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シークレットゲーム ~Not Realistic~

作者:じーくw
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疑惑




 そして、修平が外へ出たときだ。
 拍手と共に修平に声を掛けてくる人物がいた。それは、司だった。彼も同じ目的だったのだろうか、修平が先に会議室に入っていた為、外で待っていたようだ。

「お疲れ様でした。藤田先輩」

 元々、司は団体行動を拒否して出て行ったはずの司だった為、修平は少なからず驚いてはいたが、それを表情に出さないようにしながら、司に問いかけていた。

「何の様だ?」
「僕も、藤田先輩と同じことを考えていたんですよ。だから 誰もいなくなった所で、効して戻ってきたというわけです」
「そうしたら、オレがいた……と。都合の悪いところを見られたな」
「あはは……、下手すれば、立場が逆になったのかもしれませんね」

 この時がはじめてだった。司が心底楽しそうに、無邪気な笑みを浮かべていたのは。
 先ほどの会話からあったが、彼が≪先輩≫と呼んでいるのに、加えて、この態度を見るに、他の人間と修平の扱いには明らかな差があるのは歴然だった。

「まぁいい……、で、何か用か?」
「単刀直入に言います。僕と手を組みませんか?」
「……お前と? 大祐との誘いは断ったのに、オレには誘いを持ちかけるのか?」
「……あの人と組むなんて論外ですよ。まず、信用できない。どうしてあの集団の中に藤田先輩が留まっているのか、全く理解出来ません。……いえ、ひとつ思う所はありますが」

 この時、表情を少しだけ強張らせて司はそういった。

「思うところ?」
「ええ……。ある意味では、藤田先輩よりも、僕よりも≪上≫の様な気もしなくもない。そして、あの場 大祐以上にも厄介な≪モノ≫を内包している気もする人がいる事、ですかね」
「……ああ。成程な。それについてはオレも同感だ」

 司の言葉に頷き、同調した修平。
 この男は恐らくはプライドが高い。そんな男が完全に下として認めている。そんな気配を纏っているのは、《1人》しか知らないんだ。正直な所、もう1人……いるかもしれないが、《彼》のインパクトが強すぎる為に、薄れている。

「まぁ、あの男(・・・)は、()は まだ大丈夫だと、俺は思っている」
「今?」
「ああ……、さっきの話しを聞いていたら大体は解るだろう?あくまでオレの推察だったが、確信持てた。……少なくとも、その時(・・・)になったら、どうなるか。見当もつかない。今ある最大のリスクはそこだけだな」
「ああ……。なるほど、裏を返せば 今は信用にたる人物と言う事ですか?」
「まぁな。……ノーリスクとは言えないが、生きる為、生き残る為の情報をくれた所もそうだな」

 修平がそう言った時、突如、声が背後から聞こえてきた。

「ちょっと修平。まさか、アンタ 私を置いていくつもりじゃないでしょうね?それに、陰口なんて、良い性格とはいえないわよ」

 すっと、背後の暗闇から姿を現したのは悠奈だ。
 不敵に笑いながら現れた姿を見てその場の全員が驚きを隠せていなかった。

「ッ!? 悠奈、いつからそこに!?」
「ずっとよ。あんたが不自然な行動をとるから後をつけていたのよ。……そしたら、もう1人いるから驚いたわ」
「へぇ……、尾けてきた、ですって……? 僕はちゃんと気をつけていたはずなんですがね」
「自信過剰なところは、良くないわね。他人の事を安く見積もってばかりいると、そのうちに痛い目を見るわよ?ま、私も他人この言えないけどね?」
「……なるほど、確かに『藤堂先輩』の言うとおりみたいですね。反省しました」
「うん。素直でよろしい」

 突然の来訪者に驚きを隠せない司だったが、素直に認め悠奈にも『先輩』をつけて話をしていた。だが、まだまだ驚くのには早い。

「そう言う理論であれば、――悠奈自身も同じだろうな」
「っっ! っとと、やっぱか。」

 直ぐ後ろから、再び誰かが現れた。
 悠奈は、ビクリッ!と身体を震わせたが、声の主の正体がわかると納得したように両手を挙げていた。

 司自身は、今回は悠奈の時以上に、目を見開いた。

 その人物こそ、あそこで最も警戒していた人物なんだから。

「……今度は油断してなかった筈ですが、藤堂先輩に言われたばかりだったので。驚きを通り越して驚愕してます」
「まぁ、仕方ないだろう。それだけ、悠奈の登場にはそれだけのインパクトがあった。と言う事だ。オレはその間に距離をつめた。……合間を縫うのは比較的簡単だ」
「……まぁ、悠奈が ここに来た以上。刀真も来ているとは思っていたがな」

 そう、現れたのは刀真。

 悠奈が現れた場所とは反対側から現れていたのだ。位置的にありえないと司は考える。あの時、修平より後に自分は来ていた。道先から考えて、奥側から現れる条件は、自分より先に来ているかもしくは回り道をしまわりこんだかのどちらかだろう。

