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遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~

作者:久本誠一
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ターン43 鉄砲水と『万』の結束

 
前書き
タイトルが何言ってるのかわからない?大丈夫、書いてる本人が一番わけわかんないです。
前回のあらすじ:バレンタイン回。前回のバレンタインが1年の終わりだったのに今回の時系列が明らかに3年の初めなのは全力で気にしない方向でお願いします。 

 
『あら~?万丈目のアニキ、珍しくお勉強?』
『『まっさか~!』』
「ええい、うるさいぞお前ら!」

 剣山が倒れ、ジムもまたデスデュエルによって倒れた。バレンタインを挟んであれから2晩が経ったが2人ともいまだ意識が戻らず、何度か見舞いに行ったけども目覚めるそぶりすら見せないままだ。デスデュエルを見ていた十代たちの話によると、ジムは倒れる前にデスベルトを通じてエナジーが吸い取られる感覚を味わったという。僕とヨハン、十代とオブライエン、そして今回の剣山とジム。これまでに起きた終了後に人が倒れるほどの事件はこの合計3回だが、その中にもさらに程度の差がある。そしてそのほかの生徒が行うデスデュエルでは、精々終わった後でちょっとめまいがする程度でしかない、らしい。僕はそんな平和なデスデュエル経験したことないけど。プロフェッサー・コブラの持ち込んだデスデュエルに、それに対して何かしらのアクションを起こしつつあるアモン。島を飛び回る謎の怪電波と、それを追いかけるジム。そして何かを知っていそうな、だけど何ひとつ口にしない態度のオブライエン。まるでわからない、一体これがどう繋がればスッキリするんだろう。
 ……などなど、せっかく柄にもなく真面目に人が物を考えていたというのに。レッド寮の安普請な壁を通じてすぐ近くから聞こえてくる万丈目と愉快な仲間たちのせいで、そんな思考も一時脇に追いやってしまった。

「入るよ万丈目ー、さっきから何やってんのいったい」
「む、清明か。ちょうどいい、お前、これには出るつもりなのか?」

 部屋に入ると、調べものでもしていたらしくパソコンを目の前にした万丈目がそう言って、机の上に置いてあった封筒を投げつけてきた。キャッチして見てみるが、こんなもの特に見覚えがない。

「……なにこれ」
「何?お前は受け取っていないのか?なら説明してやろう、これは昨日からオベリスクブルー及びラーイエロー、そしてこの俺万丈目サンダーに向けて配られているアモン・ガラムからのパーティーの招待状だ。なんでもあいつのバックに存在するガラム財閥……平たく言えば万丈目グループ以上の金持ちだ、そこが身内の留学祝いでパーティーを行うんだと」

 ガラム財閥、そのワードはつい先日も聞いた覚えがある。確か森に仕掛けられた謎の監視カメラをアモンに渡した時に、ガラム財閥の力で映像の再生をどうこう言っていたような。財閥なんて名前の響きからいってもただ者じゃないとは思ってたけど、あの万丈目グループ以上の金持ち企業だったのか。

「ふーん。まあ今時レッド生なんて数少ないからねえ。呼ばれてないのに行きようもないし、僕は家でご飯食べてるよ。んじゃさ万丈目、タッパー貸したげるからもし会場でキャビアとかフォアグラとか出たらちょっと持って帰ってきてよ。いっぺんでいいから高級食材っての、食べてみたかったんだ」
「そんな貧乏臭い真似、誰がするか!」
「あら残念。冗談だよ冗談」

 半分は、という言葉はさすがに呑み込んでおいた。もちろん半分は本気だったんだけど、この様子だと絶対引き受けてはくれないだろうし。
 呆れ顔のまま万丈目がやれやれと首を振り、いましがた見ていたパソコンの画面を指さす。つられて僕も見ると、そこにはガラム財閥の検索結果がずらりと並んでいた。

「別に、昔の俺ならいざ知らず今の俺は万丈目グループとは何の関わりもない身。あの男の家柄がどうだろうと、俺の知ったことではない」
『とか言っちゃって~、ホントはすっごい気にしてるんじゃないの~?』
『『プライド高いからなー』』
「やかましい、引っ込んでいろ!というか俺に話させろ!……ぜい、ぜい、すまん、見苦しいところを見せたな」

 怒鳴り散らしておジャマ3兄弟を追いやる万丈目に、いつも通りだから気にしないよー、なんて言葉をかけるなんて真似は僕にはできなかった。でも万丈目の場合、本人がどう思うかはともかく僕らからしてみればこれが平常運転なんだけど。

「話を戻すが、俺が気に食わんのはただ1つ。万丈目グループの後ろ盾を捨ててからというもの、俺は苦労に苦労を重ね今ここにいる。だがこのアモンはどうだ!何の気苦労もなくのうのうと暮らしてきたお坊ちゃまが、この万丈目サンダーよりも今こうして目立とうとしている!」
「ちょっとでもいい話に繋がるのかと思った僕の感動を返せ」

