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食事の秘密

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5部分:第五章


第五章

「そのデザートは何なのだ」
「そうだな、あれがいいよな」
「ああ、あれな」
「バナナとアイスクリームのクレープな」
「あれにしような」
「バナナ・・・・・・」
 バナナと聞いてだ。シュナイダーはここまでで最も驚いたのだった。
 そのうえでだ。ゴルトリッターの面々に話すのだった。
「バナナが出るのか、嘘ではないのか」
「おいおい、あんた実はあれじゃないのか?」
「タイムスリップしてきたのか?」
「大昔にいてそれで今の時代に来てな」
「バナナが高かった時代からな」
「来たんじゃないのか」
「あっ、いやそれは」
 シュナイダーは彼等のいぶかしむ言葉に我に返ってだ。慌ててその取り繕うことにした。そうしてそのうえでなのだった。
「実は私は」
「ああ、あんたは」
「どうしたんだ?」
「それで」
「バナナが大好きなのだ」
 頭の中で考えてからこう答えた。
「それで出て来たことがだ」
「嬉しくてか」
「それで言ったんだな」
「つまりは」
「そうなのだ、実はだ」
 こういうことにしたのだった。
「嬉しくてな。そうか、バナナが出るのか」
「ああ、この店のそれは凄いぜ」
「でかくて甘くてな」
「新鮮でな」
「美味いからな」
 そのバナナの味まで語られる。
「じゃあ最後にそれ食ってな」
「それで終わりにしような」
「それじゃあな」
「わかった。ではな」
 こうして彼はそのバナナを食べたのであった。
 食べてみるとだ。信じられないまでの美味さだった。彼にとっては。
 実はバナナを食べたことがなかったのだ。東側ではバナナは最高級品だったのだ。将校である彼も食べられないようなものであるのだ。
 だからこそ食べてみて驚いた。その美味さにだ。
 アイスクリームもクレープもだ。信じられないまでに甘く美味でだ。舌がとろけるまでだった。
「美味い・・・・・・」
 泣きそうな顔で言葉を漏らした。
「ここまで美味いとは」
「あんた本当に大袈裟だよ」
「そうだよ、確かにこの店は美味いけれどな」
「幾ら何でもな」
「なあ」
「いや、本当に美味い」
 デザートを食べ終えてからまた言う彼だった。
「ここまでとは」
「そんなにバナナが好きだったんだな」
「成程なあ」
「そうだったんだな」
 ゴルトリッターの面々はこう考えたのだった。
「いや、それだったらな」
「もっと食うか?」
「そうするか?」
「いや、それはいい」
 これは断るシュナイダーだった。そしてだ。
 彼は今はコーヒーを飲んでいた。その味もだ。
 普段東側で飲んでいる代用コーヒーとは全く別物だった。本物のコーヒーはまさに地獄の様に熱く絶望の様に黒く天使の様に甘い。タレーランの言葉通りだった。
 それが実に安く飲める。シュナイダーにとってはこのことも夢そのものだった。
 その夢を飲みながらだ。彼はゴルトリッターの面々に答えていたのだ。
「満腹だ」
「そうか、それじゃあな」
「俺達これから収録があるからな」
「じゃあこれでな」
「また会おうな」
 こうして彼等とは別れた。しかしシュナイダーにとっては信じられない時間だった。
 
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