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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第十七話 迷子の少女と二つ名を持つ者達

ここに引っ越してから一週間がたち、ソレイユとルナは悠々自適に暮らしていた。朝食を食べ終え、まったりとお茶をしているところで、ルナが楽しげな表情で口を開いた。

「ねぇ、ソレイユ。今日は何して遊ぼうか?」

「また、身も蓋もない言い方だな。・・・お隣さんでも冷かしに行くか?」

「そうだね、いろいろ相談に乗ったりしたんだから、それくらいやっても罰は当たらないよね!」

面白いものを見つけた子供のような表情で言うルナにソレイユは苦笑した。よほどアスナからの相談(愚痴and惚気)は堪えていたらしい。方針が決まれば行動を起こすのは早かった。時刻は十時を回ったところである。家を訪れるにしても失礼はない時間なため、颯爽と着替えを済ませ、数メートル隣の家に向かうため家を出た。

「さて、どう冷かしてくれようか・・・」

怪しい老婆が窯をかき混ぜるときのような表情でこれからの案を歩きながら考えているルナ。そこまで堪えていたのか、アスナにどんな相談をされたんだ、と疑問に思う反面、まぁ、あの割かし走り出したら止まらないアスナのことだからいろいろあったんだろ、と結論づけるソレイユ。本人が聞いたら顔を真っ赤にしながら襲い掛かってくるだろうが、そう言う反応を見るのがからかう側にとって楽しいのである。そんなことを考えながら歩いていたため、いつの間にかドアの前まで来ていたので、ノックした。

「は、はーい!」

「キリト君はご在宅かーい?」

「ソレイユ、子供みたいだぞ・・・」

「童心を忘れないとはいいことじゃないか」

呆れながら扉を開いてくるキリトに対してソレイユは爽やかな笑顔で言い返したが、スルーされてしまった。

「・・・で、どうしたんだよ、急に・・・」

「暇だからルナと共に遊びに来た」

「そ、そうか・・・」

ソレイユの言葉に後ろにいたルナはにこやかな顔で手をふっていた。そんな二人を見たキリトは軽く狼狽しながら応じた。よくキリトを見ているとどこか落ち着きがない。そんなキリトを見て、ソレイユはきょとんとした顔で首をかしげた。

「どうしたんだ、お前?」

「な、何がだ・・・?」

「いや、なんか落ち着きがないからさ・・・」

「そ、そんなことないぞ・・・」

ソレイユの言葉を否定するキリトだが説得力がなかった。不思議に思ったソレイユはキリトに揺さぶりをかけ、その原因を聞き出すことにした。

「家の中に何かあるのか?」

「な、何もないって!!ああ、何もないさ!!」

「・・・とりあえず家の中に何かあるんだな。ルナ・・・」

「はいは~い、ちょっとごめんね、キリト君」

「あ、ちょ、ルナ!!」

ソレイユの言葉の意味を理解したルナはすぐさま行動に移る。キリトを押しのけ家に入っていく。下手に抵抗してハラスメントコードに接触した時のことを考えてしまいキリトは抵抗らしい抵抗ができずにルナを中に入れてしまった。それに続くようにソレイユも入っていき、リビングに入るとアスナがいた。

「る、ルナ、それにソレイユ君も!?」

「こんにちは、アスナ元気し・・て・・・る?」

「ん?どうした?」

挨拶をするルナの言葉が次第に掠れて行ったため、ソレイユがアスナの方をのぞくと、そこには見かけない子供がいた。長い艶やかな黒髪に白くきめ細かい肌、そして、顔立ちは日本人のものとは思えないほどだった。ソレイユたちの後ろではキリトがあちゃー、と言いたげな表情で額に手を当てていた。

「誰だ、その子?迷子か?」

「あー、えっと、その、これは・・・」

「あ、あのね、ソレイユ君、ルナ。これは・・・」

冷静なソレイユの質問に言葉を濁しているキリトとアスナ。そんな二人をよそに、件の少女からソレイユとルナにとって信じられない言葉が出てきた。

「・・・パパ・・・ママ・・・?」

この瞬間、空気が凍りついた。美しく調律されたような良く通る声が部屋の中に響いた。固まる四人だったが、持ち前の臨機応変さでいの一番にソレイユが我を取り戻した。我を取り戻したところで、少女の言葉の意味を考えた結果、ある一つの答えにたどり着いた。

