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4部分:第四章


第四章

「おい、それじゃあな」
「その娘の面接やってみるか?」
「それにオーディションな」
「その娘だけでもな」
「そうするか」
 こう話をしてだった。彼等はだ。
 彩奈の面接とオーディションをすることを決めたのだった。その面接とオーディションはというと。
 何の変哲もなかった。ごく普通に彩奈の自己紹介や特技を聞いてそうしてだ。歌やダンスを見た。本当に何の変哲もないものだった。
 彩奈はだ。全て終わり家に帰る時にだ。こう母に言った。
「私一人だけだったね」
「面接もオーディションもね」
「そうね。私一人だけだったわ」
「皆おトイレに行くか気絶したからね」
「何でかしら」
 彩奈は母の言葉に首を捻って言う。
「食中毒かしら」
「あのサンドイッチとお茶のせいよ」
 母にはわかっていた。全てだ。
「あんなの食べたらそれこそね」
「それこそ?」
「ああなるから」
 食中毒か気絶にだというのだ。
「何であんただけ平気なのよ。っていうか」
「っていうか?」
「あんた昔から何があっても病気にならないしお腹壊さないし怪我もしないわね」
「そういえばそうね」
「我が娘ながら」
 呆れているがそれと共にだ。感心している顔で娘に言うのだった。
「物凄く丈夫ね」
「健康なのはいいことじゃない」
「ジープみたいね」
 丈夫なことが取り得の軍用車だ。戦車は細かい部品も多く整備が大変だがジープはそこまでいかない。ある意味戦車より丈夫だ。
 母自身の口からだ。彩奈はそれだというのだ。
「あんたって」
「ジープねえ」
「まあ。少なくともね」
「全部終わったわよね」
「後は結果待ちよ」
 こう言うのだった。
「焦らずに待ちなさいね」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだった。彩奈は全てを終えた。そうして数日後。
 通知が来た。それを送る際だ。
 事務所側はだ。こう言い合っていた。
「スタイルはまあ。胸があるな」
「小柄で童顔。これが売りになるな」
「歌はそこそこか」
「平均点か?これじゃあな」
 どうかというのだ。平均点ならだ。
「ちょっと物足りないな」
「ダンスがなあ。これは」
「かなりまずいかもな」
「けれどな」
 それでもだというのだった。ここで。
「あれだけ頑丈だとな」
「ああ、野生の生き物みたいだな」
「あんなの食って全然平気ならな」
「体力勝負のアイドルでもな」
「やっていけるな」
 こう判断するのだった。
「人間結局は体力だからな」
「ランボーやターミネーターみたいだけれどな」
「だがそれがいい!」
 こんな断言まで出て来た。
「一人しかいないせいもあるけれどな」
「この体力だよ」
 まさにだ。その体力を買われてだ。彼等は結論を出したのだった。
「合格だな」
「採用するか」
「例え何があっても生きられる娘みたいだしな」
「核戦争の後でも生きられる体力」
「これを買うか」
 彩奈は合格となった。見事だ。
 
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