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血と肉と

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4部分:第四章


第四章

「その為に次々と殺していたな」
「神父はその美女達を実際に祭壇で殺してそれで神に祈りを捧げていたとか」
「そうしていたとか」
「まるで悪魔崇拝者ですね」
 こうした言葉も出た。
「それじゃあですね」
「まさにそんな感じですよね」
「それって」
「いや、違うみたいだな」
 しかしだった。和久田はここでこう言うのだった。
「これはな」
「違うのですか」
「それはどうしてですか?」
「あの神父の信仰は本物だ」
 それはだというのだ。
「これは間違いない」
「けれどそれでどうして」
「あんなことを」
「あれじゃあ」
「本物であり過ぎるということだ」
 和久田はこう話した。
「あまりにもな」
「あり過ぎる?」
「キリスト教ですよね」
「しかもカトリックですけれど」
「それであの連続殺人は」
「理由がわかりませんが」
「パンとワインだ」
 和久田はだ。ここでこの二つを言った。
「それだ」
「ああ、祭壇にいつも捧げる」
「あれですね」
「それだ。キリスト教のミサでは必ず捧げるな」
 このことを言うのだった。これはよく知られていることだ。
「あれはどうして捧げるか知っているな」
「あれですね。キリストの身体と血」
「それでしたよね」
「ということは」
 彼等もだ。ここでわかったのだった。
「パンとワインではなくですか」
「本物の身体と血を捧げるようになった」
「そういうことなのですか」
「そうだ。だからだ」
 和久田は強い目で述べた。それをだ。
「そうしていたのだ」
「ではあの美女達はあくまで儀式に捧げるものだったのですね」
「それ以外の何者でもなかった」
「そうでしたか」
「信仰は純粋であってもそこに何かが入ればだ」
 和久田の言葉は続く。
「ああなるのだ」
「ああして。狂気に陥る」
「そういうことですか」
「その通りだ。何もかもがそうなっていくのだろうな」
 こう話すのだった。何はともあれ事件は終わった。しかしこのことは何時までも和久田達の心に残った。そして人々の心にもだ。狂気の事件として残ったのだった。


血と肉と   完


                2011・1・25
 
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