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SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》

作者:鳩麦
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コラボ・クロス作品
戦士達×剣聖
  剣聖×戦士達 二ノ試練

「やれやれ、こんな面倒なのが後三つねぇ……」
「ぼやいても先が長いのは変わらないぞ」
「わあってるよ」
溜息をつきながら、苦笑しているソレイユにリョウが続く。二人とも特に負担を感じている訳でも無かったが。リョウとしては面倒臭いと言う事自体負担だった。

「そういやぁ、さっきのアレ何だよ。見たことねぇぞ?あんなSS(ソードスキル)」
「ん?あぁ……ユニークスキルだよ。≪剣聖≫ってんだ」
「はぁ!?」
「……どうした?大声なんて出して」
「あー、いや……」
リョウが考え込むように顔を伏せる。ちなみに足は止めない。
剣聖等と言うスキル名は聞いたことが無いが……しかし先程の鳥や岩の一件から分かる通り、この青年の腕の良さは折り紙つきだ。第一、神聖剣や二刀流以外にユニークスキルが有るならば攻略組でそれなりに情報も集めていた自分が知らないのは明らかにおかしい。
とすると……

『そもそも今がこの状況だからなぁ……』
頭の中に、以前出会った白黒の百合百合しぃ二人が思い浮かぶ。

「…………」
「考え事か?」
「ん、あぁ……なぁ、ソレイユ」
「んー?」
いつものように間延びさせて答えるソレイユに、リョウは聞く。

「お前キリトって奴知ってる?」
「知ってるよ。つか、リョウもキリトと知り合いだったのか」
「あー、知り合いっつーか……そいつに従兄が居るって知ってるか?」
「いや……初耳だけど」
「それが俺」
「ふぅー、ん?」
流石に違和感を感じたらしく、ソレイユが首をかしげる。

「……キリトの嫁にアスナっているだろ?」
「あぁ……居るな」
「そいつらが22層に住んでるんだが……」
「それも知ってる」
「……そいつらの家の隣の家に俺住んでたんだが……心当たりは?」
ソレイユの足が、ぴたりと止まった。

「俺の記憶が薄れてなければ……」
ソレイユはどうにも疑問の抜ききれない顔で言った。

「そこはおれの隠れ家のはずなんだが……」
「……またかよぉ……」
リョウが額に手を当てながら参った。と言った風に俯く。それを見ながら、静かにソレイユは聞いた。

「また?」
「あー、何て説明すべきかね……とりあえず、ソレイユ」
「うん?」
黙って話を聞くモードのソレイユに、リョウは困ったような顔で問うた。

「パラレルワールドって、信じるか?」

────

「つまり……リョウは並行世界の従妹に会ったことがある。って?」
「あぁ。信じらんねぇかもだけど、マジの事なんだよな」
「証明する手立ては?」
「無い!……まぁ強いて言うなら、お前と俺の記憶の祖語と、後は、なんかファンタジーなこの状況くれえだな」
「ふーん……」
ソレイユはリョウの言葉に相槌を打つと、すぐに何でもなさそうに肩をすくめた。

「まぁ、そうだとしても……する事に変わりは無いからな。要は問題なのはここを突破できるかどうかだし」
「あぁ……それもそうか……」
なんだかんだで思い出したようにそう言ったリョウを一瞥しつつ、ソレイユは再び歩き出し、リョウもそれに続く。
早い話、異世界だろうが並行世界だろうが、この二人にとってみれば野良パーティを組んでいる程度の感覚でしかなかった。

────

そのまま進むと、二人の前に再び先程見たような鉄製の門が現れる。やはりというか、石のアーチの上には文字があった。ソレイユがそれを読み上げる。

「二ノ試練 破軍」
「破軍?」
「あぁ、そう書いてある」
「ふーん……なんか、厨二臭ぇなぁ……」
呆れたように言うリョウに笑うと、ソレイユはそのまま扉に歩み寄り、ゆっくりと押す。その向こうは、何やら異常な程の真っ黒な空間が広がっていた。