 口には出していないが、いつの間にかまた出てきたおジャマ3兄弟もなーんだ、といった顔で万丈目の背後にふわふわ浮かんでいる。そんな僕らの視線にも気づいていないのだろう、当の本人は大真面目な顔でさらにまくしたてる。この隙に部屋帰ろっと。

「そこで、俺は一計を考えた。この万丈目サンダーが目立つことができ、なおかつアモンの鼻っ柱をへし折ることができる作戦をな。お前も来るというならばその際に手伝いのひとつでも頼もうかと思ったが……招待すらされていないのなら聞くだけ無駄だったな。ふふふ、今夜が楽しみだ。アモン・ガラムめ、今夜はこの俺の生まれ変わったデッキでぎゃふんと言わせてやる!」
「え?」

 部屋の脱出もあと少しで成功するところまで行っていたが、それでも最後の一言につい反応してしまうのはデュエリストとしての悲しき性……でいいのかな。

「ふふん、お前が知らなくても無理はない。何しろこの忌々しい招待状が届いてから、睡眠時間を削って作り上げた俺の持ちうるギミックを詰め込んだ一品だからな」
『アタイ達兄弟にも出番があるのよ!』
「へー……ちょっと見せてよ」

 万丈目のデッキ構築力は、このデュエルアカデミアの中でもかなり高い。ちょっと前まで圧倒的トップに三沢がいて、次点に元プロでここの教員の……えっと、名前なんだっけ。伊藤だか加藤だか武藤だか……ああ思い出した、佐藤先生もかなりできる男らしいという話を聞いたことがあるけど、三沢はどっか行っちゃったし佐藤先生も僕らが2年に入ったあたりから影も形も見ていない。病欠でも取ってるんだろうか、考えたこともなかった。
 まあとにかくそこら辺の人がいない今、若干繰り上がり気味とはいえ今は万丈目がトップクラスの構築力なのだ。そんなデッキを見ることで、何か僕も参考にできる点が見つかるといいんだけど。僕がデッキに行き詰まりを感じていることは同じオシリスレッド所属なだけあってよく知っている万丈目は、それを聞いて一時は快くその新たなデッキを投げ渡そうとしてくれたが、ふと何かを思いついた風にその手をひっこめた。

「ここまで来たのも何かの縁だ。悪いが清明、どうせ見るならこのデッキのテストプレイに付き合ってもらえないか?」
「僕はいいけど……」

 そう言って腕のデスベルトをチラリと見る。相変わらず不気味に沈黙したままのそれは今のところ何の反応も示していないけど、ここでデュエルをすればまたこれが仕事しておかしなことになる可能性もある。
 だが万丈目はバカバカしいと軽く鼻で笑い、まるで気にした風もなくデュエルディスクを構えてのけた。

「デスデュエルについて悪い噂があるのは俺も知っている。だがな、この万丈目サンダーはいずれカードゲーム界の頂点に立つ男だ。デュエルの1度や2度で倒れてなどいられるか。さあ、早くお前のデュエルディスクを持って来い!」
「あ、ちょっと!?ったく、どうなっても知らないよー!?」

 なかば押し切られるような形で外に出ると、ちょうど同じパーティーの話をしていたらしい十代達にあった。十代にも招待はないのに、ホントになんで万丈目だけ貰ってるんだろう。同じレッド生のはずなのに。

「……今度本人に聞いてやろうかね。でも今は、ひとまずデュエルと洒落込もうか!」

「「デュエル!」」

 先攻は万丈目。さて、そのおニューのデッキの動きを見せてもらおうか。

「俺はモンスターを1体セット。さらに1枚カードを伏せて永続魔法、強欲なカケラを発動。これでターンエンドだ」
「あれ、いきなりセットだけ?てっきりもっとガンガン突っ走ってくるかと思ったのに」
「まあ待て、そう慌てるな。さあ、お前のターンだ」
「僕のターン、ドロー!」

 表側守備表示で出さないセットモンスターということは、なんらかのリバース効果を持っていると考えるのが自然。幸いこのカードが来ているのなら多少の無茶はカバーできる、序盤から攻め込もう。

「ウミノタウルスを召喚!そして水族モンスターを召喚したことで、手札のシャーク・サッカーを特殊召喚!」

 ウミノタウルス 攻1700 
 シャーク・サッカー 守1000

「相変わらずの布陣だな」
「うるさい。バトル、ウミノタウルスで攻撃!」

 頭部がウミウシのような形をした海の戦士が貝のような形状の斧を振り上げ、その全身で振りかぶって叩き付ける。だがその一撃はセットモンスターに届く前に、不意を衝いて伸びてきた1本の鞭に絡め取られた。

