| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Blue Rose

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八話 安息日にその八

 最後の最後に青い薔薇の場所に来た、夕刻の日に照らされて青い薔薇達が咲き誇っている。その薔薇達を見てだ。
 優花は微笑んでだ、こう姉に言った。
「夕方に見るこの薔薇もね」
「いいわね」
「うん、青い薔薇をね」
「見るのがいいのね」
「一番観たいものは最後だね」
「そうも思ったし」
 正面を見ながらだ、優子は。
 意を決した顔でだ、弟に言った。
「それにね」
「それに?」
「最後にって思ったから」
「最後にっていうと」
「この青い薔薇は有り得ないものっていう意味ね」
 ここからだ、優子は話した。
「この世に」
「うん、花言葉はね」
「けれど今はね」
「こうして僕達も観てるね」
「そう、有り得ないものと思われていたものも」
「あるんだね」
「この世に絶対に有り得ないものはないの」
 この摂理を言うのだった。
「何が起こるか、何が出来るかわからないのよ」
「青い薔薇もこうしてあるし」
「そう、だからね」
 言葉を慎重に選びつつだ、優子は言っていった。
「誰に何があっても不思議じゃないのよ」
「そう言われるけれど」
「優花、よく聞いて」
 これまで生きていて最も緊張した瞬間だった、大学入試の時よりも医師免許の試験を受けたその時よりも。
「貴方は女の子になろうとしてるの」
「えっ!?」
「この前学園の健康診断受けたわね」
 弟にだ、ここで顔を向けて告げた。
「その時にわかったの」
「えっ、僕が」
 優花は驚愕した顔になっていた、明らかに。
 そしてその驚愕している顔でだ、言葉を出そうとするが。
 出せなかった、完全に言葉を失っていた。
「そんな・・・・・・」
「驚くわね、けれどね」
「僕、男の子じゃ」
「今はね」
 優子もだ、慎重に言葉を選びつつ言う。
「そうよ、けれどね」
「女の子になんだ」
「なっていっているの、そしてね」 
 さらに言った、かけがえのない相手に。
「やがてはね」
「完全になんだ」
「女の子になるのよ」
「そういえば」
 姉に言われてだ、優花もだった。
 これまでの自分のことを思い出した、その言われたことに思い当たることがあった。
「声も変わったしお髭も生えなくて」
「体格もよね」
「全然筋肉質じゃないって思っていたら」
「もうそれがなのよ」
「女の子になっていってるってことなんだ」
「時々喋り方もそうなっていたわ」
 優子はこのことを今話した。
「女の子のものにね」
「喋り方もなんだ」
「肉体の変化が心にも影響しているのよ」
「僕が気付かないうちに」
「そう、貴方は心もね」 
 肉体だけでなく、というのだ。
「女の子になってきているの」
「男の子から」
「徐々にね」
「そして最後は」
「完全によ」
 それこそとだ、優子は優花に告げた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