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夢のような物語に全俺が泣いた

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リリルカ・アーデの思想2

リリが連れてこられたのはとても豪華な一室。
ソーマ・ファミリアのような男臭く、そこらじゅうに汚れの目立つ広間出はなく、入室した者を安らぎに招くような感覚を覚えさせる温かい部屋。
そんな一室に、リリと向かい合って座るのは、私を連れてきたナノハ様と戦争遊戯に乱入し、あろうことか無双を繰り広げたユウジと言うラドクリフ・ファミリアの団長様。

「さて、大体の事情は聞いている。
ケイが何故動いたかも、そこそこに理解はしているつもりだ」

「今から話すことはね、リリルカちゃんの今後についてなの。
ソーマ・ファミリアを抜けて、その後どうするのかって言うのが今回のお話し」

わかっている。
今、リリの身柄はこの人たちの思うがまま。

「リリは…冒険者が嫌いです。
自分の事しか考えないし、サポーターを弱者と踏みにじる…最低な人達です」

「だがそうじゃない奴もいる。
在り来たりなことを言うようだが、人としての基本を重んじる者も少なくはない筈だ」

それは、そうなのだろう。
その結果、リリはケイ様に助けられ、ソーマ・ファミリアから救われ、今こうして温厚的に話をしているのだから。

「…だから、私は冒険者になりたいです」

「しかし自分にはその力も才能も可能性もない。
だからお前さんはサポーターになることにした」

「………はい。
でも、でもリリだって頑張ったんです!
ステイタスを上げようと躍起になって努力してきたんです!
それでも駄目だったんだから、諦めるしか無いじゃないですかぁ!」

「リリルカちゃん…」

「私はっ…!神様が何を思っているのか…わかりません!
どうしていつもリリなんですか!私が何をしたって言うんですか!
お父さんもお母さんも、誰一人見方になってくれる人がいなくて…こんなのってないですよ!」

「何を言うかと思えば…やれやれだな」

そう言うとユウジ様は徐に立ち上がり、私に向けて指を一振りしました。
その瞬間、私の体は何処からか現れたロープでぐるぐる巻きにされ、天井からぶら下がっていました。

「ふぇぇええ!?」

「なぁにを自分だけ不幸ですアピールしてやがる?
そんな環境の奴は世界探せば五万といるんだよ。何故逃げなかった?何故戦わなかった?
それは一重にお前さんが弱かったからだ。
努力しても駄目だった?そんなもん努力の仕方が間違ってたにすぎん。
お前さんは自分の不出来な思いを誰かに擦り付けて楽になりたいだけの我儘小娘にすぎぼっほぅ!?」

ドンガラガッシャンッ!
今の今までリリの前で言葉を並べていたユウジ様は、突如横からの飛び蹴りに吹き飛び、本棚に激突しました。
やったのは勿論ナノハ様で、腰にてを当ててユウジ様を見下ろしてました。

「何しやがる元ブランコ少女!」

「言い過ぎなの!もっと言葉を選んでよ!泣いてるじゃん!」

「バカ言うな!泣いてるのは元々だろが!
大体、聞けば皆が歓喜すると言われる俺の有難いお説教が途切れちまったじゃねぇか!」

「誰も言わないし思いもしないの!
て言うかブランコ少女って言わないでよ!」

「ブランコ乗りながら『私、不幸です』アピールしてた奴が何いってやがる!」

「もう怒ったの!今日こそ一太刀浴びせるんだから!」

「一蹴り貰ってるがな!」

そんなやり取りをした二人は、リリを置いて外へと出ていきました。
あれ?リリは放置ですか?

「あの二人は…変わらないと言うかなんと言うか…」

「あ…」

入れ替わりで入ってきたのは、あの時青い服装をしていた人だった。

「僕は葵 蒼也。ユウジが言ったことは…まぁ言い方は酷かったけど誰にでも当てはまることなんだよ」

「でも、リリは…」

ソウヤ様は私に巻き付いたロープをほどき、ソファへと座らせてくれました。
外からドカンドカンと響いてくる音に気にしたそぶりを見せない辺り、何時もの事なのだろうか?

「取り合えず不幸でんでんな話は置いておこうよ。
それで、ユウジの話を引き継いで…君には3つの選択が用意されてる」

「選択…?」

「そう。一つはファミリアのない状態で一からやり直す。
この場合、自分の足で歩いて、君を向かえてくれるファミリアを探さなくちゃならない。
それが何日掛かるか分からないけど、君が一人でやることになるだろうね」

……そんなの無理に決まってる。
世間では盗人小人と広まり、小人族と見るや警戒をする事に徹底されてるのだから。

「二つ目はソーマファミリアに帰ること。
実質ファミリアは解体状態だけど、神ソーマは被害者だからね。
ファミリアは無くなっていないし、これから君が何とかしていけば取り繕うことも出来なくはない。
でもそのために割く時間や労力は計り知れない。
悪く言えば君が寿命を向かえても改善しない可能性が大きいんじゃないかな?」

………ソーマ様はお酒にしか興味がない。
団員の顔や名前も覚えていないあの神様が、今更改善なんてあり得ない。
そもそも神様は人とは違って寿命がない。時間なんて気にしないほどに趣味に没頭するに決まってる。

「そして三つ目。
僕らのファミリアに入り、冒険者になること」

「…!私は―――」

「ただ一つだけ、誤解のないように言うのなら」

それが良い。そう言おうとしたのを遮られ、ソウヤ様は再び続ける。

「誤解が無いように言うのなら、僕らが君に求めるのは冒険者であってサポーターじゃない」

「それは…リリに冒険者に、サポーターじゃない冒険者になれ、と…そう言ってるんですか?」

「うん。実際に君には素質が在るようだし、無かったらユウジも直ぐに追い返す…までは行かなくても乱雑に扱うだろうしね」

私に素質…そんなもの…

「自分に素質があるわけない。
そう思っている時点でお前さんはそこまでなんだよ」

「っ」

私の心を見透かしたように、入ってきたのはユウジ様だ。
ナノハ様が居ないようだが、どうしたのかは聞かない方が良いんだろうなぁ。

「まぁ元々一つしかない選択だ。
お前さんには冒険者以外の選択なんぞ存在しない」

「なっ…そんなの詐偽じゃないですか!」

「バカ言うな。俺はお前さんの人生に光を射してやるだけだ。
言っておくが、お前さんはサポーターじゃなく、冒険者寄りだ。
信じる信じないは勝手だが、騙されたと思って着いてこい。
後悔はさせないし、少なく見積もってこの世界で言うlevel3の冒険者に到達させてやるよ」

「そんなの…無理に決って…」

「無理じゃねんだわ。ほれほれ、どうする?」

この人は…今まで会ったどの人達よりも変人だ。
言葉は豪語の域で、傍若無人で、会話にいちいち覇気が籠る。
何故かこの人が言っていることが本当と思えてしまうほどに…こう言うのをカリスマと言うのでしょうか?

「……どうかリリを…強くしてください!」

私は、ここから変わることが出来るのでしょうか?
もしも変われるのなら、次こそは絶対に幸せになってやります!

「あっはっは!だが、断る!」

「ユウジ…」

「……」

「いや、冗談だから…」

今から不安になってきました…………。

 
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