 だが、この会場は決して狭くは無い。

 時間的に回り込むとなれば、歩く以上の速度、下手したら走らなければ間に合わないだろう。走ったのであれば、息切れ等多少ならずあると思えるがそう言う雰囲気もない。

「……で、あなた方は何者なんですか?」

 司が表情を、目つきを鋭くさせながらそう聞いてきた。2人を見れば見る程……、ある種の疑惑が、増していくのだ。

「何者って、私はただのプレイヤーよ?」
「……右に同じだ」

 2人はただそう答えた。
 それは本当であり、嘘ではない。この場所にいる以上はプレイヤーの1人なのだから。

「まぁ……、そう言うと思いましたけど、でも、僕は間違ってもあなた方のような得体の知れない人たちとは手を組みたくはありません。……藤田先輩も、その本心は僕と近いんじゃありませんか?」

 司は、修平の表情を見つつ、これまで話をしてみて思った事だ。
 聡明な頭脳を持っているであろう修平は、そんな安易な事はしないと。だが、返答は。

「……どうかな?」

 どちらともいえない返答だった。司は本当に意外だったんだろう。

「……へぇ、意外な返答ですね」

 不思議で仕方ないと言わんばかりの表情をしていた。読みが外れた、と言われているも同然だ。

「……だろうな」

 修平は当然、2人の事を司と同じような印象を持っていた。
 悠奈や刀真は、運営が何らかの意図を持って、ゲームに送り込んだプレイヤーである可能性ははっきりいって、かなり高いと思っている。その証拠の1つが2人のPDAに送られてきたメッセージ。

 自分には来ておらず、内容が≪行動を直接指示する内容≫のもの。

 だが、これだけであれば 修平は同じ行動をしようとは思わなかった。運営側の人間であれば、何かを企んでいる可能性がかなり高いが、その後の2人の行動が納得できなかった。
仮に、運営側だったとすると、初めて出会ったあの時点でPDAの全情報を公開したり、この≪ゲーム≫で恐らく最重要であるメモリーチップの情報を公開する意味が解らず納得が出来ないのだ。

 運営側であれば、敵であれば……そんな行動を取るとはどうしても思えない。

 それに、いくらプレイヤーナンバー4を見つける事が、急務だったとは言っても、他にやりようはいくらでもあったはずなのに。

 確かに 結論を言えば、悠奈と刀真はかなり怪しい。

 しかし、修平の中にある2人の評価は、まだ司ほどに定まっていなかったのだ。
特に、刀真に関しては、頭脳は勿論……、能力も未知数だから。

「……まぁ、今の所はとりあえず、2人と行動するつもりだ」
「……理解できませんね。これでも人を見る目はあるつもりなんですけど、でも、となれば残念ですが、藤田先輩と組むのは諦めるしかなさそうですね」

 司は、そう言って立ち去ろうとしていた。だが、その背を悠奈が呼び止める。

「待って、司。別れる前に1つだけ、確認させて」
「……なんでしょう?」
「アンタ、このゲームに勝つつもりよね?」
「ええ、当然ですよ。僕はこんな所で死にたくはありませんからね」
「じゃあ、アンタ。クリアする為なら人を殺しても構わないと思ってる?」

 この言葉、その返答が悠奈が一番聞きたい事だ。
 このゲームに乗るのか、乗らないのか、その答えがこの質問の答えだからだ。

「……ええ、そうですね。それ以外に方法が無ければ、ですが」
「ッ……」

 その返答に表情が強張る。
 彼女は表情に出やすい。それを感じるのは、一日もたってないとは言え、最初から彼女と共にいるからだろうが。

「……悠奈、今度は 表情に出すぎだ。それでは 必要以上に警戒される」

 刀真の言葉を聞いて、軽く頷きそして顔を極力元に戻した。
 司はそのやり取りを見て……、2人の中での格は男の方なのだと直ぐに理解できたようだ。

「……ああ、誤解しないでください。あくまで≪それ以外に方法がなければ≫ですから。藤田先輩と運営の方とのやり取りを聞く限りでは、殺人を犯すことには大きなデメリットがありそうですからね」

 そう答えていた。
 どうやら、怪しいのだが、彼女自体は殺人を全否定しているようだ。それが、普通の考えだろうが、この異常空間では普通の感覚ではいられない筈だ。何でも合理的に動く彼は、見ず知らずの他人を助ける為に自身の命をくれてやるような、聖人君子はこの世にはいないとまで思っているのだから。

「……それじゃあ、アンタはよっぽどの事がなきゃ人殺しはしないって、考えてもいいのよね?」

 静かに、悠奈はそう司に言った。この質問も重要な事だ。


――つまり……≪この男がトリガーを引くか、否か≫を見極める為に。


「そうですね。……今の所は。」

 曖昧な返答だが、とりあえず今はそれでいいと判断していた。

「信じるわよ。その言葉?」
「どうぞ、ご自由に。一応言っておきます。僕は嘘を付く事も厭わない人間だという事だけは」
「……それが普通だな。内心まで縛る事は誰にも出来る事じゃない」
「……ええ、その通りだと思います」

