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SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》

作者:鳩麦
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コラボ・クロス作品
戦士達×剣聖
  剣聖×戦士達 エピローグ

 
前書き
エピローグは、半分以上字伏先生の作品です。
後半部分のみ、両主人公それぞれの視点として、僕がリョウの視点を書かせていただきました。 

 
そんなこんなでWデートをすることになった桜火、月雫、涼人、美幸の四人は上野動物園に足を運んでいた。東園にあるゾウやライオンなどオーソドックスなものから名物のジャイアントパンダやマレーグマやニホンツキノワグマがいるクマたちの丘、月雫の希望でホッキョクグマとアザラシの海を回ったり、西園にあるオオアリクイ舎でアリクイにえさをあげたり、涼人の希望でアイアイを見に行ったり、両生爬虫類館にてヘビやトカゲとふれあったりしていた。

「ほら、美幸も触ってみようよ?」

「む、むりむりむりむり!?一匹ならともかくなんでそんなに!?む、むしろそれより、な、なんで月雫は平気なの!?」

大小様々なヘビを二、三匹の首に巻きつけながら月雫は美幸によっていくが、月雫が進んだ分だけ美幸が後退する。それを遠巻きに見ていた涼人が呆れながら桜火に話しかけていた。

「なぁ、お前んとこの嫁さんって怖いもの知らずか?」

「好き嫌いが少ないだけだよ。大抵のものは触れるらしいぞ」

「ふーん……あぁ、まぁでも旦那も旦那でそのタイプだしなぁ……」

「そうか?」

涼人の言葉に首をかしげる桜火だが、その首や手には三、四匹のヘビが巻きついている。ヘビ嫌い、もしくは爬虫類嫌いな人が見たら卒倒しそうな光景なのは間違いない。

「止めなくていいのかよ?」

「この状態であの二人に近づいたら、美幸ちゃんがかわいそうだろ?」

「っはは!そりゃそうか!しゃあねぇ、俺が止めてくるわ」

そう言って月雫と美幸のほうへと歩を進める涼人。桜火も首や手に巻いていたヘビをやさしくはがすと、三人のもとへ歩いていく。頬を膨らませながら怒っている美幸と、苦笑いしながら平謝りする月雫。穏やかな光景が広がっていた。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

楽しい時間というものはあっという間に過ぎるもので、もう間もなく閉館時間の十七時を迎える上野動物園。出口に向かって歩いている四人だったが、唐突に桜火が考えるような声を出した。

「そういえば、これからどうすっかなー?」

「あん?……ああ、そういうことか」

前を歩く月雫と美幸は楽しく笑いながら談笑している。そんな二人の後ろを歩く桜火が唐突に切りだした疑問に、最初は疑問を感じた涼人だったが、桜火の言いたいことを理解した彼は頭を悩ませた。

「奇妙な縁で会ったんだ……このまま、さようならだと味気なくないか?」

「まぁな……で、なんかプランあんのかい?」

「うーん……居酒屋の暖簾をくぐる、とか?」

「鏡見て自分の年齢確認してこい」

「奮発して銀座とか六本木で高級ディナーとか食い行く?」

「金がねーよ」

割と真面目な表情で冗談めいたことをいう桜火。涼人の中で桜火のイメージが若干変わりつつあった。そんなことになっているとはつゆ知らず、桜火は頭を悩ませていたが、いい案が閃いたといったように彼の頭の上で電球が輝いた。