「嘘、止められた!?」
『なめるんじゃないわよ!』

 そして辺りに響く、その鞭の持ち主の声。この声はつい先日も聞いたことがある、だけどこんなところでまた聞くことになるとは思わなかった。

 ウミノタウルス 攻1700→黒蠍―茨のミーネ 守1800
 清明 LP4000→3900

「茨のミーネ……これまで黒蠍はデュエルで使ってなかったのに、どういう気の移り変わりさ」
「お前が使っているのを見て、少し気が向いただけだ。茨のミーネの効果発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えたことで、デッキから黒蠍を1体サーチできる。俺は黒蠍―罠はずしのクリフを手札に加える」
「僕はこれ以上することもないし、カードをセットして……」
「おっと。バトルフェイズ終了前にリバースカードオープン、マジカルシルクハットだ。このカードは発動時にデッキの魔法、罠2枚と自分モンスター1体をセット状態でシャッフルし、このバトルフェイズの間だけ攻守0の通常モンスターとして特殊召喚する。そしてバトルフェイズが終わったことで、2枚のカードは破壊される」
「へっ?」

 攻撃が終わりさっさとメイン2に行こうとした矢先、なぜか万丈目が攻撃攪乱用のカードなはずのマジカルシルクハットを発動させた。何がしたいのかわからずただ見ているうちに、万丈目の場に現れた3つのシルクハットのうち2つが消滅し、残る1つから茨のミーネが再び姿を現す。

「そしてこの瞬間、フィールドから墓地に送られたおじゃマジックの効果発動!デッキからおジャマ・イエロー、グリーン、ブラックのカードを1枚ずつサーチする!」
「そういうこと……ターンエンド」

 万丈目 LP4000 手札:6
モンスター:???(黒蠍―茨のミーネ)
魔法・罠:強欲なカケラ(0)
 清明 LP3900 手札:4
モンスター:ウミノタウルス(攻)
      シャーク・サッカー(守)
魔法・罠:1(伏せ)

「俺のターン、ドローだ。ドローフェイズにドローを行ったことで、強欲なカケラに強欲カウンターが1つ乗せられる。魔法カード、トランスターンを発動!この効果により茨のミーネを墓地へ送り、デッキから同じ種族属性でかつレベルが1高い強力のゴーグを特殊召喚する!」
『むぅん!』

 強欲なカケラ(0)→(1)
 黒蠍―強力のゴーグ 攻1800

「まだまだぁ!出ろ、V-タイガー・ジェット!」

 虎を模した戦闘機が、巨大ハンマーをその太い腕で軽々と持ち上げる盗賊の隣に召喚される。あのモンスターは、ずいぶん久しぶりに見るけど万丈目のエースの1体……移動砲台型戦闘機械、VWXYZの布石。

 V-タイガー・ジェット 攻1600

「行くぞ、バトルだ!強力のゴーグでウミノタウルスを攻撃!ごうりきハンマー!」

 まさに斧対ハンマーの対決……なんて馬鹿なことを言っている暇はない。攻撃力はゴーグの方が上で、僕の手にステータス変動を起こすためのカードはないのだ。純粋に戦闘に持ち込まれた場合、ウミノタウルスに勝ち目はない。

 黒蠍―強力のゴーグ 攻1800→ウミノタウルス 攻1700(破壊)
 清明 LP3900→3800

「ゴーグがバトルで相手にダメージを与えたこの瞬間、効果発動!強力のゴーグ第一の効果により、貴様のシャーク・サッカーにはデッキトップへバウンスされてもらおう!」

 ウミノタウルスを叩き伏せたゴーグの返しの一撃が、その隣にいたコバンザメにも襲い掛かる。幸い直撃こそしなかったものの、巻き起こる風圧は体の軽い魚をいともあっさりと吹き飛ばした。

「今だ、タイガー・ジェットでダイレクト……」
「リバース発動、グレイドル・パラサイト!このカードは相手の直接攻撃時に僕のフィールドにモンスターが存在しない時、デッキからグレイドルを1体攻撃表示で特殊召喚できる!出番だよ、イーグル!」

 グレイドル・イーグル 攻1500

 タイガー・ジェットが自身のボディを分離させ、そのパーツひとつひとつから砲台が飛び出て僕に照準を合わせる。パワーチャージが開始されたその瞬間に足元の地面から猛烈な勢いで銀色の水が吹き出し、空中でその姿を黄色の鳥に変えていく。
 その様子を見て、慌てて万丈目が攻撃命令を取り消した。

「まずい!砲撃ストップ、カードをセットしてターンエンドだ!」

 さすがにそうそうコントロールはくれないか……だけど、今回は思わぬところでラッキーだった。
 先ほど喰らった強力のゴーグによるバウンスのせいで僕のデッキトップはシャーク・サッカーに固定されてしまっていた。だけど、たった今パラサイトの効果でデッキからイーグルを特殊召喚したことで、ルール以前にマナーの問題として当然ながらシャッフルの処理が入る。つまり万丈目からしてみればダイレクトアタックできなかったばかりか、せっかくのドロー固定までもが無駄になったわけだ。

