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ソードアート・オンライン 神速の人狼

作者:ざびー
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圏内事件 ー対決ー

 シィにシュミットがDDAの本部ではなく、19層〈ラーベルグ〉の圏外にいると聞かされてすぐ、嫌な予感が脳裏をよぎった。
 すぐさま、相方を連れてシュミットのいる19層の主街区へと転移し、彼の下へと急いでいる最中、隣を並走するシィが切羽詰まった声で問いてくる。

「ねぇ、ユーリ! シュミットが危ないってどういうことっ!?」

「逆に聞くけど、護衛もつけずに人気のないエリアに高レベルプレイヤーがいたらレッド共はどうすると思う?」

「っ!? ……それは」


 そう応えるとシィは目に見えて戸惑った。 彼女の代わりに答えるとしたら、今のシュミットは殺人者(レッド)共からはかっこうの獲物に見え、嬉々として殺しにかかるだろう。 それだけは絶対に避けなければならない。

「……間に合えよっ!」

 外周部から差し込んだ月明かりが未舗装の砂利道を照らす中、そう口にした。 〈フレンド追跡〉からシュミットの居場所は、この層の外周部の近く、小高い丘の上にいることがわかっている。 しかし、主街区から10分足らずで走破できる距離が異様に長いものに思えた。

 〈俊敏値〉を全開にして、疾駆したおかげか既に道のりの三分の二は進んでおり、ようやく自身の〈索敵〉スキルにプレイヤーの反応を表す光点が現れる。その数は3つ。 ドクンと心臓が跳ね、緊張が一気に高まる。


(まさか……っ)


 だいぶ前に攻略完了域となったエリアにプレイヤーが寄り付くわけがない。 シュミットがいる場所に偶然、他のプレイヤーが立ち寄ったとは考え辛い。 護衛の線もあるが何か後ろめたいことを抱えている彼が、わざわざ頼むとは思えない。 最悪の展開を想像し、唇を強く噛む。

(遅かったか……)
「ユーリ、アレっ!」

 失意の念に支配され、俯いている中、彼女の声に促され、顔を上げる。 〈索敵〉スキルを上達させることで得られるオプション、〈暗視〉と〈視覚野強化〉の恩恵を得て、視界に映ったのは、自身の描いた最悪の展開ではなく、見知った人物の顔だった。

「ヨルコさんと、カインズさんっ!?」
「な、なんでかなっ?!」

 丘の上にいた三人のプレイヤーは圏内事件の第一の被害者、カインズ氏と第二の被害者、ヨルコ氏。そして、見慣れた金属鎧を着込んだシュミットが跪き、こうべを垂れていた。まさか幽霊っ!などと叫ぶシィをよそに、ひとまず安堵した。
 丘を登りきるとさすがにヨルコさんたちも気がついたのか、三人は目を丸くして驚いていた。

「あ、あなたは……教会の時に」
「ユーリさん……どうして此処にっ!」
「……はぁ、はぁ。シュミットを、〈フレンド追跡〉で追ってきたんです」


 肩で息をしながら、彼らの質問へと返答する。一度大きく息を吸い、呼吸を整えるとしっかりと彼らを見据え、言葉を切り出す。

「……どういうことか説明してくれますよね?」
「っ……はい」

 沈痛な面持ちで返事をしたのは、ヨルコさんだった。 今の彼女は宿屋で会った時のように何かに怯えた様子はなく、淡々とこれまでの事を語り始めた。

「私達は、グリセルダさんの死の真相を知るために、リーダーの死に関して調べてる中でわかったことが唯一、シュミットが中層プレイヤーから、トップギルドの一員になったことでした。初めは、頑張ったんだなと思っていたんですけど、ギルドが解散してからDDAに入るまでの期間が短過ぎた。だから彼が怪しいと考えた私たちは、精神的に追い詰めて真実を話させようとしただけです。 決して彼を殺そうとか考えてたわけじゃないんです」