「こりゃあ……なんだ?」
「さぁ?行けば分かるだろ」
「そりゃそうだな……んじゃ、行きますか」
まるでピクニックでもしているかのように、二人は暗闇に向かって踏み込んだ。後ろで重々しい音と共に扉が閉じると、すぐにその姿は掻き消え、唯黒い空間が周囲に広がる。唯一、前を、あるいは後ろを歩く相方の姿だけは、黒い中にくっきりと映って見えた。

「……さて、どうする?」
「進む。しかないだろ……おっ?」
と、ソレイユが前方に何かを見つけたらしく、目を細めて前を見た。リョウが尋ねる。

「なんだ?」
「門みたいなものが見える……」
「あぁ?」
ソレイユの横からリョウが覗き込むと、成程確かに、遥か向こうに門のような物が小さく見えた。大きさからして、此処から脱出するための物のようだ。

「なんだよ。二ノ試練ってのは暗いとこ通り抜けるだけの仕事か?」
「いやぁ……そうでもなさそうだぜ」
「あ?……っと、こりゃあ……」
言われて、リョウは下を見た。地面が、いつの間にか乾いた土へと変わっていたそれと同時に、周囲が一斉にその地面へと姿を変える。
一つ。ふわりと風がリョウとソレイユにまとわりゆくように吹いたかと思えば、空が燃えるような夕日に変わり、一つ。どんっとかすかに地面が揺れたかと思えば……

「はぁ……」
「おーおー、こりゃぁ団体さんで」
周囲の全てを何時の間にやら大量のモンスターが埋め尽くしていた。その数を数えきることは、ぶっちゃけた話面倒すぎるのでリョウもソレイユも即座に諦めた。前衛後衛など全く意味が無いので、リョウはふいっと体を反転させ、ソレイユと背中合わせになる。

「なるほど。こういうことね……」
「これ、全部潰すのかぁ?何体いんだよ、ったく……」
ソレイユが呆れたように呟き、リョウが面倒臭そうに言った。それこそ考えるのすら面倒なほどに無数の鎧を着込んだ戦士や、弓兵、重装備のオークや海賊刀をもったリザードマンやら槍持ちのゴブリンやらが二人を睨みつけ、今にも襲いかからんと身構えている。対し囲まれている二人はと言うと、リョウは相変わらず冷裂を肩に担ぎ、ソレイユは柄頭(つかがしら)に掌を置いて空を振り仰ぐ。

「あー」
「ん?」
「あったぞ。どの位居るのかわかるもの」
「あぁ?」
言われて、リョウはソレイユと同じ方向を睨む。そこには夕焼けなのか真っ赤に染まった空の中で、雲が不自然な形を描いている景色があった。

15000

「……やれやれだ、全く……」
「倒すだけでいいらしいから、何とかなるだろ」
「そりゃそうだけどよぉ……」
余裕そうに言うソレイユに、ふとリョウは疑問になった事を聞く。

「つーかソレイユ、お前なんかスゲェ気持ち楽そうだけど、こういう体験したことあんのか?」
「あるよー。その時は後ろに護るものもあったけどねー」
「へぇ……何体くらい?」
「一万だなー」
「は?」
聞き間違いかとリョウが聞き返した、丁度その時、リョウの目の前にいたオークが重々しい雄叫びをあげた。

「お待ちかねみたいだな」
「ったく、こらえ性のねぇ連中だ」
「行き成り仕掛けて来なかっただけマシかも知れないぞ?」
「んな優しさはいらねぇから代わりに人数的なフェアさを求めてぇんだけど」
「違いない」
苦笑しながら言ったその言葉で、お喋りは終わりだった。

