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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第47話:アナタがワタシにくれたモノ

 
前書き
キリンが逆立ちしたピアス……ではありません。 

 
(グランバニア城・訓練場)
ピエールSIDE

「よし、今日はここまで!」
グランバニア城2階にある兵士の訓練場で、私が受け持つ兵士(近衛兵)の訓練を終える。
そしてそのまま訓練場に併設されてる休憩所へ行くと、そこにはスノウが私を待っていた。

「如何したスノウ? こんな所へ来るなんて珍しい。今日は魔技高で講義があったんじゃないのか?」
「あったわよぅ。でも午前中だけの講義だから、今日はもう終わりなの」
それでワザワザここに来たのか? 意味が解らんな。

「今日は近衛兵の訓練と言う事で女性兵士も多数居るが、お前の様なムダに露出度の高い女が来ると、純情な男性兵士には毒なんだが……解るか、意味?」
言外に“邪魔だ”と含んだんだが……伝わるかな?

「あらあら……新しいボディースーツがジャストフィット過ぎて、その淫らなボディーラインを目立たせてる事は純情ボーイの目の毒にはならないの?」
「何だ“淫らなボディーライン”とは?」

「だってぇ……乳首、浮き上がってるわよ(笑)」
「え、ウソ!?」
スノウの言葉に、私は慌てて胸を隠す。

「ウソぴょ~ん♥ 可愛い義息からのプレゼントが羨ましいから、からかっただけぇ」
ちっ、してやられた。
よくよく考えてみれば、インナーを着てるんだし浮き上がるわけ無いのだ。

「お前だって可愛い義息にプレゼント貰ってるだろ」
「パンツをね。エロエロなパンツをプレゼントされてるから、リュー君と送り主以外には見せ付けられないのよ」
わざわざ送り主にも見せ付けなくて良いだろうに……

「お前の講義が人気なのは、そのエロエロパンツと露出度の所為か?」
「学校には穿いてかないよぉ。リュー君との時だけだものぉ」
男性兵士が私達の会話を聞いて困っているが、そんな事にはお構いなしでスノウは私と会話をする。そして持ってきたドリンクを私に差し出して椅子に腰をかける。

コイツは常に自分の周りに冷気を漂わせてるので、持ってきたドリンクがキンキンに冷えている。
だから有難く差し出されたドリンクを口にする。
するとスノウは、ニンマリと笑い私のボディースーツを触ってきた。

「これが例のアレ?」
「何だ“例のアレ”とは!? 別に違法な物じゃないのだから、秘匿がちな言い回しはやめろ」
私はスノウの手を払い、新品のボディースーツを軽く撫でる。

「結構お高い物なの?」
「……多分。でも私は値段を気に入ってるんじゃない。こういったことをしてくれる気持ちが嬉しいんだ。元々は狐で、何だか凄い技法で人間になり、日々人間として成長している。その成果としてウルフから仕事を得て、その報酬でリューラや私にプレゼントを贈ってくれる……」

「良いなぁ……」
「羨ましいだろう! 最初は、異時代から急に連れてきて『彼氏です』って言われたから戸惑ったけど、根が良い子だから毎日が楽しいんだぞ。お前んとこと違って」

「そうなのよぉ……いきなり『マリーちゃんの彼氏と付き合ってます』って言われても困っちゃうのよねぇ~。『相手にはもう決まった女が居るじゃん!』って言いたいけど、私も似た事してるしぃ……」
「そ、そうだな……私もアローが浮気しても、文句の一つも言えないな」

「ピエールちゃんは大丈夫よぉ……アロー君は浮気しそうにないからぁ。ビックリだったのはウルフちゃんよぉ! あんなにヘタレだったのに、まさか二股かけるなんて……しかも父親は同じっていう(笑)」

「確かにアイツはヘタレだ。お前にパンツを送っておいて、見せ付けられたら土下座して謝ってきたもんなぁ(笑)」
「でもさ、フレアちゃんの娘よりマシなんじゃない? もう何歳よあの()……何時まで『パパのお嫁さんになる』って言ってんの?」

「違うぞスノウ。あの娘は『お嫁さんになる』とは言ってない。『パパの愛人にある』と言っている。大人になったものだな……」
「あぁ……!」
私の台詞を聞き、目を見開いて頭を縦に振って納得するスノウ。

そして、それを見てクスクスと笑う近衛兵達。
いくらユルいグランバニアでも、近衛兵ともなると安易にゴシップをバラ蒔きはしない口の堅さがある。
それでもリュリュという娘の特異(やっかい)さ加減に笑ってしまうのだろう。

「そう言えばぁ……フレアちゃんのもう一人の娘には、彼氏が出来たんだってね」
「あぁ、リューラも言ってたが……リュリュも自慢してたな。昔のティミーくらい真面目な男の子だと言ってた……あんな希少動物がまだ居るんだな!」

