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Blue Rose

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第四話 変化の兆しその三

「そろそろ行こうな」
「ああ、皆着替え終わったしな」
「それじゃあな」
「もう当番も用意してるぜ」
 龍馬が今日の体育当番で先に出ているのだ。
「だからな」
「俺達も行くか」
「これからな」
 クラスの面々も頷いてだ、そしてだった。
 優花もグラウンドに出て体育の授業に出た、授業はハードル走でその時にだった。
 彼の走り方を見てだ、体育の先生は首を傾げさせてだった。
 走り終えた優花のところに来てだ、こう彼に言ったのだった。
「蓮見、御前その走り方どうしたんだ?」
「何かあります?」
「いや、何か癖があるな」
「癖ですか」
「俺は体育学部出身で体育の教師で陸上部の顧問だからわかるんだけれどな」 
 この前置きからの言葉だった。
「御前その走り方は男の走り方じゃないな」
「っていいますと」
「女の走り方だな」
「僕の走り方はですか」
「ああ、人間身体の構造が違うとな」
 それでというのだ。
「身体の動きも違ってくるからな」
「走り方もですか」
「違ってくるんだよ」
 そうなるというのだ。
「それで御前の走り方はな」
「女の子の走り方ですか」
「そう見えたけれどな」
 先生は首を傾げさせたまま言う。
「御前は確かに筋肉質じゃないしな」
「身体つきは女の子みたいって言われますけれど」
「そのせいか?いや」
 自分の言葉をだ、先生は訂正してまた言った。
「違うな」
「違いますか」
「御前の今の走り方は完全に女の走り方だった」
「身体の構造からですか」
「おかしいな、こんなのははじめて見た」
 学者めいた言葉になっていた、先生の今の言葉は。
「男なのに完全に女の走り方なんてな」
「僕男ですよ」
「それは俺もわかっている」
 戦士絵の今度の言葉は毅然としたものだった。
「そのことは安心しろ」
「わかりました」
「しかしこれは事実だ」
「僕の走り方が女の子のものってことはですか」
「ああ、どう見てもな」
「そんなことがあるんですか」
「俺もはじめて見たと言ったな」
 男らしい顔立ちをさらに男らしくさせての言葉だった。
「こうしたことはな」
「そうですか」
「確か御前のお姉さんはお医者さんだったな」
「はい、大学病院の」
「お姉さんに聞いてみるなりしたらどうだ」
「このことをですから」
「人間の身体のことはやっぱりお医者さんだ」
 この職業の者が第一だというのだ。
「一度お姉さんに聞いてみろ」
「わかりました」
「ひょっとしたら何かあるかも知れないからな」
「何かですか」
「そんなことはないと思うが」
 こう言いながらもだ、先生の顔は不安げで危惧するものになっていた。
「御前の身体どうにかなっているかも知れない」
「病気とかですか」
「俺はないと思うがな」
 先生は優花を安心させようと強く言った。 
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