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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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~武術大会・2回戦~前篇

~グランアリーナ~



「来たね。エステル、ヨシュア。」

「新人君たち、やっほー!」

エステル達と顔を合わせたカルナは不敵な笑みを浮かべ、アネラスは元気良く言った。

「えへへ。どーも、先輩たち。」

「胸を貸していただきます。」

エステルとヨシュアは軽くお辞儀をした。

「『不動のジン』……あんたとは一度やり合ってみたかったんだ。どれほどの腕かこの剣で確かめさせてもらうぜ!」

「フフン、いいだろう。こちらも全力でいかせてもらう。」

不敵な笑みを浮かべているグラッツにジンも不敵な笑みで返した。

「はは、出来れば決勝戦で戦いたかったものだが……。ここで当たったのも運命だろう。」

「片や、ベテランの遊撃士集団。片や、注目の新人コンビと武術家ブレイサーと天才演奏家との混合チーム。どちらが勝つかは女神達のみぞ知る、だね。」

決勝戦でエステル達と当たらなかった事にクルツは苦笑し、オリビエはいつもの調子で言った。

「これより武術大会、本戦第五試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷き、エステル達とクルツ達達両チームはそれぞれ、開始位置についた。

「双方、構え!」

両チームはそれぞれ武器を構えた。

「勝負始め!」

そしてエステル達とクルツ達は試合を始めた!



「みんな、後輩が相手とはいえ、あの”不動”がいるんだ!油断はするな!」

「はい!」

「ああ!」

「おう!」

クルツの号令にアネラス達はそれぞれ頷いた。

「方術………貫けぬこと鋼の如し!」

そしてクルツは東方に伝わる術――方術を使った。クルツの方術が発動すると、アネラス達に薄い光の膜が覆った。

「あれが、東方に伝わる”方術”か。いきなり防御力を固めるなんてやっかいだね。」

クルツの方術に感心したヨシュアは双剣を構えながら、隙を狙っていた。

「ふむ。なら俺は東方出身として、”気功”を見せてやろう。」

そしてジンはその場で精神統一をした。

「ぬあぁぁぁぁぁぁ、てやぁ!」

気功によって自らの身体能力を上げるクラフト――龍神功を使ったジンは全身に闘気を纏った。

「ほう………これが東方に伝わる”気功”か………」

「凄い闘気……!」

オリビエはジンの気功に感心し、エステルはジンがさらけ出している闘気に驚いた。そしてアネラス達は攻撃を仕掛けた来た!