「ルナ、どうやらSAOでは結婚すると子供も作れるようになるらしい・・・」

「・・・そうなんだ。それは知らなかったな・・・」

「ああ、おれもだ。だが、今ここでやることはそんなことを考えることじゃないと、俺は思うんだ・・・」

「それもそうだよね。だったらやることは一つしかないよね・・・」

そこでいったん言葉を区切ると二人は声をそろえてキリトとアスナにポツリと呟いた。

「「・・・・・お幸せに」」

「「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

そういって出て行こうとする二人をキリトとアスナは必死の形相で止めに入った。



「拾った、ね。嘘つくならもっとマシな嘘にしろよな」

「本当だから、いい加減それから離れてくれっ!!」

いまだにからかい続けているソレイユにキリトは全力で撤回を求めた。その努力が報われてか、ソレイユも真剣な表情になる。

「要するに、遊びで肝試しをしていたら、噂はガセではなかったと、それで連れて帰ってこれたからNPCでもなく、クエスト表記が出なかったため、クエストに関するものでもない、っていうのがお前らの結論か?」

「ああ。ソレイユはどう思う?」

「どうって聞かれてもな・・・。実際そこにいたわけでもないし、判断材料が少なすぎるため判断できん」

「ルナはどう思うの?」

「ソレイユに同意。聞いただけじゃわからないこともあるから、何とも言えないよ・・・」

アスナが隣の寝室で少女を寝かしつけ、今はリビングで事の成り行きを話していた。ソレイユは少し考える仕草をした後、気になることを聞いてみた。

「はじまりの街には行ったのか?」

「いや、行ってないけど・・・。どうしてそんなこと聞くんだ?」

ソレイユの質問の真意が理解できないキリトとアスナ。隣に座っているルナもわからないらしくソレイユのほうを見つめていた。

「はじまりの街には小さい子を保護している教会があるんだ。そこなら何かしらわかるんじゃないかなっと思ってな・・・」

「そんな人いたんだ、初めて知ったよ・・・」

「ああ、俺もだよ」

「私もだよ」

SAOにとらわれた子供を面倒みているなんて人のいい人がいたと聞かされ、キリトとルナとアスナは感心していた。

「まぁ、とりあえず近場の情報や新聞などで情報を集めることからした方がいいだろうな。はじまりの街に行くのはそれからだ」

ソレイユの言葉に頷くほかの三人。いろいろ話していたせいか、時刻は間もなくお昼である。それに気が付いたアスナとルナは昼の準備に取り掛かっていく。幸い少女は昼食の準備が終えるころには目を覚ましていた。アスナが少女をつれてリビングに来たところで、少女はソレイユとルナを不思議そうに見ていた。その視線に気づいたソレイユはキリトとアスナに紹介を求めた。

「アスナ、とりあえずその子を紹介してほしいんだけど?」

「えっ?あっ、そうだよね。ユイちゃんはソレイユ君とルナのことは知らなかった」

「ユイちゃん?」

「この子の名前だよ。ユイちゃん、この人たちはママたちと一緒にいてくれる人たちだよ」

「いっしょ?ママたちと、いっしょ?」

「ああ、いっしょだ」

少し考えた後、満面の笑みを浮かべてソレイユたちのほうへ手を伸ばしてきた。その手を取り、ユイの視線に己の視線が合うように膝をつきながら名乗った。

「はじめまして、ソレイユだ」

「私はルナだよ、ユイちゃん」

「おえいゆ・・・うな・・・」

舌足らずな結衣の言葉にソレイユとルナは苦笑した。どうやら、サ行とラ行が言えないらしい。下の使い方がわからないようだ。そこまで考えたソレイユはユイの頭を撫でながら微笑みながらやさしく口調で言った。

「ユイの好きな呼び方でいいよ」

「・・・・・・・」

ソレイユの言葉にしばらく難しい顔で考え込んでいたユイだったが、何かに至ったらしく緊張した面もちで口を開いた。

「おえいゆは・・・にぃに、うなは・・・ねぇね」

案の定な呼び方で呼ぶユイにあらためて挨拶をしているアスナとルナ。それが終わると五人で昼食をとることとなった。メニューは甘いフルーツパイとサンドウィッチである。ユイはフルーツパイよりもキリトが食べているマスタードたっぷりのサンドウィッチに興味を示しアスナとキリト慌てさせた。

「ユイ、これはな、すごく辛いぞ」

「う~・・・・パパと、おんなじのがいい」

ねだるユイにキリトは持っていたサンドウィッチを差し出すと、ユイは迷いなく小さな口を開け噛み付いた。固唾をのんで見守るキリトとアスナにソレイユとルナが呆れの視線を向けていた。そんな二人の視線に気づかずに見守られるユイは、難しい顔で口をもぐもぐ動かしていたが、ごくりとのどを動かすとにっこりと笑った。