「なら、キリト君の家にお邪魔しないか?」

「あぁ?ウチにかよ?」

「うちにって、一緒に住んでんのか?」

桜火の疑問は当然と言えよう。名前も桐ケ谷というのだから親戚だろうと予測していた。だが、まさか一緒に暮らしているとは思っていなかったのだろう。

「無理そうなら他の案を考えるぞ?」

「んー、あー、まぁ、なんとかなんじゃね?」

「……キリト君にはなんて説明するんだよ?それに妹さんだっているんだろ?つか、キリト君たちがどっちの世界のキリトかわからんだろ」

「あー、カズについてはどうにかなるな。問題はスグだが……そこは友達とか言っとけばまぁ問題ねぇだろ。もし、桜火たちの世界のカズだった場合、口合わせはよろしくな」

「ずいぶんアバウトだな……まぁ、後は成り行きにでも任せてみますか」

そして、閉園時間を迎えた上野動物園を後にした四人は川越行きの電車に揺られていた。楽しく会話をする月雫と美幸だったが一段落したのか、月雫が桜火に疑問を投げかけた。

「そういえば、キリト君の家に行くんだよね?キリト君たちの記憶ってどうなってるのかな?」

「両方のキリト君たちが融合してるか、どちらか片方の記憶しか持ってないか、だな」

「じゃあ、アドリブまかせってこと?」

「そういうことだな。へま出さないように気を付けないとな」

「うん、そうだね」

【間もなく川越に到着します。お降りの際にはお忘れ物に――――】

電車の中でアナウンスが流れると、下りるために準備を始める。桐ヶ谷家にお邪魔したことがない三人は涼人に道案内を任せるしかない。念のため、桐ヶ谷家に向かう途中にあったスーパーで夕食の材料を買う。ちなみに献立は涼人の希望でロールキャベツとなった。
それから、少し歩くと目的の桐ヶ谷家が見えてきた。もともとは城下町だったらしく、昔ながらの日本家屋といった外観をしている。母屋に並ぶようにして建てられている道場もあり、結構な広さのある家だ。

「なかなかいい家だな」

「そいつはどうも……立ち話もなんだしよ、さっさと入ろうぜ」

そう言って涼人は玄関を開ける。そこに一人の少年がたたずんでいた。

「お帰り、兄貴。お客さんか?」

「「「お邪魔します」」」

キリトこと桐ヶ谷和人だった。涼人のことを兄貴と呼ぶこのキリトは涼人側のキリトであることは明らかであった。ならば桜火と月雫がとる行動はここで決まった。

「いらっしゃい、サチ。それから……」

「月影桜火だ。涼人の友達だな」

「柊月雫です。美幸の友達だよ」

「あ、ああ。よろしく。俺は……」

自己紹介を始める和人だったが、そこで待ったをかけた人物がいた。

「あー、カズ……ちょっといいか?」

「なんだよ、兄貴?」

「ちっとだけ、説明しなきゃならねぇことがあっから……とりあえず入れてくれ」

そう言いながら涼人たちは靴を脱ぎ奥へ伸びるフローロングの廊下を歩いていく。リビングに通された涼人たちは和人に大方の事情の説明をした。

「……つまり、桜火たちは平行世界の人間、ってことでいいんだよな?」

「ああ」

和人の言葉に頷くのは桜火。肯定を受け取った和人は腕を組みしばらく悩んだ後、リョウ人に向かって口を開いた。

「兄貴って、よくこういうトラブルに巻き込まれるよな」

「あぁ?なんだよ、俺のせいか?」

「少なくとも、色々なことに巻き込まれすぎだよ……もう」

美幸が少し怒ったように言うと、涼人は何も言えなくなってしまう。桜火と月雫は微笑ましそうに三人のやり取りを見ている。
そこで桜火が意地の悪い笑みを浮かべながら自分のスマホを三人に差し出した。

「一応、物証も用意してたんだがな……まさか、キリト君が簡単に信じてくれるとは思わなかった」

「物証って、なんだよ?」

涼人の質問に桜火は待ってました、と言わんばかりに口を開いた。

「まぁ、これでも見てくれ」

そう言いながらスマートフォンを差し出す桜火。その画面に映っていたのは知っているようで知らないネコ耳メイド服を着た美少女だった。スカートの裾を抑え、恥らうように顔を真っ赤に染めている。月雫は笑いをこらえるので必死だったが、まったくもって知らない人物の画像を見せられた涼人、和人、美幸の三人は首を傾げる。三人を代表して涼人が桜火に問い掛けた。

「誰だ、これ?」

「キリト君だ」

「……あー、わりぃ。もっかい言ってくれ」

「キリト君だ」

桜火の衝撃の言葉にさすがの涼人も思考停止した。聞き違いかと思い桜火に聞きなおすが、聞き違いではなかった。もう一度差し出されたスマホに映っている画像を見る。どこからどう見ても美少女にしか見えない。しかし、注意深く見てみると確かに顔の輪郭などはキリトのものだった。

「「カズ(キリト)……」」

かわいそうなものを見る目で涼人と美幸が和人のことを見る。それにあわてて和人は弁明を図る。

「そ、そんなことしたことないからな!!だから兄貴もサチもそんな目で俺を見るなよ!!」

「この世界のキリト君はこんなことしないだろうから物証にはなりえるだろ。こっちの世界のキリト君ならもっと別の反応するだろうし。ちなみに言っとくと、これはおれの世界のキリト君がおれの課した罰ゲームでこんなことになったんだ」

「結局はお前が原因かよ!!」

「そんなことより、晩飯の用意しようぜ」

和人の鋭いツッコミが入るが、桜火は涼しい顔でスルーする。それから、月雫と美幸がメインであるロールキャベツを作り、桜火と涼人が付け合せを作ることとなった。和人も最初は手伝おうとしたが――

