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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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第百二九幕 「刹那を見切れ!」

 
前書き
言いたいことは分かっています。定期更新時期すら守れないゴミ作者である自覚はあります……それでも、私は遅ればせながら定期更新をするのです……。

6/2 アラスの口調が久しぶり過ぎて間違っていたので修正しました。 

 
 
 イタリアの名所と言えばプーリア州の『アルベロベッロ』が有名だ。トゥルッロという白い伝統家屋が立ち並ぶ様はどこか幻想的で、ユネスコの世界遺産にも登録されている。しかし別に観光しに来たわけではないのでそっちは後回しにして、来たのは別の場所だ。

「潮風が気持ちいいわね~」
「………それ、日本のパンのCM……」
「いやいや、本当だってば。港の方から吹き上がってくる海の匂いって、なんかいいよね」
「………住んでるぶんには、何も。でも、すこし懐かしくはなる」

 純白の帽子を深くかぶって日差し対策ばっちりのベルくんは、すん、と鼻を鳴らして、黙ってしまった。ベルくんが黙っているのは別に珍しくもないが、故郷に戻って来た嬉しさはないでもないらしい。そんな事を分析しながら、私は横で「んん~」と伸びをしながら若干時差ボケしている頭に酸素を送り込んだ。


 どうもみなさん、今日は旅番組風の佐藤です(心持ちさわやか)。

 それはさておき、私達はイタリア共和国プーリア州のヴァーリという都市――その更に中にある「ポリニャーノ・ア・マーレ」という町にやってきている。この都市の端っこの方にベル君の伯父さんの家があるらしく、私達はそこを目指して、空港からイタリア政府のチャーターしたヘリに乗ってやってきたのだ。

 空港からいきなりヘリという超展開には流石に二人して絶句したけど、バスや鉄道では安全性の確保があれなんだそうだ。だからってヘリってVIPでもあるまいし。

「シニョリーナ・サトー、貴方は立派なジャパンの――ひいてはIS学園のVIPです。無論シニョーレ・デッケンは言わずもがな、我が国の最重要人物の一人。というかお二人とも有名人なので下手に町を歩こうものなら野次馬のアリジゴクに突き落とされかねません」
「マジですか……え、そんなに?」
「既にサトー氏の来訪を受けて複数の雑誌から貴方のグラビア撮影権をかけた交渉を持ちかけられています」
「ふぐっ!?そ、そう言えばそんな話もあったっけ……!(※第八五幕参照)」

 実は今回、面白半分で「月刊Girls And Military」から送られてきたちょっときわどい水着兼衣装を持ってきてしまっている。どっかの光合成できて英語を喋らないスナイパー的な衣装だ。若干ながら乙女の興味が湧いてちょっと着てみようかと思ってたけど、万が一他の人に撮影されて世界にばら撒かれたらフェザーガール(笑)以上の大打撃で撃沈するは自明の理。
 そんな私の葛藤をよそに、イタリアの偉い人は話を続けた。

「デッケン氏は………容姿が半分、経歴を穿り返そうとする輩が半分……どちらにせよこれでは帰国どころではないので政府の情報操作で細工をかけています」
「ベル君の経歴………?」
「……失言でした。詳しい事はデッケン氏のご家族か、或いは本人にご確認を」

 隣のベル君の纏う気配が急激に沈んだ。どうにもベル君の隠している部分というのは国民の一部に知られているらしい。こんなに病弱でひ弱なベル君の『経歴』……かなりきな臭くなってきたかもしれない。
 ちなみに政府の細工内容はベルーナの家に関する情報や家族構成、帰国日時などの情報を敢えて間違った方向に誘導して国民の目を欺こうという作戦らしい。不特定多数の情報が行き交うネットでは特にこれが協力で、現在ネット界やマスコミの殆どがこれに踊らされているのだとか。やだ、この国の情報戦怖い……。
 こうして私たちはイタリア軍の所持するヘリコプター「ベル212」に乗ってポリニャーノ何某まで辿り着いたのである。

