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ムシウタ ~夢殺す死神~

作者:Drache
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朝の満員電車はいつも混み合う。
つまりそれは駅のホームが混むということと等しい関係にあるということだ。
きっちり7時半。僕、神野春峰と友人の薬屋大助は改札口を抜けた。
今日も賑わっているホームの一番改札口が近い場所に今日も4人組の少女たちが並んでいた。
同じ県立桜架東高校一年生。
4人うちひときわ目立っているのは同じクラスの立花梨菜だった。
肩まで伸ばした髪は朝日を反射し、きらきらと輝いている。
屈託なく笑う目は猫のように少しだけ釣りあがっていた。
一言で言い表すならば・・・美人だ。
見ていた僕たちの視線に気がついたのか4人のうちの2人がこちらを振り向いた。
「あ?薬屋君」
「本当だ。おーい」
・・・またか。
どうやら僕は小さいころから影が薄いらしい。
学校での出席確認もいつも忘れられてしまいあだ名が『透明人間』になってしまうほど僕は誰からも気付いてもらえないのだ。今まで見つけてくれていた人はもうそばにいなかった。
そんな悲観めいた想像を頭を振って消し去り、微笑を浮かべて大助に声をかけた。
「ははっ、大助。お呼びだね」
「あ、あはは・・・」
逃げようとしていた大助は苦笑しながら振り向いた。
ところが立花梨菜のほうは隠すつもりがないらしく露骨にいやな顔をしていた。
「うわー薬屋ジャン。あんなやつほっておこうよ」
「いいじゃん。ほら、こっちあいてるよ。おいでよ」
その言葉に大助は俺のほうを振り向いた。
「いってらっしゃい」
そういいながら大助の背中を蹴り飛ばすとやっと気づいたらしい。
「あれっ?神野君じゃん」
「神野君もいたんだ、一緒においでよ」
大助はすたすたと俺に歩み寄ると両手で頭を鷲掴みにし、無理やり俺を連れて行った。
とんでもない筋力で俺をつかむ大助に逆らうと大変なことになるのはわかりきっているため、
ここはあえておとなしく連れて行かれることにした。
乱れた襟を直しながら
「おはようございます」 
そう挨拶した俺に女子4人は
「おはよう」
と返してくれた。
いつもとはちょっと違う登校だがまさかあんなことになるとは思わなかったんだ。


それから少ししてようやく列車がホームに着いた。
「ほら大助、いくよ?」
と6人で列車に乗り込むとふと大助が外に視線を向けた。
『ドアが閉まります・・・』
そうアナウンスが入ったドアに向け大助が動き始めた。
「な、何してるの薬屋君?」
「どうした大助?」
そんな声を無視して彼は緊急用のボタンを押し、無理やりドアを開いた。
乗客の悲鳴や非難、非常音の甲高いサイレンを振り切るかのように大助はホームへと駆け上がっていってしまった。
その後、電車はすぐに動き出し俺たちは無事時間内に登校することができたのだが・・・。
俺はチラッと見えたとある少女に違和感を感じていた。
 
 

 
後書き
不定期すぎる更新で申し訳ありません。
できるだけ定期的にできるようにします。
感想、評価などお待ちしています。 
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