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キルト

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第四章

「残念だけれどね」
「やっぱりな」
「ネッシーはもう滅多に見た人いないからな」
「いないとか言う馬鹿本当にいるしな」
「いるに決まってるのにな」
 スコットランド人としての意地めいたものがここでも出た。
「まあ見られたらラッキーだよ」
「それもとんでもなくな」
「それでも景色見られてな」
「よしとしないとな」
「家族でそう言ったよ」
 ネス湖に行ってとだ、ピエールも答える。
「景色見られてよかったってね」
「まあそれを楽しめたらな」
「いいってことで」
「ネス湖はネッシーがいるけれどネッシーだけじゃない」
「そうした場所だからな」
「そのこともわかったよ、いや本当にね」
 それこそという口調で言うピエールだった。
「あの湖に行ってよかったよ」
「スコットランドは山が多いからな」
「それに森も」
「だから景色いい場所多いしな」
「そっちも楽しんでくれたらいいさ」
「そうだね、そして」
 ピエールは景色のことを聞いたうえでまた言った。
「今日はいよいよだね」
「ああ、待ちに待ったあれだよ」
「キルトの登場だよ」
「ピエールの大好きなな」
「それの出番だよ」
「早く見たいよ」
 切実な言葉だった。
「キルトを」
「あとハギスも出るよ」
 クラスメイトの一人はピエールにこの言葉を教えてきた。スコットランドの石の町並みとその間にある緑の中で。
「それもね」
「ハギス?」
「ああ、知らないんだ」
「っていうか何それ」
「見ればわかるよ」
「ハギスねえ」
 その言葉の語呂からだ、ピエールは首を傾げさせつつ言った。
「不思議な生きものみたいな名前だね」
「まあそれはね」
「何ていうかね」
「その辺りはね」
「実際に見ればわかるよ」
 クラスメイト達は笑ってだ、彼に返した。
「ハギスはね」
「そちらもね」
「そうなんだ、それじゃあ」
「まずはね」
「ハギスだよ」
 こう話してだ、そのうえで。
 彼等はまずは祭りを楽しんだ、ただしピエールは食べものは楽しまなかった。もっと言えば楽しめなかった。 
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