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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第66話 大型転送装置

 
前書き
クラフト撃破…そして 

 
エックスとルインは端末を操作し、ラグナロクのエネルギーチャージを解除した後に主砲を切り離した。

主砲さえ失えば地上に甚大なダメージを与えることは出来なくなる。

作業を終えたエックスとルインも一息吐いてからシャリテの治療を受ける。

治療により完全に回復したゼロはクラフトを見遣ると、彼の全身から火花が出ている。

体中に刻まれた深い傷を見れば、もうクラフトが助からないことは容易に分かる。

「…所詮、俺達は戦う事しか出来ないレプリロイドだ。世界を変えていくのは俺達じゃない。シエルやネージュ、アリア…そしてあの拠点の子供達…。今、この世界で生きる人間達だ。俺達レプリロイドは信じられる者に力を貸すだけでいいはずだ…」

自分達の役目は信じられる存在に力を貸すだけ、それを聞いたクラフトは苦痛に顔を歪めながら口を開いた。

「信じられる者…だと…?なら…俺は何を信じれば良かったのだ…?何もしようとしない人間…レプリロイドを恐れる人間…全てを支配しようとする人間…。そんな人間のために…俺やお前が、レプリロイドが争いあい…大地を、自然を傷つけていく…。そんな世界の…何を信じろというんだ…?ゼロ…お前は、お前達は何故、人間を信じられる…何故…戦える…?」

瀕死のクラフトは体に襲う痛みに構わず、ゼロに問う。

何故人間を信じられるのか?

昔の、ネオ・アルカディアが狂う前のクラフトならきっと即答出来たはずの問い。

だが暴走した今のクラフトは、その事を忘れていた。

そして、かつて理想を語り合った大切な友人であり、好意を寄せていたネージュもまた人間だったという事も。

「…俺は、エックスとの約束を守りたいだけだ。人間とレプリロイドの共存を信じ続けたこいつとの約束をな。俺は、友としてこいつを信じている。そして…こいつが信じ続けた人間を…俺は信じる」

