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憎しみは消え

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第七章

「ナチスの奴等はな」
「憎いとまでいかなかくなったな」
「そこまではな」
「けれどな」
 それでもだった。
「あの時はな」
「ナチスが憎くて仕方なくて」
「ナチスに抱かれた連中や協力してた奴等もな」
「連中の全てが憎くてな」 
 皆当時の自分達のことを思い出しつつ話す。
「それでな」
「連中を徹底的に叩きのめしてやりたくて」
「実際にそうしてやって」
「あれは何だったんだ」
 ニコルはここでまた仲間達に問うた、当時一緒にいた彼等に。
「俺達のしたことは」
「負けて領土を占領された憎しみをか」
「ぶつけてただけなのか?」
「ひょっとして」
「それだけか?」
「俺達がしてたことは」
「そうじゃないのか?」
 ニコルは暗い顔になっていた、それは自然となっていたものだった。彼はその顔で仲間達に問うのだった。
「結局は」
「あの時は正義を行っているつもりで」
「実際に協力してた奴とか抱かれてた奴を片っ端から捕まえて」
「そうして制裁を加えていたが」
「それはか」
「誰も止めなかったけれどな」
 それでもだったとは、ニコルは気付いたのだ。
「俺達のやったことは法律でも保証されてなかったな」
「つまりリンチか」
「俺達がしたことはリンチか」
「それだけか」
「それだけのことだったのか?」
「そうかもな」
 こう言うのだった。
「あの時の俺達がしたことは」
「悪い奴等を裁いたつもりが」
「自分の憎しみをぶつけてただけか」
「娼婦とかに」
「ナチスに抱かれてた奴等だけに」
「だからだな」
 ここでだ、また言ったニコルだった。
「あの時俺達は白い目で見られてたんだな」
「娼婦連中にな」
「友達を狩られてた連中に」
「白い目で見られてか」
「睨まれてたんだな」
「そのことがわかったよ」
 今ようやく、というのだ。
「あの時の俺達はそうだったんだよ」
「憎しみをぶつけていただけで」
「正しいことをしていなかったんだな」
「リンチに励んでいた」
「それだけだったんだな」
「しかもな、フランスも勝ったけれどな」
 今度は祖国のことを話すのだった。
「失ったものが多かったからな」
「ああ、相当にな」
「だからだな」
「勝ったけれどな」
「復興も遅かった」
「そうだったんだな」
「勝ってすぐに復興する訳もなかったんだよ」
 その頃はわからなかったのだ、このことも。
 しかし今はだ、どうかというと。 
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