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想い人

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3部分:第三章


第三章

「やっぱり。飲み過ぎてそういうの見るのかしら」
「けれどそれでもお酒は飲むでしょ」
「だから。お酒は私の生きがいだから」
 どうしてもだとだ。静はその決意を述べた。
「絶対に飲み続けるわ」
「けれど将軍様の夢は見たくない」
「例えお酒と関係があっても」
「そうなのね」
「そうよ。それは止めないから」
 とにかく飲むというのだった。静はそのことは変える気がなかった。
 その彼女にだ。ある友人が話してきた。
「まあお酒はいいわ」
「じゃああれ?やっぱり枕の裏にバクの写真?」
「というかね。あんたもうテレビ観るの暫く止めなさい」
 まず言うのはこのことだった。
「ネットも動画は観ないことね」
「将軍様が出るからよね」
「とにかくいつも出て来るから」
 それがあの将軍様でありその国だ。下手なタレントよりテレビに出る機会が多いのである。 
 だからだ。その友人は言うのだった。
「あんたもうそういうのは観ないことよ」
「テレビとネットの動画を」
「そう。どうせテレビはアニメとドラマ以外碌なものやってないんだし」
 これは本当にその通りだ。ニュース番組なぞ最早自分達に都合の悪い事実を報道しないニュース番組になっている。それならばだというのだ。
「だからよ」
「テレビを観ないでそうして」
「後は。お酒を飲むのはいいけれど」
「それでも?」
「彼氏と飲む回数増やしなさい」
 今度言うことはこのことだった。
「いいわね。そうして時々じゃなくてね」
「いつもなのね」
「いつもすることをしなさい」
 オブラートに包んでいるのかあからさまなのかわからない言葉だった。だがそれでもだ。彼女は笑顔でこうだ。静に話すのだった。
「わかったわね」
「わかったわ。じゃあそうしてみるから」
「それであの将軍様が夢に出て来なくなったら幸いだしね」
「よし、それじゃあ」
 こうしてだった。静はテレビを観なくなった。ネットの動画でもそうしたものはだ。
 そうしてだ。自分の部屋にだ。缶ビールをダース単位で買って来てだ。
 同居している彼氏、亀有一輝にだ。こう話すのだった。
「飲もう」
「ああ、そうするか」 
 静より二十センチは長身の彼もだ。笑顔で応える。二人は今部屋のちゃぶ台を囲んでいる。そのうえでビールとつまみを前にしているのである。
 その彼がだ。こう静に言ってきた。
「しかし今日はな」
「どうしたの?」
「仕事仲間とは飲まないんだな」
「こうして二人で飲む時だってあるじゃない」
「まあそうだけれどな」
 静は居酒屋でそう飲むことが多いからだ。一輝も言ったのである。
「けれど今日はか」
「これからも結構で」
「一緒にこうして飲むってか」
「駄目かな、それって」
「ああ、別にいいぜ」 
 笑ってだ。一輝は静のその提案をいいとした。
「俺も仕事仲間と飲むの好きだけれどな」
「それでもよね」
「ああ。付き合ってるんだからな」
 それならばだというのだ。
「こうして一緒に飲んで食うのもな」
「いいものでしょ」
「明日もそうするのかよ」
 一輝は明日はどうするのかとだ。静に尋ねた。二人共まだビールは開けていない。
 
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