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肥えるもの

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第二章

「花形は」
「やっぱりそうですよね」
 鳥越も上司のその言葉に頷く。
「それは」
「そうだ、それでな」
「俺が、ですか」
「ああ、その番組持ってみるか」
「俺は独立したんですよ」
「円満退社だっただろ」
 上司は鳥越にこのことから話した。
「社長も笑顔で送ってくれた」
「それはそうでしたね」
「だからな」
「俺がそっちの報道番組をですね」
「メインで持ってみるか」
「お金はどれ位出ますか?」
「毎日、月曜から金曜の夜の十時から十一時までな」
「一番いい時間ですね」
「ああ、報道にはな」
 一日の最後のニュース、それを報道する時間にというのだ。
「一番いいな」
「だからですか」
「番組の制作費は安心しろ」
「相当出ますか」
「金は幾らでもある」
 それこそというのだ。
「そしてな」
「そして、ですか」
「御前には五億だ」
「俺へのギャラはですか」
「ああ、五億だ」
 それだけだというのだ。
「いい話だろう」
「最高ですね」
「引き受けてくれるか」
「喜んで」
 これが鳥越の返事だった。
「そうさせてもらいます」
「じゃあ頼むぞ」
「いつもの調子でやっていいんですね」
「というかそのいつもの調子がだ」
 それこそというのだ。
「御前に求めるいるものだからな」
「じゃあ思う存分やらせてもらいますね」
「政治家や官僚、企業から文句が来てもな」
「報道で、ですね」
「潰せ」
 逆に、というのだ。
「こっちが間違っていてもな」
「嘘を嘘でってことですね」
「押し潰せ、ペンは剣よりも強しでだ」
 酒に酔って赤くなった顔でだ、上司は鳥越に言った。
「テレビはな」
「そのペンよりも強いですね」
「御前もわかるだろう、この世で一番強いのは俺達だ」
「テレビで宣伝し放題ですからね」
「だからな」
「政治家とかが何を言ってもですね」
「潰せ」
 抗議してきてもというのだ。
「逆にネガティブキャンペーンやってやれ」
「やられたらやり返せですね」
「こっちが間違っていても嘘を言っていても関係ない」
「捏造もですね」
「そんなのはどうでもいいんだ」
「そうですね、俺達は正しいんですから」
「そうだ、俺達は正しいことしか言わないんだ」
 上司も笑って言う。
「何しろ社会の木鐸だからな」
「それで庶民に教えてやりましょう」
「ああ、正しいことをな」 
 こうだ、料亭で豪勢な懐石料理と大吟醸を楽しみながら話すのだった。そしてその報道番組がはじまるとだ。
 鳥越は盛んにだ、社会の悪を告発していった。
 政治家に大企業、医療ミスに公害にだ。様々な所謂権力者だのそうした立場の者達の行いが彼によって告発されてだった。 
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