「それじゃ、やりますか」
「あいよ」
空気を読んでいたのか、あるいは数的な余裕からか、先手を譲ってくれたMob達に感謝しつつ……

「ふっ」
「よっ」
バンッ!と言う空気が破裂するような音を立てて、二人は飛び出した。

────

リョウは正面に居た重装備のオークが慌てたように重そうなタワーシールドを構えたのを見て、ニヤリと笑って言った。

「そうそう。ちゃんと、耐えろよっ!!」
言いながら思い切り冷裂を振り上げ……

「覇ァッ!!!」
振り下ろす!と同時に、オークの体が後ろに向かって盾ごと吹き飛んだ。吹っ飛んだオークはまるでボールのように転がりながら、さながらボウリングの如く次々に味方達を巻き込み、飛んでいく。
その出来た隙間に、リョウが飛びこんだ。

「そぉら、よっと!」
一気に吹き飛んだオークまで距離を詰めると、ずんぐりむっくりした彼の体は無視して、顔面に向かってライトエフェクトを纏った足を振り下ろす。

足技 二連撃技 墜撃

踏み込むように振り下ろされた脚は、オークの顔面に直撃してそのまま彼はポリゴン片へと変わる。スキルを使った事でリョウには隙が出来たが、周囲全員、先程オークが吹き飛んだ事で体勢を崩しているため、近寄る事が出来ない。そのままリョウは一度バックステップで大きく下がると……

「せぇの……」
冷裂の柄、中心部を持ってそれを振り上げ、頭の上で回転させながら突っ込む。

「推ぉぉぉ……!」
冷裂をライトエフェクトが包み込み……

「羅アアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
ぶんぶんと頭上で振りまわされる冷裂が、周囲のMob達を次々に斬り裂き、一撃で屠って行く。それを気にも留めずに突進。次から次へと、近づいた者を一切合財切り刻む。

薙刀 九連撃技 斬傘車(きりがさぐるま)

「勢ィッ!!」
最後に正面に向かって思い切り振りきることで、目の前にいた六体を吹き飛ばしつつ爆散させた。しかしこのスキル、実は硬直時間が長い。当然、そこを狙って斬りかかってくるMobが……

「奮っ!!!」
土色のライトエフェクトと共に振り下ろされた脚が、大地を揺らし、周囲にいた何匹ものMobが一斉にスッ転ぶ。次の瞬間には、霞んで見えなくなるほどのスピードで振り切られた冷裂が、綺麗に周囲を掃除していた。

『さてさて……さっさとしねぇと、時間制限有るんだしな』
待ち合わせ相手の事を考えつつ、リョウは思う。
彼女との予定に遅れたことは無い。なので正直、今回遅刻していると言うだけで彼女は無駄に気を揉んでいる事だろう。それにSAO時代、帰るのが遅い度に注意をされていた身としては、万が一、五時間も遅れたらどうなるかなど、考えたくも無い。

「あー……」
一瞬、涙目の彼女にぶつぶつと注意される自分を想像して、辟易とした気分になり……
リョウは冷裂を少し強めに握りこむ。

────

「さてさて、それじゃお相手願うか」
リョウと離れ、群れへと突進していくソレイユの一撃を防ごうとしたのか、オークがタワーシールドを構える。が、それをわざわざ正面から相手にしてやる道理は此方には全くない。

「よっと」
とんっ、と一つ飛んで、タワーシールドと上を飛び越える。オークの後ろで構えていた騎士装の人間型Mobの首、鎧と鎧の隙間に、空中で抜き放った愛刀……《天鳳フェニクニス》を突き刺しつつ、真後ろに倒れ込む鎧男の上に乗りながらソレイユは着地する。
自分が飛び越えられたことをようやく悟ったオークが振り返ろうと体を動かして……

──ヒィン──

高く、澄んだ音が“鳴る”と言うよりも唯“響く”と言ったように、空気を微細に震わせた。と同時に、オークは……否。ソレイユの周囲にいた六体ほどのMobが、何が起こったのかも理解できぬ内に爆散する。それがソレイユがフェニクニスを振り切った音だと理解出来たのは、間違い無く、この中で本人のみであろう。

一瞬の静寂。

何が起きたのかと戸惑うように開いた間。実際には、ソレイユの斬撃が余りにも早すぎたが故に、彼と接敵状態にある敵達の待機から、攻撃までのアルゴリズムが切り替わるのが遅れた。ほんのコンマ一秒程度のラグ。
その瞬間に、彼等の視界からソレイユの姿が掻き消えた。