「おらっ!」

「たあっ!」

グラッツの大剣での攻撃にジンは籠手で対抗し

「はいっ!」

「せいっ!」

アネラスの刀での攻撃はヨシュアは双剣で防御し

「はあっ!」

「やっ!」

クルツの槍での攻撃は同じリーチの長いエステルの棒が防いだ。

「これはどうかな!?そぉれっ、クイックドロウ!!」

オリビエは乱戦状態になっている中、味方のエステル達には当てず、精密な射撃でクルツ達にクラフトを放った。

「くっ」

「きゃっ!」

「うっ!」

方術で身体を強化しても、身体に伝わる僅かな痛みにクルツ達は顔を顰めた。

「せぇぇぇい!」

「くっ!?」

そこにすかさずジンは突進力を利用して放つ拳のクラフト――月華掌を放って防御したグラッツを吹っ飛ばした。

「はっ!」

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃっ!?」

「うっ!?」

同じようにヨシュアはクラフト――絶影をアネラスに、エステルは旋風輪をそれぞれが相手にしている者に放った。2人の技を受けたアネラスとクルツは一端下がった。



「やるじゃないか………けど、これならどうだい!?降り注げ炎の槍!!………スパイラルフレア!!」

「きゃっ!?」

「くっ!?」

「ぐおっ!?」

後方から放ったカルナのアーツにエステル達はダメージを受けた。

「方術………穏やかなること白波の如し!」

エステル達が攻撃を受けている間にクルツは方術を使って、自分達の傷を回復させた。

「んっふふ~、愛と真心を君たちに!それっ!」

エステル達への攻撃が終わるとオリビエは懐からバラの束を取り出し、それを空中に放り投げて銃で狙って撃った。するとエステル達の傷が回復した。

「ありがと、オリビエ。……でも、今のでどうやってあたし達を回復させたの??」

傷を回復してくれたオリビエに礼を言ったエステルはオリビエの技に首を傾げた。

「フフ……今の技はハッピートリガーと言ってね。ボクの愛と真心を君達にあげる事によって、君達の傷を回復させるのさ!」

「何ソレ………」

「意味不明の謎の技ですね………」

酔いしれっているように説明するオリビエをエステルはジト目で見、ヨシュアは呆れた。



「まあ、実際回復したから細かい事は気にするな。……それより今はクルツ達だ。”方術”を使っての突撃攻撃……予想以上にやっかいだな………」

エステル達の会話を笑い飛ばしたジンは武器を構えて、今にも突撃してきそうなクルツ達を見て言った。

「ボーっとしている暇があると思うかい!?もう一発行くよ!?」

カルナはまたアーツを発動しようとしたその時

「ふっ、これは避けられまいっ!!」

「ちっ!?」

オリビエが放った精密な射撃クラフト――スナイプショットがカルナに命中し、カルナのアーツが中断された。

「おぉぉぉ!」

「くっ!?」

「きゃっ!?」

「何!?」

「体が……動かない!?」

そこにすかさずヨシュアがクラフト――魔眼を放って、クルツ達の動きを止めた。

「エステル!」

「わかってる!」

ヨシュアの呼びかけに呼応したエステルは魔術の詠唱を始めた。

「武器の攻撃は効きにくいみたいだけど、魔術はどうかしら!?………風よ、切り裂け!旋刃!!」

「ぐっ!?」

「あぅっ!?」

「くっ!?」

「くっ……まさかシェラザード以外の遊撃士が”魔術”を使うとはね………」

エステルの魔術に魔法攻撃に対する防御を強化していないクルツ達は呻き、カルナは痛みに顰めながらエステルを見た。



「とりゃっ!」

痛みを耐え、武器を構えたクルツ達に向かってジンは空高くへジャンプし、クルツ達の中心に落ちて来た。

「せぇぇぇい!」

「くっ!?」

「あうっ!?」

「!!」

「ちっ!?」

天高くへ飛び上がり雷光のような蹴りを繰り出すジンのクラフト――雷神脚をグラッツ達は受けてしまったが、逸早くジンの攻撃に気付いたクルツは回避に成功した。

「フッ、先ほどのアーツのお返しだ!……怒れる大地よ、震動せよ!………タイタニックロア!!」

「ぐっ!?」

「く………そ………」

「きゅう~。」

「ち………このあたしが………」

オリビエが放った地属性最強であり、全体攻撃のアーツ――タイタニックロアを受けてしまったクルツ達のチームはクルツを残して全員戦闘不能になった。

「よし、これで後はクルツさんだけね!」

「フ……それはどうかな?」

エステルの言葉にクルツは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「エステル、油断はしたらダメだ!一気に決めるよ!」

