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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第44話:思い込んだら色んな道を……

(グランバニア城下町)
アローSIDE

学校が終わり、所謂放課後という時間になり、オイラ達は学校近くにある空き地に集まる。
再来週に城下町内にある義務学校の野球クラブ同士が、日頃の鍛錬の成果を見せ付ける為に試合が行われるのだ。
その為に城前学校(オイラ達が通ってる学校名)の野球クラブ部員が毎日空き地で練習している。

こう見えてオイラは4番を任されてるスラッガー!
つまりレギュラーってことだ。
(すげ)ーだろ!

因みにリューラもレギュラーだ。
女なので力が無く長打力は無いのだけど、巧打力があり出塁率が高く足が速いので1番バッターだ。
盗塁数も凄いんだぜ!

ポジションだが、元狐って事も有り反射神経が良いからショートを守ってる。
リューラはセカンドだ。幼い頃から剣術を習ってきたので、同年齢に比べると圧倒的に動きが良い。オイラとリューラで、相手のバントを何回も阻止してきたんだ。

あぁそうだ……
マリーとリューノもチームには居るが、二人とも補欠要因だ。
マリーはクラブ自体を止めたがってるが、リューノが頑張ってる(上達はしてない)のをアニキが褒める為、褒められる事を目的として在籍している。まぁオイラがコッソリ、アニキに『マリーは頑張ってない』と告げ口してるので、褒められては居ないらしい。

因みにオイラ達の城前学校は、城下町内でも1.2を争う強豪クラブだ。
でも再来週の対戦相手……中央学校(グランバニア城下町中央学校) の野球クラブは、実力均衡のライバルクラブなんだ。

中央学校は名の通りグランバニア城下町の中央部分に存在し、南のグランバニア城や北のグランバニア軍港に勤める軍人達の子供が多い、住宅密集地に存在する学校なのだ。
その為、親が幼い頃からトレーニング(野球に限らず)させてきた為、個々人の能力が高い。

オイラやリューラがどんなに能力が高くても、野球はチームプレイなので以前は勝つ事が出来なかった。
でも最近はチームの能力の底上げが出来てきている。
その理由はコーチのお陰だ。

チーム名が“城前学校野球クラブ”となってるが、学校は無関係。
なので学校の先生が監督やコーチをしてるわけではない。
他の学校もオイラ達の学校も、野球好き(子供好きも)の親達が自主的に監督・コーチをしてくれてるだけなんだ。

だがら中央学校の連中は強い。
なんせ親が軍人で、しかも軍隊内では野球のチームが出来ており、海軍と陸軍が競い合ってるというのだからね。
そんな親に教われば、効率よく強くもなれるさ。

だけど、我がクラブも最近では良いコーチを迎え入れたんだ。
何度も言うけど、親達が勝手に参加してるだけで、お金を払ってるわけじゃないから、物好きじゃない限り無償参加をする奴は居ない。

でも我がクラブの新任コーチは、誰の親でも無い(つーか独身男)のに、近所に住んでるってだけで、コーチを引き受けてくれたんだ。
ってか、勝手にコーチをやり始めたんだけどね。

「おーい、アロー君! 足が止まってるぞ。もっと走り込め」
ついついボーッとコーチを見てたら、大きな声で一喝された。
そう、この人がオイラ達のチームの頼れるコーチ……イサーク・クンドーさんです。

初めて見た時は、あまりにも厳つくて……しかも毛深くて、ゴリラかと思っちゃったんだけど、根は良い人でクラブ内でも好かれている。
現在はフリーターらしく、近所のお屋敷で日々鍛錬をしてるらしい。

何でも、2年後(正確には2年を切った)に行われる武術大会に参加して、能力を認めてもらったら国に仕官するとの事だ。
一応アニキに知らせたところ、『あぁ、カタクール候の子飼いの連中だ。悪い奴じゃ無いから安心して良いよ』と教えてくれた。

“連中”というのは、コーチの友達(仲間?)で、一緒にカタクール侯爵様の屋敷で鍛錬してる方々だ。
クンドーさんがリーダ格で、トシー・ヒッカータさん、ソウゴ・オーキットさん、サガール・マウンザキさん達の事だ。
他にも数十人程居るらしいが、一番よく連んでるのはこの4人。

もう少し夕方になると、夜間の仕事(アルバイト)がある為、ヒッカータさん・オーキッドさん・マウンザキさんがクンドーさんを呼びに来る。
3人ともクンドーさんを慕ってるみたいで、キツイ事を言う時もあるけど、基本的に良いチームみたいだ。

まるでリュカさんに暴言を吐く、アニキやティミー殿下達の様に……
やっぱり上に立つ人物は、ああ言う大らかな人柄の方が良いんだね。
オイラもプライベートの事を色々相談してるんだ。

……あれ? 何か広場の入り口付近が騒がしい。
誰か来たみたいだけど……ヒッカータさん達かな?
まだ時間じゃ無いのだけど……

アローSIDE END



(グランバニア城下町)
リュリュSIDE

再来月、ティミー君は外務大臣として他国へ外遊に赴く事になっている。
その為の準備等で忙しくなってきたのだけれど、ほぼウルポンに押し付けているので、現状は時間が出来ている。

だからなのか、日々成長しているアルルさんのお腹に手を当てて、パパとして優しく話しかける時間を多くとっている。
先程も仕事が一区切りすると……

『リュリュ、今日はもういいから終わりにしよう。この書類を軍港の責任者に届けてくれたら、今日は帰っても良いよ』
と、仕事を切り上げて奥様の下にニコニコ帰って行った。