と思った時には、彼の正面、直線状の位置にいた十匹程度のMobの動きがまるでフリーズしたように止まる。それらの間を駆け抜けた一筋の銀閃を。運が良い者は見ることが出来たかもしれない。
まぁ実際の所、彼等の間を駆け抜ける間にソレイユは七閃程斬撃を放っているのだが。

彼が駆け抜けた後に居た者たちが、パパパパパパパンッ!と軽い音を立ててあっという間にポリゴン片となって掻き消える。

と、それが見えた頃には、既に駆け抜けた先に居た一体が体を真っ二つに斬り裂かれて爆散している。しかし流石にこれ以上はやらせぬと言いたいのか、刀を振り切ったソレイユの横にいた槍装備の若い男のMobが、槍を突きこむ。

槍の穂先がソレイユの刀と重なった。と、思った時には既に、彼の体はわき腹から肩までをバッサリと斬り裂かれていた。爆散。ソレイユの後ろに居た表のような顔の獣人が大ぶりな剣を振り上げ、降ろし、降ろしきると同時に何時斬られたのかも分からぬ内に体を縦一閃。爆散。ハンマーを持ったオークが、横薙ぎにソレイユに向かってそれを振ろうとして、振ったハンマーがすっぽ抜け、吹き飛んで味方を直撃した。ハンマーを振り切った体勢で膝をついたオークの体には、首から上が無かった。爆散。バトルアックスを手に飛びかかったリザードマンが、着地寸前に空中で肩から下と上が泣き別れ。ボトリと音を立てて落ちる。爆散。

──ヒィン──

再び、鳥の鳴くような澄んだ響きが大気を揺らし……
ソレイユの周囲にいたMob達が一斉に爆散する。

「懐かしいなぁ……難易度は“あれ”ほどではないけど……」
何しろ、今回は唯倒すだけで良い。護衛では無いのでその分楽だ。それに、相方の実力の程はわからないが今回は15000対2である。あの時よりも相手は少ない。まぁ、最悪の場合もあり得なく無いが……何となく、それは無いような気がしていた。

『でもまぁ、遊んでいる暇がある訳じゃない……』
何しろ既に遅刻しているのだ。これ以上遅れるような事は絶対にあってはならない。流石にもしも時間切れなど起こして五時間遅刻等と言う事になれば、寂しがり屋であまえんぼうな彼女のことだ、間違いなく泣きつかれる。それは……困る。非常に困る。

「う……」
「はぁ……」
一瞬、彼女の泣き顔を想像してしまい、溜息を吐くと同時にやってしまった感がいまさらになって襲ってきた。最愛の人の涙ほど、みたくないものはない。こうなったら真面目に本気でも出すか?と心の中で自問し、その意見は却下する。こういった場合、最悪の状況を想定しておいた方がいいからである。ソレイユはもう一本の刀に伸ばしかけていた手をひっこめ、フェニクニスを両手で持ち―――

「ちょっと、本気出すか」
そう言って、再び刀を握りこんだ。

────

同じ場所の、違う位置で二人の青年は同時に口を開く。

「そいじゃ、久々の団体さんだけど、さっさと先進みてぇんで」
「さっさと片付けないと、とんでもない事になるしな」
自身と、幾つもの戦場と幾つもの刃を潜り抜けて来た相棒を、最も慣れ親しんだ構えで持つ。
二人の青年は同時に、得物へと呼びかけた。

