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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  6

ち、くそめんどくせぇ奴だよ、まったく
能力型・重力。それの使い手、ルーク・ラヴィーナ
俺専用の刺客らしいけどよ、そんな馬鹿みたいな力があるなら他に役立てろってんだ。


「ねぇねぇ」

「あ?」

「なんでゼロは犯罪者なの?」


俺は盛大にため息をついて、破壊の闇をぶっ飛ばした。いつもこうだ。この天然ど阿呆は


「てめぇで勝手に調べろ」

「そーゆーのは得意じゃない」

「知るか」

「そんなこと言うなって。減るもんじゃないでしょ?」

「黙らねぇと声帯ぶち切るぞ!」

「んー。それは困る」


こんな呑気なこと言いながら、当たれば体が粉々になるようなもんを飛ばしてくるんだから、ほんとたちが悪い。俺の破壊をぼんやりとした顔で避けやがって……。
遠距離は不利。武器は役に立たないし、重力の塊のまとになるだけだ。俺の破壊には制限がある。あいつみたいに撃ちたいだけ撃つわけにはいかない。でも接近戦であれを避けれるかどうか……。まぁいい。しのぎ合いも終わりだ。
夜が明ける


「おい、ルーク。時間だ。終いにするぞ」

「えー……」

「3日は追うなよ。たまには俺にも休ませろ」

「んー。おれはいいけど、軍はわかんないよ?」

「お前が来ねえだけでいい。だいぶ楽だ」

「そっか。わかった」


…………いや、軍の人間だろ。おまえ
わかったって言うか?


「じゃ、また。ゼロ」

「出来ることなら二度と会いたくねぇよ」


俺の破壊が右腕に渦巻き、やつの重力も手のひらの上で巨大化していく。空気がなり、波が俺らを中心に騒ぎ、ビリビリと威圧感がほとばしる

こいつは嫌いだが、この感覚を作れるのはこのバカだけだろう。ぞっとするほど体が煮え立つ感覚を


「養生してくれー」


今までの疲労と傷の8割がお前のせいだっての



力と力がぶつかる。人を超えた力のぶつかり合いは海を荒立たせ、空から雲を消し去った。俺も衝撃に飛ばされ、ルークも波に乗るように衝撃に身を委ねて消えた。

まぁ俺には翼があるから、あんなアホみたいに飛ばされることもねぇし、なんならこの力にのって逃げることもできる。


ったく、毎夜毎夜こうだ。


付近の島に入り、森のなかに身を隠した。邪魔でしかもボロボロになった不要な翼は消して森を歩く。今夜も町のなかで寝るのは難しそうだ


「……で?いつまで隠れてるつもりだ」

「そんな眼で睨むなゼロよ。余裕のない証拠ぞ?」

「余裕がねぇのはどっちだよ。いつまでも俺に付きまとうことしかできねぇのか?どうせ付きまとうなら盾にでもなれ」


闇のなかから姿を現したのは、青白い肌に長い銀髪、細い体に赤い目を輝かせた女。呆れるほどに露出した肌からは血の気も温度もない。厚く真っ赤な唇に白い牙が光る


「盾になる気はないが……妾はいつまでも行くぞ?魔王よ。長い夜を共に過ごそうではないか」


細く、長い指に髪を絡ませ、音もなく長い黒のドレスをゆらす


「その体から血の一滴のこさず渇れ果てるまで」

「よるな、吸血鬼が」


俺と同じ変形型のティナ・吸血鬼(ヴァンパイア)
その所有者、ルナ・ノクス


「つれないよのう、魔王。もっと楽しまねば損するぞ?」

「俺の力目当てで付きまとうストーカーがいなけりゃ、多少楽しめるかもな」


そう。こいつの狙いは俺の首でも、金でもない。俺の破壊の力だ


「悪魔の力は神に仇なす魔の力。神の作りし命を壊し、神を崇める心を壊し、神の恵みのティナを破壊する。背の翼もその爪も飾りのようなもの。いつ、妾にその力を使ってくれるのだ?」

「言ったろ。俺ができるのは、代償を知り相手の了解を得たときだけだ。お前が代償を知ってりゃあ今すぐにでも体ごと破壊してやるよ」

「それがわからぬと何度言えばわかる」

「ならついてきても無駄だって何回言わせる。あー、めんどくせぇ」


変形型は、俺も含めてだが、とくに代償がわかりづらい。ティナを得てすぐに眼が見えねぇなら、視力が奪われたんだろうって誰にでもわかる
でも、変形型は変形型だからこその特長がある
例えば吸血鬼。こいつは食がない。血しか飲めない
加えて太陽にも出れない。不老。吸血鬼だから
全部代償といえば代償だが、特性といえば特性
こいつは未だに、代償を理解してねぇ

まぁ珍しくもない
何を奪われたか。奪われ過ぎてわからない場合もどうでもよすぎてわからない場合もねぇことはねぇ

この女は、吸血鬼のティナを破壊し
人として死にたいらしい
太陽の下で


「魔王よ。どこへ向かう?そなたの過去を探しに」

「……とりあえず日の出だ。寝る」

「うむ、そうだな。ついて参れ、妾が案内しよう」

「へぇ?たまには気が利くじゃねぇか」


ちなみに俺は日に殺されることは多分ない(死ぬほど太陽を浴びる気なんかねぇ)が、こいつは本当に焼け死ぬ。そうならないために、日がでればコイツは蝙蝠になって、よたよたと飛ぶ、らしい
残念なことに見たことはねぇ


「こっちだ」


吸血鬼の長い指が指す先には、ひとつの砦
いかつくて汚ならしい格好をしたやつらが見張る場所


「……おい」

「よいだろう?きっとお前の好きな酒もある」

「あれは……宿じゃねぇだろ」

「うむ。盗賊団の根城だ!」


どこの世界に盗賊の本拠地を宿として案内するやつがいるだろうか
あー、もうめんどせぇ


「とっとと灰になって消えろ、吸血鬼」

「そうはいかぬ。これからも長く付き合ってもらうぞ。闇の帝王よ」



 
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