「アルゲード焼きなんて作ったら、どうなっても知らないからな」

という桜火の言葉に手伝うことを諦めた。ある程度料理の腕はあると自負する和人だが、これで本当にアルゲード焼きなんて作ってしまったら、桜火側の自分と同じ道をたどるかもしれない、と直感的に感じたのかもしれない。
それから、月雫と美幸は手際よく調理を進めていく。月雫がキャベツロールを作り、ロールキャベツを提案した涼人の好みを知っている美幸がブイヨン味のスープを作っていく。食欲をそそる臭いが桜火たちの鼻をくすぐると――

ぐぅ~

何処からともなく聞こえた胃の虫が鳴く声がした。それに反応したのは桜火だった。

「さすがキリト君の兄貴……食い意地がはってんな」

「うっせぇ……」

「そのうち、胃袋でもつかまれんじゃねぇのか?」

「…………ん?あぁ、まぁ、そうかもな」

「……もうつかまれてるらしいな」

桜火と顔を合わせようとしない涼人。どうやらそれが答えらしかった。なんでこれで恋人関係にならないんだ?なんて言葉は心のうちにとどめておく。仲良くなったとはいえ、こればかりは本人たちの問題だからだ。

「さて、あとは煮込むだけだね」

「うんっ」

どうやらメインの調理はあらかた終了したらしい。それから、夕食の完成とタイミングよく帰ってきた直葉を交え、賑やかな食卓となった。
夕食後、月雫が剣道を嗜んでいると知った直葉が勝負を挑んだり(月雫の勝利に終わった)、桜火と涼人が互いの苦労話で盛り上がったり、月雫、美幸、直葉の三人でのガールズトークが行われたり各々楽しい時間を過ごした。
そして、時刻は二十三時を少し過ぎたころ。久しぶりに騒いだのか美幸たちは眠りに落ちていた。

「さて、と……月雫、そろそろ行くか?」

「そうだね……名残惜しいけど、ね」

そう言って眠っている美幸たちを起こさないように、玄関へと向かおうとする二人に声が掛けられた。

「よぉ。お二人さん、お帰りかい?」

「ああ。さすがにどうやって戻るかもわからないしな。とりあえず、ここに居続けるのは得策じゃないと感じたのでね」

「さよか……まぁ、なんつーか、なかなか楽しかったぜ、桜火」

「ああ、おれもだ、涼人。名残惜しいが、お別れだ。またな、とは言わないでおくよ」

「そいつは残念だ……んじゃまぁ、元気でな」

「ああ、そっちもな」

そう言って立ち去ろうとする桜火と月雫だったが、何かを思い出したようで涼人のほうを向き直った。

「そういえば、ALOやってるみたいだな」

「お前らもやってるのかよ……?」

「ああ。なぁ、リョウコウ」

「あん?」

いきなりキャラクターネームを呼ばれた涼人は眉をかすかに動かす。だが、桜火は微笑みながら意外な言葉を口にした。

「今回つけられなかった決着……機会があればALOで着けるのもいいかもしれないな」

「おいおい……勘弁しろって」

苦笑いをしながらそう言う涼人。それを見た桜火は月雫と供に何も言わずに桐ヶ谷家を後にした。

―――――――――

電車に揺られ、桜火の住まいがある品川に着くころには零時を回ろうとしていた。途中で寝てしまった月雫をおぶさり、マンションへと入っていく桜火。自室に入ると、タイミングよく零時を回った。月雫をベッドに寝かせると図った様なタイミングで携帯が鳴った。発信者は不明。非通知での電話だった。

「はい、もしもし?」

『どうもです、剣聖d「ブツッ」』

掛けてきた人物の声を聞いた瞬間、桜火は通話を終了した。溜息を吐き、スマホを机の上において月雫と添い寝をするためにベッドに横になろうとした時、再びスマホに着信が入った。バイブレーションがうるさいが、この際無視決め込む桜火。しかし、五分たっても通話が切れないので仕方なくスマホを拾い、通話アイコンをタップする。

