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消えた凶器

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4部分:第四章


第四章

「そのミキサーを調べさせてもらって宜しいですね」
「私は」
 しかしだ。ここでだった。
 執事はだ。俯いたままでだ。言葉を出してきたのだった。
 その言葉は震えていた。感情が露わになっていた。そしてそこにあるのは感情だけではなかった。もう一つのものもあった。
 それをだ。彼は今言うのだった。
「長年仕えてきた」
「そうですね。ファリーナ氏が若い頃から」
「確かに若い頃より女癖の悪い方で私は色々な不祥事を揉み消してきた」
「主のその不祥事を」
「そうしてきた。何も言わず」 
 仕える者としてだ。そうしてきたというのだ。
「しかし。それでも私が愛するツェリーナを」
「お孫さんの名前ですね」
「まだ幼いあの娘を無理矢理、そして」
「妊娠させた」
「許せなかった」
 最愛の孫をだ。そうされたことがだというのだ。
「だから私は」
「殺した」
「本当はしたくなかった」
 自己弁護もここで入った。
「けれど。どうしてもツェリーナに謝罪もしなかったので」
「それで殺した」
「許せなかった」
 ここまで言ってだ。その執事は。
 がくりと崩れ落ちてだ。その場にへたれ込んでしまった。そうなったのだ。
 こうして事件は終わった。執事は全てを自白しミキサーからは化石の破片が見つかりそこには血痕もあった。証拠は全て揃った。
 執事は殺人犯として裁かれることになった。警部は署長にこのことまで報告した。
 そうしてだ。彼は署長にこうも話した。レストランで昼食を一緒に採りながら。
 トマトと茄子、大蒜をたっぷりと使いオリーブの香りがするフェットチーネを食べながらだ。彼は自分と同じものを食べている署長に述べた。
「確かに殺人犯ですが」
「それでもか」
「はい、被害者は何分評判の悪い男で」
「殺されても仕方のない様な人物だから」
「それに私利私欲ではなく孫娘のことでの怒りですから」
 それでだというのだ。
「判決は緩やかなものになりそうです」
「そうか。それは何よりだな」
「情状酌量の余地ありということで」
 そこが大いに配慮されてのことだというのだ。
「ですから」
「わかった。何はともあれ事件は解決したな」
「はい」
 そのことは間違いなかった。
 そしてだ。警部はだ。
 フェットチーネをすすってからだ。グラスの赤ワインを一杯飲んでからだ。
 こうもだ。署長に対して話した。
「しかし。今回の事件は中々」
「中々?」
「わかりにくい事件でした」
 そうだったというのだ。
「あの恐竜の化石のアバラに気付かないと解決できませんでした」
「そうだな。一本足りなかったのか」
「はい、一本です」
 そのだ。一本が重要だった。決め手だった。
「写真でもわかりにくくて」
「しかしそれに気付いたからだな」
「事件は解決できました」
「いつも思うが」
 今度はだ。署長が警部に言う。
 彼はフェットチーネを食べ続けている。そうしながら警部に言うのである。
「君は事故現場には一切足を踏み入れないな」
「はい」
「送られて来る捜査資料を細かいところまで読み」
 そうしてなのだ。
 
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