「なるほどな……」

「えぇ、ですから全て終わった暁には、迷惑をかけてしまった皆さんに全て話して、謝罪しようと思ってたんです」


 そのために選んだのが、アイテム消滅時の演出を利用した〈偽装殺人〉。 彼女達が本当にシュミットを殺そうとしているわけではないと知れて、安堵した。
しかし、気が弛んだ瞬間、シュッと何かが風を切り、うめき声とともにシュミットの体が地面へと崩れ落ちた。

『なっーーー!?』


 突然の出来事に皆が息を呑みこむ。 全員の視線が倒れ伏したシュミットーー彼の首筋に刺さったスローイングダガーに集まる。 半分ほど埋まった刀身は、緑色に濡れており、麻痺毒が塗ってあることが判断できた。 即座にポーチから結晶アイテムを取り出し、解毒をしようとするが再び投げられたナイフがユーリの手から弾く。 ダガーの飛んできた方向を睨みつけると同時に、甲高い声が無邪気に響いた。

「見たかよ、ヘッド! 俺のスローイング、最ッ高にクールだったろ!」
「あぁ、上出来だ、ジョニー」

「っ! ……お前らは!」


 ダガーが飛んできた方向に顔を向ければ、通常のプレイヤーとは明らかに違う風格を身にまとった三人が佇んでいた。 その中で、ユーリの手から結晶を弾いたと思われる男が、自らの武勇をリーダー格と思われる黒いポンチョの男へと自慢していた。 そして、彼らの隣で髑髏マスクのプレイヤーがシュウシュウと不気味な笑い声を漏らしていた。
 全身を闇に溶け込むかのような黒一色の装備に身に纏った彼らを意識すると同時に、頭上にカーソルが出現した。 しかし、その色はプレイヤーを示すはずのグリーンではなく、ーー所謂、犯罪者を示す色ーー血に濡れたかのようなオレンジ色。 そして、彼らの利き手の甲には、黒い棺桶から伸びた骸骨の腕、そして蓋にはニタニタと不気味な笑いを浮かべたタトュー。

 ーー〈 笑う棺桶 (ラフィン・コフィン)

 迷宮区攻略を目的とせず、プレイヤーを殺す事を愉しむ殺人者(レッド)プレイヤーの集団。

 今まで犯罪者(オレンジ)プレイヤーは、集団で少人数のプレイヤーを脅し、金銭やアイテムを強奪するだけで、プレイヤーの命そのものを奪おうとはしていなかった。
 しかし、一部の犯罪者(オレンジ)を扇動し、殺人者(レッド)とたらしめたのが、今ユーリたちの目の前にいるポンチョの男、Poh(プー)である。

 アインクラッド最大の危険人物を前にして、ユーリは自身の運の悪さを悔いた。 状態異常を即座に回復できる結晶アイテムは、今ので最後だったのだ。 ストレージの中に予備はあるが、彼奴らはメニューを呼び出す暇さえあれば、嬉々として俺らを殺しにくるだろう。 エストックと毒塗りのナイフをそれぞれ構えた手下相手なら、ダメージを受ける覚悟で止めようと思えば、止められるが問題はPohの方だった。

 男が持つ中華包丁のような大型のダガー〈友切包丁(メイトチョッパー)〉は、ーー現時点のプレイヤーメイドで最高クラスだと自負しているーー自分の刀〈神刀ー神威ー〉に並ぶ性能を持つモンスタードロップ、いわゆる〈魔剣〉クラスであり、その切れ味はシュミットの堅牢な防御力でさえ、紙のように引き裂く。 布装備がメインであるヨルコさんたちが〈友切包丁〉の一撃をもらえば、ひとたまりもない。 さらに、数多のプレイヤーを殺した本物の殺人鬼は、プレイヤーの経験値やアイテムリソースを得ており、レベル、実力は攻略組に匹敵する程。 頼れる相棒がいるとは言え、被害者ゼロで殺人者(レッド)プレイヤー共を退けられるかは、正直わからない。

 せめて、一人でも戦力を増やそうと一か八か、メニューを開こうとするも目敏くPohによって制止させられる。

「おっと、動くなよDog。 何かしようってんなら、そこの男女二人を真っ先に殺すぜ?」
「「ひっ……⁉︎」」
「くっ……そ!」


 身を寄せ合い、目の前の恐怖に震える二人のか細い悲鳴を聞き、PoHの言葉に従う事を余儀なくされる。右手を下ろし、従う意思を示すと、気をよくしたのか、フードから唯一覗く口元がニヤリと嗤った。