『どうm……』

「お掛けになった電話番号は現在使われていない。よく確認したうえで二度と掛けてこないことをお勧めする」

否が応でも通話する気が桜火にはないらしい。だが、先人はよい言葉を後世に残している。すなわち――

Trrrrrr―――Trrrrrr―――

二度あることは三度ある。かけてきた番号を見ると、当然のごとく非通知だった。もう、どうとでもなれ、と通話アイコンをタップする桜火。その表情は疲れに満ちていた。

「はい、もしもし?」

『ひどいじゃないですか、何度も何度も切るなんて!私が何をしたというのです!』

「自分のしたことを振り返ってから言え」

努めて冷静に言う桜火だったが、その声には気はあまり感じられない。

「で、何の用だよ?」

『いえいえ。並行世界の感想を、と思いましてね。どうでしたか?』

「……まぁ、いいんじゃねぇの」

ベッドに腰掛け、寝ている月雫の髪を撫でながら穏やかな表情で言う桜火に電話の主であり、今回の元凶である天の声は意外といった声を上げる。

『おや、意外ですね・・・もっとこう罵声やら何やらが飛んでくるかと思いましたが』

「まぁ、ああいう体験も貴重だと思っとくよ。こっちでは類を見ない奴にも会えたしな」

『いやはや。剣聖と刃一騎打ちはなかなか見ごたえがありました!また、是非ともお目にかかりたいものですね』

「ご期待に副えたのなら何よりだ。んじゃ、疲れてっからこれで失礼するよ」

『ええ。お疲れ様でした――≪剣聖≫ソレイユ殿』

電話を切ると桜火は窓から見える月を見上げる。きれいに輝く満月が夜の空を明るく照らしている。そんな月を見ながら桜火はここにいない戦友に歌うように言葉を投げかける。

「どこで生きていようと関係なく。ただ、“わたし”が剣士であるが故に―――
Die folgende win(次は勝つ)―――忘れるなよ、リョウコウ……」

────

・エピローグ

カラカラ、ピシッ。と音を立てて、家の扉が閉じた。それを見て、ふう。と一息つきつつ、涼人はのんびりと居間へと戻る。と……

「あ、りょう」
「おう。美幸起きたか」
「うん……月雫達は?」
「帰った。元の世界に……だろうな。今から追いかければ追いつけるかもしれねぇぞ?」
美幸は少し考えるそぶりを見せ……しかし、首を横に振った。

「ううん。良いよ……」
「そうか。さって……」
微笑みながら言った美幸に、涼人は少し笑って今の中を見る。内部では、今も今とて桐ケ谷兄妹がグーすかと寝息を立てていた。

「こいつ等はこんな調子だしな……お前、真理おばさんに連絡は?」
「あ、うん。一応したよ?」
「さよか……んじゃ、駅まで送ってってやるから、ちょっと待ってろよ」
「え、う、うん……」
そう言うと、涼人は手早く風呂場に行き、あらかじめ入力しておいた風呂の追い炊きのようすを見て来ると、和人の元まで近寄って行き、チョップで彼を叩き起こし、風呂に行くか寝るかを選べと迫った。
結果として、和人は睡眠、直葉は風呂を選んだ。ちなみにおこすのに苦労したのが直葉の方である。
ソファの上で寝ていたのを頭に何度かチョップして、飛んできた左腕を片手で受け止め、脱力したそれを逆に顔面の方に投げ返し、飛んできた右足を両手で受け止めて、ソファの上から引きずり下ろす。其処まで来てようやくうにゅうにゅ言っている少女にもう二、三度度チョップを当てて、ようやく彼女は目覚めた。

「ったく……世話の焼ける……」
「あはは……いつもこんな感じなの?」
「あぁ、偶にな。始めなんかもろにスグの腹パン喰らって悶絶したもんだ」
「そ、それは痛そうかも……」
苦笑しながら、出された紅茶を飲んでいた美幸は呟いた。ちなみに涼人はというと、食器洗い機から取り出した食器たちを、綺麗に拭いて、食器棚に収めている所だった。
それを終え、携帯を取り出すと23:24だ。

「そろそろ行くか」
「うん……ご、ごめんね……」
「阿呆、こんな時間に住宅街女一人歩かせられっか」
恐縮する美幸に呆れたようにそう言って、涼人は家を出ると、愛用のママチャリを引っ張り出す。

と、一度涼人が後ろに乗るかと聞いて、美幸がかなり従順した後それを断って、二人は歩きだした。

「今日は、楽しかったね」
「ん?あぁ、そだな……ま、俺としちゃ疲れた印象の方がつええけどよ……」
「あはは……電車の中で大冒険したんだもんね……」
「だよなぁ……実質二十四時間以上起きてた事になるんだぜ?」
「そう言えば……体、大丈夫なの?」
涼人の疲れたような一言に、美幸が心配そうに聞くと、しかし涼人はあっけらかんと答える。

「みてぇだな……なーんか、どう言う訳かなんともねぇんだよ……」
「そっか……ねぇ、りょう」
「ん?」
「……また、会えるかな?」
今日の二人の事を言っているのだろう事は、言われずとも分かった。

