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天邪鬼

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第二章

「僕だって何で嫌だって言うのに準備体操して四股踏むのかってね」
「不思議に思ったね」
「そうだよ」 
 その時に事情をお話してくれた猫又にも言います。
「あの時はね」
「けれどね」
「それが天邪鬼なんだね」
「嫌だって言っていても」
「実は違う」
「そうなんだ」
 それが、というのです。
「天邪鬼でね」
「嫌だっていうのが実はよくて」
「いいっていうのがね」
「嫌なんだね」
「だから今回のこともね」
「お菓子もお茶も用意してくれていて」
「燻製もね」
 天邪鬼の大好物であるこれもです。
「用意してくれているよ」
「しっかりと」
「誤解されやすいけれど」
 言っていることがいつも逆だからです、それで天邪鬼は誤解されやすいのです。河童が怒ったみたいに。
「実はね」
「悪い子じゃないんだね」
「そうだよ、だからね」
「普通に付き合っていいね」
「そうだよ」
 猫又は河童ににこりと笑ってお話しました。
「言っていることが逆なだけだから」
「本当にそれだけだね」
「そのことにだけ注意していればいいから」
 天邪鬼は、です。そしてなのでした。
 皆は天邪鬼のお家に行きました、すると天邪鬼は皆を笑顔で出迎えて笑って言いました。
「来なくていいのに」
「そう言ったね」
「じゃあね」
「これからね」
「お邪魔させてもらうよ」
「何も用意していないから」
 天邪鬼は皆にこうも言いました。
「あがらなくていいよ」
「うん、わかったよ」
「じゃあこれからね」
「楽しませてもらうから」
「何もないけれどね。帰っていいよ」
 こう言いつつ皆を招き入れた天邪鬼でした、そして用意していたお菓子にお茶にです。お肉やお魚の燻製も出して皆に食べてもらうのでした。どれもとても美味しくてです。
 皆は心から楽しみました、天邪鬼はその皆が帰る時にまた言いました。
「もう来ないでね」
「うん、また来るから」
「今度は僕の家に来てよ」
「私の家にね」
「皆が呼んでも行かないよ」
 お招きしてくれるなら、というのです。
「いいけれどね」
 つまり悪いけれど、というのです。呼んでくれた人に。
「遠慮はしないよ」
 慎んで、というのです。
「そうさせてもらうよ」
「じゃあね」
「今度は天邪鬼が来てね」
 皆は天邪鬼に笑顔で言って別れるのでした。この日皆は天邪鬼のおもてなしに心から楽しんで彼のことも知りました。
 天邪鬼は言っていることが逆さまなだけでとてもいい妖怪です、ですが。
 人間達は彼のことをです、こう言うのでした。
「嘘ばかり言うんだよな」
「言っていることがいつも違っていて」
「わかりにくいよ」
「何が言いたいの?」
「遊ばないって言って遊んで」
「あげないって言ってるのにくれて」
「だからどうなの?」
「訳わからないよ」 
 天邪鬼についてこう言うのでした。 
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