「随分と素直じゃねぇか。 よく躾けられた飼い犬は嫌いじゃねぇぜ」
「ハッ、薄気味悪い格好した奴らに気に入られたくもないね」
「ほぉ、吠えるじゃねぇかDog!」


 殺人鬼の殺気を真正面から受け止め、額から汗が流れ落ちる。無言で睨み合いを続ける中、先に言葉を発したのはユーリだった。

「一つ聞いてもいいか。 なぜ、お前らがここにきた」

 シュミットがギルメンにここに来る事を伝えるとは考え辛く、また過疎っている地域を理由もなく彷徨う理由がない。 何より、シュミットへの奇襲はあらかじめ来ると分かっていなければ困難だったはず。
 だとすれば、シュミットとヨルコさんたちの関係があり、今回の事件についてよく知る誰かしらが情報をリークしたとしか考えられない。 しばし考える素振りを見せたPoHは、殺伐とした空気の中で陽気に問いに答えた。

「なに、今夜丘の上でステキなParty(パーティー)が開かれるって招待を受け、俺らはそれに乗っただけ。 そしたら、豪華にも攻略組が三人も居たってわけさ」
「お前らに情報をリークした奴は、誰だ!」
「さぁなぁ……? なんなら力づくで喋らしてみるかい?」

 ニヤリと笑うと、包丁の背で肩を叩き挑発する素振りを見せる。 しかし、それに乗った瞬間、後ろ二人とシュミットが食い散らかされる事は目に見えている。 誘いに乗ってこないと分かると、PoHの口元が歪む。

「なんだ、勇猛果敢なWolfかと思えば、玉無しかよ。 まぁ、いいか。 さて、豪華なメンバーが揃ってる手前、どうやって楽しんだものかねぇ?」
「アレ!あれやろうぜヘッド!」

 即座にジョニーが甲高い声で陽気に叫んだ。

「殺し合わせて、生き残った奴だけ助けてやるぜゲーム!ま、ハンデは必要だろうけどな」
「ンなこと言ったってオメェ。結局生き残った奴も殺したろ」
「ああぁ!ヘッド、それ先に言っちゃダメなヤツすっよ!」

 緊張感のない、しかしおぞましいやり取りに殺気めいた感情が込み上げてくるのを自覚する。 日々命を賭して、現実へと帰ろうと努力しているのにこんな風に人の命を弄んでいいのか!

 苛立ちを募らせる中、名案が浮かんだのかPoHは包丁の切っ先をユーリへと向け、ゲームの内容を宣言する。

「あぁ、じゃあこうするか。 ジョニー、ザザ。 オメェらでハンティングしてこい。 ターゲットは、そこの 臆病犬 (Chicken)だ」
「は……?」
「は?じゃねえよDog。 俺を失望させた分、せいぜい楽しませろ。 やり遂げられたら、そいつら見逃してやってもいいんだぜ? 」
「くそったれ……!」


 二つに一つか。 シュミットの麻痺毒ももう暫くすれば、効果が終了するはず。 それまで耐えればいいだけだ。 手下二人なら、耐えるどころか、撃退できる自信はある。 それに〈人狼〉スキルの恩恵で、相手が如何にハイレベルな麻痺毒を使用しようがそれで倒れる事はない。

 決意は決まった。しかし、それを止めさせようと腕を引かれる。後ろを振り返れば、大鎌を片腕に抱えたシィが不安で揺れる眼差しを自分に向けていた。

「待って……、ダメ、だよ!」
「……大丈夫。 シィは三人を守ってて」

 か細い声で心配する相棒を慰めようと頭に手を置き、グジグジと撫でてやる。不安を解消されたてあろう頃を見計らい、撫でるのを止め、一歩大きく踏み出す。

「ヒュー、見せてくれるじゃねぇか騎士(ナイト)様よ。 さて、愛瀬の途中邪魔しちゃ悪いが、こっちも退屈してきてるんでね。 早速だが準備はいいか」


 左手を鞘へと当て、右手を刀の柄へと置く。 いつでも〈抜刀〉を放てる状態にするとそれぞれの獲物を構えた狩人二人へと視線を向ける。

「It’sーーー」

 左手を空高く掲げ、

「ーーーShow time!」

 腕が振り下ろされ、開戦の合図となり、 三人がほぼ同時に駆け出す。 自分が二人との距離を縮めるために直進したのに対し、ザザとジョニーは挟撃するために左右に分かれる。