それはかつてオメガを倒し、妖精戦争が終わって封印される前にエックスに言った言葉と同じ。

例え記憶を失ってもエックス達との友情は決して切れたりはしない。

「そう…か…俺は…ネージュの言葉すら信じてやれなかった…。初めて会った時から、ずっと…彼女は真実を伝え続けていたと…言うのに…ぐっ、ううっ…!!」

自分の過ちに気付いたクラフトは、ネージュの言葉すら信じてやれなかった自分を悔いる。

だが、それに気付くのはあまりにも遅すぎた。

そろそろ限界なのか、クラフトの反応が弱くなってきている。

「クラフト!!」

「しっかりしてクラフト!!」

歩み寄ってくるゼロ達にクラフトは静かに口を開いた。

「俺のボディは…このまま…ここに棄てて行ってくれ…」

「それで…いいのかい?君は…」

エックスが何か言おうとするが、それを遮るようにクラフトは話し続ける。

「俺には、もう…ネージュに会わせる顔など…ない…。これ以上…彼女を…苦しませたくない…」

例え死んでいても、今の自分にはネージュに会わす顔がないと言う、クラフトなりにネージュへのけじめを通そうとする想いが感じ取れた。

クラフトの意志を尊重し、ゼロはその願いを叶えてやることにした。

「…ああ…分かった」

「ゼロ…ルイン…エックス様……人間を…レプリロイドを…世界を、ネージュを…頼…む…………」

人間とレプリロイドを守るために戦うネオ・アルカディアの戦士としての心を取り戻したクラフトは、自分の守ろうとした物をゼロ達に託すと、静かに力尽きた。

「………」

「何だか…悲しいねエックス……」

「出会い方が違っていれば…きっと分かり合えたかもしれないのにね…」

悲しげな表情を浮かべるエックスとルイン。

ゼロも少しだが、表情が暗い感じがした。

少しして、シエルからの通信が来た。

『…ゼ…!…ゼロ…!応答して…!!』

「…シエルか…ラグナロクを止めることに成功した」

『…クラフトは…?』

「クラフトは…私達が倒したよ。今は機能停止状態になってる…」

『…ごめんなさい…私、何て言ったらいいのか…』

「お前が気にする事じゃない…ミッション終了、帰還する。」

転送の光に包まれ、三人は地上のトレーラーに戻るのだった。

「転送完了まで…2…1…転送!!お疲れ様でした」

転送室のトランスサーバーに現れたゼロ達を迎えるシエルとアリア。

そしてネオ・アルカディア跡地に向かったレジスタンスメンバーの隊長であるコルボーから通信が入る。

『こちらレジスタンス軍…コルボー・チーム!!シエルさん、ミッション終了です!!ネオ・アルカディア跡地から人間やレプリロイドを救助しました!!ですが…ラグナロクの攻撃により、ネオ・アルカディア跡地は壊滅状態で…バイルのいた中心部周辺は跡形もなく吹き飛んでいます。恐らく…逃げ遅れた人は、もう…』

「…そう…みんなありがとう、良くやってくれたわ…引き続き残された人達の救助をお願い」

『了解しました』

コルボーからの通信が切れ、シエルは深い溜め息を吐いた。

「大丈夫か…?シエル……」

自分達がクラフトを止めるために、ラグナロクに行っていた間、シエル達はラグナロクの攻撃からネオ・アルカディア跡地に残っている人間とレプリロイドの救出作業をしていた。

しかし、ネオ・アルカディア跡地から逃げ遅れた者も多く、ラグナロクの攻撃による被害は自分達が予想していた以上に大きかった。

ゼロは短い間に連続で起きた大惨事の対応に疲れたシエルに気遣いの言葉をかける。

「…ええ…平気よ、ちょっと…疲れちゃったけどね」

気丈に振舞うシエルだが、短い間に連続で起きた大惨事に最後に本音が出てしまう。

「外部より通信…人間の集落からです、回線繋ぎます」

ルージュが端末を操作して通信を繋げると、通信を繋げてきたのはネージュだった。

『…ゼロ…』

「…ネージュか…結局お前の言う通りだった、俺達が何を言おうと…やっている事はバイルと同じ戦争でしかない。俺達は…クラフトと戦うことしか出来なかった」

珍しく自分を否定的に言うゼロ。

クラフトの死は、ゼロにも何らかの変化を与えたようだ。

『ううん…ありがとう、ゼロ、ルイン、エックス様…。クラフトを止めてくれて…ありがとう…。』

そしてネージュもゼロの気持ちを理解して、苦悩の末に暴走したクラフトを止めてくれた事を感謝する。

世の中にはどうしようもないこともあるということをよく知っているネージュは、クラフトを止めることは出来ても、助けることが出来なかったゼロ達を責めるような事はしない。

ゼロ達もクラフトを救おうと戦ってくれたことくらいネージュは分かっていた。

穏やかな声で紡がれる言葉はゼロ達への感謝を表していた。

「さてと…クラフトを倒したことでラグナロクは止まって…ネオ・アルカディアはバイルの糞爺ごと消滅…これで、戦いは終わったのかな…?」

どことなくアリアの声にも疲労の色がある。

流石に底抜けに明るい彼女もこの惨事には疲弊したようだ。

「でも…地上も…人間も…レプリロイドも、多くの物を犠牲にしてしまった…。本当にこれで良かったのかしら、ゼロ…」

「…………」

あまりにも多すぎた犠牲にゼロも黙り込んでしまう。

それでも何か言おうとしたゼロだが、突如地上を襲った地響きに全員が体勢を崩した。

「うわっ!?な、何事!?」

「い、今のは一体…!?」

アリアとシエルの疑問に、何とか体勢を直したルージュが答える。

「…ラ、ラグナロクの副砲による攻撃です!!ラグナロクが再び動き出しました!!」

「そんな…バイルもクラフトもいないのに…!?一体誰がラグナロクを動かしているというの!?」

「オペレーター…!もう一度俺達をラグナロクに転送しろ!!」

「…駄目です!先程の制御室以外のエリアに接続出来ません!どうやらラグナロク中心部への転送回線にプロテクトをかけられたようです!このトレーラーにある転送装置の出力では、アクセスすら出来ません!!ラグナロク、加速を開始…まさか…この軌道は!?」