「ピエールちゃん……それ違うと思うわよ。この家庭に集まる男性陣が異例であって、一般的には真面目な子の方が数が多い。魔技高の生徒も真面目な子が多いもん」
「そうか? 男は皆、今のティミーとウルフを平均した感じのヤツしか居ないんじゃないのか?」
私は思わずラングストンを見ながらスノウの言葉に返答する。

「おや? 私は、昔のティミー殿下とリュカ様の平均値だと思ってますが……」
「そんなヤツ居るか! 数値に置き換えると、平均が“100”として昔のティミーが“1”だ。そしてリュカは今も昔も“10000000000”なんだよ! そこまで異常じゃなきゃ、こんなに女が群がるか!」

リュカを少なく見積もるラングストンに多少強めの口調で訂正を促す。
周囲に居た女性近衛兵も同感なのか、スノウと共に深く頷いた。
まったく……なんて男に惚れてしまったんだ。

(バン!!!)「た、大変です!」
兵士等とマッタリ休息していると、休憩所の扉を勢いよく開けて兵士が飛び込んできた。
この兵士は、今日この時間は勤務中のはず……何事だろうか!?

「如何しましたか、そんなに慌てて?」
近衛隊長のラングストンが、何時もと変わらない口調で慌てた兵士に質問する。
すると……

「で、殿下が……殿下の奥様のアルル様が……」
「アルルさんに何がありましたか!?」
兵士は相当慌ててここまで来たのだろう。まだ息が上がってて上手く喋れない。
しかし“アルル”の単語を聞き、流石のラングストンにも緊張混じりの口調になった。

「ア、アルル様が産気づきました!!」
その台詞を聞き、この場に居た全員が立ち上がった。
そして互いに顔を見合い……

「ラングストン隊長。今すぐ非番の者も招集し、城内の警備を強化せよ!」
「はっ!」
私の言葉を聞き、綺麗な敬礼と共に返事をし、側に居た3人の部下に兵の招集を命じるラングストン。

「それとラングストン隊長……」
「……何でしょうか?」
私は過去の教訓から、大事な指示をラングストンに伝える。

「貴官等近衛兵は、飲食物を独自に用意しておく様に!」
そう……これは私の苦い記憶。
この国に初めて来た頃に体験した苦い記憶が起因の指示。

「了解しております、元近衛隊長殿! 飲食物に睡眠薬等を混入させ、城内で不埒な行いをさせない為ですね」
「そうだ……ティミーとポピーが生まれた時は、祝賀会に薬が混入されており、まんまとビアンカを誘拐されてしまったからな……同じ轍は踏むなよ。世の中が平和になったとしても、人間の本質が変わったわけじゃない!」

私の言葉に、この場に居た全員が顔を見合わせ頷き合う。
私の出産時もスノウ等の時も、大丈夫だったから杞憂だとは思うが、そんな気の緩みを狙われたら目も当てられない。慎重になるに越した事はないだろう。

世界を平和にし、リュカが正式に国王職に就く様になってから、私は近衛隊の隊長として王家の護衛任務に就いた。
その時に設定した規則……『近衛兵は全員で同時に同じ飲食物を摂取しない』と言うのがある。

近衛隊は多数の班に分かれており、班毎に飲食物の手配係が居る。
他の班には手配係が誰なのかは秘匿するのが規則で、各班の班長以外に知る者は居ない。
例え近衛隊長でも知ってはいけない規則だ。

隊長が知るべきなのは“どの班が、何処で飲食物を調達するか”だけだ。
各班が全て同じ場所から飲食物を調達しては、その店の商品に薬を混入させれば犯行可能になってしまう。
なので、同一の店で購入するのは2班までと決めてあり、3班目以降が同じ店を選んだ際は、隊長が許可をしないで変えさせるのだ。

勿論どの班が使用するのかは秘密にしてだ。
しかも隊長は、別の店にする様に通達しても、使用して良い店を指定する事は出来ない。
各班が希望する店を3班以上でダブってないか確認するだけ。

こうしておけば、城下にある全ての飲食物店に薬を混入させなければ、犯行に及ぶ事は不可能になる。
近衛隊はグランバニア軍の中で一番人数の居る隊だ。
3~4班が行動不能に陥っても、他の班でカバー出来る。

現役当時この案を考え実行したら、リュカに凄く褒められた記憶がある。
皆の前でだが、強く抱かれ熱いキスをして貰った記憶がある!
……思い出したら疼いてきてしまった。

い、いかんいかん!
今はアルルの出産に集中しなければ!

ピエールSIDE END



 
 

 
後書き
遂に新たな世代が生まれます。
 
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