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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第45話:大人の付き合い

(グランバニア城下町)
リューノSIDE

リュリュ姉さんが差し入れてくれたラムネを皆で飲みながら、和気藹々(一部の毒舌)と会話してると、広場の中央付近で熱血練習をして居てたアロー・リューラ達、一軍メンバーも集まってきて皆でラムネを堪能する。

ゴリラコーチ……ゲフンゲフン、クンドーコーチはリュリュ姉さんに気があるのか、終始デレッデレで懸命に会話を繋いでる。
こそっとマリーにその事を告げると「リュリュちゃんに気のない男が、父親以外で存在すると思ってるの?」と指摘された。

ウルフはそんな事ない!
って、言おうと思ったのだけれど、本当の本当はリュリュ姉さんに気があったらヤダし、それを言う事で事実になるのが怖いから、私は言葉を飲み込んだ。

嫌な考えを振り払い、人集りの中心に居るリュリュ姉さん達に視線を向ける。
そこではクンドーコーチがリュリュ姉さんに野球のルールを説明していた。
つーか、私達のお父さんが広めたスポーツなのに、娘の貴女がルールを知らないって……如何なのよ!?

「へぇ~……こんな小さなボールを、こんな細い棒で打つんですかぁ? 難しくないですか?」
「あ、いや、まぁ……難しいから競技としてなり立つんですけどね……」
正直呆れるリュリュ姉さんの台詞……

「ところでホームランって何ですか? よく野球をしてる兵士さん達が言ってるんですけど」
そしてまたクンドーコーチの説明が始まる。
今度は実際にプレーを見せての説明だ。

ラムネを飲み終わった一軍連中が、コーチの一声でグラウンドにダッシュする。
一通り説明すると、我がチーム最強のスラッガーであるアローの登場。
リュリュ姉さんが疑問に感じてたホームランを打ち、デレッデレのクンドーコーチが熱弁を振るう。

そうこうしてるとお開きの時間がきた様で、クンドーコーチのお仲間が迎えに来ました。
日も大分傾いてきたし、今日の練習はお終いね。

リューノSIDE END



(グランバニア城下町)
アローSIDE

「クンドーさん……そろそろ時間ですよ。何時までガキ共のお守りをしてるんっすか?」
「おうトシー! もうそんな時間か!?」
リュリュ様を前に緩みきったクンドーコーチ……トシーさん等の登場でも緩みは回復せず、彼等の事をリュリュ様に紹介してる。

「初めましてリュリュです。皆さんはクンドーさんのお友達ですか?」
両手を下腹の前でギュッと揃え、深々と頭を下げて挨拶するリュリュ様。
アニキが言ってたが『ありゃきっとポピー義姉さんが教えた挨拶だ』との事。

何故なら胸の谷間がギュッと強調され、それを見えやすい位置まで下げるからだ。
クンドーコーチは元よりだが、あのクールなトシーさんまでもが鼻の下を伸ばしてリュリュ様の胸の谷間に見入ってる。

「あ……ど、ども。その、友達って言うより、部下なんで……俺達」
「まぁ部下ですか?」
そして大人の挨拶が始まった。

とは言え、クンドーコーチ達のバイトの時間が迫っており、長々とした会話には発展しなさそう……なんだけど、コーチはリュリュ姫様と別れるのを嫌がり、トシーさん達を困らせている。

「トシーよ……未だ大丈夫じゃね?」
「大丈夫なわけねーだろ。遅刻すんぞ!」
どこで何のアルバイトかは知らないが、早く行った方が良いと思う。もう日も暮れてきたし……

「いやぁ……まだリュリュさんに、野球の何たるかを説明してないから……」
「その前に俺が“仕事(アルバイト)の何たるか”を説明してやろうか、アンタに!?」
リュリュ姫から離れたがらないクンドーコーチに、トシーさんはキレ気味に対応する。

「きょ、今日ぐらい休んでも……」
「ダメっすよ隊長。今日は仕事終わりにプーサンと飲む約束っすよ。しかもプーサン宅で! 隊長が一番楽しみにしてたじゃねーですか」
何時までも駄々をこねるクンドーコーチに、ソウゴさんが予定を告げて諭す様に話す。

ってか『プーサン』って誰だろ?
クンドーコーチ等のバイト仲間かな?
その人ン()で飲むのが、楽しみな事なのかな?

