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何が流行するか

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7部分:第七章


第七章

「やっぱりな。何かな」
「ラッパーとはまた違ってな」
「いい感じだよな」
「これもこれでな」
「いけてるよな」
「だろ?俺も最初店でカタログ見てな」
 それで着てみたことをだ。大輔は彼等に話した。
「それでしてみたんだよ」
「その格好にか」
「そうしたんだな」
「そうさ。中々いいだろ」
 そのだ。昔の不良ファッションもだというのだ。
「これで番長とかスケ番とかいたらしいぜ」
「番長って何だよ」
「そんな言葉あったのかよ」
「昔の学校の不良連中のリーダーをそう言ってたらしいな。昔の不良漫画に出たりしてるらしいぜ」
「昔の不良漫画?」
「それに出てたのかよ」
「ああ、俺も今度そういうの古本屋で見つけて読んでみるからな」
 今度は漫画を読んで勉強することになった。こうして大輔達は昔の不良についての知識を深めていった。そしてそれはだ。
 彼等の学校だけではなくなった。他の学校にもそのファッションは広まりだ。忽ちのうちに日本全国でブームになった。街にはリーゼントで超長ラン、長いスカートに短い上のセーラー服の高校生がたむろする様になった。潰れたカバンにマスクも売られる様になった。
 雑誌でもテレビでも特集された。当然ネットでもだ。
 まさにブームだった。大輔が超長ランを買ったその店でもだ。懐かしの不良グッズのコーナーができてそこに学生達が集っている。それを見てだ。
 大輔はあの店員に尋ねた。この状況についてだ。
 彼は今もリーゼントに超長ランだ。その格好でだ。
 黒や白、それに赤や青の長い学生服を買う学生達を見ながらだ。店員に尋ねたのである。
「売れてるみたいだな」
「ええ、まさに飛ぶ様に」
 店員はあの時と同じく彼に笑顔で話す。
「売れてますよ」
「そうだよな。それにしてもな」
「それにしても?」
「俺は最初から格好いいと思ったけれどな」
 その不良ファッションがだというのだ。
「けれどそれでもな」
「流行になるとは思わなかったんですね」
「ああ、正直とんでもないファッションだからな」
「けれどこうしてですよ」
「売れてるってことは」
「私も驚いてますがね。ですがね」
「格好いいとは見なされてるんだよな」
 大輔は首を傾げながら言う。
「実際に」
「はい、だから流行になってるんですよ」
「だよな。しかしこれって見方によっちゃとんでもないファッションかもな」
「どんな格好でも大なり小なりはそうですよ」
「どれもか」
「はい、前の。そのお客さんがどうかって思われていたラッパーのファッションも」
 それもだというのだ。
「あれもじゃないですか」
「確かにな。だから俺もどうかって思ってな」
「他のファッションを探されてですね」
「そうしたんだよ。じゃあこれから他のファッションもか」
「流行るでしょうね。今の私達から見れば異様なものが」
 そうなるとだ。店員は話すのだった。
「あの頃のチェックもその不良ファッションもそうでしたし」
「そうだよな。じゃあ一体どんなファッションが流行るかは」
「わかったものではありません」
 店員はこのことを大輔に話してだ。大輔も考える、哲学的な顔になり頷いたのだった。そしてだ。
 この不良ファッションの後で流行ったのは今度はケルトだった。髪の毛は脱色して立たせてタトゥーを入れてチェックの服を着る。アクセサリーにはおもちゃとはいえ首がつく。その格好が流行になった。世の中は本当に何が流行るかわかったものではない。


何が流行るか   完


                  2012・1・29
 
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