「オッケー!」

ヨシュアの言葉に頷いたエステルはヨシュアとの一斉攻撃でクルツを攻撃しようと、クルツに向かって走り出したが

「方術……返り咲くこと風花の如し!」

「へっ!?」

「!やはり……!」

クルツの放った方術によって、戦闘不能になったアネラス達が立ち上がった。



「へっ………さっきはよくもやってくれたな。お返しだ!喰らえ!……グラッツスペシャル!!」

「行くよっ………剣風閃!!はいっ!はいっ!はぁいっ!」

「きゃっ!?」

「くっ………!」

グラッツとアネラスの反撃にエステルとヨシュアは苦悶の声を上げた。

「これでとどめだっ!降り注げ……」

「ふっ、そうはさせないよ!」

「ちっ!?また、あんたかい!」

エステル達に止めをさそうとしたカルナはアーツを発動しようとしたがオリビエのクラフト――スナイプショットに妨害されて、発動できなかった。

「せぇぇぇいっ!雷神脚!!」

「ぐおっ!?」

「あうっ!?」

さらにジンがクラフトを放ってグラッツとアネラスに攻撃を仕掛けた。傷がまだ完全に治りきっていないグラッツとアネラスはジンのクラフトを受けた痛みで顔をしかめて、一端下がった。

「2人とも、援護ありがとう!」

「助かりました。」

エステルとヨシュアは援護してくれたオリビエとジンにお礼を言った。

「何、気にするな。」

「ハッハッハ!そんなに感謝しないでくれよ。照れるじゃないか♪」

ジンは何でもない風に返し、オリビエは笑いながら答えた。



「方術………穏やかなること白波の如し!」

そしてまたクルツの方術でアネラス達は回復した。

「うげっ……また回復されたわ~……」

「まず、クルツさんを何とかしないと駄目だね。」

回復していくアネラス達を見て、エステルは溜息を吐き、ヨシュアは真剣な表情でクルツを見た。

「ならこっちも万全の状態にしておかないとな。…………おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……養命功!!」

「大いなる癒しの水よ………ティアラル!!」

ジンは気功でヨシュアを、オリビエはアーツでエステル達の傷を回復した。

「ありがとうございます。」

「助かったわ。よ~し、傷も回復した事だし反撃開始と行きますか!」

「待って、エステル。まず、クルツさんを何とかしないと。」

意気揚々と武器を構えるエステルにヨシュアは制止の声をかけた。

「そうね。…………ねえ、みんな。カルナさん達をしばらくの間、引きつけられる?魔術を使って、なんとかして見せるわ!」

「了解。」

「フッ、心得た!」

「期待しているぜ!」

エステルの言葉にヨシュア達は頷いて、攻撃を仕掛けてこようとするアネラス達にそれぞれ相手をした。そして中衛の位置で現状を見ていたクルツはエステルがオーブメントを駆動している事に気付き、妨害するためにクラフトを放った。



「方術……………儚きこと夢幻の如し!」

(よし、クルツさんがあたしに狙いをつけた!…………チャンス!!)

頭上に落ちてくる方術によってできた槍に気付いたエステルはオーブメントの駆動を止めて、急いで回避して魔術を放った!

「大地の力よ、我が仇名す者の力を我の元に……!地脈の吸収!!」

「!しまった!アーツは囮か!」

エステルが魔術を発動させた事に気付いたクルツは顔をしかめて、どこからでも魔術が来ていいように最大限に警戒をはらった。するとクルツの足元から木の根が生えて、クルツの体中に巻き付いた。

「くっ!……まさか下からとは………!」

「ジンさん、今!」

「応!!たあっ!!」

「ぐあっ!?」

エステルの呼びかけに答えたジンは普段の攻撃よりさらに力を入れたパンチでグラッツをオリビエと攻防を続けているカルナの元までふっ飛ばし、木の根がからみついてもがいているクルツへSクラフトを放った!

「もらったぁ!はぁっ!でやあぁぁぁ!はぁっ!でやっ!たぁっ!!」

「ぐあああああっ!?」

強烈な蹴りを連続して放つジンのSクラフト――龍閃脚を受けたクルツは大ダメージを受け、悲鳴を上げた。そしてジンの攻撃が終わるとクルツに巻き付いている木の根が光った!!