「このまま一気に波に乗る!僕のターン、ドロー……んー、フィッシュボーグ-アーチャーを守備表示で召喚、さらに永続魔法、補給部隊を発動。これでターンエンド」

 フィッシュボーグ-アーチャー 守300

 万丈目 LP4000 手札:4
モンスター:黒蠍―強力のゴーグ(攻)
      Ⅴ-タイガー・ジェット(攻)
魔法・罠:強欲なカケラ(1)
     1(伏せ)
 清明 LP3900 手札:3
モンスター:グレイドル・イーグル(攻)
      フィッシュボーグ-アーチャー(守)
魔法・罠:グレイドル・パラサイト
     補給部隊

「特に波はお前のところに来なかったようだな。だがそれもそのはずだ、お前の言う波は今まさに、俺の所へ来ている!俺のターン、ドロー!」

 意気揚々とカードを引く万丈目。その自信はどこから来るのかとよっぽど聞きたくなったが、それは勘弁しておいてあげよう。僕に波が来ていないのも否定できないところではあるし。

「ドローを行ったことで、さらにカケラにカウンターが乗る。そして2つ以上のカウンターが溜まった強欲なカケラを墓地に送ることで、カードを2枚ドローだ。W-ウィング・カタパルトを通常召喚し、そのままVとWの2体をゲームから除外し合体融合!変形だ、VW-タイガー・カタパルト!」

 青い飛行機型メカの上に虎型ジェットマシンが装着され、といえば聞こえはいいが要するに上に乗っただけで2体合体を名乗る変形ロボが新たに生み出される。

 VW-タイガー・カタパルト 攻2000

 融合召喚は通すしかない。だけど、VWの固有能力は手札1枚をコストにしたモンスター1体の表示形式変更のみ。アーチャーを狙われるとそれなりに痛いし、そこからゴーグの効果でもう1度デッキバウンス狙い?いや、それだけならまたパラサイトの効果でイーグルを呼び出せばいいし、補給部隊の効果で1枚のドローもできる。万丈目とて、この状況でうかつに攻撃はできないはず。
 そんな考えは、目の前で不敵に笑うその顔を見た瞬間に吹き飛んだ。万丈目、これはこのターンで仕掛けてくるつもりだ!

「魔法カード発動、モンスターゲート!このカードは発動時、モンスター1体をリリースする。そして俺のデッキを通常召喚可能なモンスターが出るまでめくり、最初に出たそのモンスターを特殊召喚する!強力のゴーグをリリースし、発動……1枚目、魔法カード、おジャマッスル!2枚目、特殊召喚モンスター、アームド・ドラゴン LV7!」
「やっぱり、か」

 墓地に送られた2枚のカードを見て、やはり万丈目のデッキにはあの2種類の要素が含まれていることを改めて認識する。このままうまいこと適当なモンスターでお茶を濁してくれればいいんだけど。

「3枚目!魔法カード、おじゃマジック!」

 おジャマをサーチするカード、おじゃマジックが再び墓地に送られる……だがあのカードがサーチを可能とするのは、あくまでフィールドか手札から墓地に送られた時。デッキからめくられそのまま墓地に送られる形となった今、そのサーチ効果は不発となる。

「4枚目!魔法カード、融合!まだまだ行くぞ、5枚目!……ほう、ここで引いたか。レベル3モンスター、スノーマンイーターを特殊召喚!」

 高らかに宣言するとともに、万丈目のフィールドに見覚えのある雪だるまが鎮座する。全く皮肉なものだ、1年の時に僕が万丈目のために渡したあのカードが、こうして僕に牙をむくとは。
 ……でも万丈目、あのカードをまだデッキに入れてくれてたんだ。そこはちょこっと嬉しかったり。

 スノーマンイーター 守1900

「そして魔法発動、融合識別(フュージョン・タグ)!この効果により俺はスノーマンイーターを選択し、さらにエクストラデッキに眠るXYZ-ドラゴン・キャノンを見せる」
「……?」

 そんなもん見せてもらわなくったって、エクストラにそいつがいることはわかっている。だが次の瞬間に雪だるまの形がみるみる変わっていき、まるで雪まつりの展示物並みに立派なドラゴン・キャノンの雪像へと変化した。

「このカードの効果によりスノーマンイーターは、融合召喚に使用する場合のみその名をXYZ-ドラゴン・キャノンとすることができる!行くぞ、除外融合!V・W・X・Y・Z、5体合体!」

 雪像と本物の機械が宙に舞い、分離合体を繰り返す。そして空の向こうから人型の移動砲台、アルファベットを冠するロボットの究極体が地響きとともに現れる。

 VWXYZ(ヴィトゥズィ)-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000

「出たな、VWXYZ!」

 予想外の方法により最低限の消費で現れた巨大ロボ……だけど、まだこれだけならば対処の方法もきっとあるはずだ。そんな考えを見透かしたのか、万丈目がさらに笑みを浮かべる。

