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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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プロローグ

~グランセル城内・客室~



「……う~……まぶし…………」

ベッドで眠っていたエステルは窓から差し込んでくる光で目を覚まして、起き上がった。

「ふわあああああああ~っ……。ん~~っ、よく寝たぁ~~っ!……あれ……。………………………………」

起き上がったエステルは周囲の風景を見て、首を傾げた。

「そっか、あたし達昨日はお城に泊まったんだっけ。ヨシュアとお祭りを回って……帰りにアイスクリームを食べて……夜は父さんと一緒に晩餐会に出て……。……それで……」

昨日の行動をエステルはどんどん思い出していき、そして空中庭園での出来事も思い出した。

「………………………………。……うそ…………」

信じられない表情で呟いたエステルはベッドから飛び起きると、部屋を確認した。

「ここ……ヨシュアと父さんの部屋だ……。確かあたし……シェラ姉と同じ部屋だったはず……。えっと…………どこからが夢なんだろ……」

そしてエステルはポケットに入っていたハーモニカを見つけた。

「あ……。………………………………………………………………。ヨシュアっ!!!」

ハーモニカに気付いたエステルは部屋を飛び出した。



~グランセル城内・廊下~



「あら、エステル。ずいぶん遅いお目覚めね。」

部屋を飛び出て辺りを見回しているエステルに別の部屋から出て来たシェラザードが声をかけて来た。

「シェラ姉……」

「まったく、昨日はいつまで経っても帰って来ないから心配しちゃったわ。でも、その様子だとヨシュアと色々話せたみたい―――」

「シェラ姉、ヨシュアは!?」

「へ……」

エステルに迫られたシェラザードは戸惑った。

「ヨシュアを捜してるの!シェラ姉、見かけなかった!?」

「今朝は見かけてないけど……。ていうか、あんた昨日は疲れてそっちの部屋で眠ったんでしょう?起きた時にはいなかったの?」

「え……!?あたしが疲れて寝たって……。そ、それって誰から聞いたの?」

シェラザードの話を聞いたエステルは驚いて尋ねた。

「先生からだけど……」

「と、父さんが!?それじゃあ!父さんは見かけなかった!?」

「先生なら、さっき階段を登って空中庭園に上がって行ったけど……」

「!!!」

シェラザードの話を聞き終わったエステルは空中庭園に走って行った。

「あ、ちょっとエステル!?……どういうこと……?」

エステルの行動に首を傾げたシェラザードは一枚のタロットカードを取り出し、真剣な表情で呟いた。

「………………………………。逆位置の『恋人たち』……」



~グランセル城・空中庭園~



「あ……」

空中庭園に到着したエステルはヨシュアの告白を聞いた同じ場所にいる軍服姿のカシウスを見つけた。

「エステルか。」

「と、父さん……」

エステルはカシウスに走って近付いた。

「あのね、大変なの……!」

「判っている。ヨシュアは……行ってしまったようだな。」

慌てて事情を話そうとするエステルの次の言葉がわかっていたようにカシウスは答えた。

「ど、どうして……。なんで父さんが知ってるの……?」

「昨日、軍議から帰ってきたらサエラブがお前を背に乗せて部屋に向かっていた。それを俺がサエラブから受け取った後、まさかと思い俺とヨシュアの部屋に向かった。

そしてテーブルにはあいつの書き置きが残されていた。それで大体の事情は分かるさ。」

「だ、だったら!だったらどうしてこんな所でノンビリしてるの!?早くヨシュアを捜さないと―――」

「止めておけ。」

慌てているエステルをカシウスは遮った。

「え……」

「あいつが本気で姿を消したらたとえ俺でも見つけるのは無理だ。5年前、あいつに狙われた時、俺もかなり苦戦させられたからな。」

「………………………………あたし……今までずっとこの質問はしなかったけど……ヨシュアって……何者なの?」

ヨシュアの事情を全て知っていそうなカシウスにエステルは尋ねた。



「………………………………。『身喰らう蛇』―――そう名乗っている連中がいる。『盟主』と呼ばれる首領に導かれ、世界を闇から動かそうとする結社。ヨシュアはそこに属していたらしい。」

エステルに尋ねられたカシウスはしばらくの間黙っていたが、エステルに背を向けて答えた。

「『身喰らう蛇』……」

「正直、遊撃士協会でも実態が掴めていない組織でな。世間への影響を考えてその存在は半ば伏せられている。だが、それは確実に存在し、何かの目的を遂行しようとしている。……今回のクーデターのようにな。」

「そ、それって……あのロランス少尉のこと!?」

カシウスの説明を聞き、思い当たった人物がいたエステルは慌てて尋ねた。

「ああ、間違いあるまい。もっとも、関与していたのはその少尉だけではなかったはずだ。……ある意味、ヨシュアも協力者の1人だったようだからな。」

「ちょ、ちょっと待って……。それってどういう意味!?」

カシウスの話を聞いたエステルは信じられない表情で驚き、尋ねた。

「書き置きに書かれていた。ヨシュアはこの5年間、遊撃士協会に関する様々な情報をその結社に流し続けていたらしい。どうやら、自分でそれと知らずに報告する暗示をかけられていたそうだ。」

