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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第8話

その後宿舎に戻ったエステル達は宿舎を調べた後、宿舎を出たところ、クルツが隙を見て逃がしたオーブメントの整備士――ロベルトに会い、状況を聞き、猟兵達が別拠点に移った事を知ったエステル達はロベルトから教えられた訓練用の要塞――グリムゼル小要塞に猟兵と捕まったクルツとフィリスがいると思い、3人はグリムゼル小要塞に入って仕掛けを解除したりしながら進み始めた。



~グリムゼル小要塞・終点~



「カカッ、よく来やがったな。」

エステル達が終点に着くとそこには槍を構えた猟兵がいた。

「「あ……!」」

「やっと出た……!」

猟兵を見つけたエステル達は一定の距離をとりながらいつでも戦闘に入れる態勢でいた。

「よく来たなぁ。俺たちの新たな拠点によ。仕掛けは楽しんでもらえたかい?」

「えー、おかげさまでね。それよりも、クルツさんたちはその扉の向こうにいるみたいね。」

猟兵に尋ねられたエステルは呆れた表情で溜息を吐いた後クルツ達の居場所を尋ねた。

「痛い目に遭う前に解放した方がいいと思うよ~。」

「そうだよ!こっちは3人もいるんだよ!」

アネラスやミントは猟兵を挑発した。

「クク、小娘3人がずいぶんと(さえず)るじゃねえか。死地とも知らずにのこのこ飛び込んでくるとはな。」

「フン、それを言うならあんたたちだって同じでしょ。何が目的か知らないけど袋のネズミと同じじゃないの。」

「なにィ……?」

エステルの言葉を聞いた猟兵は以外そうな声を出した。

「ギルドの応援もすぐに来るよ。そうなったら、あなたたちの勝ち目は無いと思うんだけどなぁ」

「フン……。宿舎の通信器は完全に破壊した。それでそうやって連絡を取る?」

「え、えっと……(何か上手いハッタリは……)」

すぐに状況を思い出し鼻を鳴らして尋ねた猟兵の言葉を聞いたエステルは猟兵を騙す言い訳を考えた後、それを言った。



「フン、連絡なんてそもそもする必要がないのよ。定時連絡がない時点でこちらに異常が起きたのはギルドにも分かってるはずだし。」

「なに……?」

「確かに、今朝の時点で異常に気が付いているはずだから……。うん、そろそろ応援が到着するかも♪」

「もしかしたらニルさん達も来ているかもしれないね♪」

エステルのハッタリに騙されているのを見たアネラスとミントはそれぞれ本当に増援が来ているかのように言った。

「……チッ。詰めが甘かったみたいだな。まあいい。どのみち貴様らは目障りだ。とっとと片付けさせてもらうぜ!」

「望むところよ!」

「あなたなんかにミント達は絶対に負けない!」

「いざ、尋常に勝負だよっ!」

そしてエステル達は猟兵との戦闘を開始した!



「ぬん!」

戦闘開始直後、猟兵は槍を構えて勢いを持ってミントに突進した!

「やん!?………あう!」

猟兵の攻撃を剣で防御したミントだったが、体重が軽かったため吹っ飛ばされて壁にぶつかった。

「ミント!大丈夫!?」

「う、うん…………」

エステルの心配した声に答えたミントはなんとか立ち上がった。

「よくもミントを攻撃したわね~!」

「あんな可愛くて小さい娘を真っ先に狙うなんて人として最低だね!」

ミントの無事を確認したエステルは猟兵を睨み、アネラスは猟兵を非難した。

「カカ……弱い奴から狙うのが戦闘の常識だろうが。それでも遊撃士か?」

「言ってくれるじゃない……!はっ!」

猟兵の挑発に乗ったエステルは棒で攻撃した!

「フッ!」

しかし猟兵は槍でエステルの棒を捌き、さらに身体を回転させながら攻撃した!

「ぬん!ハッ!せ~い!!」

「クッ………キャッ!?」

猟兵の攻撃をなんとか捌いていたエステルだったが、最後の一撃を防いだ衝撃によって吹っ飛ばされた!

