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ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~

作者: ツン
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SAO:アインクラッド
  第34話 軍の徴税隊

カゲヤside


教会を出ると木立の間を縫って市街地に入り、裏通りを駆け抜けていく。
NPCショップの店先や民家の庭などを突っ切っているが、今はそんなことを気にしている暇はない。

「子供たちを返してください!」

角を曲がると一つ先の細い路地の方から声が響いてきた。

今の声はサーシャさんか
レンの言った通り軍が路地を塞いでいるのか

素早く路地の角まで行き、気付かれないよう中を覗く。
思っていた通り軍は子供たちを路地の奥の壁まで追い込み、取り囲むようにして路地を塞いでいた。
その手前ではサキとキリトとアスナが眼に怒りの色を滲ませながら軍を睨む。
そして、キリトたちの数歩先にはサーシャさんが軍に向かって叫んでいた。
しかし、軍はサーシャさんの言葉を笑い流し「社会常識」やら「市民には納税の義務がある」やら笑いながら言う。
だが、いくらそれらしいことを言おうがやっていることはいじめと同じだ。

「虫唾が走る」

怒りが込み上がると同時に頭の奥でチクリと痛みがはしる。
それと同時に目の前の光景が別の光景と被さって見える。
それは忘れたい記憶、消し去りたい記憶。





大人数の少年に囲まれた少女が叫ぶ
『助けて!』と
そしてその集団の手前に立つ少年が叫ぶ
『離れろ!』と
だが集団の少年たちは離れない
少年を睨みながら道を塞ぐように立ちはだかる
その奥で少女の目の前に立つ1人の少年がニヤリと笑い、拳を振り上げ、そして……





「……!!クソッ、嫌なものを思い出した」

頭を左右に振り、嫌な思い出を振り払うと改めて状況を確認する。

ブロックか……なら、回り込むか…

通路から離れると少し助走をつけ、建物の壁を駆け上る。
屋上へ行くと下の通路の状況を確認しながら回り込むと下に飛び降りる。
軍と子供たちとの間に着地するとす、ぐに子供たち歩み寄る。

「安心しろ。もう大丈夫だ」

そう言って装備を戻すよう促すと振り返り軍の方を向く。
軍のプレイヤーたちは呆然とし、その奥ではキリトたちが驚いた表情で見ていた。

「おい……オイオイオイ!!」

ようやく我に返った軍のプレイヤーの1人が怒りの表情で声を上げた。

「なんだお前は!!軍の任務を妨害すんのか!!」

「任務だと?子供を脅し、金を巻き上げるのが任務だと言うのか?」

「まあ、待て」

声を上げたプレイヤーを押し留め、ひときわ重武装の男が進み出てきた。

「見ない顔だけど解放軍に楯突く意味が解ってんだろうな?」

リーダー格らしい男は腰から大ぶりのブロードソードを引き抜くと、わざとらしい動作でペタペタ刀身を手のひらに打ちつけながら歩み寄ってくる。

「それとも圏外行くか、圏外?おぉ!?」

「まともに戦闘もしたことない奴が粋がるなよ」

なるべく穏便に済ませたかったがどうやら無理そうだ。
俺は剣を実体化させると鞘から刀身を抜く。

「お、やるか?」

リーダーは笑みを浮かべ剣先を俺に向けながら言う。

「ああ、戦闘というものを教えてやる」

言い終わるや否や俺はリーダーに向け突きを放つ。
至近距離から放たれた高速の突きをリーダーはまともに喰らう。
圏内なのでHPは減らないが代わりにノックバックが発生する。
ノックバックでリーダーが倒れる寸前にもう一度攻撃する。
無様に転がるリーダーを更に2度、3度と追撃を加える。

「ひあっ……や、やめ……」

剣撃を喰らい地面を転がるたび、リーダーは甲高い悲鳴をあげる。

「お、お前らっ……見てないで…うわあぁぁあ!!」

リーダーが言い終わる前に剣撃を喰らわせ、リーダーは再び地面を転がる。
だが、さっきの声で我に返ったのか軍のメンバーが次々と武器を抜いた。
それと同時に地面を蹴り、軍の1人に斬りかかる。
たちまち、轟音と絶叫が響くが気にせず次々と軍のメンバーを斬り伏せていく。
逃げようとする軍のプレイヤーには壁を使って回り込み、ソードスキルを使って押し戻すと剣撃を放った。





3分後

「今日はこれで許してやる……が、次、変なことしたらこんなもので済むと思うなよ」

虚脱して転がっている軍のプレイヤーたちを一睨し、剣を鞘に納めながら警告する。
取り逃がした数人はキリトたちが相手をしたらしく周りには虚脱して転がっている軍のプレイヤーがいた。

「すげぇ……すげぇよお兄ちゃんたち!!初めて見たよあんなの!!」

突然、子供たちの先頭に立っていた赤毛で逆毛の少年が目を輝かせながら叫んだ。
その後ろでは教会の子供たちがアスナたちの周りで目を輝かせながら歓声を上げていた。

「それにしても少しやり過ぎだと思うな〜」

剣を片手にニコニコと笑いながらサキが歩み寄ってくる。

「これくらいでいいんだよ」

サキの周りにも子供たちが集まっており、歓声を上げて飛びついつてくる。

「みんなの……みんなの、こころが」

キリトの腕の中で、いつの間にか目覚めていたユイが宙に視線を向け、右手を伸ばしていた。
アスナが慌ててその方角を見るが、そこには何もない。

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

アスナは走り寄り、ユイの手を握る。

「ユイちゃん……何か、思い出したの!?」

「……あたし……あたし」

ユイは眉を寄せ、俯く。

「あたし、ここには……いなかった……ずっと、ひとりで、くらいとこにいた……」

ユイは何かを思い出そうとするかのように顔をしかめ、唇を噛む。
と、突然

「うあ…あ……あああああ!!」

その顔が仰け反り、細い喉から高い悲鳴が迸った。

「……!?」

ザ、ザッというノイズじみた音が響く。
直後、ユイの硬直した体のあちこちが崩壊するように激しく振動した。

!?……まさか、まだエラーを蓄積して……

かそぼい悲鳴を上げるユイをアスナはキリトの腕の上から抱きしめる。
数秒後、怪現象は収まり硬直したユイの体から力が抜けた。

キリトのうつろな呟きが、静寂に満ちた空き地に低く流れた。


 
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