「…どうしたんだい?」

慌てるルージュに尋ねるエックスだが、その問いに返ってきた答えは最悪な物だった。

「このままですと…ラグナロクはエリア・ゼロへ落下する軌道に乗ります!何者かが、ラグナロクを地上に落とそうとしています!!」

「何ですって…!?」

「まるで……スペースコロニー・ユーラシア事件の再現のようだ…。」

かつての悪夢が再び蘇ろうとしている現状にエックスは顔を顰めた。

「ラグナロクの落下軌道が確定するまで多少の時間はありますが…転送ルートのプロテクトをこちらから解除するのは不可能です…!!」

「…くっ、打つ手なし…か…!?」

全員が諦めかけた時、再びネージュから通信が来た。

『ゼロ!ルイン!エックス様!!シエルさんもアリアさんも大丈夫!?』

「…ネージュさん!今、ラグナロクが…!!」

『ええ、話は聞こえてたわ!!』

「あ、通信繋いだままだ…流石、現役ジャーナリスト。抜け目ないね…」

『今から転送座標を送るわ、そこからなら…もしかするとラグナロクへ行けるかも…!!』

「え…?その転送座標はどこの…?」

『…ネオ・アルカディアにある大型転送基地よ、元はネオ・アルカディアの軍隊をあちこちに転送するための物なんだけど、そこの大型転送装置のパワーなら、ラグナロクまで届くかもしれない!!』

「確かに…あれなら宇宙にあるエリアXにも行けるくらいだから、ラグナロクに転送出来る可能性はある。」

ネオ・アルカディアの元統治者であるエックスの言葉の信憑性は高く、全員の表情に希望が戻る。

「集落から転送座標のデータを受け取りました、転送座標の入力を開始します」

「ゼロ…!」

シエルがゼロに振り返ると、彼も頷いた。

「可能性があるのなら…それに賭けるしかない…」

「希望が見えてきたねエックス!!」

「うん、あの時よりも遥かに大きな希望が…。」

「大型転送基地への転送座標の入力…完了しました、大型転送基地へ転送しますか?」

「頼む…」

「大型転送装置のパワーを利用するなんて思いも寄らなかったわ、流石はネージュさん…」

「みんな…危険なミッションだけど絶対無事に戻って来るんだよ…」

「分かっています」

三人が中央のトランスサーバーに乗り込み、それを確認したルージュが端末を操作する。

「転送準備完了…転送!!」

三人はネオ・アルカディアの大型転送基地へと転送された。

「みんな…帰って…きてね…」

「シエルちゃん、信じて待とう。信じて三人を待つことが私達のミッション…何てね♪」

「アリアさん…ええ」

二人は穏やかに笑いながら三人の帰りを待つのであった。

そして大型転送基地へと転送されたゼロ達に直ぐにルージュから通信が入った。

『転送装置に座標を送るために、基地の通信プロテクトを解除する必要があります。各通路の先にあるスイッチを引っ張ればプロテクトを解除出来ます。ゼロさんはゼロナックル、ルインさんはFXアーマー、エックス…さんはロッド系の武器で引っ張ることが出来ます』