「さぁ……な。奇跡かなんかで会えた仲だ。あんま期待はしねぇ方が良いと思うぜ」
「そう……だよね」
残念そうに俯いた美幸を横眼で見て、涼人はしかし、のんびりと言った。

「つーか、半分はまたあんな奇跡起っちまったらこええんだよな……」
「……?」
首をかしげて涼人を見た美幸に、涼人は顔を苦くしていった。

「ソレイユ……桜火がな、何だか再戦に燃えてる雰囲気なんだよな……ぶっちゃけ、次会ったら桜火からは俺逃げるかも」
「あはは……それは、大変だね」
「あぁ……ったく、あの戦闘狂……」
ぶつぶつと何事かを呟く涼人に苦笑しながら、美幸と涼人は月夜の住宅街を歩いて行った。

────

「ふぅ……」
美幸と駅で別れ、再び家に帰ってきた涼人が直葉と入れ違いに風呂に入り、上がって自室に上がった頃にはすでに零時半を回る所だった。のんびりとパソコンの前に座った涼人はメールボックスを開き、新着メールが無い事を確認するとベットに入って……丁度その時、電話が鳴った。

「……?」
携帯端末を取ると、非通知の着信だ。こんな時間の電話であることと、何となく確認するのが面倒でしばらく放置していたが、一分経ってもサイレントマナーの着信を示す画面表示が消えないのを見て、溜息をつくと着信ボタンを押した。

[どうもですよ!ジン殿!!]
「やーっぱお前か……なんだよ、まだ何か用か?」
けだるげに答えた声に、声は楽しげに返してくる。正直深夜にそのテンションはうっとおしい。

[いやぁ、ジン殿は話がお早いですね!聞いて下さいよ!さっき剣聖殿にも電話したらですね何度も切るんですよ私の声がした直後に!!]
「あー。ははは、成程な。用無いなら俺も切ってやろうかー?」
棒読みで言ったリョウの本気を悟ったらしい声は言う。

[あ、いえ結構です!はい!えっとですね、一応剣聖殿にも伺ったんですが、いかがでした?お久しぶりの異世界からの来訪者は]
「どうって、なぁ……まぁ、楽しかったは楽しかったぜ。面白い奴に会えたしな」
ニヤリと笑った涼人に、電話の向こうで声は笑った。

[あはは。剣聖殿も同じような事をおっしゃってらっしゃいましたよ。類を無い奴に会えたと]
「そいつは光栄だ。まぁ、アイツの場合おかげで後がこええんだけどよ……」
[ふふふ。個人的には剣聖殿と(ジン)殿の勝負はもう一度見てみたい気もしますがねぇ……]
「どいつもこいつも……」
涼人は頭を押さえて深く溜息をつくと、のんびりとした声で言った。

「んじゃ、寝るぞ俺は。出来れば二度と声聞かせんなよ」
[最後まで冷たいですねぇ……]
「ほっとけ。寝かせろ」
[はい。それでは、お疲れさまでした。■■■■の刃……リョウコウ殿]
最後に面白がるようにそう言って、電話は途切れた。ツー、ツーと鳴り響く電子音に対して、涼人は小さく呟く。

「ほっとけ」
言うと、ベットの掛け布団をかぶって……何となく、窓の向こうを見た。
その向こうには美しい銀色の光を放つ満月の光が差し込み、電気を付けていなくても部屋の中は明るい。
きっとどこか別の世界で、アイツもまた、この月を見ているのだろう。

「“誇り”か……」
今日出会った一人の戦士……否、“剣士”の発した、その言葉を、リョウは小さく呟いた。

あれほどに、純粋に剣を振るう男に、今日初めて出会った。
あれほどに、自らの誇りと生き様を真っ直ぐ感じさせる男に、初めて出会った。
そしてきっと……あれほどの強さを持った男に出会ったことも、これまで、無かった筈だ。

と、同時に、今日、別れ際に言われた言葉が、リョウの頭の中に蘇る。

『今回つけられなかった決着……機会があればALOで着けるのもいいかもしれないな』

「ったく……」
自分は彼ほど大した人間ではないと言うのに……

自嘲気味に笑ったリョウは、のんびりと、空に向かって呟いた。

「精々精進させていただきますよ……《剣聖》殿──」
あり得ない出会いと……忘れられない戦友(おとこ)との記憶は……青年の心に、しっかりと、染みついたのだった。

────

お互いに、忘れ得ぬ。
だから、敢えて呟くのだ。

「「“またな”」」



Crossing story 《Strongest guys ─最強の二人─ 》 完 
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