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レモン爆弾

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2部分:第二章


第二章

 だがここでだ。彼はだ。店の中を見回して言ったのである。
「さて、何処に置くかだよな」
「問題はそこか」
「レモンを何処に置くかなんだな」
「ああ、これをな」
 右手に持っているそのレモンを見ての言葉だった。
 そうしてだ。それをだった。
 何処に置こうか見回しながらだ。仲間達に言うのだった。
「迷うな。何処に置くか」
「適当な場所に置けばいいだろ」
「だよな。そんなのな」
「特に考えずにな」
「そうすればいいんじゃないのか?」
「いや、そういう訳にはいかないからな」
 また言うシオンだった。それはどうしてもだというのだ。
「問題は何処に置くかだよ。本屋さんの何処にな」
「だから大して問題じゃないだろ」
「特にな」
「気にすることもないだろ」
「いや、だから梶井基次郎の本を読んだんだぞ」
 それ故にだというのだ。彼はここでこだわりを見せるのだった。
 そのこだわり故にだ。彼は話すのだった。
「だからそれなりに相応しい場所があるだろ」
「じゃあ文学のところでどうだ?」
「梶井基次郎の本だろ?それじゃあ文学のコーナーに置けばいいだろ」
「確か二階だぜ、文学のコーナー」
「そこでどうだ?」
「そうだな。じゃあそこにするか」
 仲間達の話を聞いてだ。そのうえでだ。
 彼はだ。納得した顔で述べるのだった。
「二階だよな」
「ああ、そこな」
「そこに行っておけばいいだろ」
「それじゃあ今からそこに行くか」
「ああ、そうするな」
 こうしてだった。彼はだ。
 二階に行った。店の階段を使ってだ。そしてそのうえで二階の文学のコーナーに向かう。その彼を見ながらだ。仲間達は彼の後ろで言うのだった。
「じゃあ今からだな」
「レモン置くんだな」
「あのセッティングで」
「ああ、俺はやるぜ」
 気合の入った顔で言うシオンだった。
「今からな」
「何かもう完全にあれだな」
「テロやるみたいだな」
「ああ、何かそんな感じだな」
「完全にな」
「俺はやるからな」
 また言う彼だった。そしてだった。 
 文学のコーナーに入り。そのうえでだ。
 本を飾ってセッティングをした。あの小説のセッティングをだ。そのうえでだ。
 レモンを置いた。そうしたのである。
 レモンを置くとすぐにだ。彼はだ。
 左右を見回し安全を確認してだ。そそくさとその場を後にした。
 それから物陰で見守る仲間達にだ。親指を立てて笑顔で言ったのである。
「やったぜ」
「ああ、レモン置いたな」
「それやったな」
「俺はやったぜ」
 白い歯をだ。インド映画の様にきらりとさせての言葉だった。
「やってやったぜ」
「そうだな。やったな」
「御前はよくやったよ」
「やり遂げたよ」
「見事にな」
 何時しかだ。仲間達も彼とシンクロしていた。そしてハイテンションで彼に応えたのである。
 
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