「シュッーー!」
「シッ!!」

 二人同時にソードスキルを発動させ、肉迫してくる。相手の戦略は、予想通りの挟撃。 普通ならば、左右からほぼ同時に繰り出される攻撃を防ぐ事は不可能。 そう、普通ならば。

「セヤァァッーー!」

 抜刀術 範囲技 〈波紋〉

 気合い一閃。 体を捻り、全方位への抜刀が放たれる。 夜を闇に銀色の軌跡が円を描き、挟撃を完全に弾き返す。ギリギリ武器で防御されるが、強烈なノックバックが彼らに反撃を許さない。 彼らより早く技後硬直を抜け出すと、納刀し、次へと備える。

「シ、ネェ!!」

 エストック使いのザザより早くノックバックから解放された毒ナイト使いジョニーは、次の一撃を撃たせまいと猛接近(チャージ)を仕掛ける。 ソードスキルの推進力を助けに、一瞬で懐へと入ると取ったと言わんばかりにニヤリと笑う。 しかしーー

「甘いっ!」
「グッ……ハッ?!」

 鞘の強烈な殴打がジョニーの痩躯にめり込み、体勢をくの字に曲げる。 すかさず、蹴りを叩き込み、地面へと転がすと思考を背後から奇襲を仕掛けてくるザザの対処へと切り替える。

「フッ……!」
「ッ!!?」

 背後に鞘で突きを繰り出し、ザザの腹部に強烈な一撃を見舞う。 予期せぬ一撃に発動中だったザザのソードスキルがファンブルし、技後硬直に襲われる。 大きな隙を見せたザザを袈裟懸けに斬りつけ、そのHPにダメージを与える。 先の防御で減っていたHPは、大幅に減少し、半分を切り、注意域(オレンジ)へと到達する。
 元より中層プレイヤーよりかは遥かに多い体力を一撃で大幅に削るユーリに脅威を感じたのか、追撃は行わず距離を置く。
 しかし、二人を退けたと思った矢先、彼奴が動いた。

「ハァッ!」
「クッ……!」

 大上段から放たれた〈友切包丁〉の一刀を〈神威〉で受け止める。 両者の力は拮抗し、鍔迫り合い、互いの獲物が火花を散らす。 しかし、その均衡を崩したのは、Pohだった。 ユーリの胴体へと蹴りを放ち、ーー彼から見ればーー小さな体躯が吹き飛ぶ。
 ユーリもわざと蹴られる方向へと飛び退き、大きく距離を取ると即座に体勢を立て直す。

 二度、三度と斬り結び、大きめの一撃が放たれ、衝突。 その際の衝撃で、二人とも大きく距離を取ると、武器を構えたまま睨み合う。 実力は拮抗して見えたが、その実多く消耗していたのはユーリの方だった。

「……はぁ、はぁ」
「なんだ、もうバテたのかよ」
「はぁ……お前こそ、傍観してるんじゃなかったのかよ」
「なんだそんなことかよ。 狩りは協力プレイが醍醐味だろ、そうゲームにもあるだろ」

 片手で包丁を弄びながらそう言うPohはユーリに比べ、かなり余裕がある。
 大きく息を吸い込み、呼吸を整えると、Pohへと向けていた刀を鞘へとしまう。 しかし、それは降参の意を示すものではなく、交戦。 犬耳をピンと立て、意識を自らを狩ろうとする殺戮者へと集中させる。
 一方で、ダメージから回復したザザとジョニーも加わり、ユーリを三方向から囲み、包囲網をジリジリと狭めていく。 殺気が先ほどより濃くなり、緊張が一気に高まる。 しかし、この死合いが終わりを迎えたのはすぐだった。