「ぐああああっ!?ち、力が…………む、無念……」

木の根に残っている体力を全て吸い取られたクルツは木の根がなくなると、その場に蹲って立ち上がらなくなった。そして木の根は光となって、エステルの体に入り、エステルを回復させた。



「よし、クルツさんを倒したわ!」

クルツが戦闘不能になった事にエステルは嬉しさの声を上げた。

「くっ、まさかクルツがやられるなんて!?」

カルナは戦闘不能になったクルツを見て、信じられない様子でいた。

「俺がクルツにセラスの薬か血廉の滴を使う!アネラス、お前は魔術を使うやっかいなエステルを何とかしろっ!」

「了解です!!」

グラッツの言葉に答えたアネラスはエステルに攻撃を仕掛けに行った。

「待ちなっ!不用意に動くんじゃ……!」

アネラスに制止の声をかけようとしたカルナだったが

「お見せしよう!美の真髄を!!ハウリングバレット!!!」

カルナがオリビエに攻撃するのをやめた隙を狙って、オリビエはSクラフトを放った!

「ぐあああああっ!?…………あたしとした事が………」

オリビエのSクラフトを受けてしまったカルナは戦闘不能になってしまった。

「くっ………カルナまで………待ってろ、クルツが復活さえすれば………!」

「させません!」

「くっ、ヨシュアか!」

クルツの元に駆け寄る途中でカルナが戦闘不能になった事に気付いたグラッツは急いでクルツを回復させようとしたが一瞬で距離を詰められたヨシュアに道を阻まれた。ヨシュアを見てグラッツは顔をしかめた後、大剣でヨシュアを攻撃したがヨシュアは回避をし、Sクラフトを放った!

「いくよ!ふん!はっ……はっ………せぃやっ!」

「ぐっ!?しまった…………」

Sクラフト――断骨剣を全て受けてしまったグラッツもまだ跪き、立ち上がらなくなった。

「どうやら警戒すべきなのはジンさんではなく、貴女だったようね。エステルちゃん!」

味方全員やられた原因の全てがエステルの魔術から始まった事を悟ったアネラスは刀を構えて、エステルに言った。

「あはは…………まあ、アネラスさん達があたしが魔術を使えるのを知らなかったから仕方ないわよ。」

「フフ、まあそれもあるね。……でも、やられっぱなしでは先輩として黙っていられないよ!行くよ、剣技―――八葉滅殺ッ!」

アネラスは強烈な連撃のクラフト――八葉滅殺をエステルに放った!

「まだまだまだまだまだまだぁっ!」

「くっ………」

強烈な連撃をエステルは棒で防ぎながら、反撃の機会を窺った。

「とどめっ!」

(今!!)

連撃が終わり、飛び上がったアネラスを見てエステルは攻撃の構えをした。そしてアネラスの落ちてくる速度を利用した攻撃を回避した。

「えっ、嘘………」

とっておきの一撃が回避された事にアネラスは驚いた。

「これで決めるっ!桜花!無双撃!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」

「あうっ!?きゅう~………」

そしてエステルのSクラフトを受けて、アネラスも戦闘不能になった。



「勝負あり!蒼の組、ジンチームの勝ち!」



そして審判はクルツ達の状態を見て、エステル達の勝利を宣言した!

~グランアリーナ・観客席~



「やったーーー!!また、ママ達が勝った!!」

エステル達の勝利にミントは大喜びをした。

「カルナさん達に勝つなんて凄いね、エステルさん達。」

エステル達の強さに頷いたツーヤは真剣な表情で空を見ているリフィアとエヴリーヌに気付いた。

(………エヴリーヌ、気付いているか?)

(ん。この気配は”天使”だね。しかも結構力のある奴だね。……なんで、この世界にいるのかな?)

(ああ。………!どうやら行ったようだな。何をしに来たのだ??)

