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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第46話:困った時は彼に聞け

(グランバニア城・国王主席秘書官執務室)
ウルフSIDE

「ウルフく~ん、如何すれば良いのかなぁ?」
軍務大臣の秘書官たるレクルトが俺の執務室にまで押し掛けて悩み事を吐露する。
ぶっちゃけ殴って追い出したいが、悩みの内容が軍の事だし、俺も何とかしたいと思ってる事なので、追い出しにくい。忙しいのに……

レクルトの悩みというのは……軍内部の予算配分の事だ。
本来なら軍内部の予算配分なんて、こっちが口出しする事じゃないのだが、広い視野で見たらグランバニアの未来に関わる事なので、俺も無碍に出来ない。

と言うのも、武器開発部門が閉鎖の危機に陥ってるのだ。
只でさえグランバニアは軍事費を大幅削減させてるのに、(くだん)の部署は目立った功績も無く、年々人員削減されている。

だが、現在グランバニアには2億もの人口が居る。
リュカさんやティミーさんが存命中は問題ないだろうけど、死後の未来は軍によって外敵からの侵略等に対抗しなければならない。

だから現在活躍しなくても、廃止にするわけにはいかないのだ。
その為に部署は存在するし……存在する以上、予算は回される。
元々少ない予算なのに、役立たずの部署が持って行く……他の部署、特に活躍してる部署は納得いかないだろう。

んでレクルトは俺のところに泣き付きに来た。
何かに困るとレクルトは俺に泣き付く。
男に泣きつかれても嬉しくない……いや、女に泣きつかれても鬱陶しい。

「兎も角さ……実績を残せば周囲からの圧力も減るんじゃねぇの?」
「如何実績を残せば良いのさ!? あそこは窓際部署だよ。他で邪魔になった者達が、島流しの流刑地として辿り着く場所だよ。実績なんか残せるわけないじゃん!」

「奴等だけに頼るんじゃ無くて、外部からの援護を向かい入れろよ」
「外部からの援護?」
ちょっとはお前も考えろ!

「この国は、多種多様な生物が暮らしてるだろ。鍛冶屋のザイルさんも、リュカさんが連れてきたドワーフだろ。その彼が、堅すぎて加工出来なかったグランバニア鉱石を、簡単に加工できるようにしたって聞いてるぞ。お陰で、他の国には無い丈夫な武具を量産出来てるじゃんか」

「そっか……でもザイルさん忙しそうじゃね?」
「俺の方が忙しいんだよ! それにザイルさんだけじゃ無くて、モンスター連中にも手伝わせろよ。人間に無いアイデアが生まれるかもしれないだろ」
鍛冶屋に気を遣わないで、国家の中枢に近い俺に気を遣え!

「解ったよ。色んな人達に相談してみる!」
そう言うとレクルトは笑顔で退出して行く。
まったく……今日は何て日だ。

先程もリュリュさんが突然来て、『臨時収入があったから、お父さんとデートに行きたいんだけど、何処?』と聞きに来た。
何だ臨時収入って!? 兄貴にパンツでも売ったのか?

お前の親父は、城下町で妻と一緒にプーサン&ルービスって言う夫婦に変装して、くだらない演劇を披露するから忙しいんだよ! お前みたいな変態娘に構ってられないんだよ!
厄介な夫婦が厄介者な神の名を騙り、更なる厄介ごとを巻き起こそうとしてる。
何だこの厄介事フェスティバルは!?

面倒な奴が居なくなり、仕事のスピードを上げようと書類に目を移すと、ユニさんが小声で「お疲れ様」と言い、コーヒーをデスクに置いてくれた。
今煎れてきたのだろう……コーヒーの香りが俺の心を癒やしてくれる。

良い()や……
リュカ信者じゃ無ければ直ぐにでも彼氏が出来るのだろうに……
勿体ないなぁ。
そんな事を考えコーヒーを一口啜ると、また厄介者が現れる。

「アニキぃ~……相談に乗ってよ」
「俺の相談に乗ってくれ……邪魔だから帰れ!」
解れよ……俺は仕事中なんだって、解ってくれよ!