一触即発の空気の中、どどどっ、どどどっと地鳴りのような音が響き、武器を下げ、皆一様に震源の方へと視線を向ける。

 視界に捉えたのは、主街区から一直線に駆けてくる白い燐光だった。それが闇のような漆黒の騎馬の蹄を包む青い炎だと見て取れたのは数秒後の事だった。 そして、やはり騎馬の上には騎手が跨っており、夜の闇に白い光の軌跡を描きながら、猛烈の勢いで迫ってくる。
 轢き殺さんばかりの勢いで殺戮者たちの包囲網へと突っ込むと、騎手は手綱を思いきり引き、急制動をかけた。驚いた騎馬が前脚を高く掲げ、騎手は耐えきれずに背中から真後ろへと転げ落ちた。

 どすんっと尻餅をつき、「イテッ」と毒吐いた声にはやはり聞き覚えがあった。ズボンについた草を払い立ち上がった闖入者は、こちらを見ながら緊張感のない声を出す。

「ギリギリセーフか」
「んなわけあるかっ!」

 思わず空いた手で闖入者の後頭部を叩いていた。イテテと頭をさする闖入者ーー〈黒の剣士〉キリトを見ながら、毒吐いた。

「遅いわ、馬鹿」
「はぁ? これでも超特急で来たんだぞ。 第一、お前……シュミットが危険だから来いとか、場所がわからねぇよ。 もっと詳しく書け!」
「察しろ。 おかげでこっちは殺されかけたわ」

 事実、Pohとの交戦で総体力の一割ほどが削れている。突如、繰り広げられたまるで緊張感のないやり取りは、キリトがPohを視認したことで終わりを迎える。

「よぉ、Poh。 お前まだそんな趣味悪い格好してんのか」
「……貴様に言われたくねぇな。 それとその言葉お前の横に立ってる奴にも言ってやりな」
「……悪かったな、趣味悪くてよ」


 なぜか巡り巡ってディスられたユーリの声には僅かながら怒気が含まれていた。しかし、一歩踏み出したジョニーの怒声によって上書きされる。

「テメェ……! 状況わかって言ってんのか! 余裕かましやがって、ぶっ殺すぞ!」
「状況……ねぇ」

 そう言われて、周囲に視線を巡らす。 そして、隣に並び立った相棒と顔を見合わせ、ニヤリと笑う。

「案外余裕みたいだけどな」
「さて、攻守交替だよっ! 今度はそっちが狩られる番。 イッツ、ショウタイム、ってね!」

 大鎌を構えたシィを筆頭に、麻痺から脱したシュミットがタワーシールドとランスを装備し、ヨルコさんたちも決意を固めたのか各々武器を構えて交戦の意を示している。 数の差は6対3。単純に二倍の戦力がこちらにはある。

「あぁ、ついでに言っておくがあと数分もすりゃ援軍が駆けつける。 十倍以上の戦力を相手取る気はあるかね、ハンターさんたち」
「……Suck」

 PoHは、苛立たしい気に舌打ちするのが聞こえた。左手を鳴らし、手下を下がらせる。 Pohは、右手の包丁を持ち上げ、まっすぐユーリ達を指し、吐き出した。

「今度は俺らがパーティーに招待する番だ。 大事なお仲間の血と骸で豪勢に飾ってもてなしてやるから、期待しといてくれよ」

 包丁を右手でクルクルと回し、ホルスターへと納めると黒革のポンチョを翻し、丘を下っていく。 その後を手下二人が追いかけていくのを見ながら、ホッと安堵の息を吐き出した。




 
 

 
後書き
久々のガチ戦闘。 深夜テンションで一気に書き上げたため、粗が目立ちますが見逃してくりゃさい。
本作の〈圏内事件〉ではユーリ視点をメインに書いたので、シィが全然目立たなくて辛かった。
次章は、彼女にスポットを当てて書きたいな、と抱負を述べてあとがきとします。

圏内事件編は次でようやく終了です。
 
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