「おいしい」

「なかなか根性のあるやつだ。よし、晩飯は激辛フルコースに挑戦しような」

「すぐ調子に乗らないの!作りませんからね、そんなもの!」

もはや、砂糖を吐きたくなるようなやり取りであった。うんざりげな表情のソレイユと苦笑いをしながら微笑ましげに親子三人の様子を見守るルナ。結局この親子のやり取りは昼食中に消えることはなかった。サンドウィッチを平らげ、満足そうにミルクティーをすするユイにアスナは言った。

「ユイちゃん、午後はちょっとお出かけしましょうね」

「おでかけ?」

キョトンとするユイに向かって、キリトが迷いながら説明した。

「ユイの友達を探しに行くんだ」

「ともだち・・・?」

友達の意味が理解できていないユイにソレイユが説明した。

「友達っていうのは、ユイのことを助けてくれる人たちのことだよ。その人たちを探しに行くんだよ」

「にぃにとねぇねもいっしょ?」

ユイの言葉にアスナとキリトはソレイユとルナのほうを向いた。その顔には当然一緒に行くよな、と書かれているようであったが、そんな二人を無視してルナはユイに言った。

「私は一緒だよ、ユイちゃん」

「あー、おれはこの後用事があるから一緒には行けないんだよな・・・」

珍しく言葉を濁すソレイユにユイが泣きそうな表情で袖をつかんできた。

「にぃに、いっちゃうの?」

今にも泣きだしそうな表情のユイにソレイユは頭を撫でながら言い聞かせるように口を開いた。

「後から行くからまた会えるよ」

「ほんと?」

「ああ、ほんとだ」

微笑みながら言うソレイユの言葉を聞き、袖を離すユイ。そんなユイを慰めるように頭を撫でると、キリトとアスナに向かっていった。

「聞いての通りだ。今からちょっと頼まれごとをこなしてくる。一時間もあれば片付くから、片付き次第追いかけるよ」

「ああ、わかった。なるべく早く来いよ」

「ああ」

キリトの言葉に頷くと家を出て行くソレイユ。家を出るとウインドウをいじり、いつもの姿に着替える。と言ってもいつも来ているコートを羽織りなおし、武器を実体化させるだけなのだが。そして、二十二層の転移門を目指して走りだした。



四十四層にある小さな辺境の村。その村にソレイユの所有しているホームがある。主に鍛冶の工房と化しているその場所に二人のプレイヤーが訪れていた。片方はライダースーツのようなものを羽織り、槍を携えている男性プレイヤー、シリウスであった。もう一人は、薄い紫色の浴衣を着こみ、右の側頭部に狐の張子面をつけ、腰に刀を携えている女性プレイヤーであった。

「・・・相変わらず辺鄙なとこが好きだよな、あいつ」

「それがソレイユの個性ってものでしょ?」

「だからって、こんなところに住もうと思うか、普通?」

「・・・・・・ノーコメントで」

シリウスの言葉に女性は顔を背けながら答えた。口にしないだけで、実はシリウスと同じことを思っているらしい。

「んで、あとどれくらいで来るんだ?」

「そろそろじゃないかしら、メール送った時は昼食中だったから・・・」

「そうかい、こんなところにホームを構えるから移動に時間がかかるんだよ、ったく」

「・・・そいつは悪かったな」

いきなりの第三者の声が響く。二人がその声のした方を向くと、予想に違わぬの人物が立っていた。

「やっと来たか・・・」

「こんにちは。久しぶりね、ソレイユ」

「待たせて悪かったな、シリウス。それから、久しぶりだな、ベガ」

シリウスの言葉に素直に謝罪し、浴衣の女性プレイヤー、ベガのあいさつに答えていくソレイユ。ソレイユにとって懐かしい顔ぶれがそろっていた。かつてはともに戦い、お互いを高めあった最高の仲間。たった一度だけソレイユが所属していたギルドの顔ぶれであり、ともにユニークスキルを有する者たち。

≪剣聖≫ソレイユ、≪神槍≫シリウス、≪瞬神≫ベガ。ユニークスキルホルダーである三人がここにそろっていた。
 
 

 
後書き
という訳で結ユイちゃんの登場だ!!そして、新たなオリキャラであるベガの登場!!
これからどういう展開になっていくのか楽しみだねェ~

ソレイユ「まぁ、懐かしいメンバーだな・・・」

さて、そんなことはさておき・・・これでまたオリキャラのプロフィを仕上げなければ・・・

ソレイユ「がんばっ!!」

その笑顔がむかつく・・・
まぁ、そんなことはさておき、感想お待ちしております!

~収録後~

次話を上げるのがこわい・・・たぶん、批判が殺到するから・・・

ソレイユ「そんな設定を作ったおまえが悪い」 
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