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ローブ=ア=ラ=フランセーズ

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第一章

                 ローブ=ア=ラ=フランセーズ
 舞台女優であるサラ=マルグリット=デュソワは職業柄常にスタイルそして顔にも髪型にも気を使っている。
 見事なブロンドを腰まで伸ばしライトブルーの宝石の方な目を持ち白く透き通った肌に見事な鼻。紅の唇に奇麗な形の眉と長い睫毛という顔立ちだ。
 長身で胸は大きく脚もすらりとしている、だが普段の彼女の格好は。
「またその格好だね」
「ラフにしてるのよ」
 家で夫で映画監督のシャルルに言う。シャルルは茶色の髪をオールバックにしたややアジア系の感じのする顔を持っている。背はサラと同じ位であり彼女とは映画で知り合った。彼はズボンにシャツというラフな格好の妻に言ったのだ。そして妻もこう答えたのだ。
「動きやすいのにね」
「そして動いてだね」
「その分カロリーを消費してるのよ」
「そういうことだね」
「それに普段はこうしてね」
「ラフな格好にしている方がだね」
「スタイルを維持しやすいのよ」
 こう夫に話すのだった。
「動きやすい分、そして服の矯正もあるから」
「だからズボンが多いんだね」
「そういうことよ」
「女優の考えだね」
「そうなるわ、あとね」
「いつもだね」
「見られてると意識しているわ」
 この気持ちも持っているというのだ。
「私なりにね」
「それも女優としてのだね」
「そうよ、気構えよ」 
 まさにそれだというのだ。
「お仕事だから」
「女優も大変だね」
「大変というかね」
 それこそというのだ。
「当然のことよ」
「女優として」
「そう、だから苦にはしていないわ」
「だといいけれどね」
「とにかくね」
 また言うサラだった。
「普段はこうした格好でそのうえで」
「見られていると意識しているんだね」
「あなたにもね」
 夫にもだ、くすりと笑って言った。
「いつも私を見てるでしょ」
「夫が妻を見ることは当然のことじゃないかい?」
「ええ、女優は結婚すべきよ」
「いつも見る相手が出来るから」
「そしてそれ以上のものを得られるからよ」
「そのそれ以上のものとは?」
「愛よ」
 さらに笑っての言葉だった。
「愛は女優を最も磨くものよ」
「言うね、君も」
「けれどお芝居の言葉じゃないわよ」 
 女優ではあるが、というのだ。
「安心してね」
「それじゃあ安心させてもらうよ、それでね」
 夫は妻の言葉を受けてにこりとなった、そのうえでだった。
 あらためてだ、妻に尋ねたのだった。
「次の仕事は舞台だよね」
「そう、ロココ時代の我が国のね」
「ロココねえ」
「貴夫人の役よ」
「貴夫人となると」
 そう聞いてだ、シャルルは考える顔になってサラに言った。
「やっぱり服は」
「ええ、あのね」
「物々しいドレスだね」
「ローブ=ア=ラ=フランセーズのことね」
「名前も実に物々しいね」
「あの時代の貴夫人は皆着てたでしょ」
「そう、髪型もね」
 夫はこちらの話もした。 
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