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あと三日

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6部分:第六章


第六章

 だがそれでもだった。進むのはだ。
 怪我ばかりしてだ。全く進まないのだった。
「けれどね」
「だから。一日頑張りなさい」
「それしかないのね」
「御昼御飯と晩御飯は奮発するからね」
 母は娘に人参を出した。
「だから頑張りなさい」
「御昼何なの?」
「五目焼きそばよ」
 真央の好物だ。海の幸をふんだんに使ったものだ。
「それで晩はハヤシライスよ」
「あっ、いいわね」
 昼と夜のメニューを聞いてだ。真央もだった。
 笑顔になってだ。それで話すのだった。
「それじゃあ頑張れるわ」
「食べ物、それも美味しい料理は何よりのカンフル剤よ」
「そうよね。とてもね」
「よし、じゃあ私頑張るから」
「気合入れてね」
 こんな話をしてだった。真央はその最後の敵に向かうのだった。
 何度も何度も指を刺して傷だらけになってだ。真夜中になり。
 遂にできた。その雑巾がだ。
 彼女はその雑巾を見てだ。満足した顔でいた。その娘にだ。
 母はだ。ハヤシライスを差し出しながら笑顔で言うのであった。
「遂にできたのね」
「何とかね」
 できたとだ。真央はどうだ、といわんばかりの顔で母に返す。
「できたわ」
「おめでどう。ただね」
「ただ?」
「随分と壮絶ね」
 母はその雑巾、真央が縫い終えたものを見て話す。その雑巾はだ。
 まず縫い方が酷かった。あちこち波打っておりしかも千人針の如く雑然となっている。何処がどうまとまっているのかわからない程だ。
 しかもだった。それに加えて。
 雑巾のあちこちにだ。血がついていた。その血こそは。
「あれだけ刺していたらね」
「うん、やっちゃったわ」
 真央もそれは自覚して言う。
「どうしようかしら」
「まあ仕方ないわね」
「仕方ないの?」
「できたものは仕方ないわ」
 だからだ。いいというのだ。
「もうできたらね」
「じゃあこれこのまま提出しろっていうのね」
「それとも出さないの?その雑巾」
「出さないと炎天下のグラウンド五十周だから」
 流石にそれは嫌だという真央だった。
「絶対に出すわ」
「そうするべきね」
「せめて洗濯したいけれど」
 それで血も僅かだが落としたいというのだ。しかしだった。
 それをすればどうなるか。真央もそれはわかっていた。
「今から洗ったら。乾くのは」
「微妙なところね」
「出すわ」
 仕方ないといった口調で母に話した。
「そうするから」
「そうしなさい。いいわね」
「ええ、それじゃね」
 こう話してだった。結局その宿題をそのまま提出することにしたのだった。
 こうして真央は宿題を全部提出した。しかしであった。
 まずはだ。絵について言われるのだった。
「・・・・・・これ何だ?」
「何でしょうか」
「仁品、これは何だ?」
 美術の先生は呆然としながらスケッチに描かれているその謎の生物を見ながら真央自身に問うた。
 
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