「オイラこの間、アニキに2000(ゴールド)貰ったじゃん。だからリューラの母ちゃんに何かプレゼントしたいんだけど、何が良いのかなぁ? ほら……オイラの母ちゃんになる人でもあるじゃん。気の利いた物を贈りたいんだよね」
無視か。俺の相談事は無視なのか!

「だから女へのプレゼントはパンツだって言ってんだろ! お前の得意なハデハデセクシーパンツでも贈れよ」
「ははぁ~ん、さてはアニキ馬鹿だろ?」
このガキ……言うに事欠いて俺の事を馬鹿と言ったな。

「オイラ、好きな女の母ちゃんに贈りたいって言ったんだよ。アニキ言ったよね……女に自分好みのパンツを贈れば、翻って自分へのご褒美だって! でも今回は好きな女の母ちゃん……自分へのご褒美があっちゃ拙いんだよ……解る?」

「解んねーよ。俺はスノウさんにもパンツを贈ったから」
「え、マジで!? 本当に馬鹿なのアニキ」
チラリとユニさんへ視線を移すと、凄い軽蔑の視線を俺に送って来る。

「その視線やめなさい。男が近寄ってこなくなりますよ!」
俺の優しいアドバイスを聞き、軍務担当補佐官のプロムと政務担当補佐官のリックがクスリと笑ったが、言われたユニさんの視線は緩まない。

「はぁ~……何時も『天才、天才。俺って天才』って言ってるけど、馬鹿だったら『馬鹿です』って言った方が良いよアニキ」
「お前こそ馬鹿なんだから、もっと勉強しろ! この間の試験(テスト)は散々だったんだろが! 馬鹿自慢してないで勉強しろ」

「オ、オイラは良いんだよ。頭脳派ではなく肉体派で行くんだから」
「うるさい。この家では文武両道が基本だ。お前の義理の母ちゃんも、剣術の腕前だけでは無く、魔法も使える達人だぞ。金かけてプレゼント贈るより、試験(テスト)で良い点数プレゼントしろ!」

「ぐっ……元狐なんだから勘弁してよ。それに“文武両道”って言うのなら、アニキの義理の母ちゃんは如何なんだよ!?」
「はぁ? ビアンカさんが何だよ!」

「違ーよ。スノウさんの方だよ。あの人の頭はユルユルじゃんか!」
「馬鹿野郎。あの人はエルフだぞ! 生きてきた年月が違いすぎる」
そうか……アローは何も知らないんだな。

「それに、あの人は魔技高(魔法機械技術高等学校)で講師やってんだぞ。馬鹿には務まらない職業なんだぞ!」
「えぇぇぇぇぇ!!!! マ、マジで!?」
俺も初めて聞いた時はアローと同じ反応したなぁ……

「アローくん。スノウさんはリュカ様に頼まれて、魔技高(魔法機械技術高等学校)で講師をするようになったのよ」
「いくらリュカさんの頼みだって、出来ることと出来ないことがあるんじゃね?」
確かに……常人の思考回路だと、あの女に講師など無理だと考えるだろう。

「そうね……スノウさんも最初は断ったわ。申し訳ないけど、私もスノウさんが他人に物事を教える立場になれるとは思えなかったし、本人も同感だったからね」
その通りだ。万人が不可能と考える……

「でもね、リュカ様が仰ったの……『講師(教師)が必ずしも全知全能である必要は無い。特に専門学校の講師はね。必要とされる専門的知識だけが備わってれば、それを後身の者に伝えれば良いだけ』って言われたのよ」
「た、体面的にはそうだけど……無理がある気がする」
流石のアローも同じ事を考えるか。

「うん。そうしたらリュカ様はね……『だからこそ講師も生徒と一緒に学んでいけば良いんだよ。共に足りない部分を補って成長して行く……その精神こそ学舎に必要な事なんだと僕は思うね。スノウはそう思う?』って聞き返されたのよ」
ここがリュカさんの誑し師としての凄いところだ。