「まだ終わってはいないぞ、清明。トラップ発動、融合準備(フュージョン・リザーブ)!このカードはエクストラデッキの融合モンスターを相手に見せることでその素材1体をサーチし、さらに墓地から融合のカードをサルベージすることができる。俺は再びXYZ-ドラゴン・キャノンを見せ、X-ヘッド・キャノンをサーチ。そして墓地から、先ほど名推理で墓地に落とした融合を手札に戻す」
『いよいよおいら達の出番なのね?』
『よっしゃー!』
『やってやるぜー!』

 素材となる3兄弟、そして融合のカードが揃ったことで気合十分なおジャマ達。だが、意外にも万丈目の返事は冷めたものだった。

「何を馬鹿なことを抜かしている。こんなところで融合したところで、それこそ壁にしかならんではないか。VWXYZの効果発動!1ターンに1度、場のカード1枚を除外する!消え去れ、グレイドル・イーグル!VWXYZ-アルティメット・デストラクション!」
「ぐっ……!」

 目も眩むような光線とともに、グレイドル・イーグルの姿が跡形もなくフィールドから消え去る。イーグルの能力はあくまで破壊が前提、除外には完全に無力だ。

「このままVWXYZでフィッシュボーグ-アーチャーに攻撃、そして効果発動!このカードとバトルするモンスターの表示形式を変更できる!消え失せろ、VWXYZ-アルティメット・デストラクション!」

 謎の光線を受けて強制的に戦闘姿勢を取らされたアーチャーの矢が唸りをつけて飛ぶ……だけどそんなものは、圧倒的なまでの火力によるフルバーストに対しては道端に落ちている石ころほどの妨げにすらなりはしない。全身の砲台を駆使して放たれる無数の光線に雷撃が、ちっぽけな魚を跡形もなく消し去った。

 VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000
→フィッシュボーグ-アーチャー 守300→攻300(破壊)
 清明 LP3800→1100

「ほ、補給部隊の効果発動!自分フィールドでモンスターが破壊された時、カードを1枚ドローする!」
「やむを得ないな。俺はこれでターンエンドだ」
「危なかった……」

 なんとかこのターンも凌ぐことができた。だけどもう僕のライフにも余裕はない、一刻も早くこの状況をなんとかしなくては。

「そのためにも、まずはドロー!」

 下手な壁モンスターはあの巨大ロボの前には何の意味もない。セットカードで対処しようとしても、万一そちらに除外を向けられたらアウト。つまりこの1ターンで、あのロボは突破して見せる!

「相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、このカードはレベル4かつ攻守0として特殊召喚できる。カイザー・シースネーク、特殊召喚!そして水属性モンスターが自分フィールドに存在することで、手札のサイレント・アングラーを特殊召喚!」

 カイザー・シースネーク 攻2500→0 守1000→0 ☆8→4
 サイレント・アングラー 攻800

「モンスターを2体並べた?」
「さて、やっぱり僕の切り札はこれでなくっちゃ。2体のモンスターをリリースして、アドバンス召喚!こっからが本番だ、霧の王(キングミスト)!」

 リリース素材の攻撃力合計は、3300。そしてその数値が、そのまま振るわれる霧の宝剣の破壊力に直結する。

 霧の王 攻3300

「がら空きの状態で……やるじゃないか、清明」
「そりゃどうも。バトル!VWXYZを切り裂け、ミスト・ストラングル!」

 今の万丈目の手札は6枚……とはいえその内訳はサーチされたまま使われていない罠はずしのクリフにX-ヘッド・キャノン、そしておジャマ3兄弟と融合であることがわかっている。オネストがないことは確認済みだから、反撃も考える必要がない。

 霧の王 攻3300→VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000(破壊)
 万丈目 LP4000→3700

「チッ……だがこの程度、かすり傷だ!」
「だろうね。カードをセットして、ターンエンド」

 万丈目 LP3700 手札:6
モンスター:なし
魔法・罠:なし
 清明 LP1100 手札:1
モンスター:霧の王(攻)
魔法・罠:グレイドル・パラサイト
     補給部隊
     1(伏せ)

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、魔力の泉を発動!このカードは発動時に相手フィールドに表側表示で存在する魔法・罠カードの数だけカードをドローし、その後自分フィールドで表側の魔法・罠カードの数だけ手札を捨てる。お前のフィールドには2枚のカード、そして俺のフィールドには魔力の泉1枚のみ。悪くない手札交換だ」

 僕の場の永続カードを逆手にとってのドロー。さあ、次は何を見せてくる?