「了解した。」

「ロッド系か…今まで回収した武器でそんなのあったかな…?」

「とにかく行ってみようよ!私は下の方に行くから」

「なら、俺は左だ」

「じゃあ、僕は右だね」

三人がそれぞれ向かう場所のシャッターを抉じ開けて、通路を進む。

ゼロが進んだ左のエリアは、メカニロイドと煮えたぎるマグマがある場所であった。

道を阻むメカニロイドをZセイバーとバスターショットで破壊し、マグマに落ちないように進み、奥のシャッターを抉じ開けるとスイッチのある部屋に出た。

ゼロは光学迷彩で隠れていたメカニロイドの攻撃をかわしながら、ゼロナックルでスイッチを引っ張った。

「どうだ?」

『確認しました。スイッチは残り三個あります。全ての通路のスイッチを引っ張って下さい』

「一度、元の場所に戻るか…」

ゼロは部屋を後にして、元の場所に戻る。

一方のエックスは水場のあるエリアを突き進んでいた。

途中で蛙型のメカニロイドからチップを入手してXバスターに組み込み、そのままシャッターを抉じ開けて中に入るとスイッチがあった。

「タングロッド!!」

蛙の舌のようなロッドがスイッチの取っ手に絡みつき、勢い良く引っ張ると、スイッチが引き上げられた。

『二個目のスイッチを確認しました。残りのスイッチは二個です』

「よし、急いで戻らなくては」

スイッチを引っ張り終えたエックスも元の場所に戻るのであった。

そして下のエリアに向かったルインはFXアーマーに換装して爆弾型のメカニロイドにショットを放ちながら、床のブロックを破壊していた。

「シャッター発見!!」

ブロックを破壊し、シャッターのある場所を発見したルインはそこに飛び込むと、そこにはメカニロイドに守られたスイッチがある。

光学迷彩で隠れているメカニロイドが攻撃してくるが、ルインは構わずスイッチの取ってを掴んで引っ張った。

『三つ目のスイッチを確認。残るスイッチは一個です』

「上の階か、なら私が行くよ!」

HXアーマーに換装してエアダッシュで一気に飛翔すると、中心部に戻る。

「ルイン!?」

「私が最後のスイッチを引っ張るからエックス達はそこにいて!!」

驚くエックス達に構わず、上のシャッターを抉じ開けてスイッチのある部屋に向かう。

途中でバリアントが妨害して来るが、ダブルセイバーで斬り捨てながら上へ目指し、そして上のシャッター抉じ開けて、中の部屋に入るとメカニロイドが攻撃を仕掛けてくる。

「これで最後のスイッチ!!」

ルインがFXアーマーに換装して、スイッチを引っ張った。

『プロテクトの解除を確認、ラグナロクへの転送座標入力を開始します。中心部へ戻り転送装置の確認をお願いします。』

そしてルインは下のシャッターから再び中心部に戻り始めるのであった。

中心部にいたエックスとゼロは、転送装置の確認をしていたが、中心部の部屋の異変にエックスとゼロは身構えた。

「エックス…」

「分かっているよゼロ。あれは、ランダム・バンダム。かつて僕が戦ったランダ・バンダというセキュリティシステムをベースにして造られた敵なんだ。」

それぞれの武器のエネルギーチャージを終えた二人は巨大メカニロイド、ランダム・バンダムが出現した瞬間に攻撃を繰り出す。

「ダブルチャージショット!!」

「はああっ!!」

ダブルチャージショットとチャージセイバーが同時に繰り出され、直撃を受けたランダム・バンダムだが、すぐさま部屋全体を跳ね回る。

攻撃を喰らわせようとするが、ランダム・バンダムの動きが速くて捉えられない。

そして中央に戻った瞬間を狙って、ゼロはバスターを構えてバーニングショットを放ち、エックスはメガアックスを叩き込む。

ランダム・バンダムが隔壁の中に消えていき、そして壁のパネルが裏返るのと同時にレーザーを放ってきた。

「避けて!!」

「分かっている!!」

パネルが数枚裏返り、レーザーを放ってきたが、弾速が遅いので回避は容易であった。

再びランダム・バンダムが出現し、光弾を放ってきた。

「喰らえ!!」

それを回避しながら、今度はゼロナックルのチャージ攻撃を繰り出す。

「ドリルロッド!!」

ゼロから手渡されたチップをバスターに組み込み、猛烈な勢いで回転するドリルでランダム・バンダムのボディを抉る。

使用制限はあるが、かなり強力な武器だ。

攻撃を受けたランダム・バンダムが再び隔壁の中に戻るとパネルが裏返り、ショットを放ってきた。

「ぐっ!?」

「ゼロ!!」

咄嗟にシールドを構えたエックスとは違い、シールドを持っていないゼロにショットが掠る。

「…トラクターショット!!」

バスターの銃口に電撃弾が現れ、パネルから放たれるショットが吸収されていく。

この技はミノ・マグナクスのDNAデータを解析して編み出した技であり、特定のショットを吸収して電撃弾の攻撃力に変換する技なので、ショットを吸収するごとに威力が上がっていく。

全弾吸収し、隔壁からランダム・バンダムが姿を現すと、エックスがダブルチャージショットとメガアックスによる三連撃を浴びせ、ゼロの方を振り返る。

「ゼロ!!」

「ああ、これで終わりだ…!!」

バスターの銃口から特大の電撃弾が発射され、ランダム・バンダムに炸裂した。

かなりの数のショットを吸収したためか、トラクターショットの電撃弾は凄まじい破壊力であり、直撃を受けたランダム・バンダムは閃光に飲まれた。 
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