「いくぞ、≪天凰フェニクニス≫」
「喰っちまえ、《冷裂》」
刀はまるで不死鳥のように、ヒィンと美しく鳴き
刃はまるで血に濡れたように、夕日の朱をその刃で反射した

武器達のその答えは同時に、彼等の前の軍勢への死刑宣告でもあったのだが……それを理解できる者は、この場には残らなかった。

────

「ほっ」
目の前で槍を振り下ろした鳥頭の獣人の一撃を、軽くサイドステップを踏んで紙一重で回避し……

「あらよっ」
その頭を掴んで、思い切り地面に叩きつけると……

「奮っ」
土色のライトエフェクトと共に、その頭に足を振り下ろす。
倒れた後頭部にそれが直撃し……頭が踏みつぶされ、体が爆散した。
大震脚は、このように相手を踏みつけるように発動して喰らわせると、そのまま踏みつぶすような形の重単発攻撃になる。とは言え、SAOではモンスター相手に踏みつける。等と言う行動がつうじる状況はかなり限られていたので、知っている者は極少数だが。

「次……ありゃ?」
さぁ次はだれだと周囲を見渡して、最早周りには何も居ない事に気付いた。と、少し離れた場所で戦っていたらしいソレイユが最後の一体を斬り倒し、ひゅんっ、と刀を振ってそれを鞘におさめた。

「よぉ、お疲れさん」
「あぁ。お疲れ」
近づき、何となく拳を出してみる。と、すぐにその意味を察したらしく、微笑しながら左の拳をリョウのそれとコツンとぶつけた。

「さて、と。ちょっと時間喰ったな」
「だな。まぁ、まだそれなりには有るけど、次もこんなんだったらロクなことねぇな」
「確かに、な……仕方ない、走るか」
「やれやれ、若者は元気だねぇ……」
「そうぼやくなって」
苦笑しながらソレイユは扉の方を向いた。リョウもそれに習うかのように、扉を見る。次の瞬間、バンッ!と破裂音がして、二人の姿がその場から消えた。

二ノ試練 破軍 突破
残り時間 08:55

────

「へぇ、それじゃ今日はそのりょうさんと動物園に?」
「はい。普段は買い物とかなんだけど……偶にはそう言う所も良いかなって……もっとも、リョウは科学博物館とかのほうが好きかも知れないけど」
「あはは、ますます同じだね。私も今日は桜火……あ、えっと桜火って彼の名前ね。桜火と動物園行く予定だから」
「あ、じゃあ園内でまた会えるかもしれないね」
「あ、そっか!……いっそ一緒に行っても良いかも」
笑いながら二人は話していた。予想通りと言うか、話し始めれば直ぐに気は合った。
と、話しながら、月雫は時間を見るた、少し時計が見えた所によると、九時三分だ。

「珍しいなぁ……桜火が遅れるなんて……」
「そうなんだ」
「うん。いつもは絶対私より早く来てるの……りょうさんは?」
「遅れるのは……珍しい。かな。授業とかには遅刻ギリギリだけど、私とか、友達と買い物とか遊びに行ったりする時は遅れたりしないから」
実際、三月後半に歩けるようになってから今までに三回ほど涼人と遊びに行ったが、一度も待ち合わせの時間に遅れて来たことは無かった。

「…………」
「心配?」
「えっ?」
「美幸、何だかちょっと考え込んでる顔してるよ?だからりょうさんの事心配なのかなー?って」
「う、うん……」
見透かされた事を特に恥じている訳ではないが、何となく俯きながら美幸は言った。経った三分遅れただけで心配に思う。いくらなんでも過剰だと、笑われてもおかしくは無い。

「分かるなー」
「えっ?」
「ううん。待ってる側って何となく心配になっちゃうよねって。何となく、その気持ち分かるから」
「…………」
不思議な、まるで遠い何処かを見るような眼で言っている月雫に、サチは戸惑うよりも先にどう言う訳か共感のような物を覚えた。本来なら、自分と共感できる者等滅多にいる訳が無い。
何しろ自分の前に相手が居ない。その間ずっと、相手は命のやり取りをする現場にいる。等と言うまるで八十年以上前。戦時中の日本の女性のような思いなのだから。しかし何故だろう?彼女には自分に近しい物を、ふと感じていた。それが何故なのかはよく分からなかったが……しかし思わず、美幸は月雫に問うていた。

「桜火さんって……どんな人?」
「え……?」
 
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