「……清明。俺が今魔力の泉のデメリットで墓地に送ったカードは、黒蠍―罠はずしのクリフ。お前ならば、この意味が分かるはずだ」
「意味?」

 何を言っているのか正直わからなかったが、とりあえず考えてはみる。VWXYZは除外融合を行うため素材が墓地へは行かず、今の万丈目の墓地にいるのは魔法と罠を除けば黒蠍のメンバーが3体のみ……3体……闇属性戦士族が3体……。

「まさか!?」
「そのまさかだ!俺の墓地に闇属性モンスターが3体のみ存在することで、このカードは手札から特殊召喚できる!出でよ、ダーク・アームド・ドラゴン!」

 ノース校に封印されていた伝説のレアカード、アームド・ドラゴン……のダークバージョン。僕はいまだにノース校に行ったことはないからあんまり知った風なことは言えないけど、なんでわざわざ本体とダークバージョン、それとメタファイズバージョンを別の場所に保管していたんだろう。一緒の場所でいいんじゃないのかな。万丈目の話によるとノース校は氷山の上とかにもカードがある場所とかいう色々訳の分からない場所だし、そこも関係しているんだろうか。
 なんて、よその事情に首突っ込んでる暇はないんだけどね。ダーク・アームド、その効果のえげつなさは一時使用者だったこの僕が一番よく知っている。

 ダーク・アームド・ドラゴン 攻2800

「ダーク・アームド・ドラゴンは、墓地の闇属性モンスターを除外することでカードを1枚破壊する。茨のミーネを除外し、グレイドル・パラサイトを破壊!ダーク・ジェノサイド・カッター!」
「チッ……」

 これまで抑止力として頑張ってくれていたパラサイトが破壊される。最初に霧の王を狙ってこなかったのは、恐らく僕のこのリバースカードを警戒してのことだろう。うっかり破壊して安全地帯でも踏み抜くのを嫌ったのか、とりあえずパラサイトから破壊して一呼吸おこうという狙いでもあるのだろう。
 だけど、それは完全な悪手でしかない。どうせ狙うなら、霧の王を真っ先に潰しにかかるべきだったのだ。

「パラサイトの破壊は通す……だけど、これ以上はさせない!相手モンスターがフィールドで効果を発動したこの瞬間、手札から幽鬼うさぎの効果発動!ダーク・アームドには破壊されてもらうよ!」
「何!?」

 漆黒のカッターが飛来してパラサイトのカードを撃ちぬいた瞬間、お返しと言わんばかりに1本の鎌が回転しながらものすごいスピードでダーク・アームドめがけて飛んでいく。柔らかい腹の部分に突き立ったそれはいささかもスピードを緩めることなく、漆黒のドラゴンの体を貫通した。

「しくじったか……ならば、X-ヘッド・キャノンを守備表示で召喚。ターンエンドだ」

 X-ヘッド・キャノン 守1600

「運が悪かったねえ。僕のターン!」

 とはいえ、こちらも余裕があるわけではない。少しでも流れが向いている今のうちに、なんとかこれまでの遅れを取り戻さねば。だからここでアタッカーが引けなかったのは、僕にとってかなりの痛手と言える。

「バトル、霧の王でヘッド・キャノンに攻撃!ミスト・ストラングル!」

 天高く飛び上がった魔法剣士が、太陽を背にして大上段からの打ち込みを狙う。いくら変形合体して闘うマシーンといえども、その合体相手がいないうちはただのモンスターでしかない。豆腐でも切るようにすっぱりと真っ二つにされ、そのまま破片が爆発した。

 霧の王 攻3300→X-ヘッド・キャノン 守1600(破壊)

「僕はこれでターンエンド」

 万丈目 LP3700 手札:5
モンスター:なし
魔法・罠:なし
 清明 LP1100 手札:1
モンスター:霧の王(攻)
魔法・罠:補給部隊
     1(伏せ)

「俺のターン、ドロー!フン、ようやく来たな?魔法カード、融合を発動!手札のおジャマ・イエロー、グリーン、ブラックで3体融合!」
『『『待ってましたー!おジャマ究極合体!』』』

 3つの色が高速回転しながら混じり合い、白い巨体に花柄パンツ、風呂敷柄のマントをつけた最大のおジャマがその筋肉をアピールする。

『おジャマ・キーング!』

 おジャマ・キング 攻0

「攻撃表示……まさか!」
「そのまさかだ!フィールド魔法発動、おジャマ・カントリー!このカードが存在し場におジャマモンスターが出ている限り、フィールドの全モンスターの攻守は逆転する!」

 あたりの風景がのどかな田舎町に変わる……そしてその風景のあまりと言えばあまりのゆるさに脱力したのか霧の王が自身の剣に寄りかかり、なぜかキングの筋肉がモリモリと膨れ上がる。

 霧の王 攻3300→0 守0→3300
 おジャマ・キング 攻0→3000 守3000→0

「これで終わりだ!おジャマ・キングで霧の王に攻撃!行けっ!」
『おジャマ・フライングボディアターック!』

 巨体がふわりと宙に浮き、次の瞬間体ごと霧の王にのしかかる。通常ならばさっとかわして終わりな単調な攻撃も、今の脱力しきった霧の王にかわす気力はない。
 だがその巨体に押しつぶされる寸前、霧の王の体が文字通り霧となった。追突の寸前に相手がいなくなったことで、おジャマ・キングが勢い余って顔から地面に激突する。