2人は天使が何をしに来たのかわからず、揃って首を傾げていた。

「あの………どうかしたんですか?」

「ん?ああ。プリネ達の相手の事を考えると………な。」

「残っているのはエヴリーヌ達に勝ったあいつとあの変な仮面を被った隊長のチームだけだからね。」

「あ…………」

話を誤魔化すリフィアとエヴリーヌの言葉にツーヤはプリネ達の相手が簡単に勝てない事を悟った。

「そんな顔をするな。カーリアンはともかく、情報部相手ならプリネ達の敵ではない!」

「ん。エヴリーヌやお兄ちゃん達が一杯鍛えてあげたから、大丈夫だよ。」

心配そうな顔をしているツーヤにリフィアとエヴリーヌは元気づけた。

「ツーヤちゃん。ツーヤちゃんがそんな顔をしていたら、プリネさんに心配をかけてしまうよ?」

「………そうだね。ありがとう、ミントちゃん。リフィアさんとエヴリーヌさんもありがとうございます。」

ミントの言葉にツーヤは表情を和らげ、笑顔でミント達にお礼を言った。

「えへへ、お友達を元気づけるなんて当たり前だよ。」

「うむ!パートナーとしてプリネの事を、しっかり応援してやれ!」

「はいっ!」

そしてリフィア達はプリネ達の出番を待った。



~グランアリーナ~



「クッ……見事だ。」

「『不動のジン』……まさかここまでの凄腕とは……」

跪きながらクルツとグラッツはジンに称賛の言葉を贈った。

「お前さん達もさすがに手強かったぜ。エステル達がいなかったら俺も勝ち目は無かっただろうな。」

称賛の言葉を贈られたジンは逆にクルツ達を称賛した。

「はあはあ……。あたしたち、勝ったの……?」

「うん、何とか……。足を引っ張らずにすんだね。」

エステルは息を切らせながら自分達がクルツ達に勝った事に信じられないでいないところを、ヨシュアが肯定した。

「ふふ……。謙遜するんじゃないよ……。ジンの旦那もそうだがあんた達も充分手強かった。特にエステル。魔術の腕だけならシェラザードと並ぶと思うよ。」

「あはは………あたしはシェラ姉みたいな強力な魔術は使えないわよ。使える属性の数でカバーしているようなもんだし。」

カルナの称賛にエステルは謙遜した。

「ふう、さすがはシェラ先輩の教え子だなぁ……。それに、そこのお兄さんがそこまでやるとは思わなかったよ……」

「フッ、お嬢さんの方もなかなか痺れさせてもらったよ。よければ試合の後にお互いの強さを讃えて乾杯でも……」

「えーかげんにしときなさい!」

場所を考えず、いつものようにアネラスをナンパしようとするオリビエをエステルは注意した。そしてエステル達は控室へ戻って行った。



一方グランアリーナの空高くから、リフィア達が感づいた天使――ニル・デュナミスがエステル達の試合を観戦し、試合が終わり退場して行くエステルを注視していた。

「…………あの子がエステル・ブライトか………あの年齢にしては中々の腕を持っているようだけど……フフ、明日の決勝戦後、折りを見てニル自らあの子に挑んででニルを従える器であるかどうかを見極めさせてもらいましょう。」

ニルは口元に笑みを浮かべた後、どこかへ飛び去った。



~グランアリーナ・選手控室~



「みなさん、決勝進出おめでとうございます!」

「おめでとう……ございます………」

「おめでとう!」

「………中々やるではありませんか。”炎狐”が認めるだけの強さはありますね。」

エステル達が控室に戻るとプリネ達が称賛の言葉を贈った。

「ありがとう、みんな!……あれ?そう言えばプリネ達を含めて試合をしていないのは3チームになっちゃったけど、どうなるんだろう??」

「その事は私も気になって、受付の方に聞いたら今から行われる私達と当たるチームの試合が終わって、休憩の時間をしばらく入れて、私達と当たったチームの勝者のチームが残りのチームと試合をするそうです。」

