです。
   そこを私が拾い上げたというか。
宮崎:彼女達は一様に自分が艦だった時の事を話しますがこれについては?
乙姫:ここに来て私は色々な事を学びました。
   艦についてもです。ずっと前ですが伊賀崎さんが写真を色々と見せてくれました。
   軍艦というのは海の上で戦う為の乗り物なんですよね。
   だとしたらこの戦いで彼女達ほど適役はいないでしょう?
宮崎:なるほど、それで……。
   あー、軍艦の魂を拾い上げたと?
乙姫:何も生きとし生けるものだけが魂を持っているわけではありません。
   彼女達もまた人に愛され考えを持った存在になりました。
   こことは違う世界で役目を終えて彷徨っていたんです。
宮崎:では他の娘さん達も?
乙姫:そうです。
   長門と同じく元々は役目を終え彷徨っていた魂でした。
宮崎:白ちゃんは娘さん達に凄く好かれているみたいだけど。
   例えば長門だと確か昨日初めて会ったはずですよね。
   なのにもう懐いている。
   どうしてですか?
乙姫:そういうものとしか……。
   彼女達は私の力で生み出されました。
   そうゆう者達とは強い繋がりを感じると聞きます。
   実際に彼女達は私を愛してくれていますし、私も彼女達を愛しています。
宮崎:一度も会った事が無い子のことが分かるのも"繋がり"ですか?
乙姫:恐らくは。
   私の故郷で伝わっているだけの話なので詳しくは分かりません。
   それはそうと、陸奥と会えるのはいつ何です?
宮崎:ああ、それなら明日になると思いますよ。
乙姫:良かった。
   あの子いつも他の人に悪戯しちゃうから注意しないと。(※1)

(※1)乙姫が陸奥を会うのはこの聴取の翌日です。それまで一度たりとも接触はありません。



記録終了






補遺
海軍省に問い合わせて"長門"という名前の軍艦について調査しましたが、他の人工体と同じくそのような軍艦は記録はありませんでした。
未成艦や計画段階の軍艦、果ては歴史上の船においてもその存在は確認できませんでした。




 
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