「よっと!」

吹っ飛ばされたエステルは空中で受け身をとって着地した。



「さあ、行くよ!剣技――八葉滅殺っ!!」

そしてアネラスはクラフトを放った!

「まだまだまだまだまだまだぁっ!」

「ハァァァァァァァ!」

アネラスの連撃に対して、猟兵も素早い槍捌きで対抗してアネラスの技を防いでいたが

「炎の矢よ!フレアアロー!!」

「行っくよ~!ファイアボルト!!」

「グッ!?」

いつの間にか駆動を終えていたエステルとミントのアーツが命中し、猟兵が呻いたところを

「とどめっ!」

「ガッ!?チッ………!」

アネラスが放っていたクラフトの最後の一撃を受けてしまい、ダメージを受けた猟兵は一端下がった。

「まだまだこれからだぜ!」

そして猟兵はクラフトを使って自分自身を回復した。



「落っちろ~!サンダーボルト!!」

「光よ、槍と化して、敵を貫け!……光槍!!」

「グアッ!?」

しかしミントとエステルはその隙を逃さず魔術を放って攻撃した!

「たぁっ!」

「ガッ!?」

さらに2人の魔術を受け、のけ反っている隙を狙ったアネラスが猟兵を天井へと蹴りあげた!

「やあっ!」

そしてアネラス自身もジャンプして、猟兵を叩き落とした!

「グッ!?」

叩き落とされた猟兵は呻いた。

「ミントのとっておき、見せてあげる!ソードファング!!」

「グアアアッ!?」

そこにミントのSクラフトが命中し、猟兵は悲鳴を上げた。

「止めよ!ハァァァァ…………剛震撃!!」

「ガハッ!?…………………」

そしてエステルが放ったクラフトを受けた猟兵はその場で崩れ落ちて、立ち上がらなくなった!