「ああ、そうだった!! 何時も自慢してくる奥さんを、始めて見る事が出来るんだった……」
「そうですよ隊長。バイトだけサボって飲み会だけ参加するなんてダメですよ」
相当プーサンの奥さんに会ってみたいらしく、サガールさんの言葉に頭を抱えるクンドーコーチ。

「あのぉ~……お仕事なんですから行った方が良いですよ。それにお約束してるんでしたら、破っちゃダメですよぉ」
「そ、そうですよねリュリュさん! イサーク・クンドー、アルバイトに行って参ります!」
リュリュ姫に諭され、元気にバイトへ赴くクンドーコーチとトシーさん達。

大人って大変だなぁ……
あ、そういえば……クンドーコーチに相談したい事があったんだ!
あ~あ……帰っちゃった。

仕方ない、帰ってアニキに相談しよう。
でも『忙しい』って怒るんだよなぁ……
まぁ無視すればいいか。

アローSIDE END



(グランバニア城下町)
サガールSIDE

愚図る隊長を何とか出勤させ、夜勤のスタジアム建設のバイトを終わらせると、バイト仲間のプーサンに誘われるまま彼のお宅へ伺う事に。
建物自体はグランバニアでは平均的な佇まい。

俺等はカタクール候に集められ、グランバニアの片田舎から上京してきたお上りさんだ。
城下町の事にはそれ程詳しくなく、田舎者感を丸出しにしてたところにプーサンが話しかけてくれて仲良くなった。

このプーサンは城下では有名な人らしく、各方面に顔が利く。
聞いた話では『プーサンは日雇い労働のプロ』との事らしく、グランバニア城下町内にある割の良いバイトは、彼に聞けば直ぐ判る。
“日雇い労働のプロ”って何だよ!?

そんなに有名な人なんだけど、誰に聞いても自宅や家族構成の事は窺えず、ある種の謎に包まれていたんだ。
バイト中でも、チョイチョイ女性をナンパしてるし、独り身だと思っていたら……
『え? 僕、結婚してるよ』と、告白。

トシー副隊長の『ふかし扱いてんなよ』とのツッコミに、『馬鹿野郎。僕の奥さんは超美人なんだぞ!』と自慢がてらの返答。
『じゃぁ会わせてみろよ!』と俺等からの総ツッコミがあり、今日の宴が催される事となった。

「いやぁ~……夜分に申し訳ありませんねぇ奥さん」
「いえいえ。リュ……ゲフンゲフン。プーサンがお友達をお招きするなんて珍しいので、妻としては嬉しい事なんですよ」

プーサンの奥さんのルービスさん。
とても優しい雰囲気を醸し出しており、美人には違いないのだろうけど……
イマイチ判断が付かない。

と言うのも、旦那のプーサンと同じく、奥さんのルービスさんも瓶底みたいなレンズの眼鏡を着けており、素顔を伺う事が出来ないのだ。
初対面で自宅に押し掛けてる訳だし、“素顔見せて下さい”なんて言えない。

まぁ、料理も美味しいし……奥さんの素顔は追々でいいか。

サガールSIDE END



(グランバニア城下町)
ビアンカSIDE

リュカが身分を偽り日雇い労働者として知り合った4人。
イサーク・クンドーさん、トシー・ヒッカータさん、ソウゴ・オーキットさん、サガール・マウンザキさん……

何でも(いず)れカタクール候の元で仕官させる予定の方々とのこと。
カタクール候の屋敷では、彼等の他に20人くらい居るらしいが、この4人が最も仲の良くなった連中みたいだ。

そんな彼等の前に変装して姿を現したのには意味がある……ハズ。
元々リュカが自由に日雇い労働(アルバイト)をしてるのが羨ましかったのだが、そんな時に『プーサンの時に“奥さんが美人”って自慢したら“じゃぁ会わせろ”って言われちゃった』と困り顔で相談されました。

だから直ぐウルフ君に相談(命令)して城下に程良い民家を手配。
他の女が代役でプーサン(リュカ)の奥さんになるのが絶対にイヤだったので、私も変装を開始。
プーサン(リュカ)と同じ瓶底眼鏡に、年甲斐も無い三つ編みツインテール。