「まだ何か仕掛けてきたか!?」
「リバーストラップ、儀水鏡の反魂術を発動!このカードは自分フィールドの水属性モンスター1体をデッキに戻すことで、墓地の水属性モンスター2体を手札に加える!霧の王をデッキに戻したことでその攻撃は巻き戻されたわけさ。そして墓地から、カイザー・シースネークとサイレント・アングラーを回収」
「モンスターを減らしたところで、攻撃が無効になるわけではない!もう一度行って来い、おジャマ・キング!」
『お……おジャマ・フライングボディ……』

 再び技名を叫びつつ、キングの巨体が舞い上がる。だけど、僕だってただ策もなしに霧の王を逃がしたわけじゃない。

「相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札からゴーストリック・フロストの効果発動!このカードはその攻撃モンスターを裏側守備表示にし、さらに自身を裏側守備表示で特殊召喚する!」

 防寒具を着込んだ雪だるまが飛び出し、今まさにプレス攻撃を使用としていたおジャマ・キングに雪玉をぶつけて狙いをそれさせる。運よくそのいくつかが目に当たったらしく、たまらずにキングが再び着地した。

 ???(ゴーストリック・フロスト)

「おジャマ・キングをセット状態にしたことで、一時的にカントリーの効果は失われる……だがそれにより、今のキングの守備力は3000。越えられるものならば越えてみろ、カードをセットしてターンエンドだ!」
「僕のターン!」

 超えられるものなら?もちろんだ、そしてそのために必要なカードはたった今僕がドローした!

「魔法カード、強欲なウツボを発動!手札の水属性モンスター2体、サイレント・アングラーとカイザー・シースネークをデッキに戻し、カードを3枚ドローする。そしてゴーストリック・フロストをリリースして、アドバンス召喚!来い、氷帝メビウス!」
「この局面で、氷帝メビウスだと!?」

 青いマントを靡かせる氷の力を持つ帝、メビウス。周りの風景を一睨みすると、あれよあれよという間に街の風景が氷漬けに変化していった。

「氷帝メビウスはアドバンス召喚時に魔法・罠カードを2枚まで破壊できる。フリーズ・バーストで、おジャマ・カントリーを破壊!」
「……だがメビウスの攻撃力では、おジャマ・キングの守備力は突破できないはずだ」
「それは間違いないね。だから僕は、正面突破させるのさ!魔法カード、アクア・ジェットを発動!これにより水族のメビウスは、攻撃力が1000ポイントアップする!」

 メビウスの空にかざした右腕に光が走り、おなじみのジェットが装着される。

 氷帝メビウス 攻2400→3400

「バトル!おジャマ・キングに攻撃、アイス・ランス!」

 アクア・ジェットを直接腕に付けたことでいつもよりも遥かに速く、右腕に氷を纏わせたメビウス自前の槍が唸る。圧巻の守備力を持つおジャマ・キングといえど、その強化された一撃に抗うすべはなかった。

 氷帝メビウス 攻3400→???(おジャマ・キング) 守3000(破壊)

「カードをセット、ターンエンドッ!」

 今は一見、メビウスを従えている分だけこちらが有利に見える。だけどそれはかなり不安定な優位でしかなく、裏を返せばメビウス意外に僕の攻め手はないことを示している。ライフも残り少ない今、もしもう一度万丈目にこの盤面をひっくり返されたら……どうだろう、これ以上さらなる逆転なんてできるだろうか。

 万丈目 LP3700 手札:0
モンスター:なし
魔法・罠:1(伏せ)
 清明 LP1100 手札:0
モンスター:氷帝メビウス(攻)
魔法・罠:補給部隊
     1(伏せ)

「俺のターン、ドロー!魔法カード発動、貪欲な壺!俺の墓地からおジャマ・グリーン、おジャマ・ブラック、黒蠍―罠はずしのクリフ、そしてダーク・アームド・ドラゴンをデッキに戻し、カードを2枚ドローする!」

 VWXYZとおジャマ・キングを戻さなかったのは、恐らくこのドローで死者蘇生などの蘇生カードを引いた時のことを考えてだろう。正規の方法で融合されたあの2体は、条件さえ揃えば普通に蘇生させることができる。

「……クソッ、死者蘇生さえ引ければ勝てたというのに!魔法カード発動、ソウル・チャージ!俺の墓地からVWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン及びおジャマ・キングの2体を蘇生させ、1体につき1000ライフを失いさらにこのターンのバトルフェイズが封印される!」

 VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000
 おジャマ・キング 守3000
 万丈目 LP3700→1700

「万丈目……」

 あれだけ苦労してようやくここまでこぎつけたというのに、いともあっさりと復活するモンスター。やっぱりこの男は、大したデュエリストだ。

「バトルフェイズは行えずとも、モンスター効果は生きている。おジャマ・キングが存在することで貴様のモンスターゾーンは3か所まで使用不能となる。俺はこの効果で、モンスターゾーンのうち2か所を封殺させてもらう」
「2か所?3つじゃなくて?」
「今にわかる。続いてVWXYZ-アルティメット・デストラクション!氷帝メビウスを除外する!」
「また……!」