 ………何でそのヘリをチョイスしたんだろうか、イタリア軍は。体を張ったギャグか。あの人達なりの歓迎の意なのだろうか。軽軍事マニアの間でまことしやかに囁かれる「砂漠でパスタ伝説」は若干の事実誤認が混じっているそうだが、やっぱりこの国の軍はどこかズレてるのかもしれない。



「で、この辺にアラスくんたちがいる筈なんだけど……」

 異国情緒ある街並みをしばらく歩いて、待ち合わせ場所の喫茶店を発見。事前連絡によるとベルの3人の友達――アラス、アングロ、コーラの3人が迎えに来ている筈だ。電話越しにしか会ったことがないので若干ながらキンチョーするなぁ。

 アラス君は知的っぽいイケメンな好青年で、コーラ君はちょっと日やけ気味で呑気。そして3人目のアングロさんは………画面越しに見る限りでは「顔は」美人だった。もしかしたら学園の高レベルランカーより頭一つ飛び抜けたレベルかもしれないぐらいに。ただし――その、アレだ。

「ベル坊私の可愛いベル坊ああ大きな帽子を被って見栄を張っている所も可愛いしチョコチョコ歩いているのも可愛いぞうふふふふふ……だが駄目だな全然駄目だ特にエスコートしているジャパニーズの小娘が壊滅的に駄目だ。ベル坊に日焼け止めを塗っていまい。定期的に水分摂取を促し5分に一度10分休憩を入れて更にいつベル坊がこけても助けられるような配慮がなっていないつまり手を繋いでの移動など護衛として不適格だから今すぐその手をベル坊のちっちゃくて白い指から離しなさい。さもないと殺す」
「いや殺すなよ!!国境を越えて友達になったんじゃなかったっけぇ!?」
「駄目です、歪んだ庇護欲に脳を支配されて声が届いていません!!止めなければ暴走します!!」
「どー見たってもう"してる"だろッ!!」
「ベルリウムが足りない………独占しているのは貴様かぁぁぁぁぁッ!!」

 どたん!ばたん!ばきん!

「すごい……画面越しに会った時と殆ど展開が同じだ」
「っていうか、今店の備品壊して……」

 る、と言いかけたベルくんの横を、可愛いフリルのついたミニエプロンを着たウェイターさんがものすごくいい笑顔で通り過ぎていく。あれはアカン。背中から噴き出す圧倒的な闘気が魔王みたいな形になってペルソナってる。

「んっん~~~……お客様ぁ?ちょーっと表出ましょうかぁ?」
「あ」
「う」
「お?」
 
 数分後、そこには粛清された上に備品の修理代をもぎ取られた哀れなイタリア人が3人、石畳に転がっていた。どうして3人ともヤムチャスタイルで倒れてるんですかねぇ。もしかしてドラゴンボール大好き国家ですか?

「ど……DB好きにあらずんば地球人類に非ず、だぜ……」
「し、しかし……ベル坊はそんなに好きじゃなかった気が……」
「つまりベル坊は地球人じゃなくてサイヤ人……?ベル坊のおしりからお猿さんの尻尾………ふひゅひゅ」
「アングロ、笑い方が気持ち悪い」
「ぐはぁぁぁーーーーーーーーーーーッ!!!」

 ベルくんの素の一言がアングロちゃんの急所に当たったぁぁぁーーー!!効果は抜群だッ!!………抜群過ぎて精神がこなみじんになって死んだのか、それっきり彼女はピクリとも動かなくなった。
 私もベル君に気持ち悪いって言われたら精神的なショックでマインドブレイクされて立ち直れないかもしんない。漠然とそう思った。

 ……数分後、言い過ぎたと思ったベルくんになでなでされて蘇生した。ベルリウムの力もあるとはいえ、この人チョロい。



 = =



 逢魔ヶ刻の不気味な夕焼けが世界を埋め尽くす時間―― 一人の人間と一頭の獣が、対峙していた。

 荒々しい息を吐きだし、低い姿勢からじりじりと間合いを詰める漆黒の暴走特急のギラつく目が、相手の人間を捉えて離さない。それは生存本能であり、闘争本能であり、「打倒して勝利する」という非常に刹那的な欲望に付き従っているが故。
 そこに迷いや躊躇いといった概念は一切存在せず、ただ純粋な敵意だけが静かな森を伝播する。

