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ロココの真実

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5部分:第五章


第五章

「うう、まだ連載が来るなんて」
「もう拷問ですよ」
「まして男装の麗人で軍服ですから」
「滅茶苦茶描きにくいじゃないですか」
「そうよね」
 目の下にクマを作りながらだ。カトリーナも応える。
「この時代の軍服ってね」
「あちこちに壮麗な装飾があって」
「しかもカラフルで」
「おまけに今週から三週連続オールカラーですよ」
 別冊の方のそちらの連載がだ。そうなっているというのだ。
「それで大増ページですから」
「本編の方も単行本作業がありますし」
「これやれるんですか?」
「やるしかないのよ」
 これがカトリーナの返答だった。
「絶対にね」
「原稿は落とさない。下書きを載せない」
「その先生の信条に従ってですね」
「それは絶対なんですね」
「助っ人は何人も呼んだわ」
 所謂臨時アシスタントをだというのだ。
「実家のお兄様にも連絡してね」
「そして御主人の方からもですよね」
「人を頼んだんですよね」
「こうなれば人海戦術よ」
 まさにだ。戦争になってきていた。
「人を一杯投入してそれでね」
「締め切り凌ぎますか」
「何としても」
「原稿は落とさない」
 カトリーナの言葉は断固としたものだった。
「漫画家として絶対のことじゃない」
「それできない人もいますよね」
「あと雲隠れする人も」
「私は違うから」
 自分でだ。こう言い切ったのである。
「そんなことはしないから」
「だから臨時アシスタントも大量に雇って」
「それでいきますか」
「とにかくよ。やるわ」
 カトリーナの目が燃えていた。
「描くわよ」
「わかりました。それじゃあ」
「気合入れていきます」
 こうしてだ。カトリーナは人をつてまで使って大勢雇い入れてだ。そのうえで実際に人海戦術まで使ってそのうえで凌いだのだった。こうしたことがいつもになっていた。
 そしてその中でだ。カトリーナは珍しく暇になった時にだ。コーヒーを飲みながらアシスタント達に述べた。いい豆を使った上等のコーヒーである。
「いや、今の連載はね」
「大変ですよね」
「まさに修羅場の連続ですよね」
「ええ、本当にね」
 まさにそうだというのだ。
「今はね」
「何か。こんな大変な連載になるなんて思いませんでした」
「私もよ」
 アシスタントの一人の言葉にだ。カトリーナはすぐに返した。
「全く以てね」
「想定していませんでしたね」
「軽い気持ちで連載はじめたのよ」
 まさにそうだったというのだ。
「いや、本当にね」
「けれど実際に描いてみると」
「地獄ね」
 欠き込む量が桁違いに多くてだった。
「こんなに描き込むのってね」
「今までなかったですよね」
「格闘漫画も描き込むわよ」
 迫力命だからだ。集中線等を大量に使う。
「けれどそれでもよ」
「結構コツがありますからね」
「そうそう。キャラを前面に押し出して背景はあまりないから」
「それに服も」
「描き込むものじゃないから」
 だからだ。格闘漫画はだというのだ。
 
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