 刀真の横槍にも同意しつつそう返した。

「それでもいいわ。信じてあげる。だから、もし助けが必要な時は遠慮なく言ってきて、少なくとも私は絶対に、アンタを助けに言ってあげるから」

 悠奈は、表情を元に戻し そして、笑みも浮かべてそう答えていた。

「なら、オレも同行している可能性が高いな。一応、悠奈とは手を組んでる身だ。」
「一応って結構酷いわね。私のナイト様でしょ?」
「………」
「ああ~、もうツッコンですらくれないのね……」

 珍妙なやり取りだが、司は警戒を薄めるような事はしなかった。

「それはどうも。でも、そんな状況にならない事を祈ってますよ。では、藤田先輩。気が変わったら僕の所へ来てください。2人と大祐が一緒じゃなければいつでも歓迎しますから」
「ああ、考えておくよ」
「それじゃ、僕はこれで」

 司はそう言って片手を挙げて静かに廊下を去っていった。
 彼は、他人からの好意を素直に受け入れないようだ。こんな状況なら仕方ないとも思えるが、普段の彼。素の彼もこういう風だとどこかで納得が出来る。

「成程……、中々難しそうだ」

 刀真はその後姿を見てそう思っていた。
 信頼は無償の代償で、そして提供だが、それを提示した所で、彼の中の疑惑や評価が覆るとは到底思えないのだから。

 悠奈は修平に笑みを向けていた。

「修平。ありがとね。私のことを信じてくれて」
「やめてくれ。心境的には、オレも司と大差ないんだぜ」
「あっちゃぁ~~……やっぱり?」
「……当然だろ」
「なんで、刀真がそれを言うのよっ!!」

 腕を組みつつそう答えるのは刀真だ。
 簡単に他人を信じる者など、そうはいない。寧ろ頭の良さは別としても司の考え方がスタンダードだろう。

「……いきなり上から降ってきて、打算的な話を開始して、更に いきなりPDAを見せて、自分達だけ、変なメッセージが着てて……。疑いだしたらきりが無い、と思えるって事だ」
「っ……、ま、まあそうなんだけど、アンタも私と同じでしょ?」
「ああ……。だから相当 参っているんだよ」

 軽く苦笑いをしつつ肩を落とす刀真。

「ふふ……」

 そんなやり取りを見て修平は思わず笑ってしまっていた。

 正直、悠奈以上に刀真の方が疑わしい事は事実だ。あの場所で出会っただけで、まだ全プレイヤーを知ったわけではないが、それでも明らかに訓練されている様な人間だからだ。
容姿からは解らないが、仕草や言動、考えを聞いていたら、一般人とはどう見ても違う。
 身に纏うそれも、何処か違う風に感じるのだ。

 司もそこを強く感じ取ったのだろう。

「っあ~もう! っとと、そうだそうだ。修平」
「ん? なんだ?」
「司と同じと言うなら、何で司と一緒に行かなかったの? 私たちの事なんて放っておけばよかったのに」

 悠奈はそう帰していた。
 確かに困るのはあの≪R:CODE≫。メッセージを受け取っている2人だけで、修平は何も困らない。疑心暗鬼を持ったままが一番厄介な自体になりかねないからだ。

「……単にこのゲームを生き残りたいだけなら、司と手を組むのが一番だとも思えたさ。だが、オレには他にやらなければいけない事がある。司の誘いを断ったのはその為だ」
「やらなければいけないこと?」
「……ほう」

 悠奈は、探るような目を修平に向けた。
 逆に刀真はそれ以上聞かない素振りを見せていた。

 修平がそこまでの胸のうちを明かしたくないのは見て解るし、必要以上に聞くことも無い。ただゲームクリア以外にすべき事がある……と言う事は、≪自分の命よりも大事なものがある≫という事だからだ。

 刀真はその種の人間にも出会ったことは勿論ある。

 その種の人間は二面性を持ち合わせている者が多く、その≪何か≫を失ったとき、どちらに転ぶか解らない事も……よく知っている。

 そんな時だった。

 司が去った方向とは反対側の廊下から、琴美が息を切らせながら駆けつけてきたのだ。

「し、修ちゃん大変だよっ! 大祐君が!」
「大祐が、どうかしたのか?」
「それが……、玄関を出た所で―――」
「……短絡的な思考の持ち主だからな。戻った方が良いだろう」
「ええ、そうね。とにかく戻りましょう」
「ああ。そうだな」

 修平は頷くと、その場の4人は一緒に廊下を走って戻っていった。やがてたどり着いた場所は玄関。

 その場所で見た光景に――目を疑う事になるのだった。

 






































~プレイヤー・ナンバー~



 No. 氏名  解除条件


□ ??? 上野まり子  ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 4 藤田修平   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ 7 真島章則   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ ??? 伊藤大祐   ??????????


□ J  藤堂悠奈   ??????????     
 更新:No.4と24時間行動を共にする。

□ ??? 阿刀田初音  ??????????


□ ??? 三ツ林司   ??????????


□ ??? ????    ??????????


□ XIV 日陰刀真  PDAを5台以上所持する。 
 更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)


 
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