 再び無数の光線が乱舞し、メビウスを光の中へ消し去っていく。

「カードをセット。さあ、ターン終了だ!」
「僕のターン、ドロー……」
「この瞬間にトラップ発動、おジャマトリオ!相手フィールドに3体、アドバンス召喚のためのリリース不可のおジャマトークンを守備表示で特殊召喚する!これでモンスターゾーンは全封殺、よって蘇生は無効だ!」
『『『ど~も~』』』
「嘘でしょ!?」

 おジャマトークン(イエロー) 守1000
 おジャマトークン(グリーン) 守1000
 おジャマトークン(ブラック) 守1000

 モンスターゾーンが完全封殺されたことで、モンスターを出して逆転することすらできなくなってしまった。仮にトークンだけで凌ごうにも、VWXYZの表示形式変更効果を使われれば次の万丈目のターンで瞬殺されてしまう、ということだろう。

「まだだ!さらにもう1枚のリバースカード、バトルマニアを発動!この効果により相手モンスターは全て攻撃表示となり、このターン攻撃をしなければならない!」
『オイラ達に攻撃させるの?アニキの鬼ー!』
『悪魔ー!』
『暴力はんたーい!』
「ええい、やかましいぞお前ら!」

 おジャマトークン(イエロー) 守1000→攻0
 おジャマトークン(グリーン) 守1000→攻0
 おジャマトークン(ブラック) 守1000→攻0

 どうやら自分のターンを待たず、このまま攻撃させて終わらせるつもりらしい。勝負は勝負として自分たちが特攻するのは嫌なのか僕以上の勢いで抗議するおジャマトリオだったが、万丈目がそれをバッサリと切って捨てる。
 だけど、残念。僕が今引いたカードなら、あるいは……!

「魔法カード、ブラック・ホールを発動!フィールドに存在する全モンスターは、破壊される!」
「驚いた、まだそんな切り札を隠し持っていたとはな。だがおジャマトークンは破壊された時、相手に300のダメージを与える!」

 清明 LP1100→200

「あぐっ!だけどこの瞬間、おジャマトークンが僕のフィールドで破壊されたことで補給部隊の効果が発動!カードを1枚ドローする!」
「なるほど、俺のライフは残り1700。そのドローで最後にモンスターを引き当て、その一撃に全てを賭けようという訳か。フン、基本攻撃力の低い貴様のデッキではその確率も低いが……引けたならば、面白いだろうな。いいだろう、かかってこい!」
「万丈目……やってやるとも!ドロー!」

 引けたら面白い、だなんてまるでユーノや十代のようなことを言う万丈目にかすかに驚きつつも、言われるまでもなくデッキに手をかける。今掴んだこのカード、これが何を見せてくれる?

「……僕は今引いたカード、ハンマー・シャークを召喚!」

 ハンマー・シャーク 攻1700

「フン、結局引き当てたか。この万丈目サンダーが、よもや破られるとはな」

 口ではそんなことを言ってはいるが、万丈目の表情は明るい。その笑顔に軽く手を振って応えてから、最期となる攻撃宣言を行う。

「バトル!ハンマー・シャークでダイレクトアタック!」

 ハンマー・シャーク 攻1700→万丈目(直接攻撃)
 万丈目 LP1700→0





「まったく。お前に負けたということは、俺もまだまだ詰めが甘かったということだな」
「相変わらず口が減らないねえ」

 そんなことを言っているとデスベルトが光り始める……が、これまでに比べて明らかにたいしたことない。むしろせっかく身構えていたのに拍子抜けするぐらいで、この程度なら誰だって1度や2度で倒れたりはしないだろう。となると、何らかの方法でエネルギー吸収量が調整されてるとか?でもそんなの、なんのために?もしかしてこのデスベルト、狙いは僕らに自分は手を出さずに危害を加える事よりも吸い取るエネルギーそのものが目当てだったりするんだろうか。
 わからない、まるで見当もつかない。なによりも情報が少なすぎる。

「さて、俺は今から夜までかけてこのデッキを一から調整し直すとしよう。ご苦労だったな、清明」
『オイラ達も手伝うわよ~ん』
「……一度、お前ら全員クビにしてみるか。新しく使いたいカードもあるしな」
『そんなっ!?』
「冗談だから耳元で怒鳴るな、やかましい。とはいえパワー不足なのは明らか、この欠点をどう解消すべきか……」

 ぶつぶつと呟きながら部屋へと戻っていく万丈目の後姿を見送りながら、その最後の一言が頭の中に残っていた。パワー不足、ね。そういえば三幻魔も決戦の時には世界中のカードからエネルギーを吸い取っていたらしいし、まさか今回もそんな化け物じみたカード絡みだったりするんだろうか。
 まさか、ねえ。……ね? 
 

 
後書き
正直なところ、ネタ優先で清明には5連敗してもらうかは割と本気でギリギリまで悩んでました。でも前回スランプ脱出宣言しちゃったのを途中で思い出したのでこんなことに。 
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