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笑顔も贈りものも

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4部分:第四章


第四章

「そうなんだ」
「うわあ、それがいいのよ」
「秀典君のその性格」
「それがまたいいのよ」
 それはそれで人気の要因となっていた。彼はその性格でも人気の的だったのだ。お陰で男連中からもこんなことを言われていた。
「普通の奴だったらそれこそな」
「ああ、腹が立って仕方がないけれどな」
「あいつだったらな」
「仕方ないな」
「そうだよな」
 こう言っていいとするのだった。まさに人徳だった。
 そしてその彼は女の子達に顔まれながら静かにジュースを飲んでいた。その彼のところにだ。敦子は行こうとするがそこから動けなくなっていた。クラスメイト達はそんな彼女を見てだ。やれやれといった顔になっていた。
 そしてだ。まずは彼女達だけで顔を見合わせ。そのうえで話すのであった。
「もう一捻りね」
「というか一押しね」
「そうね」
「ここはね」
 こう言い合ってであった。彼女に後ろからそっと近寄って。その背を押すのであった。
「だからね」
「一歩前に出る」
「そうしなさい」
「あっ・・・・・・」
 また背中を押された敦子はそれによって前にそのまま押し出された。そしてそのまま秀典の前に出てしまった。
 その彼女を見てだ。女の子達は珍獣を見るような目になった。そのうえで言うのであった。
「あれ、霧島さん?」
「そうよね」
「何でここに?」
 とりあえず彼女が競争相手だとは誰も思っていなかった。
「珍しくドレス着て」
「パーティーに出るの」
「意外ね」
 実際に思いも寄らないことだと言う娘もいた。
「それでまさか」
「さらに意外だけれど」
「中村君と」
「まさかね」
 しかしであった。そのまさかだった。
 敦子はもじもじとして言えない。その彼女の横にクラスメイト達が来てだった。そのうえで秀典に対して言うのだった。本人が言えないならだった。
「あのさ、いいかしら」
「次の曲だけれど」
「敦子中村君と踊りたいんだって」
「えっ・・・・・・」
 その周りの言葉に驚いた顔になる敦子だった。
「今何て」
「だから踊りたいんでしょ?」
「そうなんでしょ?」
「だからこのパーティーに来たんでしょ?」
「それは」
「そういうことだから」
 敦子には余計なことは言わせなかった。まさに先んずれば人を制すであった。
「中村君、いいかしら」
「それでね」
「できたら」 
 ここで秀典はこう言うのであった。
「その言葉を霧島さんの口から聞きたいけれど」
「えっ、それって」
「周りの言葉に流れるよりも自分で言う方がいいから」
 微笑んで述べた彼だった。
「だからね」
「けれどそれは」
「はい、決まりね」
「言いなさい、自分でね」
「そう言われたんだから」
 またここで言う周りのクラスメイト達だった。あくまで彼女の背中を押し続けるのであった。
「それじゃあはい」
「言うのよ」
「言うって」
 放り出された感じになって戸惑う敦子だった。
「あの、私は」
「もうね。自分で言わないとね」
「どうしようもないのよ」
「そうよ」
 しかしここで周りはきつい言葉を出してみせてきた。
 
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