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Blue Rose

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第五話 姉の苦悩その八

「睡眠や運動はしっかりとされていますね」
「そうはしているつもりですが」
「それでもですか」
「確かにです」
 院長の言う通りにというのだ。
「近頃飲まない日はありません」
「そして飲む量もですね」
「かなりです、それでです」
 自分でも言うのだった。
「弟にも言われています」
「その弟さんにですか」
「はい、飲み過ぎだと」
「いい弟さんですね」
「私もそう思います、ですが」
「今はですね」
「飲まないとです」
 それこそというのだ。
「とても」
「そうですね、ですが」
「答えはですね」
「出して下さい、何でしたら」
 院長もだ、優子に覚悟を決めている顔で言った。
「院長である私からです」
「弟にですか」
「お伝えしますが」
 優子がどうしても言えないのならというのだ。
「そうしますが」
「いえ」
 その院長にだ、優子は低いが強い声で返した。
「私からです」
「弟さんにですか」
「言います」
 そうするというのだ。
「必ず」
「そうされますか」
「私はあの子の姉です」
 だからというのだ。
「小さい頃から共に住んできた」
「絆があるからですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「私からです」
「そうですか、それでは」
「やがて覚悟を決めます」
「覚悟を決めるということも」 
 そのことについてもだ、院長は言った。
「辛いですね」
「時としてですね」
「そしてそれが、ですね」
「今の私ですね」
「そうですね、現実は時として奇怪であり」
 それにとだ、院長は言葉を続けていった。
「残酷ですね」
「そのことを今実感しています」
「そうですね、ですが」
「今はですね」
「その現実にです」
「私は向かわないといけないですね」
「こう言うことは非常に傲慢であり無責任かも知れません」
 院長はそう考えてもいた、だが。
 言葉を選びつつだ、優子に言っていった。
「しかし先生は現実と向かい合わないといけないです」
「そして、ですね」
「弟さんを守って下さい」
「そうさせてもらいます」
 必ずという口調でだ、優子も答えた。 
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