プリネは首を傾げているエステルの疑問に答えた。

「という事はプリネ達が勝ったら、1日の間に2試合する事になるのか………体力とか大丈夫なのかい?」

「フフ、心配をしてくれてありがとうございます、ヨシュアさん。……でも大丈夫ですよ。体力も十分鍛えていますから。」

ヨシュアの心配をプリネは微笑みながら答えた。

「ハハ……連戦の心配をするのも結構だが、とりあえず、まずは一勝する事だ。」

「貴女達の勝利を祈っているよ、レディ。」

「フフ、ありがとうございます。」

「絶対勝とうね、プリネ!」

「プリネ様の勝利のために……全力を……出させて……頂きます………」

「精霊王女であるこの(わたくし)がいるのです!敗北なんて、ありえませんわ!」

その時、次の試合のアナウンスが入った。



「続きまして、第六試合のカードを発表させていただきます。南、蒼の組―――メンフィル帝国出身。旅人プリネ以下4名のチーム!北、紅の組―――王国軍情報部、特務部隊所属。ロランス少尉以下4名のチーム!」



「あいつらが相手か……プリネ達が相手にするのは初めてだけど、大丈夫と思うわ!」

「隊長にだけは気を付けて。彼さえ自由にさせなかったら勝機は必ずあると思う。」

「ええ。他の特務兵達はペルル達に任せて、あの仮面の方には私自ら相手します。」

ヨシュアの忠告にプリネは真剣な表情で頷いた。そしてプリネの号令を待っているペルル達の方に向いた。

「みなさん、行きますよ!」

「うん!」

「了解です……」

「ええ!」

そしてプリネ達はアリーナに向かった。



~グランアリーナ~



「「「…………………………」」」

(…………?殺気……?何か恨まれるような事をしたかしら?)

プリネ達と顔を合わせた特務兵達はロランスを除いて、殺気を纏った怒りの表情でプリネ達を睨んでいた。特務兵達の殺気にプリネは首を傾げていた。

(お前達、気持ちはわかるがそう殺気立つな。あの少女が何者か知っているだろう?)

(ですが、少尉!奴らは我らが同士の仇の娘なんですよ!?)

(だからだ。よしんばここでお前達の恨みがはらせても、その後はどうする。大佐が事を為すまで、メンフィル帝国に睨まれる訳にはいかないだろう?)

(((!…………了解!!)))

(………なるほど。そう言えばルーアンの時の特務兵達は拷問で………)

ロランスと特務兵達の小声の会話が聞こえたプリネは納得した。

「……部下達が無礼を働いてしまって、申し訳ない。姫の中の(プリンセスオブプリンセス)。」

「………いえ。事情は察していますので気にしないで下さい。……それに”その程度”の殺気ぐらいでは恐怖は感じませんので、ご安心を。」

ロランスの言葉にプリネは微笑みながら特務兵達を挑発した。

「なんだと……!」

「我等を侮辱するか……!」

「どうやら痛い目に遭いたいようだな……!」

プリネの言葉に特務兵達は逆上して、プリネを睨んだ。

「やめろ、お前達。………フフ、”剣聖”の上をも行く”剣皇”のご息女である貴女との手合わせも楽しみにさせて頂きました。」

「………私をお父様と同じに見られても困るのですが。………期待に沿えるよう、全力で行かせて頂きます。それより一つ聞いていいですか?」

「なんなりと。私で答えられるような事でなら。」

プリネに尋ねられたロランスは口元に笑みを浮かべながら頷いた。

「貴方、私とどこかで……………………………いえ、今の質問はなかった事にして下さい。」

「わかりました。…………………(何故だ。何故、”あいつ”と同じ雰囲気を…………!)」

ロランスはプリネが纏っている雰囲気に表情に出さないよう、驚いていた。

「これより武術大会、本戦第六試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」

審判の言葉に頷き、プリネ達とロランス達両チームはそれぞれ、開始位置についた。

「双方、構え!」

両チームはそれぞれ武器を構えた。

「勝負始め!」

そしてプリネ達とロランス達は試合を始めた!



この戦いが修羅の道を行く青年と優しき闇の少女の、運命の邂逅となった………! 
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