「はあはあ……か、勝った……。で、でもこの手応えって……」

「もしかして…………」

「う、うん……。エステルちゃんとミントちゃんも気付いた?」

倒れて何も話さない猟兵を警戒しながらエステル達は猟兵を信じられない表情で見ていた。

「フフ……。見事、騙されてくれたようだね。」

「ハハハッ。面白いように引っかかったな。」

その時今まで戦った2人の猟兵が扉から出て来た。

「あっ!」

「わっ!」

「あ、新手!?」

「はは、だから違うって。」

「もう口調は変えてないからあんたたちにも分かるだろう?」

新たな敵の登場に驚いているエステル達に猟兵達は親しげに笑いながら尋ねた。

「その姐さん口調……。……も、もしかして!?」

「カルナさん!?」

「ビンゴだ。」

エステルとミントの言葉を聞いた猟兵の一人が顔を隠していた仮面をとると、なんと猟兵はカルナだった。

「アネラス、エステル、ミント。ずいぶん久しぶりじゃないか。」

「久しぶりって……。一体どうなっちゃってるの?そ、それじゃあこっちは……」

カルナに驚いたエステルはもう一人の猟兵を見た。



「グラッツ先輩ですねっ!?」

「おうよ!」

アネラスの言葉に頷いた猟兵が仮面をとるとなんと猟兵はグラッツだった。

「よう、3人共。お疲れさまだったなぁ。」

「お、お疲れさまって……。……もしかしてこれって……」

「フフ、そういうことだ。エステル君、アネラス君、ミント君。最終訓練、ご苦労だったな。」

そしてさっきまで戦った猟兵が仮面をとると、なんと猟兵はクルツだった。

「さ、最終訓練……」

「つ、つまり……。昨日の襲撃から全部、お芝居だったんですかっ!?」

「ええええええ~!?」

クルツの言葉にエステルは口をパクパクさせて何もいえず、アネラスが言った事にミントは声をあげて驚いた。

「ふふ、この訓練場における慣例のようなものでね。最終訓練は、訓練生を騙して危機的状況を体験させる趣向なんだ。」

「あ、あんですって~!?」

クルツの説明を聞いたエステルは驚いた後、クルツ達を睨んだ。

「んで俺たちは、その手伝いのためわざわざリベールから来たってわけだ。」

「ふふ……。なかなか楽しませてもらったよ。」

「う~っ……。先輩ってば意地悪すぎですよ~っ!」

「そうだよ~!ミント達を騙すなんて!」

「そ、そうよ!あたしたち本気でピンチだと思ったんだからね!」

グラッツとカルナの感想を聞いたアネラス達は頬を膨らませて文句を言った。



「まあ、それが狙いだからね。ちなみに言っておくが……本物の猟兵はこんなに甘くないぞ。」

「うっ……」

「「あう……」」

しかしクルツの言葉を聞いたエステル達は気不味そうな表情をして何も言えなくなった。

「リベールでは猟兵団の運用は禁止されているからあまり想像できないだろうけど……。他の国じゃ、遊撃士協会と猟兵団の対立は日常茶飯事なのさ。自然と、遊撃士たちも危機的状況に備える者が多い。」

「だから、リベールの遊撃士にも一度は危機的状況を体験して欲しい。そんな親心の現れだと思ってくれや。」

「はあ……ずるいなぁ。そんな風に言われたら文句言いたくても言えないわよ。」

「うんうん、ずるいよね」。

「そうだよ~。ミント達のためって言われたら何も言えないよ~。」

グラッツとカルナの話を聞いたエステル達は溜息を吐いた後、納得した。

「あらあら。もう終わっちゃったのかしら?」

そして扉の奥からフィリスが出て来た。

「あ、管理人さん!」

「む~、管理人さんもグルだったんですね?」

「ひどいよ~!」

「あん、グルなんて言わないで。お芝居っていうから私も一生懸命、台詞を覚えたのよ?うふふ、迫真の演技だったでしょ♪」

驚いているエステル達にフィリスは悪びれも無く呑気に言った。

「えーえー。完全に騙されましたとも」

「はっはっはっ。3人ともお疲れさん!」

そして整備士のロベルトもエステル達の後ろから現れた。



「あ~、嘘つきな人だ。」

「結局のところ、全員がグルだったわけね。あ、それじゃあ、宿舎の通信器って……」

ミントの言葉に頷いたエステルは溜息を吐いた後、宿舎を調べた際、壊されていた通信器の事を思い出した。

「うん、あれはジャンクパーツさ。本物の通信器は、別の場所に保管してあるから心配いらないよ。本当は、僕も最後まで人質として出てこない予定だったけど……君たちが、新型オーブメントをどう使いこなすか知りたかったからあのタイミングで現れたってわけさ。」

「まったくもう……。みんな用意周到すぎですよ。でも、結局のところ騙された私たちの負けかなぁ?」

「うーん、悔しいけどそうかも。落ち着いて考えれば不自然な所はかなりあったし……。まだまだ修行が足りないなぁ。」

「ミント、一杯勉強したのに…………」

「ふふ、そう落ち込むことはない。グラッツも言っていたが、今回は君たちの実力を試すよりも危機的状況を体験して欲しかった。そういう意味で演習は大成功だ。」

落ち込んでいるエステル達をクルツは励ました後、表情を戻してアネラス達の名を呼んだ。

「では改めて……アネラス・エルフィード。」

「あ、はいっ」

「エステル・ブライト。」

「……はい!」

「ミント・ブライト。」

「はーい!」

「これをもって、本訓練場における総合強化訓練及び、準遊撃士の集中研修の全過程を終了する。この3週間、本当にご苦労だったね。」

「そ、それじゃあ……」

「もう明日には……?」

「もしかしてリベールに帰れるの!?」

クルツの説明を聞いたエステル達は期待の表情でクルツを見た。

「すでにリベール行きの定期船のチケットは取ってある。もう今夜は何も起こらないから3人とも、ゆっくり休んでくれ。」

「うふふ。打ち上げと、送別会を兼ねて今夜はご馳走にしなくちゃね♪」

こうしてエステル達はル=ロックルでの訓練を終えた……………
 
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