 一方、対峙するのは静かに構える若い青年だった。やわらかそうな印象を受ける茶髪を微かな風で揺らしつつ、森特有のまとわりつくような不快な湿度にも眉一つ動かさない。呼吸は静かに、下手に動かず、しかし退く様子は微塵も見せない。
 彼は野生動物ではないが、内に秘めた生存本能と闘争本能は獣のそれに劣らない。それが証拠に彼の瞳は獣に負けず劣らず『飢えて』いた。勝利への渇望、生存への執着。戦闘に必須な精神の全てを総動員したまるで隙のない構え。

 二つの生物の決定的な違いは一つ。
 狂おしき戦闘本能を抑えるのが理性かどうか――それだけだ。

「決着をつけよう――勝負だ」
「ブルルルルルルルル………!」

 獣の本能も、その言葉に応える。直感が告げるのだ、次の一瞬で全てが決まると。

「………………」
「………………」

 心臓の音だけが大きく、それ以外は耳が痛いほど静かに。

「………」
「………」

 僅か1秒にも満たない時間が果てしなく引き伸ばされ、世界の全てがスローモーションになるその刹那に。

「―――!!」
「―――!!」

 青年、浅間結章は極めて無造作に背中から猟銃を取り出して構えた。

「流石に素手は危ないから銃が安定だよね!」
「ブギャアアアアアアアアッ!?!?!?」

 自分の想像していた勝負と全然違う光景に、何とはなしに「裏切りものぉぉぉぉぉッ!?」と叫んでいるかのような悲壮感のある悲鳴だ。しかし、ユウの手は何のためらいもなくトリガーを引き、パァン!という乾いた銃声と共に弾丸は吸い込まれるように黒い暴走特急ことイノシシの頭頂部に直撃した。言うまでもなく、即死である。

「よっし、ISから降りて結構経つけど腕は衰えてないね!」
「ユウ~~~!銃声聞こえたけぇ来たんやけど……はれ!?もぉイノシシ仕留めとったん!?」
「や、なんか目が合ったから逃げるのも危ないかと思って。さ、急いで血抜きをしちゃおうか!このままだと重い上に後で食べるときに美味しくないからね!」
「はぁ~~……トカイの人やと思ってナメとったけど、猟師生活に順応しすぎやろ!!なしてそげん銃やナイフの扱いが堂に入っとるん!?」

 既にナイフでイノシシの血抜き――をするまえに供養の合掌をするユウの姿に、駆け付けた少女は尊敬半分、呆れ半分の視線を送った。現在ユウは彼女の家に泊まらせてもらいつつも様々な手伝いをしているのだが、田舎から来たなよなよしそうな青年がまさか狩猟免許まで持っている事に「何者なんだ」という漠然とした疑問が隠せない。

(なんや修業中やとか言うて親父の道場に来て、生意気やからって「イノシシ仕留めて来たら認めたる!!」なんて無理難題押し付けられたから可哀想になって見に来たけど………ほんま何なん、こいつ?)

 夏休みが始まって約1週間……ユウは何がどうしてこうなったのか、とある田舎の山陰で完全にマタギになっていた。
  
 

 
後書き
  簪「ずっと圏外………ユウ、いったいどこにいるの?」
ジョウ「俺の予想では山奥だな。今頃猟銃抱えて猪狩りしてんだろ。あー牡丹鍋食べたくなってきた」
  簪「………なんでジョウが当たり前のように更識の屋敷にいるの?」
ジョウ「楯無と仕事の打ち合わせさ」

みたいなことも起きてます。

IS登場の影響で国内でも武器開発が行われるようになったため、銃の敷居は現実の日本より格段にユルくなってます……という設定。銃の影響でクレー射撃、そして千冬の影響で剣道の競技人口がかなり高まっているんじゃないかとか考えたり。 
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