「そ、そんな……。そんなことって……」

「正直、得体の知れない連中だ。深入りするのは止めておけ。」

「………………………………。あは……意味が分からないんですけど……。それって……ヨシュアを放っておけってこと?」

カシウスの警告にエステルは放心した。

「………………………………」

放心している様子のエステルをカシウスは黙って見ていた。

「ねえ父さん!答えてよ!」

何も答えないカシウスに業を煮やしたエステルは怒った。



「いずれ……こうなる日が来ることは判っていた。5年前、ヨシュアが俺の養子になることを承諾した時。あいつは、ある事を俺に誓った。」

「ある事……?」

「自分という存在がお前や俺たちに迷惑をかけた時……結社という過去が何らかの形で自分に接触してきた時……俺たちの前から姿を消すとな。」

「………………………………。……なにそれ……お母さんはその事……知っているの?」

カシウスの話を聞いたエステルは固まり、尋ねた。

「………レナは知らん。余計な気苦労を負わせる訳にはいかなかったし、何よりヨシュアも望まなかった。」

「……………………」

カシウスの言葉をエステルは無意識に拳を握って、聞いていた。

「お前の気持ちも分かる。今まで家族として暮らしてきたんだ。簡単に割り切れるものでもないだろう。だがな……男には譲れない一線というものがある。だからお前もヨシュアの気持ちも分かって―――」

「……知ってたんだ。」

「なに?」

唐突に言いだしたエステルにカシウスは驚いた。

「ヨシュアが……いつかいつかあたし達の前から居なくなっちゃうかもしれないって……。……父さん……知ってたんだ……お母さんやあたしには内緒で……………」

「………………………………。……すまん…………」

いつもの太陽のような笑顔をなくし、口元だけ笑い無表情のエステルに言われたカシウスは目を伏せて謝った。

「父さんのバカ!」

目を伏せて謝るカシウスにエステルは涙を流して怒り、走り去った。そして走り去るエステルとすれ違ったシェラザードがカシウスに近付いた。



「先生……」

「シェラザード……。みっともない所を見られたな。」

「いえ……。………………………………」

「責めないのか、俺を?」

何も言って来ないシェラザードにカシウスは尋ねた。

「あたしも、それなりの事情があって先生のお世話になった身ですから……。先生とヨシュアの気持ちはどちらも分からなくはないんです。」

「そうか……そうだったな。」

「でも、1つだけ。女の立場から言わせてもらえれば、」

「うん?」

溜息を吐いて何かを言いそうなシェラザードを見て、カシウスは首を傾げた。

「先生もヨシュアも、かなり最低です。………もし、この場にレナさんがいたら、同じ事を言うでしょう。」

「…………………………」

シェラザードに責められ、またレナの事も出されたカシウスは辛そうな表情で黙っていた。



~王都グランセル・北街区~



「はあっ、はあっ……」

一方エステルは雨が降り出す中、当てもなく街を走っていた。

「………………………………。そんなわけない……。ヨシュアが居なくなるなんて……そんなこと……あるわけない……」

立ち止まったエステルの表情は消えていて、目の焦点があってなく、現実を逃避するかのように呟いていた。

(エステル………)

(エステルさん…………)

(あの愚か者が………!エステルがこうなるのは数年間、生活を共にしていればわかることだろうが……!なのにあのような真似を……!)

(………深い悲しみと絶望が感じられるわ…………希望と喜びで溢れ、輝かしい笑顔を持つ娘なのに……ニル、エステルをこんな目に合わせたヨシュアの事、絶対に許さないわ!)

エステルの様子をエステルの身体の中からパズモとテトリは悲しそうに見ていて、サエラブとニルはエステルを悲しませたヨシュアに怒りを抱いていた。

「おっと、嬢ちゃん。こんな所でどうしたんだ?」

そこに一人の巡回兵がエステルを見つけて、声をかけた。

「濡れちまうまえに、さっさと家に帰った方がいいんじゃないか?」

「あ…………………………そっか、そうよね。ヨシュアが居なくなるはずがない………きっと……先に家に帰ってるだけ………」

「え?」

自分自身に言い聞かせるように言うエステルの言葉に兵士は首を傾げた。

「兵士さん、ありがと!急いで家に戻る事にするわ!」

兵士にお礼を言ったエステルはロレントに帰るため、空港に向かった。

「な、なんだぁ?それにしても今の子………どこかで見たことがあるような。」

一人残された兵士はエステルの言動や行動に首を傾げた後、エステルの見覚えのある容姿に首を傾げていた後、ある事に気付いた。

「…………!そうか!クーデター阻止に協力した………!」



その後エステルは飛行船に乗って、ロレントに向かった……………… 
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