「そ、その通りだと……オイラも思う……けど……」
「そう。その通りだと思ってしまえば、要請に応えて講師を引き受けなければならない。しかもリュカさんはスノウさんに『得意なヒャド系の魔法だけを教えるんで良いよ』と、何時もの爽やかスマイルでスノウさんにお願いしたそうだ」

得意と言っても、基本的な魔法の仕組みや成り立ち……特性・特徴などを教えなければならず、彼女も一から学び直したと言ってた。
(すげ)ー……スノウさんも(すげ)ーけど、才能を見抜いたリュカさんはもっと(すげ)ー」

「驚くのは未だ早い。そのスノウさんの教え子の中から、“魔道冷風機”を作りだした者が居るんだぞ」
「え“魔道冷風機”って、あの部屋を涼しくする装置の事?」
俺がこの世界に来て直ぐの事だったな……“魔道冷風機”が発売されたのは。

「他にも魔技高出身者は、数多くの功績を残してる。魔道冷風機などの魔道機器に魔力を送る“魔送柱”や“魔封鉐”も魔技高出身者が作り出した」
「魔封鉐って何だ?」
そこからかよ!?

「魔封鉐とは名前のごとく、『魔法』を『封じる』『石(鉐)』の事だ。簡単に言うと、この石(鉐)にメラを封じると、石(鉐)に魔力を贈るだけでメラが発動されるって代物だ。魔道冷風機にはヒャド系の魔法を封じだ魔封鉐とバギ系の魔法を封じた魔封鉐が内蔵されており、そこに魔送柱から魔力が送られてきて涼しい風を室内に送り出してるんだ」

「へぇ~……アレってそんな仕組みなんだ! てっきりリュカさんが神様に作らせたのかと思ってたよ、オイラは」
確かにそう思うだろう。MH(マジックフォン)もそうだが町中を走る“運送魔道車”はアリアハンが作りだした物だ。

リュカさんの様に異世界から転生してきた者でもない限り、容易に新技術を考え付くとは思えない。
その通りだと俺は思う。実際に新技術の切っ掛けはリュカさんからのアイデアらしいから。
簡単に言うと“魔道冷風機”や“魔道温風機”は、国民からの不平を聞いたリュカさんが、魔技高出身者などの有識者の前で、『こんなアイデアがあるんだけど、実現出来ないかなぁ~……』と嘯いた事に端を発する。

魔力を送る技術はアリアハンからの技術提供を参考に、直ぐ開発された。
魔封鉐も“賢者の石”等のマジックアイテムを参考に、比較的早く開発されたらしい。
この二つの技術が存在すれば、魔道冷風機の開発など直ぐだったろう……

そしてリュカさんの凄いところは、アイデアの提供者は自分ではないとしてる事だ。
つまり、魔技高などで専門知識を習得すれば、後世に残る様な功績を立てる事が出来る……と思わせてるんだ。
何でもリュカさんが起案だと『王様だから』とか『偉大だから』で済まされてしまう。

だが一般人からの起案で偉業を達成されれば、誰もが学ぶ事への努力を行うだろう。
この国は未来に向かって新技術の開発に勤しむ国になる。
……なるほど、これは使えるな。

この方法を利用すればレクルトの悩みも解決出来、俺も一石二鳥……いや三鳥くらいは得られるかもしれない。
よし……そうと決まれば、もう少し作戦を煮詰めよう。
となると、邪魔だな……コイツ。

「おい、もういいだろ。早く帰って勉強しろ。ピエールさんには良い点数を取って見せるのが一番のプレゼントだ!」
「えぇ、そんなぁ……」
帰れと言っても愚図るアローを力尽くで追い出し……

「パンツがダメなら服でも買ってやれよ! そんぐらい自分で思いつけよ」
とアドバイスして扉を閉める。
扉の向こうでは「そうか!」とアローの明るい声が聞こえてきた。

よし……これで俺も集中出来る。

ウルフSIDE END



 
 

 
後書き
ドラゴンクエストビルダーズに嵌まってます。
ゲームばかりやってて全然書いてませんでした。
でも何とか1話だけ書き上げましたよ。 
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