チークを多めに塗り、ソバカスを描いて田舎娘感を大演出。
ウルフ君は『そんな事しなくてもビアンカさんは田舎娘感バッチリですよ!』と言いやがった。
だから殴った。

プーサン(リュカ)は相当奥さん()の事を“美人”と言い触らしたらしく、連中も口には出さないけど眼鏡を外した顔を拝みたいらしい。
減るモンじゃ無いのだし見せたい気持ちはあるけど、身分を偽ってるって言う立場上、見せるわけにもいかない。

それにプーサン時のリュカが、普段どんな言動なのかを聞く事が出来るので、この立場を崩すわけにはいかない。
グランバニアは王家としては堅苦しくない(リュカの影響(所為)?)ので、息苦しさとかは無いが、それでも王妃として自覚しながら生活しなければならないのは大変。

でもプーサン(リュカ)の妻……ルービスになれば気兼ねなく田舎娘感を出せる。
……やっぱり私は田舎娘なのね。
ウルフ君は正しかった……よし、帰ったらもう一発殴ろう。

因みに偽名の件だが、旦那が“プサン”を改造して“プーサン”なので、妻は“ルビス”を変えて“ルービス”だ。
因みにウルフ君に名前を伝えたら『何、その“厄介者”感ハンパない名前!?』と顔を顰める。
我が家では疫病神の名前だし、当然の反応だろう(笑)

「しかし旦那さんの言う通り、奥さん美人ですね!」
このモッサリした眼鏡女を見て本心で美人とは思わないはず……お世辞だわね。
「本当っすね。何時も女をナンパしてるから、奥さんは不細工だと思ってましたよ……ね隊長」

「ちょっとちょっとソウゴ君。妻の前で言っちゃう? そういう事言っちゃうの、君!?」
ソウゴと呼ばれた一番の若手……見た感じ、生意気さ・口および性格の悪さはウルフ君と近いモノがありそうだ。
「あれダメでしたかいプーサン?」
普通はダメだろ。

「う~ん……まぁいいか。バレてるし」
「バレてるんかい!」
どうやら、この連中のツッコミニストはサガール君の様だ。
息子が居るのかと思う様な素早いツッコミ。

「しかしプーサン。俺は今日、世界一の美女と会いましたよ」
「僕の奥さんの事だろ」
この話の流れだと違うわよ!

「違いますよ。リュリュさんですよ! この国のお姫様……リュリュさんですよ!」
あぁ……あの()に会ったんだ。
「プーサンはお目にかかった事あるのか? この国じゃ王家の人間が城下を平然とフラ付いてるのだし……」
恥ずかしがり屋なのか、寡黙な男性……トシーと呼ばれてる彼が珍しく会話に参加する。

「さぁ……日頃から多数の女性に声をかけてるから、会った事があるのかもね。2億もの人口が居るから判らないよ」
「いやいやいや、2億と言ったって総人口でしょ……」

「そうだけど……2億人の内半分は男、そして半分は年齢制限に引っかかり、更に半分は容姿で落第する。まだ2500万人も居るよ。記憶に残んないよ」
「そんな人数、ナンパしたのかよ!?」

「そっか……この人数は無いな。だって更に半数以上は既婚および彼氏ありだろうからね」
「そう言う意味じゃねーよ!」
トシー君もツッコミ要員なのね。苦労してそう(笑)

「それで、お姫様に会った感想はどう?」
プーサン(リュカ)が脱線させた話を元に戻す。
家(城)でもこんな感じだ。

「流石グランバニアの姫様ですね。最初は畏まってたんですが、フランクで良いと言われました」
「そんで“さん”付けで呼んでんの? フランクで良いって言われたんだから、呼び捨てにしちゃえよ。向こうが“フランクで”って言ったんだから、本心で嫌がってももう文句は言えないよ」

「そ、そういう訳にいかねーよ!」
私もそう思うけど、リュカ家に居ると感覚が麻痺するのよね。
「ゴリラが気取るなよ」
相変わらずプーサン(リュカ)は失礼だ。確かにゴリラに見えるけど……

「ゴリラにも礼節があるんだよ! それが無いアンタがおかしいんだ」
あら、ゴリラって認めちゃったわ。

でも……楽しいわ。
一般人として、そしてリュカの妻として気兼ねなく振る舞えるのって最高。
今後もルービスを続けていこうと思うわ。

ビアンカSIDE END



 
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