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中の人

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3部分:第三章


第三章

「あのザリガニって何でヤシを取るのかな」
「やっぱりヤシガニか」
「ヤシガニ知らないんだな」
「いや、これはやっぱり」
「あれか」
「あれだったのか」
 やっとわかったのだった。誰もが。尚且つだ。 
 アイドルの娘はだ。困った顔で突っ込みを入れた。実はあまり賢くない役をやっていた娘だがそれでもだ。今はかなりしっかりしていた。
「それヤシガニでしょ?」
「何?ヤシガニって」
「だから。ヤシを取って食べる生きものを。確か実里ちゃんって沖縄出身で」
 それでだというのだ。
「ヤシガニもヤシもよく見たんじゃないの?」
「沖縄生まれだけれど小さい頃に福岡に引っ越したから」
 それでどうかというと。
「長崎ちゃんぽんしか知らないし」
「博多ラーメンだろ?」
「福岡っていったら」
「何でそこで長崎ちゃんぽんなんだ?」
「理解できないけれど」
 またしても誰もが呆然となった。それを聞いてだ。
 ファン達は思わざるを得なかった。これまでの実里は幻想だったのだ。現実はだ。
「本当にあれだぜ」
「だな、あれだよ」
「それもかなりのな」
「そういう人だったんだな」
「おう、そういえば」
 ここでだ。彼等は遂にドラマのサイトを見た。やっと気付いたのだ。
「サイトのブログとかに色々書かれてるぞ」
「そうだな、共演者のサイトにもな」
「色々書かれてるな」
「ええと。天然で?」
 まずはそこだった。
「それでいつもぼーーーっとしてる」
「NGが壮絶で」
「究極のマイペース人間」
 こう書かれていた。何処にも。
「あのトークはいつも通りだったんだな」
「あんなに知的そうに見えてもな」
「そういう娘だったのか」
「外見や役は別なんだな」
 このこともここでやっとわかったのだった。
「衝撃だったな」
「っていうか我が目疑ったぞ」
「あんな人っていうのはな」
「流石に想像しなかったよ」
 ネットでも巷でもだ。実里の素顔が話題になった。そしてだ。
 ラジオに出てもだ。彼女はやらかしたのだった。
「ちょっと実里ちゃん、ガサガサ音してるよ」
「えっ、そうなんですか?」
 メインパーソナリティーの娘が彼女がトーク中にお菓子を食べてその袋の音をさせていることに困った声を出してもだ。こんな調子だった。
「そんなに音立ってます?」
「立ってるわよ。それにね」
「それに?」
「そのお菓子この番組で紹介するのよね」
「はい、そうです」
「それでそんなに食べていいの?」
 こう実里に言ったのである。
「だって。これから宣伝なのよ」
「だって美味しいですから」
 これが実里の返事だった。
「食べてたんですけれど」
「だから。そういう問題じゃないでしょ」
「そうなんですか」
「そうよ。何かお話が」
 パーソナリティーの娘も困っていた。声にはっきりと出ていた。
「弾まないから」
「ううんと。私はそう思わないですけれど」
 こんな調子だった。しかも実里は別のラジオ番組でもやらかした。その番組のパーソナリティーの娘は他の番組の共演者達より短気だった。
 
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