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双子の悪戯

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1部分:第一章


第一章

                         双子の悪戯
 安曇亜実と真実は双子である。
 二人共髪の色は茶色で目が大きくぱっちりとしている。唇は小さい。 
 小柄で色は白く亜実が右で、真実が左で髪をちょんまげにしている。その二人を見て。
 二人の両親もだ。どちらがどちらかというと。
「ええと、右が亜実?」
「左が真実だったか?」
 こんなことをだ。首を捻って言うのだった。
「どっちがどっちか」
「わからないよな」
「ええ、少し」
 こんなことを言う始末だ。しかしだ。
 二人の兄であるだ。丈だけは違っていた。
 飄々とした外見で黒髪を少し伸ばしている。背は高くすらりとしている。顔は少し長くいつも優しい笑顔である。その彼だけがなのだ。
 二人がどちらかをだ。見分けられるのだった。
 朝だ。亜実がたまたまだ。
 髷を左にしていてもだ。すぐにこう言ったのだった。
「あれ、亜実今日はちょんまげ逆なんだな」
「えっ、わかったの」
「わかるさ。そんなの」
「そんなのって」
 そう言われてだ。亜実はだ。
 兄にだ。目をしばたかせて言葉を返した。
「お兄ちゃんだけしかわからないよね」
「俺だけみたいだな、本当に」
「っていうか何でわかるの?」
 彼女からだ。こう問い返した。
「今日ちょっとね」
「ちょんまげ変えたのか」
「そう。それで真実は」
「おはよう」
 その真実も来た。見ればだ。
 彼女のちょんまげは左だ。しかしなのだ。
 それでも丈はだ。彼女にもこう言ったのだった。
「一人がわかったらもう一人もわかるよな」
「それでわかるのが凄いのよ」
 真実もだ。目をしばたかせて兄に返す。
「何でわかるのやら」
「不思議よね」
「全くね」
 双子で言い合う。服の色は違うがそれでもだ。
 まるで鏡合わせの如くだ。二人はそっくりだ。その場にいた両親もだ。
 目を顰めさせてだ。こう言うのだった。
「お母さんわからないけれど」
「お父さんもだよ」
 朝食のテーブルでだ。こう話すのだった。
「どっちが亜実でどっちが真実か」
「ちょんまげまで変えられるとな」
「それでどうして丈はわかるのかしら」
「親ですらわからないのに」
「まあね。ずっと見ているからね」
 それでわかるとだ。丈はにこりと笑って両親に話す。今は一家全員で一つのテーブルに座ってだ。それで朝食を食べながら話をしているのだ。メニューは納豆に白い御飯に豆腐の味噌汁、梅干に卵焼きだ。
 その中でだ。丈は納豆を箸でかき混ぜながらだ。話をするのだ。
「二人のことはわかるよ」
「そうそう、お兄ちゃんはね」
「昔からなのよ」
 二人もここで言う。
「私達がどっちかわかるから」
「どんなにそっくりにしてもよ」
「何でかな、それって」
「私達もわからないけれど」
「だから。コツなんだよ」
 彼はこう言うのだった。
「普通にさ。わかるんだよ」
「だから何でわかるのよ」
「お父さんもお母さんもわからないのに」
「お兄ちゃんだけ、わかるのは」
「コツっていっても」
 二人ですらわからないことだった。しかし丈だけはわかることだった。
 
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