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白くさせたい

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第三章

「それでは幼いね」
「子供達は童話を読むには大きい」
「童話は幼い子供の読むものだよ」
「童話だとかえって馬鹿にされる」
「だからね」
「童話はよくないね」
「うん、そうだね」
 アミーチスも気付いた、このことに。
「だから童話は駄目だよ」
「かといって畏まったものも駄目」
「そうなるか」
「砕けてそれでいて子供達に教えられる」
「人の素晴らしさを」
「その心を奇麗に出来る」
「そうした作品か」
「難しいな」
「難しい、けれど」
 それでもとだ、アミーチスは決意した顔で言った。
「僕は何としてもやるよ」
「子供達の心を奇麗にする為に」
「今の荒んだ心を癒す」
「その為にだね」
「書くんだね」
「そうするよ、何としても」
 友人達にその決意も述べてだった、アミーチスは実際にどうしたものを書くのかも考えた。その為に密かに街も見回った。
 街の子供達はやはり荒れていた、かっぱらいや喧嘩ばかりだった。街を汚し彼等自身の顔も荒んでいた。
 アミーチスはその彼等を見て心を痛めた、だが。
 今はそのことを心の中に収めてだった、子供達も見た。
 子供達は確かに荒んでいた、だが。
 その中に友人達と仲良く話し幸せに過ごしている子供達もいた、親や兄弟とも色々あるがそれでも朗らかな笑顔でいて。
 そしてだ、困ったことがあってもだ。
 友人達や先生、親からも助けを借りてその困ったことを解決していた。中にはその友人や親とのいざこざもあったが。
 それでもだ、彼等は明るく過ごしていた。
 その彼等を見てだ、アミーチスは決意してだった。
 自分の部屋に戻って書いた、その書いたものを友人達に見せてどうかと問うた。
「どうかな、こうしたものを書いたけれど」
「子供達自身を書いたのか」
「まさに子供達自身を」
「こうくるとはね」
「ちょっと予想していなかったよ」
 友人達はアミーチスが書いた作品を詠みつつ答えた。
「こうした感じでいくとはね」
「成程ね」
「いいね」
「子供達が自分自身を読む様な」
「そんな作品にしたんだ」
「大人が言って聞かせるよりも」
 それよりもとだ、アミーチスは友人達に話した。
「こうして自分達のあるべき姿をね」
「見せる」
「そうあるべきなんだね」
「君はそう考えてなんだ」
「それで書いたんだ」
「うん、街で実際に子供達も見て」
 そうしてというのだ。
「考えてね、書いてみたけれど」
「いいね、これは」
「これなら子供達も読めるよ」
「それで自分達のあるべき姿を知ることが出来て」
「そうありたいと思うね」
「美化はしていないよ」
 アミーチスはこのことは断った。
「確かに僕が書いた作品だけれど」
「それでもなんだ」
「ありのままの子供達を書いたんだ」
「そうした作品だね」
「そうなんだね」
「そうだよ、僕がこの目で見た子供達の一場面だから」
 それに過ぎないというのだ。 
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