如何いうつもりなのか、100(ゴールド)ものお駄賃をくれて私をお使いに行かせる。
私も結構お給料は貰っているのだけど、貰えるのであればお兄ちゃんからのお小遣いだと思って、有難く貰っておきますよ。

思いがけない臨時収入だったので、お父さんを誘ってお茶でも(出来ればお酒)しようかと思ったのですが、執務室には不在。
渋々ウルポンに問うと、『リュカさんなら今夜予定があるらしく、ビアンカさんと出かけたよ。ってか“ウルポン”って呼ぶな!』と返答。

ウルポン呼びに怒ってたが、それは綺麗に無視。
でもお父さんが居ない事は怒ってなかった。
仕事なのかな? でもビアンカさんと一緒みたいだし……

まぁ仕方ないので、一人で軍港へルーラ。
目的の物を目的の者の手渡したら、ルーラで帰宅……しても良いんだけど、折角なので城下町をお散歩。
私、あんまり城下町を散策した事って無いんですよ。

グランバニア港前ステーションから列車に乗ってグランバニア城前ステーションまで……でも良いんですけど、折角なので環状線を無意味に一週。
車窓からの景色は新鮮で、ついつい時間を忘れてしまう。

でも一周すれば飽きても来る。
グランバニア城前ステーションで降りる準備をすると、車窓から広場で子供達が遊んでる姿を発見!
中にはマリーちゃん達も……

良い機会だからラムネでも奢ってあげようと列車を下車後、近くの駄菓子屋で大量購入。
それでもお兄ちゃんから貰ったお小遣いは半分以上残ってる。
うん。こういう使い方も良いよね。

広場に着くとマリーちゃんに速攻で見つかり、「あれぇ……リュリュちゃん、如何したの?」と問いかけられる。
それを皮切りに、周囲の子供達が一斉に寄ってきた。
お父さんの娘って事で、私ってば凄い人気。

「リュ、リュリュ姫様!? ど、ど、如何したんですかこんな汚い場所に!?」
子供達に紛れて大人が居たらしく、私の登場にビックリしてる。
でもビックリしたのは私もですよ。だってゴリラが現れてかと思う様な風貌の人だったから。

「あ、いや~……何してるのかな?って思って」
「見て解らないの、野球よ……野球の練習をしてるのよリュリュちゃん」
未だお父さんの娘である事を内緒にしておかなきゃいけないマリーちゃんが、他人と話す様に呆れ口調で語りかける。

「こ、こらマリーちゃん、リュリュ姫様に失礼だろ!」
ゴリラさんが口の悪いマリーちゃんを叱る。
「え~……だって私とリュリュちゃんは友達だしぃ~……城住まいの私と仲良くしてくれてるしぃ~……余所余所しい方が失礼じゃね?」

「そぅですよぉ~……私も“お姫様”って呼ばれるの困りますぅ。王位継ぐ気は無いんですから」
「そ、そうですか!! で、では私も“リュリュさん”って呼ばせて貰いますね(デレ)」
ゴリラさんがデレッと呼び方を指定してきました。まぁ構わないんですけど……

「あの……貴方は?」
私の見立てだけで“ゴリラ”と呼ぶわけにもいかず、可能な限り自然体で名前を尋ねる。
「この人はゴリラよ。このクラブのコーチ兼ゴリラななのよ!」
ゴリラとコーチが兼任って何!? つーか相変わらずマリーちゃんの口が激悪。

「こらマリーちゃん。そんな事言っちゃ失礼でしょ! ごめんなさいねゴリラさん」
「アンタもゴリラって言ってるじゃん!」
しくじった……思わず言ってしまった。

「良いんですよゴリラで(大笑) まぁイサーク・クンドーって名のゴリラですがね。わはっはっはっ」
良かったわ……とても良い人みたい。
だからと言って、これ以上ゴリラと呼ぶわけにもいかない。

「ではクンドーさんと呼ばせて貰いますね(ニッコリ)」
以前ポピーちゃんが言ってたわ……『リュリュだったら失礼な事を言っても、ニッコリ笑っていれば許して貰えるわよ』って。

「いやぁ~そんな余所余所しくなく、イサークと呼んでくれても良いんですよ!」
う~ん……流石ポピーちゃん。
本当に許して貰えたわ。

「あのですね、皆にラムネを差し入れようと思って買ってきました」
私は会話が弾んでる内に先程買ったラムネを皆に配る。
冷たい内に飲んで貰いたいしね。

「ところで……何でこんな空き地で練習してるの? もっと整備されたグラウンドを使用すれば良いのに」
「相変わらず馬鹿ねリュリュちゃんは」
そんなに馬鹿なの私!?

「あう……酷いマリーちゃん(泣)」
「学校のグラウンドは他のスポーツクラブも使用するから、毎日は使えないの。それ以外で整備されたグラウンドとなると、軍の敷地内にあるグラウンドしか無いでしょ。使えるわけ無いじゃん、そんなとこ!」

「なるほど……」
的を射たマリーちゃんの説明に、ションボリしてた私も大いに納得。
口の悪いマリーちゃんとの会話に、周囲の人達(特にクンドーさん)がハラハラしてる。

やっぱり私はお父さんの娘なのね……
皆さん王族として見てるみたい。
身分を隠してるマリーちゃん達が羨ましいわ。

リュリュSIDE END



 
 

 
後書き
コーチ達一派は、あるアニメのキャラを参考に作りました。
カタクール候を出した時からの構想です。
ファンの方……申し訳ございません。 
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